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2013年11月14日 (木) 23:29時点における最新版

からっ風野郎』(からっかぜやろう)は、1960年(昭和35年)3月に公開された日本映画。製作・配給は大映(東京撮影所)。主演は三島由紀夫監督増村保造脚本菊島隆三

2007年に角川エンタテインメントよりDVDが発売されている。

概要[編集]

当時、既に世界的に高名な作家となっていた三島由紀夫の主演作。やくざの跡取ながら、どこか弱さや優しさを持ったしがない男を演じている。激しく愛を生きるヒロインは若尾文子

企画の発端は、講談社の編集者・榎本昌治が、親交のあった大映企画部の藤井浩明に、「三島由紀夫で映画を創る」話を持ちかけたことに始まる[1]。三島とも親交があった藤井は、社長の永田雅一の快諾を得、藤井の下、増村保造白坂依志夫脚本家)の3人で企画が進められた[1]。三島からの注文は、ストーリーは任せる、インテリの役は絶対にやらない、ヤクザとか競馬の騎手とかの役をやりたい、というものであった[1]。そこで3人は「八百長レースに巻き込まれる競馬の騎手」の話を企画するが、馬主協会の会長である永田の怒りを買い、却下された[1]

藤井はその時、菊島隆三が書いてお蔵入りになっていた脚本を思い出す[1]。本来は、石原裕次郎を想定して書かれた脚本(アテ書き)だったが、ストーリーの結末が石原のイメージを崩すとの理由で陽の目を観ることはなかった[1]。藤井は三島主演での映画化を菊島に願い入れ脚本を譲り受け、増村が三島に合わせて改訂し演出がなされた[1]。三島の相手役には、山本富士子若尾文子の2人から、三島自身が若尾を指名した[1]

増村の三島に対する演出は厳しかったものの、三島は俳優に徹し監督の命令に従ったという[2]。ラストシーンの撮影では、三島がエスカレーターから転落、頭を打ち切り傷を負い入院したが、その後の撮り直しの際には、永田が監視役で立ち会った[2]。撮影終了後は、三島の父や杉村春子から三島と増村に対する評価もあり、2人は親しくしていたという[2]

映画が完成し三島邸に招待された際、増村は三島の父・から、「下手な役者をあそこまできちんと使って頂いて」と礼を言われたという。三島に怪我をさせて申し訳ないと思っていたのに逆に礼を言われ、帰り道、増村は、「明治生まれの男は偉い」と、梓をほめていたという[3]

なお、1960年(昭和35年)3月20日にレコード発売された主題歌『からっ風野郎』(作詞・歌:三島由紀夫。作曲・ギター演奏:深沢七郎[4]B面春日八郎『東京モナリザ』となっている。主題歌は、映画では使用されていない。

キャスト[編集]

朝比奈武夫:三島由紀夫
主人公。つぶれかけているヤクザの朝比奈一家の二代目。
小泉芳江:若尾文子 
武夫の隠れ家の映画館・コンパルで働いていた娘。武夫を一途に愛し、妊娠する。
愛川進:船越英二
朝比奈一家の舎弟。武夫の兄弟分で親友。先代の親方に大学まで出させてもらい恩義を感じ、武夫の面倒を何かと見ている。実は堅気になろうとしている。
平山吾平:志村喬 
武夫の伯父貴。先代亡き後、朝比奈一家を取り仕切っていた。相良を殺してこいと武夫に発破をかけハジキ(ピストル)を渡す。その武夫の身代わりには自分が刑務所に入ると意気込んでいたが、病身のため間もなく死去。
小泉正一:川崎敬三
芳江の兄。赤旗を振り、労働争議の活動している。
高津綾子:小野道子
愛川進の恋人。朝比奈一家の向かいで高津薬局を営む薬剤師。親戚の誘いで大阪に転地しようとしているが、そこで愛川と所帯を持ちたいと考えている。
香取昌子:水谷良重  
武夫の情婦だったナイトクラブ「カナリア」の歌手。バナナの歌を歌う。
相良雄作:根上淳
新興ヤクザ相良商事の社長。朝比奈一家と反目している。武夫に足を刺され後遺症が残り、それを根に持っている。
雲取大三郎:山本礼三郎
雲取一家の大親分。朝比奈一家とも相良とも繋がりがある。2人の間の取引仲介で漁夫の利を得る。
川瀬:三津田健
刑務所の所長。武夫から出所の延期を頼まれ断るが、隠密に出所させる計らいをしてやる。
ゼンソクの政:神山繁
相良に雇われた殺し屋。喘息の持病がある。
金沢:潮万太郎  
朝比奈一家に出入りしている酔っ払いおやじ。
淀川:浜村純  
もぐりの医者(闇医者)。薬物中毒。怪我をした武夫の治療をする。
錦貫:杉田康
相良の舎弟。
赤間:高村栄一
相良の舎弟(年長者)。ゼンソクの政とは網走刑務所で知り合った。
相良みゆき:矢萩ふく子
相良の娘。小学一年生。武夫に誘拐される。
村田:倉田マユミ  
産婦人科・村田医院の医者。
半田三郎:小山内淳
殺す相手の顔も知らない殺し屋。武夫と間違えて別の囚人を射殺し逮捕される。
「カナリヤ」のマスター:守田学
武夫が刑務所にいる間にできた昌子の新しい情夫。
益子:伊東光一
岩崎:花布辰男
健次:飛田喜佐夫
稲宮:杉森麟
野沢:此木透
五郎:土方孝哉
山下:小杉光史
法事の受付A:山口健
法事の受付B:大塚弘
相良のばあや:須藤恒子
相良の運転手:津田駿二
商店街の肉屋のおやじ:佐々木正時

ほか

脚注[編集]

  1. 1.0 1.1 1.2 1.3 1.4 1.5 1.6 1.7 三島由紀夫で撮った『からっ風野郎』はもともと石原裕次郎の映画だったんです SlowTrain 2010年7月19日閲覧
  2. 2.0 2.1 2.2 台本提出の前日夜に“停電事件”が…でも増村さんは朝まで書き続けました SlowTrain 2010年7月19日閲覧
  3. 藤井浩明「座談会 映画製作の現場から」(『三島由紀夫と映画 三島由紀夫研究2』)(鼎書房、2006年)
  4. CDは『決定版 三島由紀夫全集第41巻・音声(CD)』(新潮社、2004年)に収む。

参考文献[編集]

  • 藤井浩明「座談会 映画製作の現場から」(『三島由紀夫と映画 三島由紀夫研究2』)(鼎書房、2006年)
  • 『決定版 三島由紀夫全集第42巻・年譜・書誌』(新潮社、2005年)
  • DVD『からっ風野郎』(角川エンタテインメント、2007年)

外部リンク[編集]

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