日本年金機構

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日本年金機構(にっぽんねんきんきこう、Japan Pension Service)は、国(厚生労働大臣)から委任・委託を受け、公的年金厚生年金及び国民年金)に係る一連の運営業務を担う、非公務員型特殊法人である。

概要

日本年金機構は、公的年金業務の適正な運営と国民の信頼の確保を図るため、社会保険庁を廃止し、公的年金業務の運営を担う組織として2010年(平成22年)1月1日に発足した(実際の業務開始は同年1月4日)特殊法人である。同機構は役員及び職員の身分は公務員としないが、役職員は刑法その他の罰則については、「みなし公務員」規定が適用される。また、役員には兼職禁止義務が役職員には秘密保持義務が課される。 同機構は、日本年金機構法(平成19年法律第109号)の理念に基づき、お客様目線の業務運営をするために、運営方針及び人事方針を次のように定めている。

  • お客様の立場に立った親切・迅速・正確で効率的なサービスの提供。
  • お客様のご意見を業務に反映していくとともに、業務の成果などについて、わかりやすい情報公開の取組みを進める。
  • 1,000人規模の民間会社経験者を採用するとともに、能力・実績本位の新たな人事方針を確立し、組織風土を変える。
  • コンプライアンスの徹底、リスク管理の仕組みの構築など組織ガバナンスを確立する。

年金払う気なし。日本年金機構の仰天業務実態

どうやら日本年金機構は国民にちゃんと年金を給付する気がないようだ。

年金受給権の時効を撤廃し、過去の記録ミスによる支給漏れ分を支払う「時効特例給付」が行われず、なんと約1300件、計約10億円の未払いが発覚した。

驚いたことに機構は職員から指摘があったにもかかわらず約1年も放置し無為無策のまま業務を継続。年金未払いを引き起こした理由について「準備期間が短かった」「運用が正しいと思っていた」と子供じみた言い訳に終始している。無責任極まる態度にあきれるばかりだ。

平成19年2月、9年の基礎年金番号導入時に複数の番号を持つ人の記録を統合しなかったため5000万件の未統合の記録があることが判明。国民から猛反発を受けた。社会保険庁(日本年金機構の前身)や監督責任がある厚生労働省は猛省を促され、平成22年には装いも新たに日本年金機構が発足し、国民に信頼される年金給付を誓ったばかりだった。

今回の年金未払い問題の原因の一つに、機構職員間で横行していた「事なかれ主義」がある。未払い案件として昭和32年9月までに会社を辞めた経歴がある受給者の旧台帳の処理に絡み特例給付の対象としていないケースなどが発覚。審査担当職員が平成24年1月、上司に指摘した。

ところが、是正しないまま審査業務は約10カ月も続いた。しびれを切らした審査担当職員が同年11月7日総務省の年金業務監視委員会に告発。厚労省年金局が事態を知ったのは、さらにその数日後だったというが公式見解だ。問題発覚を恐れた機構が事態の矮小化を図り、同省への報告をためらったととられても仕方ない。

2013年1月になって機構は弁護士らによる調査委員会を設置。ここで初めて告発に基づく未払い年金の検証作業が始まった。審査担当職員の指摘から実に1年が経過していた。結果、約8万8千件に誤りがある可能性が分かり、うち8千件分の調査で今回の未払いが判明した。

審査担当職員が外部に告発すれば問題が表面化し、いずれは組織として非を認めざるを得ない。それでも、そのまま平然と業務を続けてきた機構職員に恐ろしささえ感じる。不手際を認め正確な年金支給を実施することに、最後の最後まで抵抗する特異な文化が機構内で蔓延しているのだ。

こんな状態だから、給付判断で迷うケースについて統一マニュアルが存在せず、判断が難しいケースの采配は個々の職員に委ねられることになった。これでは年金受給者間で不公平が生じてしまう。こんなずさんな業務を放置していた機構幹部はもちろん、監督責任がある厚労省幹部の責任は大きい。

実は、こうした組織運営に危機感を覚えた同省の金子順一事務次官は2012年12月、内部通報制度について「ことが深刻な事態になるのを防ぐという意味で大事な仕組みだ」とするメッセージをひそかに厚労省職員に伝え、密告を推奨していた。ただ無責任体質が染みこんでいる機構には、そう簡単に次官の気持ちは届かない。年金受給者には改めて年金の支給漏れがないかどうか自身でチェックすることを勧めたい。

沿革

年金記録問題#社会保険庁改革と年金記録問題参照

2004年(平成16年)4月1日に行われた第159回国会衆議院本会議において、小泉純一郎内閣総理大臣は「社会保険庁と年金行政の信頼回復でございますが、年金制度を安定的に運営するためには、保険料の徴収や年金給付などの年金事業を担う社会保険庁に対する国民の信頼が不可欠であります。このため、社会保険庁は、多くの批判を反省し、効率化、合理化の観点から事業運営や組織のあり方に関して不断の見直しを行うとともに、年金受給者の需要に的確に対応できる体制を確保するなど、国民の信頼確保に全力を挙げるべきものと考えております」と答弁して初めて社会保険庁の組織のあり方を見直す意向を示した。同年7月23日、村瀬清司を初の民間人出身の社会保険庁長官として登用し、社会保険庁の業務と組織の改革が進められた。

2006年(平成18年)1月25日第164回国会の参議院本会議で小泉内閣総理大臣は社会保険庁を2008年(平成20年)10月を目途に廃止し公的年金と政管健保の運営を分離の上、それぞれ新たな組織を設置する等の解体的出直しを行うことを表明した。同年3月10日、小泉内閣は同国会に社会保険庁の廃止などを定めた「ねんきん事業機構法案」を提出したが、同法案は審議未了で廃案になった。なお、同法案においては「ねんきん事業機構」は厚生労働省の「特別の機関」(社会保険庁は厚生労働省の外局)とされ、職員の身分は国家公務員とされていた。

小泉内閣の後を引き継いだ安倍内閣も社会保険庁の解体的見直しを表明し、さらに年金事業を担当する組織を行政機関とせず職員も非公務員とすることを検討した。2007年(平成19年)1月26日に行われた第166回国会の衆議院本会議において、安倍晋三内閣総理大臣は「社会保険庁については、規律の回復と事業の効率化を図るため、非公務員型の新法人の設置など、廃止・解体六分割を断行します」と答弁した。同年3月13日には、内閣は同国会に社会保険庁の廃止と日本年金機構の設置などを定めた「日本年金機構法案」を提出し、同法案は同年6月30日に成立し、同年7月6日に公布された。同法案においては、「日本年金機構」は役職員の身分を非公務員とする特殊法人とされた。

2009年8月の第45回衆議院議員総選挙により与党となった民主党は「日本年金機構に移行すると年金記録問題がうやむやになる可能性がある」、「天下り規制の対象から除外されることで天下り・渡りのやりたい放題となる」との主張から、公務員温存型の「歳入庁」の創設を含んだ社保庁存続をマニフェストに明記していた。

しかし、厚生労働大臣となった長妻昭は、民間からの内定者がいることや不動産契約なども進んでいることからこれを凍結すれば混乱が生じると判断し、日本年金機構を予定通り2010年1月1日に発足させ、同日、社会保険庁は廃止された。

組織

管理及び企画部門を中心とする本部を東京に置き、その下に現場管理及び支援を行うブロック本部が9か所ある。また、各ブロック本部の下に、対面を要しない届出処理業務等を行う都道府県事務センター47か所と事業所の調査、強制徴収、年金相談などの地域に密着した対人業務を行う年金事務所(旧社会保険事務所)312か所がある。設立時の職員数は約22,000人(正規・准職員12,000人、その他有期雇用職員10,000人)。理事長は厚生労働大臣が任命し、副理事長及び理事は厚生労働大臣の認可を受けて理事長が任命する。

本部

本部は、管理部門・企画部門を中心にガバナンス機能の強化を図り、内部統制のとれた組織体制の構築を行う。理事長の下に副理事長と常勤理事7人、監事2人、非常勤理事4人がいる。

役員

2013年1月18日付け人事は以下のとおり。

  • 理事長:水島藤一郎(元三井住友銀行副頭取)
  • 副理事長:薄井康紀(元厚生労働省政策統括官)
  • 理事(人事・会計部門担当):坂巻謙一
  • 理事(事業企画部門担当):矢﨑剛
  • 理事(事業管理部門担当):深田修
  • 理事(システム部門担当):喜入博
  • 理事(全国一括業務部門担当):松田將
  • 理事(南関東ブロック本部担当):大澤範恭
  • 理事(近畿ブロック本部担当):藤田厚
  • 理事(非常勤):青山周
  • 理事(非常勤):磯村元史
  • 理事(非常勤):加藤丈夫
  • 理事(非常勤):三木雄信
  • 監事:澤本和男
  • 監事(非常勤):水嶋利夫

歴代理事長

ブロック本部

ブロック本部は、本部の指示を年金事務所に徹底させるとともに、事務所業務の後方支援を行う。標準的な地方ブロック本部は、ブロック本部長の下に3つの部と都道府県単位の事務センターが置かれている。

  • 管理部は、ブロック内の組織・業務の総合的管理、年金記録問題の総合的進捗管理・調整、コンプライアンス・リスク対策の徹底、地域的会計事務などを行う。
  • 相談・給付支援部は、相談・給付業務の事務所指導・支援、年金教育の実施、地域の関係機関等との協力・連携相談を行う。
  • 適用・徴収支援部は、各業務の目標設定・進捗管理、適用・徴収の困難事案に対する事務所支援、業務マニュアルに基づく業務の指導・徹底などを行う。

地域割は以下の通り。太字となった県は一般的な地域区分と異なるケースで、一部を除いては国税局と同じ地域割になっている。

ブロック 本部所在地 管轄 対応する国税局
(参照)
北海道 札幌市 北海道 札幌国税局
東北 仙台市 青森県岩手県宮城県秋田県山形県福島県 仙台国税局
北関東・信越 さいたま市 茨城県栃木県群馬県埼玉県新潟県長野県 関東信越国税局
南関東 東京都新宿区 千葉県、東京都、神奈川県山梨県 東京国税局
中部 名古屋市 富山県石川県岐阜県静岡県愛知県三重県 金沢国税局
名古屋国税局
近畿 大阪市 福井県滋賀県京都府大阪府兵庫県奈良県和歌山県 金沢国税局
大阪国税局
中国 広島市 鳥取県島根県岡山県広島県山口県 広島国税局
四国 高松市 徳島県香川県愛媛県高知県 高松国税局
九州 福岡市 福岡県佐賀県長崎県熊本県大分県宮崎県鹿児島県沖縄県 福岡国税局
熊本国税局
沖縄国税事務所

事務センター

地方ブロック本部の一部署として、47都道府県に事務センターが設置されている。センターでは、年金事務所の機能を適用事業所等の調査や強制徴収、年金相談などの対人業務に集中させるために、対面を要しない届書等の審査・入力・決裁業務等を集約して行う。

標準的な事務センターは、センター長の下に、4つのグループ(管理・厚生年金適用G、国民年金G、年金給付G、記録審査G)があり、各種届書・申請書、請求書等に係る受付・審査・入力・決定、各種通知書・告知書等の作成・送付(交付)、各種届書・申請書、請求書等の編綴・保管、特別障害給付金、老齢福祉年金に関する処理、死亡・特別・脱退一時金に関する処理、年金記録確認地方第三者委員会への進達、委託業務の業務内容の現地的管理・監視、コンピュータ記録と紙台帳との記録の突合せなどを行う。

事務センター規模によっては副事務センター長が置かれている事務センターもある。 また、規模によっては1つのグループを複数に分ける事務センターもある。  例〕事務センターの年金給付グループ ⇒ 年金給付第1グループ、年金給付第2グループ など

年金事務所

事業所の調査・職権適用、強制徴収、年金相談などの地域に密着した対人業務を行う年金事務所は、全国に312ヶ所ある。事務所の規模は、小規模(職員数20人未満)が104ヶ所、中規模(同20人~39人)が192ヶ所、大規模が(同40人以上)が16ヶ所である。標準的な事務所は、所長、副所長の下に5つの課が置かれている。

  • 厚生年金適用調査課は、所内の庶務(小額調達案件の調達契約事務含む)、本部・ブロック本部との連絡調整、事業所指導、事業所調査、未適用事業所の職権適用などを行う。
  • 厚生年金徴収課は、厚生年金保険料の納付督励、滞納保険料に対する滞納処分などを行う。
  • 国民年金課は、所得に応じた収納対策、未納保険料の強制徴収、市町村との連携などを行う。
  • 年金記録課は、年金記録問題対応の事実調査確認などを行う。
  • お客様相談室は、来訪相談、出張相談、電話相談などを行う。

業務運営

国(厚生労働省)が財政責任・管理運営責任を負いつつ、一連の業務運営は日本年金機構に委任・委託されている。

中期目標

厚生労働大臣は、3年以上5年以下の期間において、機構が達成すべき業務運営に関する目標(中期目標)を定め、日本年金機構に対して示し公表する。中期目標は、1.中期目標の期間(3年~5年の間)。2.提供するサービスその他の業務の質の向上に関する事項。3.業務運営の効率化に関する事項。4.業務運営における公正性及び透明性の確保その他業務運営に関する重要事項の4つである。また、厚生労働大臣は、中期目標の達成状況について、評価を行い、評価の結果必要があると認めるときは、機構に対し、その業務の運営の改善に関し必要な措置をとるべきことを命ずる。

発足当初における中期目標の期間は、平成22年1月1日から26年3月31日までの4年3カ月である。年金記録問題対応の「国家プロジェクト」の期間と位置付けており、平成22年度、23年度の2年間を集中的に予算・人員を投入し、当面の最重要課題として取り組むとしている。

中期計画

日本年金機構は、中期目標に沿って中期計画及び毎年度の年度計画を作成し、厚生労働大臣の認可を受ける。厚生労働大臣は、機構の事業年度ごとの業務の実績について、評価を行う。発足当初の中期計画は、お客様の信頼確保に向けた組織改革のため、発足当初の3か月は発足に伴う混乱回避と円滑な移行に最大限注力し、平成22年度以降、サービス向上に向け、職員の士気高揚・組織の活性化を通じた本格的な取組を、優先順位を付けて計画的に進めるとされた。

業務

厚生労働大臣の権限を委任された業務は、大きく分けて4つあり、適用(加入)調査関係、徴収(保険料の納付)関係、相談・裁定・給付(年金受給)関係、これらを横断的に管理をする記録管理である。

日本年金機構の名で機構が行っている業務は、資格の得喪の確認、滞納処分、届出・申請の受付、厚生年金の標準報酬額の決定、国民年金手帳の作成・交付などがあり、厚生労働大臣から事務の委託を受けた業務は、裁定、年金の給付、原簿への記録、ねんきん定期便への通知、納入の告知・督促などがある。また、保険料の徴収は、国の歳入徴収官の名で日本年金機構が行っている。

また、健康保険組合連合会及び健康保険組合並びに企業年金連合会及び厚生年金基金の事実上の所管団体、厚生労働省並びに旧社会保険庁及び現日本年金機構の天下り・渡りの受入れ先・斡旋元でもあり外郭団体でもある、総合健康保険組合協議会の連携機関も兼ねている。

総合健康保険組合協議会が実施する社会保険制度の改善に係る官公庁への提言における、制度改善への啓発等に協力している。

チェック機関

日本年金機構に対して第三者の立場からチェックする機関は、日本年金機構評価部会と運営評議会の2つがある。また、民間企業の経営管理等の識見を機構の業務運営に反映するために、日本年金機構の中に非常勤理事がいる。

日本年金機構評価部会

厚生労働大臣の諮問機関である社会保障審議会の中にあり、委員は厚生労働大臣が任命する。業務は、1.厚生労働大臣が定めた日本年金機構の中期目標の審議、2.各事業年度及び中期目標期間の業績の評価、3.評価に基づいて改善が必要な場合は、業務改善についての審議。

運営評議会

運営評議会は、被保険者、事業主、受給権者、その他の関係者の意見を機構の業務運営に反映するために置かれており、委員は理事長が委嘱する。理事長は、中期計画及び毎事業年度の年度計画、その他理事長が必要と判断する業務運営に関する重要事項について、あらかじめ運営評議会の意見を聴かなければならない。

採用

常勤職員は、正職員と准職員がいる。准職員は、有期雇用で正職員に相当するような業務を行う。正職員と准職員は、常勤職員として同一の給与規定が適用される。常勤職員以外の有期雇用職員として、特定業務契約職員及びアシスタント契約職員がいる。

日本年金機構設立時の職員については、2008年12月22日、設立委員会(委員長:奥田碩トヨタ自動車株式会社取締役相談役)が職員の労働条件及び採用基準を決定し職員を募集した。採用審査は、職員採用審査会(委員長:岩村正彦東京大学大学院教授)が行い、設立委員会は、職員採用審査会の意見を聴いて職員採用の採否を決定し、2009年10月に採用通知を出した。

採用基準

日本年金機構設立委員会が決定した採用基準は以下のとおりである。

  • 国民本位のサービスを提供するという意識、そして、公的年金という国民生活にとって極めて重要な制度の運営を担っているという高い使命感を持ち、法令等の規律を遵守し、公的年金業務を正確かつ効率的に遂行するとともに、被保険者等のために業務の改革やサービスの向上に積極的に取り組む意欲がある者であること。また、機構の理念・運営方針及び人事方針に賛同する者であること。
  • 機構の業務にふさわしい意欲・能力を有する者であること。
  • 職務遂行に支障のない健康状態であること。
  • 機構設立時に定年(満60歳到達月の属する年度末)に達していない者であること。
  • 国家公務員法第38条各号に定める欠格事由に該当しない者であること。

旧社会保険庁職員の採用

2007年に森永卓郎が当時与党だった自由民主党参議院幹事長の片山虎之助に尋ねた際には優秀ではない人材は分限免職にすると答えている。

旧社保庁職員については、正職員に9,673人、准職員に580人を採用する通知が出された。社保庁職員からの採用に当たっては、2008年7月29日、法令違反者、業務改革に後ろ向きな者など、公的年金業務に対する国民の信頼を著しく損ねたような者は採用しない、特に懲戒処分者は採用しないとし、ヤミ専従行為を行った職員などは、速やかに厳正な処分を行うなどが閣議決定されており、日本年金機構設立委員会は、社保庁職員(過去に社会保険庁に在職し、機構設立前に退職した者を含む。)からの採用基準を以下のように定めた。

  • 懲戒処分を受けた者は採用しない。なお、採用内定後に懲戒処分の対象となる行為が明らかになった場合には、内定を取り消す。また、採用後に懲戒処分の対象となる行為が明らかになった場合には、機構において、労働契約を解除する。
  • 過去に矯正措置などの処分を受けた者については、処分歴や処分の理由となった行為の性質、処分後の更生状況などをきめ細かく勘案した上で、採否を厳正に判断する。
  • これまで改革に後ろ向きな言動のあった者及び改革意欲の乏しかった者については、改革意欲の有無や勤務実績・能力を厳正に審査し、採用の可否を慎重に判断する。また、採用内定後に、社会保険庁で行う各種調査に協力しないなど、改革に前向きでないことが明らかとなった場合には、設立委員会において採用の可否を再検討する。

不採用になった職員については、過去に懲戒処分を受けた職員とともに厚生労働省への配置転換、退職勧奨、官民人材交流センターの活用等による民間への再就職あっせんなど、組織廃止に伴う分限免職(民間の整理解雇に相当)回避のための努力を行うことが必要とされた。

全日本自治団体労働組合岡部謙治委員長は民主党仙谷由人衆議院議員同席で、問題のあった社保庁職員の分限免職回避・雇用の確保を前政権の舛添厚生労働大臣に要請していたが、結果的に2009年12月28日、長妻昭厚生労働大臣は、懲戒処分を受けていた251人の職員を含めた525人を分限免職とする方針を決定し公表した。また、当時の社会保険庁長官渡辺芳樹も、1996年の厚生省汚職事件に関して減給の懲戒処分を受けていたため、機構に副理事長として採用されず、他のポストへの異動も認められなかったことから、12月31日付で退官した。

民間からの採用

民間からの採用については、平成21年4月からハローワーク等の求人媒体を通じて一般公募をし、正職員1,127人(内訳は管理職355人、IT企画30人、監査関係13人、企業会計・調達関係8人、一般事務関係721人)、准職員970人の約2,000人に採用通知が出された。

また、職員採用内定者には、希望を募った上で同年9月から社会保険庁の謝金職員(非常勤職員:民間企業等に言うパートタイマーに相当)として、地元の地方社会保険事務局(県単位の地方支分部局)で予め勤務させるとともに、社会保険大学校での研修を受講させた。

人事・人材育成

いわゆる三層構造問題(社会保険庁の幹部として短期間在籍する厚生労働本省採用のキャリア職員、本庁採用のいわゆるノンキャリア職員、かつて地方事務官として都道府県単位で採用された職員が一体性を欠いたまま存在するという構造は、組織を分断させ、組織ガバナンスの欠如の原因とも指摘された。)を解消すべく、人事の一体化を図り、企画業務と現場実務のを双方経験をして、マネジメントをしていくというキャリアパターンになっている。また、能力・実績本位の人材登用、給与体系、それを裏づける人事評価制度が導入されている。

給与体系

給与体系は、できるだけ年功序列を廃し、仕事(役割)が適正に反映されるように設計されている。基本給は、役割等級制度(経営幹部職群、マネージャー職群、一般職群)に基づく範囲給としている。仕事の難易度、責任の重さを明確化して、下位等級の基本給金額が上位等級の基本給金額を上回らないようにしている。年功的な給与上昇を是正するために、各等級の上限と下限の金額幅を圧縮し同一等級内での基本給の昇給を抑制している。上位等級へ昇格する場合は、昇格前の号俸にかかわらず、原則として1号俸を初任号俸とし格付する。なお、旧社会保険庁からの移行組は、原則として、社会保険庁退職時の等級に対応する等級に格付している。

昇給・昇格は、人事評価の結果を的確に反映させ、評価が悪い場合は昇給しない又は降給する。一般職は、モチベーションアップと人材育成のために各等級に応じた客観的な昇格要件を定めている。年金事務所長など管理職への登用にあたっては、資格試験あるいは資格審査を実施する。

賞与は、成果を挙げた職員を適正に処遇し、職員のモチベーションを向上させるため、賞与に占める期末手当(固定分)の支給割合を縮小し、人事評価が反映される勤勉手当(査定分)の支給割合を拡大するとともに個人ごとの勤勉手当の査定幅を拡大している。

退職手当は、毎年度の在級する等級のポイントを積み上げる方式(ポイント制)としている。

事件

10億円未払い隠匿事件

2013年、国家の失態によって支払われなかった年金の受給権利の「時効」を撤廃する時効特例給付を1,300件、10億円以上放置したことが発覚した。機構内職員からの指摘があったにも関わらず、機構は1年以上に渡って隠匿を続けたことも確認された。

社会保険庁OB官製談合事件

2010年10月、機構発注業務についての入札にて内部情報を業者に漏洩したとして、機構職員とNTTソルコ社員(社保庁OB)が官製談合防止法違反容疑で逮捕された。

実質的天下りに対する懸念

民営化し特殊法人となることで、職員の身分が非公務員となることから、国家公務員法の天下り規制の対象外となり実質的な天下りが行われるのではないかといった懸念が示された。これについて渡辺喜美内閣府特命担当大臣は記者会見で移行する2年先までに考えてもらうことになると述べた。

発足した1ヵ月後の平成22年2月1日付けで、多くの社会保険庁OB(元国家公務員)が健康保険組合又は厚生年金基金などの外郭団体へ実質的に天下り、そのタイミングを逃したOBも着々と同様の天下りを果たしている。

関連項目

外部リンク

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