「東北地方太平洋沖地震」の版間の差分
カミサギノミヤ散歩人 (トーク | 投稿記録) (東日本大震災) |
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− | # | + | '''東北地方太平洋沖地震'''(とうほくちほうたいへいようおきじしん)<!-- ノート過去ログ参照 -->は、[[2011年]]([[平成]]23年)[[3月11日]]([[金曜日|金]])14時46分18.1秒<ref name="気象庁地震・火山月報"/>、[[日本]]の[[太平洋]][[三陸|三陸沖]]を震源として発生した[[地震]]。'''[[東日本大震災]]'''<ref name="気象庁第9報">{{cite press release |
+ | |title = 「平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震」について(第9報) | ||
+ | |publisher = 気象庁 | ||
+ | |date = 2011-03-12 | ||
+ | |url = http://www.jma.go.jp/jma/press/1103/12g/201103121100.html | ||
+ | |accessdate = 2011-03-13 | ||
+ | }}</ref><ref name="統一名称"></ref><ref name="首相官邸">[http://www.kantei.go.jp/foreign/incident/index.html 首相官邸ホームページ]の[[英語]]版、Prime Minister of Japan and His Cabinet "Countermeasures for 2011 Tohoku - Pacific Ocean Earthquake"より。2011年4月1日閲覧。</ref>を引き起こし、[[東北地方|東北]]から[[関東地方|関東]]にかけての[[東日本]]一帯に甚大な被害をもたらした。 | ||
+ | |||
+ | == 概要 == | ||
+ | この地震は、[[2011年]][[3月11日]]14時46分18.1秒<ref name="気象庁地震・火山月報"/>、[[牡鹿半島]]の東南東約130km付近の太平洋([[三陸#三陸沖(海域名)|三陸沖]])の海底、深さ約24km<ref name="気象庁第14報"/>を震源として発生した。[[太平洋プレート]]と[[北アメリカプレート]]の境界域([[日本海溝]]付近)における[[地震#プレート間地震|海溝型地震]]で<ref name="jisinyochi0311"/>、震源域は[[岩手県]]沖から[[茨城県]]沖にかけての幅約200km、長さ約500km、およそ10万平方キロの広範囲にわたった。地震の規模を示す[[マグニチュード]]はMw9.0<ref name="気象庁第15報"/>で、[[関東地震#大正関東地震|大正関東地震]]([[1923年]])の7.9や[[昭和三陸地震]]([[1933年]])の8.4をはるかに上回る'''日本観測史上最大'''<ref name="hochi">{{cite news | ||
+ | |title=国内最大M8.8、震度7で宮城壊滅…東日本大地震 | ||
+ | |url = http://hochi.yomiuri.co.jp/osaka/gossip/topics/news/20110312-OHO1T00125.htm | ||
+ | |newspaper = [[スポーツ報知]] | ||
+ | |date = 2011-03-12 | ||
+ | |accessdate = 2011-03-13 | ||
+ | |archiveurl = http://web.archive.org/20110315082321/hochi.yomiuri.co.jp/osaka/gossip/topics/news/20110312-OHO1T00125.htm | ||
+ | |archivedate = 2011-03-15 | ||
+ | }}</ref>であるとともに、世界でも[[スマトラ島沖地震 (2004年)|スマトラ島沖地震]]([[2004年]])以来の規模で、[[1900年]]以降でも4番目に大きな[[超巨大地震]]であった<ref name="USGS1">{{Cite web | ||
+ | |url = http://earthquake.usgs.gov/earthquakes/eqarchives/year/mag8/magnitude8_1900_mag.php | ||
+ | |title = Magnitude 8 and Greater Earthquakes Since 1900 | ||
+ | |publisher = U.S. Geological Survey | ||
+ | |language = 英語 | ||
+ | |accessdate = 2011-03-14 | ||
+ | }}</ref><ref name="USGS2">{{Cite web | ||
+ | |url = http://www.usgs.gov/newsroom/article.asp?ID=2727 | ||
+ | |title = USGS Updates Magnitude of Japan’s 2011 Tohoku Earthquake to 9.0 | ||
+ | |publisher = U.S. Geological Survey | ||
+ | |language = 英語 | ||
+ | |accessdate = 2011-03-15 | ||
+ | }}</ref>。 | ||
+ | |||
+ | 地震によって大規模な[[津波]]が発生した。最大で海岸から6km内陸まで浸水<ref name="bp0314" />、[[岩手県]][[三陸]]南部、[[宮城県]]、[[福島県]][[浜通り]]北部では津波の高さが8m-9m<ref name="日本気象協会津波第3報"/>に達し、[[明治三陸地震]]([[1896年]])の津波を上回る最大溯上高40.1m(岩手県[[大船渡市]])を記録する<ref name="津波400">{{cite web | ||
+ | |url = http://www.coastal.jp/ttjt/index.php?%E7%8F%BE%E5%9C%B0%E8%AA%BF%E6%9F%BB%E7%B5%90%E6%9E%9C | ||
+ | |title = 現地調査結果 | ||
+ | |publisher = 東北地方太平洋沖地震津波合同調査グループ | ||
+ | |date = 2012-01-14 | ||
+ | |accessdate = 2012-02-09 | ||
+ | }}</ref>など、震源域に近い東北地方の太平洋岸では、高い津波が甚大な被害をもたらした。津波は関東地方の太平洋岸でも被害をもたらしたほか、[[環太平洋地域]]を中心に世界の海岸に達した。また、宮城県北部で最大震度7、岩手県から[[千葉県]]にかけて震度6弱以上を観測するなど広範囲で強い揺れとなり、関東地方の[[埋立地]]で大規模な[[液状化現象]]が発生した。一方東北太平洋岸では、[[地盤沈下]]により浸水被害が長期的に続いている。[[余震]]も過去例に無いペースで発生したうえ、通常の余震域外でも地震活動が活発化している<ref name="bosai48-01" /><ref>[http://www.jma.go.jp/jma/menu/jishin-portal.html 東日本大震災 ~東北地方太平洋沖地震~ 関連ポータルサイト] 気象庁、2012年2月11日閲覧。</ref>。 | ||
+ | |||
+ | 津波、液状化、建造物倒壊など、東北の岩手県、宮城県、福島県の3県、関東の[[茨城県]]、千葉県の2県を中心とした被害は大きく、この地震による死者・行方不明者計約1万8,500人の大半は東北の3県が占めた。また、[[電力系統|発電施設]]被害による大規模[[停電]]や一連の[[震災]]により、[[日本]]全国および[[世界]]に[[経済]]的な二次被害がもたらされた。 | ||
+ | |||
+ | 一方、地震と津波により[[福島第一原子力発電所事故]]が発生し、10万人を超える被災者が[[屋内退避]]や[[警戒区域]]外への避難を余儀なくされた。警戒区域外でも、[[放射性物質]]漏れによる汚染が起きているほか、[[日本の原子力発電所]]の再稼働問題、[[東日本大震災による電力危機|電力危機]]なども発生している。 | ||
+ | |||
+ | 本地震の特徴として、いくつかが挙げられる。 | ||
+ | *'''海溝型地震であったこと''' : [[北アメリカプレート]]と、その下に沈み込む[[太平洋プレート]]の境界部、[[日本海溝]]と呼ばれる地域で発生した海溝型地震であった。 | ||
+ | *'''連動型地震であったこと''' : 数十年 - 百数十年間隔で発生する海溝型のM8前後の大地震ではなく、それらが複数同時に発生する[[連動型地震]]であった。日本では19世紀終盤の近代観測開始以来初めて明瞭に連動型地震と断定されるものであった([[東北地方太平洋沖地震及び津波のメカニズム#超巨大地震のスーパーサイクル|スーパーサイクル]]参照)。 | ||
+ | *'''東北太平洋沖でこのような連動型地震が発生する事態は「想定外」であった''' : 地質調査や文献調査では、[[南海トラフ巨大地震|南海トラフ沿い]]において20世紀中盤から、[[関東地震|関東]]地域において20世紀終盤から広く認識されていた一方、東北太平洋沖、北海道や千島列島の太平洋沖、九州や南西諸島の太平洋沖ではそれぞれ21世紀に入ってから(特に2004年の[[スマトラ島沖地震 (2004年)|スマトラ島沖地震]]以降)その可能性を示す知見が得られつつあった程度で、地震学界でも強く認識されていなかった。そのため、被害想定でもM8前後の海溝型地震までしか想定されていなかった。本地震後、新たな知見の集約や地震想定を見直す動きが活発化している([[#教訓]]参照)。 | ||
+ | *'''超巨大地震であったこと''' : Mw9.0は「[[超巨大地震]]」に分類され、19世紀終盤からの世界観測史上数回しか発生していない未曾有の規模であり、日本国内では観測史上最大の規模であった。 | ||
+ | *'''広範囲で強い揺れを感じたこと''' : 規模が大きく震源域が南北に長かったため平行する本州・東日本の広範囲で強く揺れた。また、減衰しにくい[[長周期地震動]]によって名古屋、大阪など遠方でも揺れを観測した。 | ||
+ | *'''揺れが長時間続いたこと''' : 本震の地震動は東日本全域で6分間以上継続し、長い揺れとして体感された。長周期地震動は10分間以上、地球を自由振動させる[[地震動#周期で見た地震動|超長周期地震動]]に至っては数十時間にわたって観測された。断層が滑る過程で、強い地震波を放出する破壊が数回に分けて断続的に発生したことが原因だとする説が発表されている。 | ||
+ | *'''短周期の揺れが主体であったこと''' : 地震の規模に比して長周期の揺れは小さく、短周期の揺れが主体であったため、地震による直接の家屋被害は比較的起きにくかったといえる<ref>[http://dx.doi.org/10.5610/jaee.13.5_62 2011 年東北地方太平洋沖地震の宮城県における 強震観測点周辺の状況と発生した地震動との対応性] 日本地震工学会論文集 Vol.13 (2013) No.5 p.5_62-5_101</ref>。ただし、家屋被害は宮城県と福島県を中心に広範囲に渡って発生している。 | ||
+ | *'''高い津波が発生したこと''' : 東北・関東・北海道などの太平洋岸に数m以上の津波が到達、内陸の浸水が広範囲に及んだ。[[津波地震]]でみられるような[[海溝]]寄りにおけるゆっくりとした断層の滑りや、津波が高さを増すような複数回にわたる滑りが生じていたことなどが原因だとする説が発表されている<ref>''建築研究所国際地震工学センター 藤井雄士郎、東京大学地震研究所 佐竹健治''</ref><ref name="Ide"/><ref name="sankei110911"/><ref>[http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news6/2013_1/131206_2.htm 東北地方太平洋沖地震における巨大地震・津波発生メカニズムの解明](京都大学 2013年12月6日)</ref>。 | ||
+ | *'''大きな地殻変動が生じたこと''' : 東日本全域にわたる東方向への[[地殻変動]]や東北太平洋岸の地盤沈下などが、本震により急激に発生、その後も速度を緩めながらゆっくりと進行している。 | ||
+ | *'''液状化現象が多発したこと''' : 関東地方の津波の影響を受けなかった埋立地を筆頭に[[液状化現象|液状化]]が顕著に現れた。 | ||
+ | *'''前震とみられる地震があったこと''' : 本震発生2日前の3月9日、[[三陸沖地震 (2011年3月)|三陸沖でM7.3、最大震度5弱の地震]]が発生した<ref>[http://www.jma.go.jp/jma/press/1103/09a/201103091300.html 平成23年3月9日11時45分頃の三陸沖の地震について](気象庁)</ref><ref>{{PDF|[http://cais.gsi.go.jp/YOCHIREN/report/kaihou86/03_20.pdf 地震予知連絡会会報第86巻 3-20 東北地方太平洋沖地震の前震活動と広域的静穏化について]}}</ref>。震度1以上の余震は3月11日午前まで発生した<ref group="注">震度1以上を観測し公表された余震は翌10日午前中にいったん収束([http://bousai.tenki.jp/bousai/earthquake/seismicity_map/detail?date=20110309 2011年3月9日の震央分布図] - 日本気象協会)、同日夕方から震度を弱めて再び引き続いたが([http://bousai.tenki.jp/bousai/earthquake/seismicity_map/detail?date=20110310 2011年3月10日の震央分布図] - 日本気象協会)、11日午前7時44分頃を最後に再度収束した([http://bousai.tenki.jp/bousai/earthquake/seismicity_map/detail?date=20110311 2011年3月11日の震央分布図] - 日本気象協会)</ref>。 | ||
+ | *'''余震や誘発地震が多発していること''' : その規模の大きさに比例して余震の回数・規模ともに大きく、地震学で通常「余震域」とされる地域の外で「[[誘発地震]]」が発生した。研究者・行政双方から、東日本では地殻変動の影響で被害をもたらすような地震の発生が促されているとの発表がなされ、警戒が強められている。 | ||
+ | |||
+ | == 名称 == | ||
+ | {{See also|東日本大震災#名称}} | ||
+ | 地震が発生した3月11日、[[気象庁]]はこの地震を「'''平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震'''」と[[気象庁が命名した自然現象の一覧|命名]]した<ref name="気象庁第2報">{{cite press release | ||
+ | |title = 「平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震」について(第2報) | ||
+ | |publisher = 気象庁 | ||
+ | |date = 2011-03-11 | ||
+ | |url = http://www.jma.go.jp/jma/press/1103/11c/201103111620.html | ||
+ | |accessdate = 2011-03-13 | ||
+ | }}</ref>。 | ||
+ | |||
+ | 英文による名称として | ||
+ | *「{{lang|en|The 2011 off the Pacific coast of Tohoku Earthquake}}」 - 気象庁、平成23年(2011年)3月11日命名<ref name="気象庁第2報"/>。 | ||
+ | *「{{lang|en|Tohoku Region Pacific Coast Earthquake}}」 - [[日本の政治|日本政府]]、[[総理大臣官邸|首相官邸]]<ref name="首相官邸"></ref>。 | ||
+ | *「{{lang|en|Tohoku - Pacific Ocean Earthquake}}」 - [[防衛省]]、[[外務省]]、[[国土交通省]]、[[経済産業省]]など<ref>[http://www.mofa.go.jp/j_info/visit/incidents/index.html 外務省ホームページ]の英語版、Ministry of Foreign Affairs of Japan "Tohoku - Pacific Ocean Earthquake"より。平成23年(2011年)4月1日閲覧。 </ref>。 | ||
+ | *「{{lang|en|The Tohoku earthquake}}」 - [[アメリカ地質調査所]] (USGS)、2011年3月16日時点<ref name="USGS2" /><ref>[http://www.latimes.com/news/nationworld/world/la-sci-quake-tohoku-20110317,0,7121717.story USGS dubs Japan earthquake 'Tohoku']</ref>。 | ||
+ | *「{{lang|en|The Sendai (earth)quake}}」 - 英語圏メディア<ref>[http://rafu.com/news/2011/03/itns-3/ INTO THE NEXT STAGE: Sendai Quake, Tsunami Test Japan’s Spirit(By GEORGE TOSHIO JOHNSTON、First published in The Rafu Shimpo on March 17, 2011.)]</ref>。 | ||
+ | *「{{lang|en|The Japan (earth)quake}}」 - 英語圏メディア<ref>[http://articles.cnn.com/2011-03-11/world/japan.quake_1_hokkaido-tsunami-east-japan-railway Widespread destruction from Japan earthquake, tsunamis(March 11, 2011|By the CNN Wire Staff)]</ref><ref>[http://www.wired.com/wiredscience/2011/03/japan-earthquake-surpise/ Japan Quake Epicenter Was in Unexpected Location(By Devin Powell, Science News Email Author March 17, 2011)]</ref>。 | ||
+ | などがある。 | ||
+ | |||
+ | 地震発生後、しばらくの間は各メディアや組織・団体において震災としての名称は統一されておらず、「東日本大震災」や「東北関東大震災」などの呼称が用いられていたが、日本政府は[[2011年]][[4月1日]]の持ち回り[[閣議]]で、この地震による震災の名称を「'''東日本大震災'''」とすることを了解、発表し<ref name="統一名称">[http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20110401-OYT1T00701.htm 震災の呼称、閣議で「東日本大震災」に] - [[読売新聞]]2011年4月1日付</ref>、それ以降は各メディアでの呼称も「東日本大震災」に統一された。 | ||
+ | |||
+ | その後、略称として月日より取られた「'''3.11'''」という記述もメディアではしばしば見られる。なお、「3.11」は2011年[[新語・流行語大賞]]トップテンに選出された。 | ||
+ | |||
+ | 余震の報道の際には「とうほくちほうたいへいようおきじしん」ではあまりに長いので、「2011年の超巨大地震」と通称される。 | ||
+ | |||
+ | == 本震 == | ||
+ | [[ファイル:C0001xgp_wcmt_smt.png|right|160px|thumb|3月11日14時46分に発生したM9.0の本震の[[発震機構|CMT解]](下半球等積投影法、気象庁による速報)<ref name="jisinyochi0311">{{cite press release | ||
+ | |language = | ||
+ | |url = http://www.jma.go.jp/jma/press/1103/11d/201103111730.pdf | ||
+ | |title = 「平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震」の地震の規模について(第3報) | ||
+ | |publisher = 気象庁地震予知情報課 | ||
+ | |date = 2011-03-11 | ||
+ | |accessdate = 2011-03-12 | ||
+ | }}</ref>]] | ||
+ | 気象庁や防災科学技術研究所などによると、この地震の要素は以下の通り。なお、発生時刻や震源は既知の地下構造モデルによって算出された理論上の精密値であり、実際の要素と多少のずれが生じている可能性がある。 | ||
+ | *発生時刻: [[2011年]]([[平成]]23年)[[3月11日]] 金曜日 14時46分18.1秒<ref name="気象庁地震・火山月報"/>([[日本標準時]]) | ||
+ | *[[震源]]: [[三陸]]沖([[牡鹿半島]]の東南東約130km付近、北緯38度6分12秒 東経142度51分36秒) | ||
+ | *震源の深さ: 24km<ref group="注" name="国土地理院">なお、震源域の深さは上端5km、下端40kmとされている。 | ||
+ | (国土地理院 [http://www.gsi.go.jp/common/000060175.pdf 平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震 震源断層モデルの概念図])</ref> | ||
+ | *地震の規模 | ||
+ | **[[マグニチュード#モーメントマグニチュード Mw|モーメントマグニチュード]] (Mw) 9.0 | ||
+ | **[[マグニチュード#気象庁マグニチュード Mj|気象庁マグニチュード]] (Mj) 8.4<ref name="jma28">{{cite press release | ||
+ | |url = http://www.jma.go.jp/jma/press/1103/25b/kaisetsu201103251730.pdf | ||
+ | |title = 「平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震」について(第28報) | ||
+ | |publisher = 気象庁 | ||
+ | |date = 2011-03-25 | ||
+ | |accessdate = 2011-04-18 | ||
+ | }}</ref> | ||
+ | *最大[[震度]]: '''[[気象庁震度階級|震度]]7'''([[宮城県]][[栗原市]][[築館町]]、計測震度6.67<ref name="ejhds">[http://www.ejec.ej-hds.co.jp/sinsai/sinsai-03.pdf 平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震(M9.0)の強震動について] 株式会社エイト日本技術開発、2011年3月17日。</ref>) | ||
+ | *最大[[加速度]] (PGA): 2,933[[ガル]](宮城県栗原市) | ||
+ | *断層型: [[断層#逆断層|逆断層]]型(西北西-東南東方向に圧力軸を持つ) | ||
+ | *地震の種類: [[太平洋プレート]]が[[北アメリカプレート]]([[オホーツクプレート]])の下に沈み込んでいる[[沈み込み帯]]([[海溝]])である[[日本海溝]]で起きた[[地震#プレート間地震|海溝型地震]] | ||
+ | |||
+ | この地震により震度6弱以上を観測した地域は以下の通り<ref>[http://www.data.jma.go.jp/svd/eqdb/data/shindo/index.php 震度データベース検索](気象庁)</ref>(震度5弱以上を観測した地域の一覧は[[東北地方太平洋沖地震の前震・本震・余震の記録#本震]]を参照)。3月30日と6月23日に一部の震度データが修正されている<ref>{{cite press release | ||
+ | |title = 「平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震」により各地で観測された震度について | ||
+ | |publisher = 気象庁 | ||
+ | |date = 2011-03-30 | ||
+ | |url = http://www.jma.go.jp.cache.yimg.jp/jma/press/1103/30d/kaisetsu201103301800.pdf | ||
+ | |accessdate = 2011-03-30 | ||
+ | }}</ref><ref>{{cite press release | ||
+ | |title = 「平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震」により各地で観測された震度等について(第3報) | ||
+ | |publisher = 気象庁 | ||
+ | |date = 2011-06-23 | ||
+ | |url = http://www.jma.go.jp/jma/press/1106/23b/201106231400.pdf | ||
+ | |accessdate = 2011-06-23 | ||
+ | }}</ref>。この地震では発生から約3分後(14時49分)の[[地震情報#震度速報|震度速報]]で震度7が発表された<ref>[http://www.jma.go.jp/jma/kishou/books/saigaiji/saigaiji_201101.pdf 災害時自然現象報告書 2011年第1号] 気象庁、2011年8月17日発行。</ref>。速報の段階で震度7が発表されたのはこの地震が初めてである<ref group="注">この地震より前に震度7を観測した地震には[[兵庫県南部地震]]([[阪神・淡路大震災]])と[[新潟県中越地震]]がある。兵庫県南部地震では発生直後は最大震度が6とされ、震度7が発表されたのは発生から21日後だった(当時は現在と異なり、震度6までは地震計で計測し、震度7は被害状況を見て判断することになっていた)。新潟県中越地震では発生直後は最大震度が6強とされ、震度7が発表されたのは発生から7日後だった(このときは機械と通信回線の故障から地震計の記録が直ちに送られず、震度7の記録は後から回収された地震計の記録から求められた)。</ref>。ちなみにこの地震における計測震度6.67は観測史上最大のものである。 | ||
+ | [[File:Shindomap 2011-03-11 Tohoku earthquake.png|right|200px|thumb|本震における日本各地・地域ごとの震度分布図]] | ||
+ | [[File:2011 Tohoku earthquake intensity.png|right|200px|thumb|本震における主要地点の震度分布図]] | ||
+ | {|class="wikitable" | ||
+ | |- | ||
+ | !style="width:2em"|震度 | ||
+ | !style="width:4em"|都道府県 | ||
+ | !市区町村 | ||
+ | |- | ||
+ | !style="background-color:#ff00ff"|7 | ||
+ | |[[宮城県]] | ||
+ | |[[栗原市]] | ||
+ | |- | ||
+ | !style="background-color:#e60000" rowspan="4"|6強 | ||
+ | |宮城県 | ||
+ | |[[涌谷町]] [[登米市]] [[美里町 (宮城県)|美里町]] [[大崎市]] [[名取市]] [[蔵王町]] [[川崎町 (宮城県)|川崎町]] [[山元町]] [[仙台市]]([[宮城野区]]) [[石巻市]] [[塩竈市]] [[東松島市]] [[大衡村]] | ||
+ | |- | ||
+ | |[[福島県]] | ||
+ | |[[白河市]] [[須賀川市]] [[国見町]] [[鏡石町]] [[天栄村]] [[楢葉町]] [[富岡町]] [[大熊町]] [[双葉町]] [[浪江町]] [[新地町]] | ||
+ | |- | ||
+ | |[[茨城県]] | ||
+ | |[[鉾田市]] [[日立市]] [[高萩市]] [[小美玉市]] [[那珂市]] [[笠間市]] [[筑西市]] [[常陸大宮市]] | ||
+ | |- | ||
+ | |[[栃木県]] | ||
+ | |[[大田原市]] [[宇都宮市]] [[真岡市]] [[市貝町]] [[高根沢町]] | ||
+ | |- | ||
+ | !style="background-color:#ff6400" rowspan="8" | 6弱 | ||
+ | |[[岩手県]] | ||
+ | |[[大船渡市]] [[釜石市]] [[滝沢村]] [[矢巾町]] [[花巻市]] [[一関市]] [[藤沢町]] [[奥州市]] | ||
+ | |- | ||
+ | |宮城県 | ||
+ | |[[気仙沼市]] [[南三陸町]] [[白石市]] [[角田市]] [[岩沼市]] [[大河原町]] [[亘理町]] [[仙台市]]([[青葉区 (仙台市)|青葉区]]・[[若林区]]・[[泉区 (仙台市)|泉区]]) [[松島町]] [[利府町]] [[大和町]] [[大郷町]] [[富谷町]] | ||
+ | |- | ||
+ | |福島県 | ||
+ | |[[福島市]] [[郡山市]] [[二本松市]] [[桑折町]] [[川俣町]] [[西郷村]] [[中島村]] [[矢吹町]] [[棚倉町]] [[玉川村]] [[浅川町]] [[小野町]] [[田村市]] [[伊達市 (福島県)|伊達市]] [[本宮市]] [[いわき市]]<ref group="注">いわき市については、気象庁の震度推計分布図によると局地的に震度7相当の揺れがあったとみられている。</ref> [[相馬市]] [[広野町]] [[川内村]] [[飯舘村]] [[南相馬市]] [[猪苗代町]] | ||
+ | |- | ||
+ | |茨城県 | ||
+ | |[[水戸市]] [[北茨城市]] [[ひたちなか市]] [[茨城町]] [[東海村]] [[常陸太田市]] [[土浦市]] [[石岡市]] [[取手市]] [[つくば市]] [[鹿嶋市]] [[潮来市]] [[美浦村]] [[坂東市]] [[稲敷市]] [[かすみがうら市]] [[行方市]] [[桜川市]] [[常総市]] [[つくばみらい市]] [[城里町]] | ||
+ | |- | ||
+ | |栃木県 | ||
+ | |[[那須町]] [[那須塩原市]] [[芳賀町]]<ref group="注">芳賀町については、防災科学技術研究所の設ける観測点で震度7相当の揺れ(計測震度6.51)を観測している。</ref> [[那須烏山市]] [[那珂川町 (栃木県)|那珂川町]] | ||
+ | |- | ||
+ | |[[群馬県]] | ||
+ | |[[桐生市]] | ||
+ | |- | ||
+ | |[[埼玉県]] | ||
+ | |[[宮代町]] | ||
+ | |- | ||
+ | |[[千葉県]] | ||
+ | |[[成田市]] [[印西市]] | ||
+ | |} | ||
+ | 宮城県栗原市で最大震度7を観測し、激しい揺れは2分間続いた<ref name="M9.0">{{cite web | ||
+ | |language = | ||
+ | |url = http://www.jma.go.jp/jp/quake/20110311150154391-111446.html | ||
+ | |title = 地震情報(各地の震度に関する情報・15時01分発表)平成23年3月11日14時46分頃地震がありました。マグニチュード7.9 | ||
+ | |publisher = 気象庁 | ||
+ | |date = 2011-03-11 | ||
+ | |accessdate = 2011-03-17 | ||
+ | }}</ref><ref>{{Cite news | ||
+ | |title = 東北を中心に震度7の地震 宮城県で4・2メートルの津波 建物も流される | ||
+ | |url = http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/110311/dst11031114530002-n1.htm | ||
+ | |newspaper = MSN産経ニュース | ||
+ | |dat e= 2011-03-11 | ||
+ | |accessdate = 2011年3月11日 | ||
+ | }}</ref><ref>{{Cite news | ||
+ | |title = 宮城県栗原市で2933ガル=強い揺れ2分強続く-気象庁 | ||
+ | |url = http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2011031101193 | ||
+ | |newspaper = 時事ドットコム | ||
+ | |date = 2011-03-11 | ||
+ | |accessdate = 2011年3月12日 | ||
+ | }}</ref>。震度7を観測したのは、[[2004年]]の[[新潟県中越地震]]以来7年ぶり、観測史上3回目<ref name="hochi"/>。[[仙台市|仙台]]では震度6強を観測した<ref name="M9.0"/><ref group="注">仙台管区気象台(河岸段丘)の震度:6弱、最大加速度(ガル):南北成分410、東西成分312、上下成分144、ベクトル合成535。K-NET仙台(沖積層)の震度:6強、最大加速度(ガル):南北成分1517、東西成分982、上下成分290、ベクトル合成1830。</ref>。このほかにも宮城県、福島県、茨城県、栃木県の一部で震度6強を観測するなど、震源域が広かったことから強震が広範囲にわたった。また、気象庁の震度推計分布図<ref>[http://www.data.jma.go.jp/svd/eew/data/suikei/201103111446_288/201103111446_288_206.html 気象庁 推計震度分布図]</ref>によると、福島県いわき市で局地的に震度7相当の揺れがあったほか、[[防災科学技術研究所]]の[[強震観測網]]<ref name="K-net">{{cite web | ||
+ | |language = | ||
+ | |url = http://www.kyoshin.bosai.go.jp/kyoshin/topics/TohokuTaiheiyo_20110311/nied_kyoshin2j.pdf | ||
+ | |title = 平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震による強震動の概要(暫定版) | ||
+ | |publisher = 独立行政法人防災科学技術研究所 | ||
+ | |date = 2011-03-11 | ||
+ | |accessdate = 2011-04-03 | ||
+ | }}</ref>によると、栃木県芳賀町にある観測点で震度7相当の揺れ(計測震度6.51<ref name="ejhds" />)を観測していたことも分かっている<ref>[http://dx.doi.org/10.5610/jaee.12.4_143 2011 年東北地方太平洋沖地震の余震観測と微動アレイ観測によるKiK-net 芳賀観測点周辺での地盤震動特性の評価] 日本地震工学会論文集 Vol.12 (2012) No.4 特集号「2011年東日本大震災」その1 p.4_143-4_159</ref>。ただし前者は震度計による観測ではないため、後者は気象庁の震度発表対象の震度計ではないため、いずれも観測点の震度には反映されていない。 | ||
+ | |||
+ | このほかに東北・関東の一部では震度5強と震度5弱、北海道・東北・関東・東海・甲信越では震度4、北海道・東北・関東・東海・甲信越・近畿では震度3を観測した<ref name="M9.0" />。遠く[[鹿児島市]]でも震度1を観測しており、震源から1300km以上離れていることから、[[地震波]]はS波だけでも5分以上かけて到達している。[[東京大学地震研究所]]の解析によると、本震の揺れは東日本全体で約6分間続いた<ref>{{Cite news | ||
+ | |title = 震災の揺れは6分間 キラーパルス少なく 東大地震研 | ||
+ | |url = http://www.asahi.com/science/update/0317/TKY201103170129.html | ||
+ | |newspaper = 朝日新聞 | ||
+ | |date = 2011-03-17 | ||
+ | |accessdate = 2011年3月18日 | ||
+ | }}</ref>。 | ||
+ | 日本で体に感じる揺れがなかったのは[[中国地方]]、[[四国]]地方、[[九州]]地方のそれぞれ一部と[[南西諸島]]のみ。長野市松代町の[[気象庁精密地震観測室]]は、地震発生から2時間半おきに、この地震によると見られる5回の[[表面波]]を確認。地震波は時速14000km(大気中の[[マッハ数|マッハ]]11相当)で地球上を5周したと見られる<ref>{{Cite news | ||
+ | |title = 東日本大震災の地震波、地球を5周 気象庁観測 | ||
+ | |url = http://www.asahi.com/science/update/0323/TKY201103230178.html | ||
+ | |newspaper = 朝日新聞 | ||
+ | |date = 2011-3-24 | ||
+ | }}</ref>。 | ||
+ | |||
+ | == メカニズム == | ||
+ | {{main|東北地方太平洋沖地震及び津波のメカニズム}} | ||
+ | |||
+ | === 規模 === | ||
+ | [[File:2011 Tohoku earthquake mechanism main.png|300px|thumb|日本付近のプレートの分布および、本震震源域・余震域の分布とメカニズム]] | ||
+ | |||
+ | ==== 日本観測史上最大の規模==== | ||
+ | 気象庁は当初マグニチュードを、気象庁マグニチュードで7.9と速報値を発表したが<ref name="M9.0"/>、後に8.4という暫定値を発表した<ref name="気象庁第1報">{{cite press release | ||
+ | |publisher = 気象庁 | ||
+ | |url = http://www.jma.go.jp/jma/press/1103/11b/201103111600.html | ||
+ | |title = 「平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震」について(第1報) | ||
+ | |language =日本語 | ||
+ | |date=2011-03-11 | ||
+ | |accessdate=2011-03-11 | ||
+ | }}</ref>。その後、新たに<ref>[http://www.jma.go.jp/jma/press/1103/25b/kaisetsu201103251730.pdf 「平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震」について(第28報)]</ref>モーメントマグニチュードで8.8と発表<ref name="気象庁第5報">{{cite press release | ||
+ | |publisher = 気象庁 | ||
+ | |url = http://www.jma.go.jp/jma/press/1103/11g/201103112200.html | ||
+ | |title = 「平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震」について(第5報) | ||
+ | |language = 日本語 | ||
+ | |date = 2011-03-11 | ||
+ | |accessdate = 2011-03-11 | ||
+ | }}</ref>し、1900年以降で最大だった1933年[[昭和三陸地震]]のMw8.4<ref>気象庁 [http://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/faq/faq7.html 地震について] 「日本で一番大きな地震は何ですか?」参照、2011年6月12日閲覧。</ref>や1963年[[択捉島沖地震]]のMw8.5を上回って、日本の近代地震観測史上最大となった。さらに、3月13日には外国の安定した遠地波形データも用いて9.0と発表した<ref name="気象庁第15報"/><ref group="注">M9.0という規模は連続して発生した3つの断層破壊(地震)を総合評価して計算されたものであるが、気象庁は最初に三陸沖で発生した断層破壊を単体でみてもM8.8という巨大地震(2つ目の断層破壊が発生したのは最初の断層破壊の約2分30秒後であるため、最初のものについては単独評価が可能)であるとしている。</ref><ref group="注">こうした速報値、暫定値で数値が変わることを報道などで「修正」や「訂正」という表現がなされるが、速報性を重視して多少精度を犠牲にしたもので暫定的な値であることは織り込み済みのものである。通常のルーチン作業を経て決定された値で、何らかのミスなどで値が変更になったわけではないので誤解を招く表現である。[http://www.data.jma.go.jp/svd/eqev/data/gaikyo/monthly/200307/monthly200307.pdf 震源要素(速報値、暫定値、確定値)の違いについて] - 平成15年7月 地震・火山月報(防災編)</ref>。通常、日本の地震で使用されるマグニチュードは「[[マグニチュード#気象庁マグニチュード Mj(2003年9月25日以降)|気象庁マグニチュード (Mj)]]」と呼ばれるもので、発表されたM7.9、8.4は気象庁マグニチュードの値であったが、M8.8、9.0は「[[マグニチュード#モーメントマグニチュード Mw|モーメントマグニチュード (Mw)]]」の値であった<ref name="気象庁第15報"/><ref group="注">巨大地震ではマグニチュードの増加に比例して長周期の地震動は大きくなるが、短周期の地震動は増加率が小さいため、地震波の大きさを重視した一般的なマグニチュードでは「頭打ち」が起こる。この影響を取り除くため、断層の動いた範囲(断層面積)・量(変位量)・ずれやすさ([[剛性率]])の積で表される地震モーメントM{{sub|O}}を重視したのがモーメントマグニチュードである。地震動による被害のみを見る場合はMjの方が実態に近い一方、モーメントマグニチュードは津波の高さとの相関性が高い。[[明治三陸地震]]のような短周期成分が少ない、いわゆる[[津波地震]]の場合、Mjでは地震の規模を過小評価してしまう。({{PDF|[http://www.zisin.jp/pdf/nf-vol55.pdf 『地震の大きさをはかる -さまざまなマグニチュード-』]}} 『なゐふる』55号 p.4、日本地震学会、2006年5月 参照)</ref>。M9.0は、[[関東地震|大正関東地震]]([[1923年]])の約45倍、[[兵庫県南部地震]]([[1995年]])の約1450倍のエネルギーに当たる<ref>[http://www.asahi.com/national/update/0313/TKY201103130145.html 東日本大震災はM9.0 M7級の余震、発生確率70%]</ref>。 | ||
+ | |||
+ | 気象庁は、地震発生3分後にMj7.9と推定した時点ではマグニチュードの「頭打ち」が起こっているとは認識できず、想定されていた[[宮城県沖地震]]が発生したものと判断した<ref name="気象庁0808">{{cite web | ||
+ | |url = http://www.jma.go.jp/jma/press/1108/08a/chukantorimatome.pdf | ||
+ | |title = 東北地方太平洋沖地震による津波被害を踏まえた津波警報の改善の方向性について(中間とりまとめ) | ||
+ | |publisher = 気象庁 | ||
+ | |format = PDF | ||
+ | |date = 2011-08-08 | ||
+ | |accessdate = 2011-08-11 | ||
+ | }}</ref>。しかし実際には地震があまりに巨大だったため、地震発生から約1時間14分後(16時)に発表された暫定値の気象庁マグニチュード8.4でも正確な規模の把握はできなかった。通常15分程度で算出できるモーメントマグニチュードも、国内の[[地震計#広帯域地震計|広帯域地震計]]がほぼ振り切れたため対応できず、国外の地震波形データを用いMw8.8と算出したのは約54分後(15時40分)と時間が掛かった(報道発表は精査後の17時30分、地震発生から約2時間44分後)<ref>[http://www.data.jma.go.jp/svd/eqev/data/study-panel/tsunami_kaizen_benkyokai/benkyokai1/siryou1.pdf 津波警報改善への課題について] 気象庁</ref><ref name="asahi0523">{{cite news | ||
+ | |url = http://www.asahi.com/special/10005/TKY201105230464.html | ||
+ | |title = 巨大地震判定、米に2時間遅れ 気象庁は針振り切れ… | ||
+ | |publisher = 朝日新聞 | ||
+ | |date = 2011-05-24 | ||
+ | |accessdate = 2011-06-23 | ||
+ | }}</ref>。しかし、長野県長野市松代にある[[気象庁精密地震観測室]]では、[[アメリカ地質調査所]] (USGS) が運営するライブ・インターネット地震サーバー (LISS:''Live Internet Seismic Server'') などのデータを解析<ref>[http://www.grn.janis.or.jp/~matu-jma/ LISSデータ等を用いた監視システム] 気象庁精密地震観測室</ref>し地震から約10分後にはM9を算出していたがこの計算結果は警報に使用されなかった<ref>[http://www.asahi.com/special/10005/TKY201109090676.html 震災10分後にM9算出 長野の観測室、警報に使われず] asahi.com 記事:2011年9月10日 閲覧:2012年10月1日</ref>。また、アメリカ地質調査所は当初、モーメントマグニチュードを8.8と発表<ref>[http://www.asahi.com/business/news/reuters/RTR201103110077.html 日本の地震、マグニチュード8.8=米地質調査所]</ref>、地震発生から約34分後に8.9、約6時間後に9.0と速報値、同15日に確定値を発表し<ref name="USGS1"/><ref name="asahi0523"/>、1900年以降に世界で発生した地震の中で4番目の規模と発表した<ref name="USGS2"/>。 | ||
+ | |||
+ | ==== 海溝型地震・広い震源域 ==== | ||
+ | 気象庁や東京大学地震研究所などによると、この地震は、断層面が水平に対して10度と傾きが浅く、西北西-東南東方向(ほぼ東西方向に近い)に圧縮される、低角逆断層([[衝上断層]])型のずれであった。水平方向の変位量が大きく、東北地方の太平洋沖地域に特徴的なタイプの[[地震#プレート間地震|海溝型地震]]である<ref name="気象庁第15報"/><ref name="東大地震研"/>。断層の破壊が始まった[[震源]]地は[[三陸|三陸沖]]だが、最終的に断層が破壊した[[震源|震源域]]は[[日本海溝]]下のプレート境界面に沿って南北に長く、'''[[岩手県]]沖から[[茨城県]]沖まで'''の南北約500km、東西約200km、深さ約5km - 40kmの範囲で、合計約10万km²の広範囲に及ぶ<ref name="気象庁第15報"/><ref name="震源断層モデルの概念図">[http://www.gsi.go.jp/common/000060175.pdf 平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震 震源断層モデルの概念図](国土地理院)</ref>。一方、[[スマトラ島沖地震 (2004年)]]では破壊域が長さ1000kmを越えたが、東北地方太平洋沖地震ではわずか500kmの破壊域でM9を発生させていて、これは宮城県沖の震央付近での変位量が極めて大きかったことを意味している<ref>[http://dx.doi.org/10.3811/jjmf.26.4 遠田晋次:地震の長期予測と東北地方太平洋沖地震] 混相流 Vol.26 (2012) No.1 p.4-10</ref>。 | ||
+ | |||
+ | === 連動型地震 === | ||
+ | 気象庁は地震発生後、この地震は単一ではなく、3つの地震が連動したもの([[連動型地震]])と解析した<ref name="気象庁第15報"/><ref name="jisinyochi0311"/>。会見で同庁地震予知情報課の課長は、「5分前後かけて連続して発生するという、複雑な起こり方をしている。極めてまれで、気象庁の観測で初めての経験」と述べた<ref name="sankei9.045">{{Cite news | ||
+ | |title = 地震規模相次ぐ修正 M9.0は速報値の45倍 | ||
+ | |url = http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/110313/dst11031317290073-n1.htm | ||
+ | |newspaper = 産経新聞 | ||
+ | |date = 2011-03-13 | ||
+ | |accessdate = 2011年3月13日 | ||
+ | }}</ref>。[[文部科学省]]の[[地震調査研究推進本部|地震調査委員会]]は13日に臨時会を開き、破壊断層は南北に400km、東西に200kmの広範囲で、少なくとも4つの震源領域で3つの地震が連動発生したと述べた<ref name="jiji0313">{{Cite news | ||
+ | |title = 4領域で、3地震が連動発生=M9、阪神・淡路の360倍-東日本大震災 | ||
+ | |url = http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2011031300272 | ||
+ | |newspaper = 時事通信 | ||
+ | |date = 2011-03-13 | ||
+ | |accessdate = 2011年3月13日 | ||
+ | }}</ref>。東京大学地震研究所は、「大きな断層破壊が、1.宮城県沖、2.宮城県のさらに沖合、3.茨城県北部沖の陸に近い部分、の順に起こった」と説明している<ref name="東大地震研破壊過程">{{cite web | ||
+ | |publisher = 東京大学地震研究所 | ||
+ | |url = http://outreach.eri.u-tokyo.ac.jp/eqvolc/201103_tohoku/#gmsource | ||
+ | |title = 東北地方太平洋沖地震 地震動分布から直接見る震源断層の破壊過程 | ||
+ | |language =日本語 | ||
+ | |date = 2011-03-28 | ||
+ | |accessdate = 2011-04-15 | ||
+ | }}</ref>。このうち第2の断層破壊で非常に大きな[[地殻変動]]が起きており、最大滑り量は30m超あるいは60mと推定されている<ref>{{cite web | ||
+ | |publisher = 日本地震学会 | ||
+ | |url = http://www.zisin.jp/modules/pico/index.php?content_id=2367 | ||
+ | |title = 研究報告:2011年東北地方太平洋沖地震 第3回 震源過程・海の地殻変動・陸の地殻変動 | ||
+ | |date = 2011-11-10 | ||
+ | |accessdate = 2012-06-18 | ||
+ | }}</ref><ref>九州大学准教授の辻健らの研究グループは陸側のプレートで断層が生じ、プレートが伸びて海底が大きく動いたことが原因だとしている(「複数の断層、津波を増幅」日本経済新聞2013年2月23日朝刊42面)([http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0012821X13000046/ Extension of continental crust by anelastic deformation during the 2011 Tohoku-oki earthquake: The role of extensional faulting in the generation of a great tsunami]Earth and Planetary Science Letters,Volume 364, 15 February 2013, Pages 44–58)</ref>。この最大滑り量は[[スマトラ島沖地震 (2004年)|2004年スマトラ島沖地震]]など世界の他の超巨大地震よりも大きく世界最大のものである。震源域の中で強い地震波を放出した点(破壊が大きいところ、セントロイド)は大きく震源の東側付近と茨城県沖の2つに分かれており<ref>[http://www.data.jma.go.jp/svd/eqev/data/sourceprocess/event/20110311far.pdf 平成23年(2011 年)東北地方太平洋沖地震- 遠地実体波による震源過程解析(暫定)-] 気象庁、2012年1月7日閲覧。</ref><ref>[http://outreach.eri.u-tokyo.ac.jp/eqvolc/201103_tohoku/#Inversion 2011年3月 東北地方太平洋沖地震>震源過程インバージョン>地震動分布から直接見る震源断層の破壊過程・石巻と陸前高田での地動加速度と地動変位・震源過程インバージョン] Poiata・三宅・纐纈, 東京大学地震研究所</ref><ref name="震源断層モデルの概念図"></ref>、連動型地震特有の長く複雑な破壊過程を経た。震源域が広いため広範囲で揺れを観測し、プレート境界深部が破壊したため震源域近部では強震となった。また、プレート境界浅部が2度にわたって破壊したことで2つのピークを持つ大津波を生じた。 | ||
+ | |||
+ | 地震波の解析により、プレート境界の海溝側の浅い部分と陸地側の深い部分で往復する形で破壊が進行したことが判明し、2011年5月20日付けの[[サイエンス]]に発表された<ref name="Ide">[http://www.sciencemag.org/content/early/2011/05/18/science.1207020 ''Science'' 19 May 2011] Satoshi Ide, Annemarie Baltay, Gregory C. Beroza.(19 May 2011): Shallow Dynamic Overshoot and Energetic Deep Rupture in the 2011 Mw 9.0 Tohoku-Oki Earthquake ''Science (Express)''.</ref>。海溝側の浅い部分の破壊は[[津波地震]]の特徴でもあり、これにより津波が巨大化した可能性も指摘されている<ref name="sankei110911">[http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/110911/dst11091109050001-n1.htm 東日本大震災6カ月 巨大地震の謎は解明できたのか](産経新聞/MSN産経ニュース 2011年9月11日)</ref>。 | ||
+ | #発生から3秒間は浅い(約25km)海溝側で、3月9日に発生したM 7.3の前震よりも小さい、緩やかな初期破壊。 | ||
+ | #40秒かけて深部(約40kmまで)に破壊が伝播し、短周期の地震波により陸上の激しい揺れをもたらす。 | ||
+ | #続いて発生60-75秒後にかけて浅い海溝付近でダイナミックオーバーシュート(dynamic overshoot、動的過剰滑り)により長周期の地震波と大規模な津波を発生。 | ||
+ | #その後、再び深部へ破壊が伝播し、発生90秒後にかけて短周期の地震波により再度陸上の激しい揺れをもたらす。大きな破壊は100秒後までに止む。 | ||
+ | この蓄積された歪を超える滑りであるダイナミックオーバーシュートによる強大な津波の発生メカニズムが明らかとなり、1896年の明治三陸地震津波は海溝側の浅部の滑りにより強大な津波が発生したものと理解される<ref name="Ide2">井出哲(2011):[http://www.s.u-tokyo.ac.jp/ja/press/2011/12.html 東北沖地震の二面性 -浅部のすべり過ぎと深部の高周波震動-] 東京大学 大学院理学系研究科</ref>。 | ||
+ | |||
+ | また、[[海底活断層]]や約100万年前に日本海溝から北米プレート下に沈み込んだ[[海山]]が関与している可能性も指摘されている<ref>[http://www.saga-s.co.jp/news/global/corenews.0.2051558.article.html 海底活断層が起こした可能性も 東日本大震災](佐賀新聞 2011年09月23日)</ref><ref>[http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/event/disaster/531018/ 壊れた「留め金」…海底の山の破壊が大震災誘発か](産経新聞 2011年10月8日)</ref>。この地域のプレート境界は元来摩擦が少なく固着しにくいとされ、M9規模の超巨大地震が発生した原因はこれまで不明となっていたが、この海山が留め金として働いていた可能性があるという<ref group="注">海山と推定される地下の構造が宮城県沖の海底約150km下に存在することについては、本地震の6年前にすでに報告されている。また、[[1994年]]に発生した[[インドネシア]]の地震は海山が原因とされており、本地震とも[[地殻変動]]が類似している。</ref>。 | ||
+ | |||
+ | 小山 (2013) らは、本地震が従来連動型地震の起こりにくいとされてきた比較的高角の沈み込み帯である日本海溝で発生したこと、三陸沖中部から茨城県沖の陸側の震源域の連動に加えて海溝寄りまで震源域となり2重の地震セグメント帯 (Double Segmentation) であったことなどから、Single Segmentationと推定される1707年[[宝永地震]]や1960年チリ地震などとは異なる発生過程をたどったと考えた。従来低角でチリ型の沈み込み帯に分類されていた南海トラフや[[ペルー・チリ海溝|チリ海溝]]南部は地震前には明確な[[地震空白域]]を形成しているが、本地震の発生した日本海溝では明確な空白域は見られない、あるいはDouble Segmentationと推定される本地震や1964年[[アラスカ地震]]などでは狭い範囲に超大すべり域が存在するなどの特徴が見られ、超巨大地震にも多様性があることが示された<ref name="Koyama2013">小山順二, 都筑基博, 蓬田清, 吉澤和範(2013): [http://hdl.handle.net/2115/52306 2011年東北沖超巨大地震が明らかにした超巨大地震の多様性]], 北海道大学地球物理学研究報告, '''76''', 129-146.</ref>。 | ||
+ | |||
+ | === 地震波・揺れの特徴 === | ||
+ | 本地震の本震による揺れの特徴として、広範囲で強い揺れに見舞われたこと、揺れの継続時間が長かったこと、長周期地震動が広範囲で長時間発生したこと、短周期の揺れが主体で家屋被害は比較的起きにくかったことが挙げられる。 | ||
+ | |||
+ | 本震では、地震動の発生源である断層の破壊が複雑な過程で約100秒間も続いた<ref name="Ide" />。この中には、1.宮城県沖、2.宮城県のさらに沖合、3.茨城県北部近海での計3回の大きな断層破壊が含まれており、各地の地震波形にそれが表れている。地震波は秒速3-7kmという限りある速度で伝播するため、異なる場所で発生した地震波が時間差で到達し、破壊継続時間以上の長さで強震が継続した<ref>[http://outreach.eri.u-tokyo.ac.jp/eqvolc/201103_tohoku/#gmsource 地震動分布から直接見る震源断層の破壊過程] 野口・古村、東京大学地震研究所、2011年12月25日閲覧。</ref>。 | ||
+ | |||
+ | 青森県から神奈川県にかけての各地で、震度4以上の揺れの継続時間が軒並み2分(120秒)を超え、特に崩壊範囲の中間に位置する福島県[[いわき市]]で3分10秒(190秒)に達するなどした<ref>[http://www.jma.go.jp/jma/press/1103/25a/201103251030.html 平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震時に震度計で観測した各地の揺れの状況について] 平成23年(2011年)3月25日、気象庁</ref>。また、地震動を感じ始めてから最大の震動を記録するまでの時間が長く、宮城県仙台市では約30秒後、茨城県日立市では約70秒経過後であった<ref>[http://www.kyoshin.bosai.go.jp/kyoshin/topics/html20110311144626/main_20110311144626.html 2011年03月11日 東北地方太平洋沖地震による強震動] 防災科学技術研究所</ref>。仙台市や塩竈市でも3分程度揺れが継続し、数十秒間だった1995年[[兵庫県南部地震]]や1978年[[宮城県沖地震 (1978年)|宮城県沖地震]]と比べて非常に長かった<ref name="shimizurp1">[http://www.shimz.co.jp/theme/earthquake/pdf/reportAll.pdf 東北地方太平洋沖地震 報告書] 清水建設技術研究所、2011年4月18日</ref>。 | ||
+ | |||
+ | また日本全国で長周期主体の地震動を観測した。変位応答スペクトル波形では周期7秒付近に変位40 - 50cmのピークがあり、7秒前後の[[固有振動]]周期をもつ建物の揺れが大きかったと分析されている。また高層建築物の高層階で片振幅最大30 - 60cm程度の変位が観測された<ref name="建築研究所1105">[http://www.kenken.go.jp/japanese/contents/topics/20110311/pdf/quickreport/0311quickreport_40.pdf 平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)調査研究(速報) 第4章 地震および地震動、津波] 国土技術政策総合研究所、建築研究所、2011年5月</ref><ref>[http://www.bousai.go.jp/jishin/chubou/higashinihon/8/6.pdf 資料6(東北地方太平洋沖地震での長周期地震動の影響および室内被害についてのメモ)] 翠川三郎、中央防災会議 東北地方太平洋沖地震を教訓とした地震・津波対策に関する専門調査会(第8回)、2011年8月25日</ref>。それでも、M9という地震の規模の割には長周期の揺れは小さかった<ref name="asahi03170129"/>。 | ||
+ | |||
+ | 岩手・宮城・福島・茨城・栃木の各県で観測された本震の地震波の波形を速度応答スペクトル解析した結果によると、[[地震動#極短周期地震動|極短周期地震動・短周期地震動]]に当たる周期0.1 - 1秒の範囲で最も大きな揺れが見られる地点が多く、それより長い周期では相対的に揺れは小さかった<ref name="建築研究所1105"/>。宮城県栗原市築館(震度7)、塩竈市、茨城県日立市では、「キラーパルス」(一般的な木造住宅への破壊力が最も生じやすい揺れの周期)に当たる周期1 - 2秒では100[[メートル毎秒#センチメートル毎秒|カイン]] (cm/s) であり、木造家屋の倒壊被害が目立った1995年の兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災)における200 - 300カインに比べて小さく、家屋被害は起きにくい揺れだったと考えられる<ref>[http://outreach.eri.u-tokyo.ac.jp/eqvolc/201103_tohoku/#velresp 速度波形と応答スペクトル] 古村による、東京大学地震研究所、2011年4月29日閲覧</ref><ref name="asahi03170129">[http://www.asahi.com/science/update/0317/TKY201103170129.html 震災の揺れは6分間 キラーパルス少なく 東大地震研] 川原千夏子、朝日新聞 2011年3月17日。</ref>。震度7を観測した栗原市においても全半壊した建物は47棟で、死者は0人だった<ref>[http://www.kahoku.co.jp/spe/spe_sys1071/20110609_01.htm 焦点/最大震度・栗原/震度7、犠牲者ゼロ] 河北新報ニュース 2011年6月9日、2011年6月30日閲覧</ref>。一方で家屋被害は宮城県と福島県を中心に、茨城県にまで及んだ。震源域の中間に位置する福島県では、震源に近い[[浜通り]]だけではなく、内陸の[[中通り]]地方でも土砂の崩壊や家屋損壊が目立ち、[[矢吹町]](震度6弱)では30%の家屋が全半壊し、[[郡山市]](震度6弱)でも2万棟の家屋が全半壊するなど、他県の内陸市町村に比べて特に被害が集中した。 | ||
+ | |||
+ | == 過去の地震・想定地震との比較 == | ||
+ | {{main|東北地方太平洋沖地震及び津波のメカニズム}} | ||
+ | |||
+ | === 地震調査委員会の想定 === | ||
+ | この地震の震源となった三陸沖は、[[フォッサマグナ]]より東側の日本([[東北日本]]孤)を乗せている[[北アメリカプレート]]([[オホーツクプレート]])に対して、[[太平洋]]の広範囲を乗せている[[太平洋プレート]]が年間約8cmの速さで東南東から押し寄せ、[[青森県]]から[[千葉県]]にかけての沖合にある[[日本海溝]]を境にして[[東北地方]]・[[関東地方]]の下に沈み込んでいる<ref>[http://www.hp1039.jishin.go.jp/eqchr/4.htm 4 東北地方の地震活動の特徴] 地震調査研究推進本部、日本の地震活動</ref>。太平洋プレートが沈み込んでいるこの付近には、M7を超えるような海溝型地震の震源域が多数存在しており、本地震発生前の段階で地震調査委員会ではこの地域を以下の8つの領域に区切ってその発生間隔や確率を評価していた<ref>[http://www.jishin.go.jp/main/chousa/09mar_sanriku/f05.htm 三陸沖から房総沖にかけての主な地震と主な震源域] 地震調査委員会、1999年。</ref><ref>[http://www.jishin.go.jp/main/chousa/11mar_sanriku-oki/p09.htm 三陸沖から房総沖にかけての地震活動の長期評価] 地震調査委員会、2009年。</ref>。 | ||
+ | [[File:SeismicAreas JapanTrenchEarthquakes.png|350px|thumb|left|三陸沖〜房総沖の海溝型地震想定震源域]] | ||
+ | {|class="wikitable" style="font-size:small;margin-right:0px" | ||
+ | |-style="line-height:1.25em" | ||
+ | !colspan="4" style="background-color:#cccccc"|日本海溝の海溝型地震の発生評価<ref>「[http://www.jishin.go.jp/main/yosokuchizu/tohoku/tohoku.htm 東北地方の地震活動の特徴]」「[http://www.jishin.go.jp/main/yosokuchizu/kanto/kanto.htm 関東地方の地震活動の特徴]」地震調査委員会、2011年4月閲覧</ref><br>(2011年1月1日、地震調査委員会) | ||
+ | !rowspan="2" style="width:10em; background-color:#cccccc"|東北地方太平洋沖地震による破壊の程度<br>{{Nowrap|(4月11日発表)}}<ref>[http://www.jishin.go.jp/main/chousa/11apr_sanriku-oki3/index.htm 平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震の評価] 地震調査委員会、2011年4月11日。</ref> | ||
+ | !colspan="2" style="background-color:#cccccc"|発生評価 <ref name="jishingo11nov">「[http://www.jishin.go.jp/main/chousa/11nov_sanriku/index.htm 三陸沖から房総沖にかけての地震活動の長期評価(第二版)について]」地震調査委員会、2011年11月25日付(2012年2月9日変更)、2013年3月1日閲覧</ref><br>{{Nowrap|(2012年1月1日)}} | ||
+ | |-style="line-height:1.25em" | ||
+ | !colspan="2" style="background-color:#cccccc"|領域<br>(上掲の想定震源域画像参照) | ||
+ | !style="background-color:#cccccc"|M | ||
+ | !style="background-color:#cccccc; white-space:nowrap"|30年以内の<br>発生確率 | ||
+ | !style="background-color:#cccccc"|M | ||
+ | !style="background-color:#cccccc; white-space:nowrap"|30年以内の<br>発生確率 | ||
+ | |- | ||
+ | |rowspan="2" style="white-space:nowrap; background-color:#aaffff"|[[三陸沖北部地震|三陸沖北部]]|| style="background-color:#aaffff"|固有地震 | ||
+ | |M8.0前後||0.5 - 10% | ||
+ | |rowspan="2"| - | ||
+ | |M8.0前後、<br>Mt8.2前後||0.7 - 10% | ||
+ | |- | ||
+ | |style="white-space:nowrap; background-color:#aaffff"|固有地震以外||M7.1 - 7.6||90%程度||M7.1 - 7.6||90%程度 | ||
+ | |- | ||
+ | |colspan="2" style="background-color:#aaffff"|[[三陸沖地震|三陸沖中部]] | ||
+ | | -|| - | ||
+ | |style="background-color:#ffcccc"|震源域にも含まれる | ||
+ | | -|| - | ||
+ | |- | ||
+ | |rowspan="2" style="background-color:#aaffff;border-bottom:none;line-height:1.25em"| <br>[[宮城県沖地震|宮城県沖]]||style="background-color:#aaffff"|固有地震 | ||
+ | |rowspan="2"|M7.4前後||rowspan="2"|99% | ||
+ | |rowspan="3" style="background-color:#ffcccc"|震源域にも含まれる | ||
+ | |M7.4前後||不明 | ||
+ | |- | ||
+ | |style="background-color:#aaffff"|固有地震以外 | ||
+ | |M7.0 - 7.3||60%程度 | ||
+ | |- | ||
+ | |style="background-color:#aaffff;border-top: none;line-height:1em"| | ||
+ | |rowspan="2" style="line-height:1.4em;width:10em;background-color:#aaffff"|(宮城県沖と三陸沖南部海溝寄りの連動) | ||
+ | |rowspan="2"|M8.0前後||rowspan="2"| - | ||
+ | |colspan="2" rowspan="2"| - | ||
+ | |- | ||
+ | |style="background-color:#aaffff;border-bottom:hidden;line-height:1em"| | ||
+ | |rowspan="3" style="line-height:1.4em;background-color:#ff9999"|すべり量が大きい<br>※本震の震源域 | ||
+ | |- | ||
+ | |rowspan="2" style="background-color:#aaffff;padding-top:5px;vertical-align:top;line-height:1.4em"|[[三陸沖地震|三陸沖南部<br>海溝寄り]] | ||
+ | |style="background-color:#aaffff"|固有地震 | ||
+ | |rowspan="2"|M7.7前後||rowspan="2"|80 - 90% | ||
+ | |M7.9程度||ほぼ0% | ||
+ | |- | ||
+ | |style="background-color:#aaffff"|固有地震以外||M7.2 - 7.6||50%程度 | ||
+ | |- | ||
+ | |colspan="2" style="background-color:#aaffff"|[[福島県沖地震|福島県沖]] | ||
+ | |style="line-height:1.4em;white-space:nowrap"|M7.4前後が<br>複数回連続||7%程度以下 | ||
+ | |style="white-space:nowrap;background-color:#ffcccc"|震源域にも含まれる | ||
+ | |M7.4前後が<br>複数回連続||10%程度 | ||
+ | |- | ||
+ | |rowspan="2" style="background-color:#aaffff"|[[茨城県沖地震|茨城県沖]] | ||
+ | |style="background-color:#aaffff"|固有地震 | ||
+ | |rowspan="2"|M6.7 - 7.2||rowspan="2" style="white-space:nowrap"|90%程度以上 | ||
+ | |rowspan="2" style="line-height:1.4em;background-color:#ffcccc"|震源域にも含まれる<br>※M7.6の最大余震の震源域 | ||
+ | |M6.9 - 7.6||70%程度 | ||
+ | |- | ||
+ | |style="background-color:#aaffff"|固有地震以外 | ||
+ | |M6.7 - 7.2||90%程度か<br>それ以上 | ||
+ | |- | ||
+ | |colspan="2" style="background-color:#aaffff"|[[房総沖地震|房総沖]]<ref group="注">「房総沖」については、 | ||
+ | *[[相模トラフ]]全体を震源域とする北米プレートとフィリピン海プレートの境界での地震は「[[元禄大地震|元禄型]][[関東地震]]」として別に評価。 | ||
+ | * 南関東陸域を震源域とする北米プレートとフィリピン海プレート、あるいはフィリピン海プレートと太平洋プレートの境界での地震は「[[南関東直下地震]]」として別に評価。 | ||
+ | * 房総半島南東沖を震源域とするフィリピン海プレートと太平洋プレートの境界での地震は、記録に乏しく推定不可能なため評価対象外。</ref> | ||
+ | | -|| - | ||
+ | | - | ||
+ | | -|| - | ||
+ | |- | ||
+ | |rowspan="2" style="line-height:1.25em;width:5.5em;background-color:#aaffff"|三陸沖北部から房総沖の海溝寄り||style="background-color:#aaffff"|[[明治三陸地震|津波地震]] | ||
+ | |M8.2前後||20%程度 | ||
+ | |rowspan="2" style="background-color:#ff9999"|一部すべり量が大きい | ||
+ | |Mt8.6 - 9.0||30%程度 | ||
+ | |- | ||
+ | |style="background-color:#aaffff"|[[昭和三陸地震|正断層型]] | ||
+ | |M8.2前後||4 - 7% | ||
+ | |M8.2前後、<br>Mt8.3前後||4 - 7% | ||
+ | |- | ||
+ | |colspan="2" style="background-color:#aaffff"|東北地方太平洋沖型の地震 | ||
+ | |colspan="2"| - | ||
+ | |style="white-space:nowrap; background-color:#ffcccc"| - | ||
+ | |Mw8.4 - 9.0||ほぼ0% | ||
+ | |} | ||
+ | このうち「[[宮城県沖地震]]」の領域は30年以内にM7.4前後の地震が99%で発生するという評価がなされていた上、[[宮城県沖地震#2005年宮城県南部地震|平成17年の地震]]によってその[[アスペリティ]]の一部(3つのうち1つ)が破壊された、つまり宮城県沖地震は平成17年(2005年)に部分的に再来したと考えられ、残りの2つのアスペリティは近いうちに破壊されて地震を起こすと考えられていた<ref name="nf-vol53">[http://zisin.jah.jp/pdf/nf-vol53.pdf 2005年8月16日の地震は想定「宮城県沖地震」か?] 『なゐふる』第53号、2005年1月、日本地震学会。</ref><ref group="注">宮城県沖地震は[[1930年代]]のように数年かけて3つのアスペリティが順に破壊し数回に分けて地震を起こすタイプと、[[昭和]]53年([[1978年]])のように一気にすべて破壊し1回の地震を起こすタイプがあるとされる</ref>。 | ||
+ | |||
+ | 断層の破壊が最初に始まった(震源)「三陸沖南部海溝寄り」やその海溝側にあたる「三陸沖から房総沖の海溝寄り」の中部で20mを超える非常に大きな断層運動が発生したのをはじめ、この地震の南北500km・東西200kmにおよぶ震源域は、「三陸沖中部」、「宮城県沖」、「福島県沖」、「茨城県沖」の計6つの領域に及んでいた。破壊は牡鹿半島沖の震源から南北へ連鎖的に進んでいったが、北米プレートの下に沈み込んだ[[フィリピン海プレート]]の北東端が地殻破壊の南下を食い止め、「房総沖」の北隣の「茨城県沖」で止まった<ref>{{cite news | ||
+ | |url = http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20110324-OYT1T00611.htm | ||
+ | |title = 地殻の破壊、茨城県沖で止まった…その理由は? | ||
+ | |publisher = [[読売新聞社]] | ||
+ | |date = 2011-03-24 | ||
+ | |accessdate = 2011-04-12 | ||
+ | }}</ref>。また、北側では[[三陸はるか沖地震|1994年三陸はるか沖地震]]あるいは[[三陸沖北部地震#1968年|1968年十勝沖地震]](「三陸沖北部」に該当する)の震源域南端付近で止まっている<ref>[http://www.seis.nagoya-u.ac.jp/sanchu/Seismo_Note/2011/NGY36n.html NGY地震学ノート No.36改訂版] 2011年4月3日。</ref>。このような広い震源域を持つM9の巨大地震は、従来想定されていなかった。 | ||
+ | |||
+ | === 想定に入れられなかった過去の巨大地震 === | ||
+ | この地震の震源域は、[[869年]]([[貞観 (日本)|貞観]]11年)に宮城から福島にかけての太平洋沖で発生したM8.4(産業技術総合研究所による)の'''[[貞観地震]]'''の推定震源域と類似しており、地震発生直後よりこの再来である可能性が指摘された<ref>[http://mainichi.jp/select/wadai/news/20110312k0000m040188000c.html 地震:「阪神」の180倍規模…専門家「1千年に1度」] 毎日新聞、2011年3月12日。{{リンク切れ|date=2014-01-28}}</ref><ref name="NGY36">[http://www.seis.nagoya-u.ac.jp/sanchu/Seismo_Note/2011/NGY36.html NGY地震学ノート No.36] 山中佳子、名古屋大学地震火山・防災研究センター</ref>。貞観地震は以前より文献記録によって知られていたものの、2000年代になって津波堆積物の調査によって[[石巻市|石巻]]・[[東松島市|東松島]]で海岸から3km内陸まで遡上、[[仙台市|仙台]]で同2km、[[名取市|名取]]・[[岩沼市|岩沼]]で同4km、[[亘理町|亘理]]・[[山元町|山元]]で同2kmと大規模な津波を伴う巨大地震であったことが明らかになった。堆積物の広域調査から同様の巨大地震は[[紀元前4世紀|紀元前390年頃]]、[[允恭天皇]]年間([[5世紀|430年]]頃)、貞観11年([[869年]])、[[明応]]年間([[1500年]]頃)と過去4回発生しており、再来間隔は450 - 800年程度と推定する報告があった<ref>[http://unit.aist.go.jp/actfault-eq/Tohoku/no16.pdf 平安の人々が見た巨大津波を再現する―西暦869年貞観津波―] [[産業技術総合研究所|産総研]] 活断層・地震研究センターニュース、2010年8月。</ref>。また、[[東北学院大学]]の[[地質調査]]により、約2千年前の[[弥生時代]]にも津波が発生しており、本地震で発生した津波浸水域と同程度の浸水域が[[仙台平野]]では発生していた可能性があることが地震後報道された<ref>[http://www.asahi.com/national/update/0518/TKY201105180126.html 弥生時代にも今回並みの津波 仙台平野、東北学院大調査] - asahi.com(朝日新聞) 2011年5月18日</ref>。これらのことから、東北地方太平洋沖地震発生後に海溝型地震の長期評価見直しを進めた政府の地震調査委員会は[[2011年]][[11月24日]]、津波堆積物の調査結果を反映して、紀元前4-3世紀頃、4-5世紀頃、869年の貞観地震、15世紀頃<ref group="注">1420年の常陸国の津波記録(都司嘉宣 『千年震災』 ダイヤモンド社、2011年 参照)、あるいは1454年の[[享徳地震]]が15世紀の津波堆積物に符合する([http://app.m-cocolog.jp/t/typecast/671446/563362/67874981 保立道久の研究雑記]参照)との見方がある。</ref>、今回の地震、合わせて都合5回、三陸から房総にかけて約600年周期で海溝型地震が発生していると認定し、次回の地震規模は[[マグニチュード|M]]8.3-9.0としている<ref name="jishingo11nov"/><ref>読売新聞2011年11月24日夕刊3版1面・2面・[http://www.yomiuri.co.jp/feature/20110316-866918/news/20111124-OYT1T00681.htm 東日本巨大地震600年周期…千年に一度見直し]</ref>。なお、869年貞観地震は日本海溝深部、1896年明治三陸地震は日本海溝浅部の、お互い隣接する細長い震源領域の地震と考えられており、本地震は「貞観地震と明治三陸地震が同時発生した」と見る研究者もいる<ref name="bosai48-01" />。 | ||
+ | |||
+ | 2011年[[4月13日]]、[[東北大学]]の当地震の緊急報告会<ref name="houkoku-20110413">[http://sites.google.com/site/tohokuunivdcrc/home/event トラストシティ カンファレンス・仙台5Fにて,【東北大学による東日本大震災1ヶ月後緊急報告会】を行いました.] - 東北大学大学院工学研究科附属災害制御研究センター 2011年4月13日</ref>で、[[東北アジア研究センター]]教授の[[平川新]]は、江戸時代に整備された宿場町が、今回の地震で津波被害を受けていないことを指摘。「[[慶長]]16年([[1611年]])に発生した[[慶長三陸地震]]では、当地震と同等規模の津波浸水域が発生したとされ、その経験を基に宿場・街道などが整備された」、「明治時代以降の土地利用で津波経験の記憶を喪失した」との報告を行った<ref name="houkoku-20110413-hirakawa">[http://95847163926561828-a-1802744773732722657-s-sites.googlegroups.com/site/tohokuunivdcrc/home/event/%E2%91%A2-16%E5%B9%B3%E5%B7%9D.pdf?attachauth=ANoY7cq61BlCDi_o2vg036szETiXRvTwk9smnR1Tr1jLqkx2tuFPcDGQw8sQRDuvYsDmIGVmt3kFcJiA0DSin_hFxYId1fWj4wwDOWCcyQVLnpQdZ9tA3Ux_Bs5b87lVbYOUNbmpTVfJMUKrJXIYfMU4iUkshFm5v_oXNfFoXkjWSkqsZKIPw1yNkMCRh2SXYKkbcaLtXBTP0lHAHGtE1btSTefEpNC87HVpYpV8vDLr11feYy5GnMQBAHlmZ5O0x0MVzk4cbWQm&attredirects=0 16.平川 新,3.11大震災と歴史遺産の被害] - 東北大学大学院工学研究科附属災害制御研究センター 2011年4月13日</ref>。また、同報告会では、貞観地震で発生した津波よりも本地震で発生した津波の方が大規模だったとの報告も行われている<ref>[http://www.asahi.com/special/10005/TKY201104130560.html 今回の津波、貞観地震超える より内陸まで到達 東北大] - asahi.com(朝日新聞) 2011年4月13日</ref>。 | ||
+ | |||
+ | [[石橋克彦]]は「[[日本三代実録]]」の記録を基に、今回の地震が貞観地震より大規模なもので震源域が南に延びていたかもしれないと推定している。理由は、貞観地震では京都(今回震度3)や関東(今回震度4-5)の地震記事がない<ref>876年の関東地震では、京都の有感記事がある。</ref>というものである<ref>石橋克彦「首都圏直下地震、東海・東南海・南海巨大地震の促進も否定できない」中央公論2011年5月号p100</ref>。 | ||
+ | |||
+ | [[岩手県]][[大槌町]]では岩手県や大槌町の調査により、本地震による津波の浸水範囲は、[[明治三陸地震]]による津波の浸水範囲とほぼ同程度だったことが判明している<ref name="asahi20110516">[http://mytown.asahi.com/areanews/iwate/TKY201105150263.html 大槌の浸水範囲、明治三陸津波と同程度 県・町が調査] - asahi.com(朝日新聞)2011年5月16日</ref>。同年5月15日にこれが発表されるまで町側は津波の規模や被害を想定外としていたが、実際には本地震から過去115年前にも同規模の津波が襲来したことが明らかになり、改めて三陸沿岸一帯が「津波常襲地帯」であることが浮き彫りになった<ref name="asahi20110516"/>。 | ||
+ | |||
+ | == 予知および前兆現象 == | ||
+ | 東北地方太平洋沖地震では[[地震予知]]は成功せず<ref>島村英紀『日本人が知りたい巨大地震の疑問50 東北地方太平洋沖地震の原因から首都圏大地震の予測まで』サイエンス・アイ新書。2011年</ref><ref>島村英紀『巨大地震はなぜ起きる これだけは知っておこう』2011年 花伝社。</ref>、巨大地震の発生前に起こるとされている[[プレスリップ]](前兆すべり)も観測されなかった<ref>[http://www.asahi.com/special/10005/TKY201104260467.html 東日本大震災の前兆すべり観測できず 問われる予知体制]</ref>。 | ||
+ | 地震学界で確立されていると考えられていた地震の規模・発生域と発生間隔を予測する[[確率論]]的な「長期予知」においても、今回のように東北地方太平洋沖の広範囲が破壊してMw9.0に達するような巨大地震は予見されておらず、前項の地震調査委員会の発生評価にもなかったことから、「想定外」の事態であった。 | ||
+ | |||
+ | ただ、今回のような地震を予見しうる手掛かりはいくつかあった。比較沈み込み学の「日本海溝は沈み込む太平洋プレートが古いため超巨大地震は発生しない」という定説に対して、古い海洋プレートが沈み込んでいる地域で起きた2004年スマトラ島沖地震によって疑問が提起されていた。また2000年代に日本の地震学界での支持が広がっていた「アスペリティモデル」に対しても矛盾が指摘されていて、地震の活動度に地域差がある東北沖では地震の少ない地域では「非地震性のすべり」がひずみを解消しているという説を見直す動きもあった。また2000年代後半以降、地質調査により仙台平野内陸などでほとんど知られていなかった巨大地震の津波の痕跡が次々と明らかになっていてこれらの知見を確率論的地震予知に反映しようとする動きが始まっていた。しかし、2011年3月11日時点では、超巨大地震発生の想定にはまだ至っていなかった([[東北地方太平洋沖地震及び津波のメカニズム]]も参照)。 | ||
+ | |||
+ | こうした経緯から、地震後は従来の説を見直す動きや様々な方法で地震予知をしようとする動きが活発化している。また、地震の発生想定の拡充を求める意見や、「確率が低いから地震は来ない」といった楽観論を生みやすい確率論的な地震予知に対する批判・反省を行う向きがあり、予知よりも[[減災]]・[[防災]]に力を入れるべきとする見解を表明する地震学者もいる<ref>[http://sankei.jp.msn.com/science/news/120308/scn12030822590004-n1.htm 【地震学はどう変わったか(3-3)】予知困難 等身大の説明大切] msn産経ニュース、2012年3月8日。</ref><ref>[http://outreach.eri.u-tokyo.ac.jp/eqvolc/201103_tohoku/ 2011年3月 東北地方太平洋沖地震] 東京大学地震研究所広報アウトリーチ室、2012年1月24日の版。</ref>。 | ||
+ | |||
+ | 事後の検証において、1976年から2011年までの期間に本震震源域で発生した Mw 5.0 以上の地震と[[潮汐力]]の関係を調査したところ、1976年からの約25年間は相関関係がなかった。しかし、2000年頃から次第に相関関係が現れ、本震の発生直前では明瞭な傾向が出現し、断層に掛かる力が最大になる時間帯に地震が多く発生していた。特に、前震とされる3月9日11時45分(三陸沖)M 7.3 の震源と本震の破壊開始点の間の領域付近には強い相関が現れていたが、本震以降は潮汐力との関係は見られなくなった<ref>{{PDFlink|[http://zisin.jah.jp/pdf/nf-vol91.pdf PDF版なゐふる91号]}} 日本地震学会</ref>。 | ||
+ | |||
+ | === 静穏化 === | ||
+ | 1995年2月に行われた[[地震予知連絡会]]会報の第53巻では、1926年から1960年までのM6.5以上のデータを解析したところ、本震のきっかけとなったとされている2011年3月9日11時45分頃 (JST) に三陸沖を震源として発生したM7.3の地震の震源と本震の震源周辺に生じていた[[地震空白域]]が気象庁より報告されている<ref>{{[http://cais.gsi.go.jp/YOCHIREN/report/kaihou53/02-03.pdf 三陸沖の地震空白域について(気象庁)]}}地震予知連絡会会報 第53巻</ref>。また、2007年頃より東北地方全体の M5 以上の地震回数が減少し『静穏化』現象が発生していた<ref>[http://www.jishin.go.jp/main/chousa/07nov/p05.htm 東北地方の地震活動の静穏化]地震調査会</ref><ref>[http://www.ism.ac.jp/~ogata/yotiren/Yoti11b1/yoti11b1.html 東北地方太平洋沖地震の前震活動と広域的静穏化について]統計数理研究所</ref>。また、2011年2月中旬ころより東北地方(陸域)全体の地震活動も低下していた<ref>[http://www.hinet.bosai.go.jp/ 気象庁一元化 震源リスト]防災科学研究所</ref>。この静穏化の後、後述の前震活動が始まった。 | ||
+ | |||
+ | === 前震活動 === | ||
+ | {{Main2|主な前震の記録|東北地方太平洋沖地震の前震・本震・余震の記録|前震活動の解説|東北地方太平洋沖地震及び津波のメカニズム#前震活動とみられる地震活動}} | ||
+ | [[3月9日]]([[水曜日|水]])11時45分(本震の約51時間前)に、本震震源の約50km北東に当たる北緯38度19.7分、東経143度16.7分の深さ8kmを震源とするMw7.3、宮城県栗原市・登米市・美里町で最大震度5弱を観測する[[三陸沖地震 (2011年3月)|地震]]が発生し、青森県から福島県にかけての太平洋沿岸に津波注意報が発表され、大船渡市で0.6mの津波を観測した<ref name="tenkijp-3568">{{Cite news | ||
+ | |title = 過去の発表(2011年3月9日 11時45分発生) | ||
+ | |url = http://tenki.jp/earthquake/detail-3568.html | ||
+ | |newspaper = tenki.jp | ||
+ | |date = 2011-03-09 | ||
+ | |accessdate = 2011年4月12日 | ||
+ | }}</ref><ref>[http://www.jma.go.jp/jma/press/1103/09a/201103091300.html 平成23年3月9日11時45分頃の三陸沖の地震について] 気象庁、2011年3月9日。</ref><ref>[http://www.data.jma.go.jp/svd/eqev/data/mech/cmt/fig/cmt20110309114512.html CMT解 2011年03月09日11時45分 三陸沖 M 7.3] 気象庁</ref>。また、翌3月10日6時23分にはその近くでM6.8・最大震度4の当時最大[[余震]]と考えられていた地震が発生するなど<ref>[http://www.data.jma.go.jp/svd/eqev/data/mech/cmt/fig/cmt20110310062359.html 2011年03月10日06時23分 三陸沖 M 6.8]</ref><ref>[http://www.jma.go.jp/jma/press/1103/10a/201103100820.html 平成23年3月10日06時24分頃の三陸沖の地震について]</ref>、3月11日の巨大地震当日にかけて震度1以上を観測する余震が発生していた。気象庁はこれが「[[前震]]だった可能性がある」としている<ref name="sankei11031120100165">{{Cite news | ||
+ | |title = 10メートルの津波「100年に1回クラス」 | ||
+ | |url = http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/110311/dst11031120100165-n2.htm | ||
+ | |newspaper = 産経新聞 | ||
+ | |date = 2011-03-11 | ||
+ | |accessdate = 2011年3月12日 | ||
+ | }}</ref>。また、2011年2月13日から、3月9日の地震とほぼ同じ場所でM5.5を最大とするM5クラスの地震がまとまって発生していた<ref>[http://cais.gsi.go.jp/YOCHIREN/report/kaihou86/03_07.pdf 平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震発生以前の地震活動について] 気象庁</ref>。 | ||
+ | |||
+ | これより約1カ月前の2月中旬以降、2度の[[スロースリップ]]イベント(ゆっくりすべり)が発生し、3月11日の本震の破壊開始点に向かう微小地震の震源移動が続いていた。1度目は、2月中旬から2月末にかけて、2度目は3月9日のM7.3の地震の発生後で、これらのスロースリップにより、モーメントマグニチュード(Mw) 7.1に相当する地震エネルギーが解放されたと考えられる。このスロースリップが、巨大地震の発生を促進した可能性が指摘されている<ref>[http://outreach.eri.u-tokyo.ac.jp/2012/01/aitarokato_science/ 東北地方太平洋沖地震発生前に見られたゆっくりすべりの伝播]東大地震研究所:加藤愛太郎、小原一成、五十嵐俊博、鶴岡弘、中川茂樹、平田直</ref>。 | ||
+ | |||
+ | 地震学において前震では、地震の規模と回数の関係式([[グーテンベルグ・リヒター則]])における系数b値が通常の1よりも小さな値となり、「地震の規模に比して小さな余震が少ない」ことが知られている。この3月9日の地震ではb値が約0.47と、通常の日本海溝付近における0.8に比べて顕著に小さく、前震の可能性が高い有力な根拠の一つとされているほか、日本海溝地域で1960年代から2011年までb値が減少し続けていたことが明らかとなった<ref>平田直、佐竹健治、目黒公郎、2011、『巨大地震・巨大津波、東日本大震災の検証』、朝倉書店 ISBN 9784254102529, pp.13-17</ref>。 | ||
+ | |||
+ | ただし、3月11日の本震と震源域が重複せず隣接していることから、前震ではなく9日の地震により11日の地震が誘発された可能性を指摘する研究者もいる<ref>[http://www.seismology.harvard.edu/index_jpn.html 2011年3月11日 東北地方太平洋沖地震]Department of Earth & Planetary Sciences Harvard University </ref><ref>{{Cite news | ||
+ | |title = 2011年3月11日 東北地方太平洋沖地震 | ||
+ | |url = http://www.seismology.harvard.edu/index_jpn.html | ||
+ | |accessdate = 2011年4月17日 | ||
+ | }}</ref>。 | ||
+ | |||
+ | === 電離層全電子数 === | ||
+ | 北海道大学教授の日置幸介によるGEONET(GPSの連続観測網)の公開データを用いた調査では、地上局とGPS局を結ぶ経路がちょうど震源域上空の[[電離層]]における最大電子密度高度約300kmと交差する局において電離層全電子数 (TEC) の変化を推定した結果、電子密度の増大が地震発生の約40分前から発生しており、これを地図面に投影すると20分前から地域の特定ができることが分かり、1994年[[北海道東方沖地震]]や2010年[[チリ地震 (2010年)|チリ地震]]でも確認されたことから「巨大地震の直前予知には有望な手法」だとしている<ref>[http://www.ep.sci.hokudai.ac.jp/~heki/TEC.pdf 2011年東北地方太平洋沖地震に先行した電離圏全電子数の正の異常について] 日置幸介, 北海道大学。</ref>。また、電気通信大学名誉教授の早川正士は、アメリカ・[[ワシントン州]]ジム・クリークの超長波局NLK<ref group="注">[[:en:Continental Electronics|Continental Electronics]]による運営[http://www7.plala.or.jp/eToys/Memo/4.2_VLF_LF_receiving/E-S-U-VLF_stations.html]。</ref>が250キロワットで送出している24.8kHzビーコンの、東京[[調布市|調布]]での夜間継続観測において、地震発生約5日前の3月5日と3月6日電離層に振幅が小さくなる異常があったとしている<ref>{{Cite news | ||
+ | |url = http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/news/20110715-OYT8T00241.htm | ||
+ | |archiveurl= http://web.archive.org/20110718171920/www.yomiuri.co.jp/kyoiku/news/20110715-OYT8T00241.htm | ||
+ | |newspaper = [[読売新聞社]] | ||
+ | |title = 電離層の変化、東日本大震災でも…予知に有望? | ||
+ | |date = 2011-07-15 | ||
+ | |archivedate = 2011-07-18 | ||
+ | }}</ref><ref>[http://www2.jpgu.org/meeting/2011/yokou/MIS036-P01.pdf 2011年3月11日地震に対する前兆VLF/LF伝播異常現象] 日本地球惑星科学連合 2011年東北地方太平洋沖地震ポスターセッション要旨 MIS036-P01</ref>。 | ||
+ | |||
+ | === すべり欠損 === | ||
+ | プレートの相対的平均速度から期待される相対変位量から実際の相対変位量を引いた値が、'''すべり欠損'''と呼ばれるが、宮城県沖ではこのすべり欠損が蓄積し続けていたと考えられる。つまり、歪みの蓄積量に対し地震による放出量が不足し、放出されない歪みが蓄積され続けていた。実際の観測データで見ると2003年と2005年に相次いで宮城県沖地震が発生したが2003年と2005年の放出量は1978年より少なく、一部の研究者は注視していた<ref>[http://dx.doi.org/10.5575/geosoc.2012.0023 飯尾能久、松澤暢:東北地方太平洋沖地震の発生過程:なぜM 9が発生したのか?]地質学雑誌 Vol. 118 (2012) No. 5 p. 248-277</ref>。 | ||
+ | |||
+ | == 余震・誘発地震活動 == | ||
+ | {{Main2|主な余震・誘発地震の記録|東北地方太平洋沖地震の前震・本震・余震の記録|余震・誘発地震活動の解説|東北地方太平洋沖地震及び津波のメカニズム#余震活動と余効変動}} | ||
+ | |||
+ | === 余震 === | ||
+ | ==== 余震の多発 ==== | ||
+ | 余震活動は極めて活発で<ref name="気象庁第17報">{{cite press release | ||
+ | |title = 「平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震」について(第17報) | ||
+ | |publisher = 気象庁 | ||
+ | |date = 2011-03-14 | ||
+ | |url = http://www.jma.go.jp/jma/press/1103/14a/201103141510.html | ||
+ | |accessdate = 2011-03-14 | ||
+ | }}</ref>、本震から1時間足らずの間にM7以上の強い地震が立て続けに発生した<ref>{{cite web | ||
+ | |language = | ||
+ | |url = http://www.jishin.go.jp/main/chousa/11mar_sanriku-oki/p01.gif | ||
+ | |title = 余震の発生状況 | ||
+ | |publisher = 地震調査研究推進本部 | ||
+ | |date = 2011-03-12 | ||
+ | |accessdate = 2011-03-12 | ||
+ | }}</ref>。一連の余震は、岩手県沖から茨城県沖までの幅約200km、長さ約500kmの範囲を震源としている<ref name="気象庁第15報"/>。本震の直後、[[東北大学地震・噴火予知研究観測センター]]が設置していた地震計の3割が破壊されたり、通信回線が途絶したりするなどしてセンターは余震の観測データを受け取れなくなり、気象庁が発表する地震情報や緊急地震速報の発令に支障が生じる事態となった<ref>{{cite web | ||
+ | |language = | ||
+ | |url = http://sankei.jp.msn.com/science/news/110319/scn11031917340002-n1.htm | ||
+ | |title = 地震観測網3割ダウン 苦闘続く東北大センター | ||
+ | |publisher = MSN産経ニュース | ||
+ | |date = 2011-03-19 | ||
+ | |accessdate = 2011-03-20 | ||
+ | }}</ref>。 | ||
+ | |||
+ | まず30分後の15時15分には[[茨城県]]沖を震源とするM7.6の最大余震が発生し、茨城県[[鉾田市]]当間で震度6強を観測した<ref name="気象庁第63報"/> | ||
+ | <ref name="sankei11031120100165"/><ref name="気象庁による震度訂正">{{cite press release | ||
+ | |title = 「平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震」及び同地震以降の地震により各地で観測された震度等について(第2報) | ||
+ | |publisher = 気象庁 | ||
+ | |date = 2011-04-25 | ||
+ | |url = http://www.jma.go.jp/jma/press/1104/25a/201104251500.html | ||
+ | |accessdate = 2011-04-25 | ||
+ | }}</ref><ref group="注">2011年4月21日に気象庁は、同所の地震計は「震度が周辺に比べ過大に観測されている」として、地域代表性という観点から以後の観測情報の活用を停止しているが、設置状況に問題はなく観測は正常に行われていたとしている。([http://www.jma.go.jp/jma/press/1104/21a/201104211500.html 「震度観測点の地震情報への活用停止等について」] 気象庁発表)</ref>。M5以上の余震は3月中に466回あった。2014年10月2日までに観測されたものでは、M5以上が821回、M6以上が113回、M7以上が9回、最大震度4以上のものは331回、最大震度1以上のものは11,148回あった<ref name="気象庁余震"/>。M5以上の余震の回数は日本観測史上最大であった1994年[[北海道東方沖地震]]の4 - 5倍であり、記録的なペースで推移している<ref name="bosai48-01">[http://dil.bosai.go.jp/publication/nied_natural_disaster/pdf/48/48-01.pdf 2011年東北地方太平洋沖地震の概要] 岡田義光、防災科学技術研究所</ref>。特に福島県浜通りから茨城県北部にかけては、4月11日の地震を最大として活発な地震活動がみられ、M3以上の地震は2012年8月までに1600回を超えた<ref>[http://www.jishin.go.jp/main/chousa/12sep/p10.htm 福島県浜通りから茨城県北部の地震活動]地震調査研究推進本部、2012年9月11日。</ref>。 | ||
+ | |||
+ | また発生数もさることながら、単独で被害をもたらすような大きな余震が時間を経て度々発生するのも本地震の特徴である。本震から1ヶ月近く経過した4月7日には、[[宮城県沖地震#2011年4月7日(東北地方太平洋沖地震の余震)|宮城県沖を震源とするM7.2、最大震度6強の余震]](震源の深さ66km、[[地震#海洋プレート内地震|スラブ内地震]])が発生、4人の死者が出た<ref name="気象庁第63報"/><ref name="気象庁第34報">{{Cite web | ||
+ | |title = 「平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震」について(第34報) | ||
+ | |url = http://www.jma.go.jp/jma/press/1104/08b/kaisetsu201104080115.pdf | ||
+ | |publisher = 気象庁 | ||
+ | |format = PDF | ||
+ | |date = 2011-04-08 | ||
+ | |accessdate = 2011-04-13 | ||
+ | }}</ref><ref name="消防庁">[[消防庁]]発表。</ref>。また、4月11日には福島県浜通りを震源とするM7.0、最大震度6弱<ref group="注">いわき市の一部で推定震度7。気象庁の震度推計分布図参照。</ref>の余震([[福島県浜通り地震]]、[[地震#内陸地殻内地震|内陸地殻内地震]]。)が発生、4人の死者が出た<ref>[http://www.jma.go.jp/jma/press/1104/11b/201104111820.html 「平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震」について(第35報)] - 気象庁 平成23年4月11日</ref><ref name="消防庁"/>。さらに、本震から4ヶ月後の7月10日には三陸沖を震源とするM7.3、最大震度4の余震が発生し、小規模な津波が観測された。2012年3月14日には千葉県東方沖を震源とする[[千葉県東方沖地震 (2012年)|M6.1、最大震度5強の余震]]が発生し1人の死者が出た<ref>{{PDF|[http://www.data.jma.go.jp/svd/eqev/data/gaikyo/weekly/zenkoku/zenkoku20120316_11.pdf 週間地震概況(平成24年3月9日-3月15日)]}} 気象庁、2012年3月16日閲覧。</ref>。同日には三陸沖の北部でも[[三陸沖地震 (2012年3月)|M6.9の地震]]があり、津波を観測したが、気象庁は余震に該当するかどうかは不明としている。本震から一年経過後も、活発な余震活動が継続しており、本震から21ヶ月後の2012年12月7日にも[[三陸沖地震 (2012年12月)|三陸沖を震源とするM7.3、最大震度5弱の余震]]が発生、最大98cmの津波を観測した<ref name="tohoku">[http://www.jma.go.jp/jma/press/1301/10a/1212tohoku.pdf 東北地方の主な地震活動]気象庁、2013年1月11日閲覧。</ref>。 | ||
+ | {{Main|東北地方太平洋沖地震の前震・本震・余震の記録#余震の発生確率}} | ||
+ | 気象庁は3月13日から4月21日にかけて、M7.0以上の地震が3日以内に発生する「余震の発生確率」を発表、当初は70%と高かったが次第に低下していった<ref name="気象庁第15報"/><ref name="気象庁第40報">{{cite press release | ||
+ | |title = 「平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震」について(第40報) | ||
+ | |publisher = 気象庁 | ||
+ | |date = 2011-04-21 | ||
+ | |url = http://www.jma.go.jp/jma/press/1104/21b/201104211600.html | ||
+ | |accessdate = 2011-04-21 | ||
+ | }}</ref>([[東北地方太平洋沖地震の前震・本震・余震の記録#余震の発生確率|余震の発生確率]]を参照のこと)。その後4月28日には、減少がみられることから発生確率の発表を行わなくなり「今後もまれに大きな余震が起こることもある」とした<ref name="気象庁第41報">{{cite press release | ||
+ | |title = 「平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震」について(第41報) | ||
+ | |publisher = 気象庁 | ||
+ | |date = 2011-04-28 | ||
+ | |url = http://www.jma.go.jp/jma/press/1104/28a/201104281700.html | ||
+ | |accessdate = 2011-04-30 | ||
+ | }}</ref>。一方同年4月時点で、東京大学の井出哲准教授は「M7レベルの地震は10回以上は起きる」、東京大学地震研究所の[[大木聖子]]助教は「最大余震が1年後に発生することもありうる」、との指摘をしている<ref>{{Cite news | ||
+ | |url=http://www.nikkei.com/news/category/article/g=96958A9C93819595E2E5E2E3838DE2E5E2E6E0E2E3E39C9CEAE2E2E2;at=DGXZZO0195579008122009000000 | ||
+ | |title = M7級なお警戒、専門家が指摘 余震「1年後も」 宮城で震度6強 | ||
+ | |newspaper = 日本経済新聞 | ||
+ | |date = 2011-04-08 | ||
+ | |accessdate = 2011-04-13 | ||
+ | }}</ref>。また、同年11月18日に気象庁は[[地震予知連絡会]]で、同月15日から12月14日までの1か月間に本震域や周辺においては15%の確率でM7以上の余震が発生するとの分析結果を報告した。これは発生したM5以上の余震の傾向から得たもの。また余震は減少傾向にはあるものの3月11日以前の7倍の確率であり、大きな余震への警戒を要するとしている<ref>読売新聞2011年11月19日13S版37面</ref>。 | ||
+ | |||
+ | ==== 余震の広域性 ==== | ||
+ | 一連の余震は、本震の震源域に当たる岩手県沖から茨城県沖までの幅約200km・長さ約500kmの範囲と、そこに隣接する海溝軸の東側([[海溝外縁隆起帯]]=アウターライズ)を震源としている<ref name="気象庁第15報">{{cite press release | ||
+ | |title = 「平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震」について(第15報) | ||
+ | |publisher = 気象庁 | ||
+ | |date = 2011-03-13 | ||
+ | |url= http://www.jma.go.jp/jma/press/1103/13b/201103131255.html | ||
+ | |accessdate = 2011-03-17 | ||
+ | }}</ref><ref name="気象庁第46報">[http://www.jma.go.jp/jma/press/1106/03c/201106031700.html 「平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震」について(第46報)] 気象庁、2011年6月5日閲覧。</ref>。多くは本震と同種の「[[地震#プレート間地震|海溝型地震]]」(プレート境界地震)であるが、震源域西側の地殻の浅い所では「[[地震#内陸地殻内地震|内陸地殻内地震]]」(内陸直下型地震:大陸プレート内地震)、震源域西側の地殻の深い所では「[[深発地震|スラブ内地震]]」(深発地震:海洋プレート内地震の一種)、海溝軸東側では「[[地震#海洋プレート内地震|アウターライズ地震]]」(海洋プレート内地震の一種)も発生している。特に日本海溝東側の海溝外縁隆起帯(アウターライズ)では本震による[[地殻変動]]の影響で、余震が発生した場合に[[#地殻変動|後述]]のようにより規模が大きくなる可能性が高まったことも指摘されている。このほか、次節で述べるように震源域から数百kmも離れた所でM6以上の比較的大きな地震が多数発生しており、巨大地震による地殻変動の影響が考えられることも今回の地震で特徴的とされる。 | ||
+ | |||
+ | === 誘発地震 === | ||
+ | 今回の地震では震源域から離れたところでも被害地震(遠隔誘発地震)が発生している。これらも大きな視点では、今回の一連の地震活動の中に含まれると考えられており、震源域で発生する余震と区別して「[[誘発地震]]」や「広義の余震」<ref>『大地震のあと、余震はどうなるか -確率をもちいた予測とその活用のために-』[http://www.jishin.go.jp/main/yoshin3/3-2.htm 3-2 余震とは?] 地震調査委員会</ref>と呼ばれている。 | ||
+ | 複数の専門家が、本地震によって東日本を中心に地殻変動や[[応力]]の変化が生じ、地震の発生が促進された地域があるとの見解を発表している<ref>[http://www.rcep.dpri.kyoto-u.ac.jp/events/110311tohoku/toda/index.html 東北地方太平洋沖地震にともなう静的応力変化] 京都大学防災研究所 地震予知研究センター</ref><ref>[http://outreach.eri.u-tokyo.ac.jp/eqvolc/201103_tohoku/dcfftokyo/ 2011年東北地方太平洋沖地震による�首都圏の微小地震活動の変化] 石辺・島崎・佐竹・鶴岡、東京大学地震研究所 地震・火山情報。</ref>。 | ||
+ | |||
+ | ==== 表面波による動的誘発 ==== | ||
+ | 神奈川県箱根町の[[箱根山|箱根火山]]地下浅部では、本震の揺れが継続中であった14時49分から50分にかけてM3.8-4.2の地震が4回立て続けに発生し、本震の[[地震動]]と重なって局地的に最大で震度6弱の揺れを観測したことが、神奈川県温泉地学研究所が独自に設置した[[地震計]]の地震波解析で判明した。震源は[[箱根山|駒ケ岳]]・[[大涌谷]]の深さ2-6km地点、M4規模であったため強い揺れは0.5秒程であった。箱根の[[断層]]が本震の影響を受けやすい向きであったために、本震による長周期の地震動([[表面波]])に誘発されたものとみられている。この地震は箱根に本震の[[表面波]]が到達した頃から発生しており、本震の地震波に伴う地盤の動的[[応力]]変化によって発生した動的な誘発地震と考えられている<ref>[http://news.kanaloco.jp/localnews/article/1107180022/ 東日本大震災:本震直後に箱根で誘発地震4回、揺れ増幅し強羅は震度6弱、温地研が地震波解析/神奈川]</ref><ref name="MIS036-P100">[http://www2.jpgu.org/meeting/2011/yokou/MIS036-P100.pdf 東北地方太平洋沖地震により誘発された箱根火山の地震活動] 行竹洋平,本多亮,原田昌武,明田川保,伊東博,吉田明夫, 神奈川県温泉地学研究所, 日本地球惑星科学連合 2011年度連合大会 [http://www.jpgu.org/meeting_2011/session/session_html/MIS36_P.html ポスター] MIS036-P100, 2011年5月26日。</ref><ref>[http://news.kanaloco.jp/localnews/article/1107180022/ 東日本大震災:本震直後に箱根で誘発地震4回、揺れ増幅し強羅は震度6弱、温地研が地震波解析/神奈川](''神奈川新聞2011年7月18日'')</ref>。 | ||
+ | |||
+ | また、[[京都大学]]防災研究所の宮沢理稔が行った、気象庁や研究機関など日本各地約1500箇所の地震計のデータから本震や余震による直接の地震波を取り除く手法による解析では、本震後約15分間に関東から伊豆諸島、四国、九州までの広い範囲で約80-100回以上、M5未満の誘発地震が発生していたことが判明した。以前より活動が活発な[[飛騨]]や北[[伊豆]]で顕著に増加した。さらに誘発地震は本震の震源域から南西方向に秒速3.1-3.3kmで広がっており、これは表面波の伝達速度と一致する。本震のLg波 Rg波などの表面波により起励され、「火山近傍」「プレート境界付近」「近年の規模の大きな地震が発生した余震域」<ref>{{PDFlink|[http://www.jma.go.jp/jma/kishou/books/kenshin/vol77p323.pdf 平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震に誘発された地震の震源分布] 清本真司・森脇健・菅沼一成・溜渕功史・長岡優 験震時報第77巻 pp.323-327}}</ref>などの地震が起きやすい地域で誘発されたとみられていて、動的誘発作用(ダイナミックトリガリング)によるものと推察されている。動的誘発作用が広がっていく過程が確認されたのは初めてとされる<ref>[http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20120217-OYT1T01190.htm 大震災後の誘発地震、15分で100回](読売新聞 2012年2月18日)</ref><ref>[http://www.asahi.com/special/10005/TKY201202170733.html 震災直後の15分間、80個の地震誘発 京大研究所解析](朝日新聞 2012年2月18日)</ref><ref>[http://www.rcep.dpri.kyoto-u.ac.jp/~miyazawa/research_Tohoku.html 東北地方太平洋沖地震に関連する研究] 宮澤理稔, [[京都大学]]防災研究所</ref>。 | ||
+ | |||
+ | ==== 本震後の北アメリカプレート(オホーツクプレート)内部での誘発地震 ==== | ||
+ | 3月12日未明には[[長野県北部地震 (2011年)|長野県北部地震]] (M6.7) が、15日夜には[[静岡県東部地震]] (M6.4) がそれぞれ発生した(いずれも最大で震度6強を観測)。これらの地震は内陸の[[断層#活断層|活断層]]における地震であり、気象庁は3月12日に「太平洋沖での地震と直接関係はないが、地殻変動などにより誘発された可能性は否定できない」と述べ<ref>{{Cite news | ||
+ | |title = 長野北部の地震「震度7程度の揺れも」 気象庁会見 | ||
+ | |url = http://www.nikkei.com/news/category/article/g=96958A9C93819695E3E0E2E2958DE3E0E2E1E0E2E3E3E2E2E2E2E2E2 | ||
+ | |newspaper = 日本経済新聞 | ||
+ | |date = 2011-03-12 | ||
+ | |accessdate = 2011年3月12日 | ||
+ | }}</ref>、今後も震度6弱の余震が連続して起こる可能性があると注意を呼びかけた<ref name="気象庁第15報"/>。 | ||
+ | |||
+ | この他には、秋田県内陸北部、福島県浜通り、茨城県南部、長野県中部でも震度5強以上の地震が発生している<ref name="気象庁第46報"/><ref name="shinmai0702">[http://www.shinmai.co.jp/news/20110702/KT110701FTI090042000.html 松本の地震、震源域は長さ5キロ領域に 信大など解析] 信濃毎日新聞、2011年7月2日。</ref>。気象庁[[気象庁精密地震観測室|精密地震観測室]](長野県長野市松代)では、6月30日に[[長野県中部地震|長野県中部の地震]] (M5.4) が発生した震源域付近において、本地震後から震度1以上の有感地震の増加を観測しており、本地震による地殻変動が影響した可能性があるとの見解を示している。震源域の付近に位置し本震後に発生確率が上がったとされた[[牛伏寺断層]]との関連については、「震源の状況から別の断層によるものとみられる」との見解を示している<ref name="shinmai0702"/>。また、福島県[[会津地方]]から山形県[[置賜地方]]にかけては本震以降に[[群発地震]]が発生し、2011年5月7日のM4.6を最大として2011年12月末までに体に感じない微小地震を含め、16000回を越える地震を観測している。 | ||
+ | |||
+ | 本震後には東日本全体で地殻変動が観測されていることから、これらの地震は東日本内陸部の地殻に加わっていた応力が大きく変化した事が引き金になって発生したものと考えられている<ref>[http://unit.aist.go.jp/actfault-eq/Tohoku/nairiku/index.html 平成23年東北地方太平洋沖地震速報 -関連する内陸地震の研究-] (独)産業技術総合研究所 活断層・地震研究センター</ref>。このような地震は特殊な例ではなく、過去の海溝型の大地震後にも余震域周辺および震源域とは離れた場所で、数年間に渡って誘発地震が発生したケースがある<ref name="201103_tohoku">[http://outreach.eri.u-tokyo.ac.jp/eqvolc/201103_tohoku/inducedeq/ 2011年 東北地方太平洋沖地震 過去に起きた大きな地震の余震と誘発地震] 東京大学地震研究所 広報アウトリーチ室</ref>。 | ||
+ | |||
+ | ==== 本震後のプレート境界での誘発地震 ==== | ||
+ | 関東地方南方沖では北アメリカプレートと太平洋プレートに加えてその下に[[フィリピン海プレート]]が沈み込んでいて、沈みこんだプレートが地下50-100km程度に位置する茨城県南部は以前より地震が多発している地帯だが、今回の本震後も誘発地震が多数発生した。3月24日 (M4.8) と4月2日 (M5.0) の地震は沈み込んだフィリピン海プレートと上盤側の北アメリカプレートとの境界付近で発生しているが<ref name="jishinp25">[http://www.jishin.go.jp/main/chousa/11apr/p25.htm 3月24日、4月2日 茨城県南部の地震] 地震調査委員会</ref>、4月16日 (M5.9) と7月15日 (M5.4) の地震はフィリピン海プレートの下にさらに沈み込んでいる太平洋プレートとのプレート境界付近で発生しており<ref>[http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/110416/dst11041614040021-n1.htm 茨城震度5強「余震とみていない」気象庁 震源は茨城南部と訂正](''産経新聞2011年4月16日'')</ref><ref name="jishinin0715">[http://www.jma.go.jp/jp/quake/20110715225836387-010000.html 平成23年7月15日21時01分頃の茨城県南部の地震](7月15日22時58分 気象庁発表)</ref>、震源となるプレート境界が異なっている。いずれも震源地としては内陸部であるが、プレート境界で発生する海溝型地震に分類されている(詳細は「[[東北地方太平洋沖地震の前震・本震・余震の記録]]」を参照)。 | ||
+ | |||
+ | その他の地域では本震における[[地震空白域|未破壊領域]]となっている、南北に長い日本海溝にある今回の震源域の南端([[房総沖地震|房総沖]]および[[千葉県東方沖地震|千葉県東方沖]])や北端([[三陸沖北部地震|三陸沖北部]]、1994年の[[三陸はるか沖地震]]の震源域)での波及地震の発生が懸念されている<ref group="注">2012年3月14日には[[三陸沖地震 (2012年3月)|三陸沖北部の地震]] (M6.9) と[[千葉県東方沖地震 (2012年)|千葉県東方沖の地震]] (M6.1) が同じ日に続けて発生したが、前者の地震は[[アウターライズ地震]](海洋プレート内地震)で本地震との関連性は不明、後者の地震は[[大陸プレート内地震]]で本地震の余震とされており、共にプレート境界における[[海溝型地震]]ではない。(参考:{{PDF|[http://www.data.jma.go.jp/svd/eqev/data/gaikyo/weekly/zenkoku/zenkoku20120316_11.pdf 週間地震概況(平成24年3月9日-3月15日)]}} 気象庁)</ref>。さらに、この他にも同海溝の北隣にある[[千島海溝]]([[十勝沖地震|十勝沖]]及び[[根室半島沖地震|根室半島沖]])、北アメリカプレート内の他の境界部([[糸魚川静岡構造線]]および[[日本海東縁変動帯]])での波及地震に注意する必要があるという指摘がある<ref>[http://www.ab.cyberhome.ne.jp/~catfish/event/2011tohokuoki.html 東北地方太平洋沖M9.0地震:2011年3月11日] 石川有三、2011年4月9日閲覧。</ref>。 | ||
+ | |||
+ | 加えて、産業技術総合研究所の石川有三招聘研究員は関東南部におけるフィリピン海プレートの境界部でも地震活動が活発化していると指摘している<ref>[http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/event/disaster/511745/ 首都直下地震「明日起きてもおかしくない」](産経新聞 2011年6月11日)</ref>。[[南関東直下地震]]の確率が上昇したとの報道が2011年9月以降にされているほか、調査により関東地方地下のフィリピン海プレートの深さが従来の想定よりも浅い所にあることが判明したことを受けて2012年3月には同地震の見直した震度推定が公表される<ref>[http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/24/03/1319353.htm 首都直下地震防災・減災特別プロジェクトにおける震度分布図の公表について] 文部科学省、2012年3月30日。</ref>など、関東地方でも被害地震の発生が懸念されている。 | ||
+ | |||
+ | 東北太平洋沖で早ければ2011年4 - 5月中にも再びM8級の巨大地震が発生する可能性が高いと見る専門家もおり、これが4月に報道されていた<ref name="m8">{{Cite news | ||
+ | |url = http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20110414-OYT1T00112.htm | ||
+ | |title = 津波伴うM8級、1か月内にも再来…専門家 科学 YOMIURI ONLINE(読売新聞) | ||
+ | |newspaper = 読売新聞 | ||
+ | |date = 2011-04-14 | ||
+ | |accessdate = 2011-04-14 | ||
+ | }}</ref>。京都大学防災研究所の遠田晋次准教授は、M8級の誘発地震が発生した場合、仙台市に10mの津波が襲来すると計算している<ref name="m8"/>。文部科学省の地震調査委員会([[地震調査研究推進本部]])は、「[[三陸沖地震#三陸沖の名称|三陸沖から房総沖の海溝寄り]]」の領域で発生すると予測されていた[[津波地震]]の想定Mt(津波マグニチュード)を従来の8.2前後から8.6-9.0前後に更新し、誘発される可能性があると発表した<ref>[http://www.jishin.go.jp/main/choukihyoka/ichiran_past/ichiran20110111.pdf 今までに公表した活断層及び海溝型地震の長期評価結果一覧 平成23年1月1日現在]</ref><ref>[http://www.jishin.go.jp/main/choukihyoka/ichiran.pdf 今までに公表した活断層及び海溝型地震の長期評価結果一覧 平成23年6月9日現在]</ref>。また、同じくM9規模の超巨大地震である2004年の[[スマトラ島沖地震 (2004年)|スマトラ島沖地震]]のように、数年かけて周辺で大地震が続発する可能性があるという指摘<ref>[http://sk01.ed.shizuoka.ac.jp/koyama/public_html/etc/EastJM9.html 東日本沖で起きた巨大地震について] [[小山真人]]、2011年4月9日閲覧。</ref>もなされている。 | ||
+ | |||
+ | ==== スロースリップ現象の誘発 ==== | ||
+ | 千葉県房総半島沖では、明瞭な振動を伴わない[[スロースリップ]]が誘発され、従来は平均6年間隔で発生していたが前回の発生から4年目で発生した<ref>{{PDFlink|[http://www.bosai.go.jp/press/2011/pdf/20111031_01.pdf 房総半島沖で「スロー地震」再来]防災科学技術研究所}}</ref>(「[[千葉県東方沖地震 (1987年)#千葉県東方沖のスロースリップ現象]]」も参照)。この活動の総放出エネルギー量は、モーメントマグニチュードMw6.5と推定されている<ref>{{PDFlink|[http://cais.gsi.go.jp/YOCHIREN/report/kaihou87/04_03.pdf 房総半島沖スロースリップイベント(2011年10月-11月)]}} 地震予知連会報 第87巻</ref>。 | ||
+ | |||
+ | == 地殻変動 == | ||
+ | === 地震活動の変化 === | ||
+ | 本震のすべり量が大きい日本海溝の海溝軸付近では、プレート境界より深いところの海洋プレート内部では余震が多発しているものの、プレート境界の[[断層|逆断層]]型の余震は少ない。原因として、本震時にすべり量が大きかった場所ではひずみが十分に開放された一方、その周囲では本震や余効変動によってひずみが蓄積しているため余震が多発しているのではないかという考えがあるほか、この地域では通常プレート間の固着が非常に強固であることから、本震後すぐに強固な固着が復活してしまった可能性が指摘されている<ref>[http://cais.gsi.go.jp/YOCHIREN/report/kaihou86/03_24.pdf 平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震 前震・余震のセントロイド・モーメントテンソル(CMT)解析結果] 防災科学技術研究所</ref><ref>日野亮太、鈴木健介、伊藤善宏、金田義行、2011、「東北地方太平洋沖地震の前震、本震、余震の分布」、『科学』(Vol.81, No.10)、岩波書店 pp.1040-1043</ref>。 | ||
+ | |||
+ | また、震源域に近い海域での大規模な誘発地震の発生が注目されている。宮城県・福島県遠方沖、日本海溝東側の海溝外縁隆起帯にあたる太平洋プレート上に設置した海底地震計等により4月から2ヶ月間行われた、[[海洋研究開発機構]] (JAMSTEC) による海洋プレート内地震の調査では、深さ約20キロの浅い領域は本震発生以前の[[断層|正断層]]型のまま変化はないが、約40キロの深い領域では本震発生以前の逆断層型から正断層型の地震に変化していた。本震の影響によりプレート内部の[[応力]]の方向が変化している可能性などが考えられ、これまでと異なり深い部分まで応力の方向が揃ったため、プレート内部の地震がM8級の巨大地震に及ぶ可能性も指摘されている<ref>[http://news.mynavi.jp/news/2012/02/01/056/ JAMSTEC、宮城・福島県東方沖太平洋プレート内部の応力場の変化を確認](マイナビニュース 2012年2月1日)</ref><ref>[http://mainichi.jp/select/weathernews/news/20120131ddm012040168000c.html 東日本大震災:太平洋プレート、内部で力の向き変化 大地震発生しやすく 海洋機構観測](毎日新聞 2012年1月31日){{リンク切れ|date=2014-01-28}}</ref>。日本海溝東側のように沈み込む手前の海洋プレート内で発生する地震は[[地震#海洋プレート内地震|アウターライズ地震]]と呼ばれており、大きな津波が発生しても震源が陸地から遠いため揺れが小さくなるといった「[[津波地震]]」と類似した特徴があるため、避難行動が遅れて被害が拡大する恐れがある。本震40分後の15時25分に発生したM7.5の余震が該当し、過去には1933年[[昭和三陸地震]]もこのタイプで甚大な津波被害を出した。 | ||
+ | |||
+ | === 地殻変動・沈降(地盤沈下)=== | ||
+ | [[本震]]および、[[余震]]を含む[[スロースリップ#アフタースリップ|余効変動]]により、大きな[[地殻変動]]が発生した。[[東日本]]全域が東方向に10cm以上移動するなどその範囲は広い。東北から関東、甲信越までの東北日本の地殻は普段より太平洋プレートの沈み込みによる西方向への圧縮力を受けていたが、東北地方太平洋沖地震とその後の余効変動では逆に東方向への引っ張り力を受けており、地震活動の変化が懸念されている。また陸側の[[太平洋プレート]]上の[[震源|震源域]]付近では隆起、震源域の西側では沈降が発生したため、東北から関東にかけての太平洋岸では軒並み[[地盤沈下]]が起きて二次被害をもたらしている。震源に近いところではさらに大きな地殻変動が起きていて、研究によっては震源に近い海底で東に推定50m以上という、世界の地震観測史上類を見ない急激な移動が生じた。 | ||
+ | *国土地理院の計測による上下方向の最大移動は、宮城県[[石巻市]]鮎川浜の[[電子基準点]]付属標「牡鹿」で1.14m沈降である。 | ||
+ | *[[国土地理院]]の計測による水平方向の最大移動は、[[宮城県]][[女川町]]江島の二等[[三角点]]「江ノ島」での東南東方向5.85mである<ref>[http://www.gsi.go.jp/common/000062920.pdf 県別の水平方向及び上下方向の最大変動量:国土地理院:2011年10月28日]</ref>。また、[[岩手県]][[陸前高田市]]で4.473m、[[東京都]][[足立区]]で0.41m動いた。遠い所では[[新潟県]][[村上市]]1.41m、[[石川県]][[輪島市]]0.58m、[[福井県]][[勝山市]]0.26m、[[岐阜県]][[飛騨市]]で0.33m移動している。なお3月12日の[[長野県北部地震 (2011年)|長野県北部地震]] (M6.7) は、水平移動0.92m<ref group="注">東北地方太平洋沖地震だけによる変動は約70cmと推定されている。</ref>の場所で起こっている。 | ||
+ | *国土地理院の計測によると、すべての日本の[[地図]]([[経緯度]])の基準となる東京都[[港区 (東京都)|港区]]麻布台([[狸穴]])にある[[日本経緯度原点]]が、27.67cmだけ真東へ移動した。また、国会前庭にある[[日本水準原点]]が、24mmだけ沈下した<ref group="注">[[つくば市]]にある[[超長基線電波干渉法|VLBI]]による観測と、[[GPS]]による観測を照合して決定された。</ref>。 | ||
+ | *陸域観測技術衛星 (ALOS)「[[だいち]]」のレーダーからも、広範囲で地殻変動があったことが解析された<ref>2010年10月28日と本震4日後の2011年3月15日の比較、陸域観測技術衛星 (ALOS)「だいち」のLバンド[[合成開口レーダー]]観測、[[宇宙航空研究開発機構|JAXA]]地球観測研究センター3月16日発表</ref><ref>{{cite web | ||
+ | |language = | ||
+ | |url = http://www.eorc.jaxa.jp/ALOS/img_up/jdis_pal_tohokueq_110315.htm | ||
+ | |title = 陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)による東北地方太平洋沖地震の緊急観測結果(6) | ||
+ | |publisher = [[宇宙航空研究開発機構]]地球観測研究センター | ||
+ | |accessdate = 2011-03-16 | ||
+ | }}</ref>。 | ||
+ | *同上の地球観測研究センターでは被災地の[[地球観測衛星]]写真を公開している<ref>{{cite web | ||
+ | |language = | ||
+ | |url = http://www.eorc.jaxa.jp/ALOS/gallery/lib_data/j3disaster.htm | ||
+ | |title = 画像ギャラリー | ||
+ | |publisher = [[宇宙航空研究開発機構]]地球観測研究センター | ||
+ | |accessdate = 2011-03-16 | ||
+ | }}</ref>。また、[[Google]]は[[Google Earth]]および[[Google マップ]]で被災前後の地球観測衛星写真を公開している<ref>[http://car.jp.msn.com/news/technology/photos.aspx?cp-documentid=5027409 【東日本大地震】Google、被災地の衛星写真を公開] 椿山和雄、レスポンス,(msnニュース配信)、2011年3月13日</ref>。 | ||
+ | *海底基準点(海底に設置された電子基準点)のデータでは、震源域のほぼ真上に位置する「宮城沖1」が東南東に約24m移動し、約3m隆起したものが最大であった。他の地点でも、「宮城沖2」が東南東に約15m移動し約60cm沈下、「福島沖」が東南東に約5m移動するなどのデータが観測された。「宮城沖1」は本震だけで約20m以上移動したと見られ、これらの観測結果により、震源付近の海底の移動距離は陸上の約4倍以上となることが確認された。(本震前と約3週間後の3月28日 - 29日の比較、GPS観測、[[海上保安庁]]4月6日発表<ref name="海底基準点">{{cite web | ||
+ | |language = | ||
+ | |url = http://mainichi.jp/select/weathernews/news/20110407k0000m040080000c.html | ||
+ | |title = 東日本大震災:宮城県沖海底24メートル移動 海保が観測 - 毎日jp(毎日新聞) | ||
+ | |publisher = 毎日新聞 | ||
+ | |accessdate = 2011-04-14 | ||
+ | }}{{リンク切れ|date=2014-01-28}}</ref>) | ||
+ | *[[海洋研究開発機構]]の調査によると、震源近くから[[海溝]]付近では、南東〜東南東に約50m、上方に約7mから10mの地殻変動があった<ref>{{cite web | ||
+ | |url = http://www.jamstec.go.jp/j/about/press_release/20111202/ | ||
+ | |title = 東北地方太平洋沖地震震源域近傍の海底地形変動~海溝軸まで達した断層破壊~ | ||
+ | |publisher = 独立行政法人海洋研究開発機構 | ||
+ | |date = 2011-12-2 | ||
+ | |accessdate = 2012-01-14 | ||
+ | }}</ref>。 | ||
+ | |||
+ | 本地震による[[津波]]が陸地をさかのぼったことに加えて、広範囲で[[地盤沈下]]が発生したことで、東北地方太平洋側の海岸が一部沈没した。津波によるものと地盤沈下によるものを合わせた浸水面積は、[[青森県]]から[[千葉県]]までで合計561km²に達した。海岸線の一部沈没により一部自治体の面積が減少し、将来的に地図の書き換えが必要になると考えられるが、国土地理院は被災地に配慮し、地図の書き換えは当面行わないとした。[[自然災害]]による面積の変更は例が無いという<ref name="海岸線沈没">[http://www.asahi.com/national/update/0406/TKY201104060203.html asahi.com(朝日新聞社):地震で日本狭くなる? 地盤沈降で水没、地図書き換えも - 社会]</ref><ref group="注">国土地理院によれば。また浸水地域に近い陸地では、[[潮汐]](満潮)や[[波|波浪]]による浸水被害が発生していて、[[防潮堤]]が被害を受けて機能していない後背低地などで被害が長期化している。</ref><ref>[http://www.sanriku-kahoku.com/news/2011_07/i/110722i-kansui.html 雨降らないのに冠水 石巻市中心部地盤沈下深刻 旧北上川の水逆流] 三陸河北新報、2011年7月22日。</ref>。[[国土地理院]]は平成23年(2011年)4月5日から10日にかけて3県13市町28か所の[[水準点]]、[[三角点]]や[[電子基準点]]の[[高さ#地理|標高]]を[[計測]]し、以下の通り[[地盤沈下]]の変動量を発表した<ref>{{cite web | ||
+ | |url = http://www.gsi.go.jp/sokuchikijun/sokuchikijun40003.html | ||
+ | |title = 平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震に伴う地盤沈下調査 | ||
+ | |date = 2011-04-14 | ||
+ | |publisher = [[国土地理院]] | ||
+ | |title = 平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震に伴う地盤沈下調査 | ||
+ | |accessdate = 2011-04-16 | ||
+ | }}</ref><ref name=yumi20110415-p33 /><ref>{{Cite news | ||
+ | |url = http://www.kahoku.co.jp/news/2011/04/20110415t33007.htm | ||
+ | |archiveurl = http://web.archive.org/20110416093654/www.kahoku.co.jp/news/2011/04/20110415t33007.htm |title = 陸前高田84センチ沈下 国土地理院調査 | ||
+ | |newspaper = 河北新報 | ||
+ | |date = 2011-04-15 | ||
+ | |archivedate = 2011-04-16 | ||
+ | }}</ref>。 | ||
+ | {|border="1" class="wikitable" style="text-align:left" | ||
+ | |- | ||
+ | !colspan="2"|[[岩手県]]!!colspan="2"|[[宮城県]]!!colspan="2"|[[福島県]] | ||
+ | |- | ||
+ | !市町村!!地盤沈下の変動量!!市町村!!地盤沈下の変動量!!市町村!!地盤沈下の変動量 | ||
+ | |- | ||
+ | |[[宮古市]]||0.50[[メートル|m]]||[[気仙沼市]]||0.74m||[[相馬市]]||0.29m | ||
+ | |- | ||
+ | |[[山田町]]||0.53m||[[南三陸町]]||0.69m | ||
+ | |- | ||
+ | |[[大槌町]]||0.35m<ref name=yumi20110415-p33 />||[[牡鹿半島]]|| 1.2m<ref name=yumi20110415-p33>[[気象庁]]発表と読売新聞2011年4月15日13S版33面</ref><ref>[http://www.gsi.go.jp/chibankansi/chikakukansi_tohoku2.html 平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震に伴う地殻変動について 〜データ回収により、新たに牡鹿半島での変動が明らかに〜発表日時:平成23年3月19日(土)15時30分](PDF含む)、国土地理院。</ref> | ||
+ | |- | ||
+ | |[[釜石市]]||0.66m||[[石巻市]]||0.78m | ||
+ | |- | ||
+ | |[[大船渡市]]||0.73m||[[東松島市]]||0.43m | ||
+ | |- | ||
+ | |[[陸前高田市]]||0.84m||[[岩沼市]]||0.47m | ||
+ | |} | ||
+ | 地震後は余効変動が継続し、GEONETによる観測結果から地震時に沈降した茨城県沿岸から宮城県沿岸にかけては地震2年後の調査時点で余効変動により隆起に転じ部分的に回復したが、三陸海岸北部では依然沈降が続いていることが判明した<ref>国土地理院: [http://mekira.gsi.go.jp/JAPANESE/h23touhoku_2years.html#geonet_co+post 特集・平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震から2年]</ref>。また、この余効変動は本震より深部のプレート境界滑りによるものと考えられるが、その回復的隆起は小さい。東北地方太平洋岸は10万年スケールの地質学的なデータでは年間約0.5ミリメートル隆起していると推定されるのに対し、100年スケールの測地学的な観測データは沈降を示しており、さらに今回の超巨大地震で大きく沈降し余効変動でも相殺できるとは考えにくく矛盾があるとされた<ref>東大地震研 広報アウトリーチ室 {{PDFlink|[http://outreach.eri.u-tokyo.ac.jp/ul/NL_plus/eri_nlp_14.pdf なぜ沈降]}} 地震研究所ニュースレター</ref>。 | ||
+ | |||
+ | === 自転への影響 === | ||
+ | この地震によって地球の[[自転]]がわずかに速くなり、[[日|一日]]の長さ([[太陽時#平均太陽時|平均太陽日]])が1.8µs(マイクロ秒)だけ短くなった<ref>{{cite web | ||
+ | |language = | ||
+ | |url = http://www.nationalgeographic.co.jp/news/news_article.php?file_id=20110317002&expand&source=gnews | ||
+ | |title = 大地震で一日が短縮、軸の振動も変化 | ||
+ | |publisher = [[ナショナルジオグラフィック (雑誌)|ナショナルジオグラフィック]] | ||
+ | |date = 2011-03-17 | ||
+ | |accessdate = 2011-03-19 | ||
+ | }}</ref>。 | ||
+ | |||
+ | === 副振動 === | ||
+ | この地震の本震発生時から終息後数分間、[[副振動]](セイシュ)とみられる、閉鎖性水域の水面のゆっくりとした大きな変動が観測された。日本では少なくとも2か所、[[西湖]]で1 - 2分周期・1m程度の水位変化が観測されたほか、[[芦ノ湖]]でもゆっくりとした1m程度の水位変化が観測された。[[長周期地震動]]と地殻変動が原因と推定されている<ref>[http://civil.cec.yamanashi.ac.jp/~takeyasu/oral/2011oral9.pdf 2011年東北地方太平洋沖地震で発生した西湖のサイスミック・セイシュ] 鈴木猛康、第31回土木学会地震工学研究発表会講演論文集、2012年1月24日閲覧。</ref>。また、[[ソグネ・フィヨルド]]の中域に位置するノルウェーの[[ライカンゲル]]でも観測されているほか、カナダの[[ニューファンドランド島]]では[[井戸]]の水位変動が観測された<ref>[http://earthquake.usgs.gov/earthquakes/eqinthenews/2011/usc0001xgp/#summary Magnitude 9.0 - NEAR THE EAST COAST OF HONSHU, JAPAN 2011 March 11 05:46:24 UTC Earthquake Summary#Felt Reports] USGS、2012年1月24日閲覧。</ref>。 | ||
+ | |||
+ | === 火山活動 === | ||
+ | 東北地方、関東地方、中部地方、伊豆諸島を中心に日本各地の火山において、地震後[[火山性地震]]の活発化が観測されたが、[[噴火]]の前兆とされるような活動は見られず次第に沈静化した。しかし、871年[[鳥海山]]噴火や1707年[[富士山]]噴火([[宝永大噴火]])、1991年[[ピナトゥボ山]]噴火、2006年[[ムラピ山]]噴火などの例から、噴火が誘発される可能性は否定できないとする報告がある<ref name="bosai48-01" />。 | ||
+ | |||
+ | === 液状化 === | ||
+ | この地震により、東日本の広範囲で地盤の[[液状化現象]]が観測された。規模が大きかった千葉県[[浦安市]]では、埋め立て地が大半を占める土地柄の影響で中町・新町地区を中心に市面積の85%が液状化する大きな影響を受けたのをはじめ<ref>http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20110408-OYT1T00091.htm</ref>、同じ[[東京湾]]岸の、[[千葉市]]、[[船橋市]]、[[習志野市]]、東京都[[江東区]][[新木場]]、[[江戸川区]]、[[港区 (東京都)|港区]]、[[中央区 (東京都)|中央区]]、[[大田区]]、神奈川県[[横浜市]][[金沢区]]、[[川崎市]]のほか、河川周辺の造成地でも[[香取市]]、[[我孫子市]]、茨城県[[ひたちなか市]]、[[神栖市]]、[[潮来市]]、[[稲敷市]]、埼玉県[[久喜市]]南栗橋、宮城県[[大崎市]]などで被害が発生した<ref>{{Cite news | ||
+ | |url = http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/110406/dst11040620440053-n1.htm | ||
+ | |title = 液状化範囲は過去最大 「危険低い」と自治体認定の我孫子でも | ||
+ | |newspaper = 産経新聞 | ||
+ | |date = 2011-04-06 | ||
+ | |accessdate = 2011-06-12 | ||
+ | }}</ref><ref>[http://www.asahi.com/special/10005/TKY201103180170.html 傾く家・使えぬトイレ 首都圏の水辺、液状化のつめ跡] 朝日新聞(2011年3月18日)2011年3月22日閲覧。</ref><ref>{{Cite news | ||
+ | |url = http://mainichi.jp/select/weathernews/news/20110328k0000m040137000c.html | ||
+ | |title = 東日本大震災:液状化で関東一の米どころも打撃/千葉 | ||
+ | |newspaper = 毎日新聞 | ||
+ | |date = 2011-03-28 | ||
+ | |accessdate = 2011-03-28 | ||
+ | }}{{リンク切れ|date=2014-01-28}}</ref><ref>{{Cite news | ||
+ | |url = http://www.j-cast.com/2011/03/15090571.html | ||
+ | |title = 「水もガスもトイレも使えない」 東京湾岸「液状化」の惨状 | ||
+ | |newspaper = J-CASTニュース | ||
+ | |date = 2011-03-15 | ||
+ | |accessdate = 2011-03-18 | ||
+ | }}</ref><ref name="ekijoka">[http://www.asahi.com/special/10005/TKY201103180170.html asahi.com(朝日新聞社):傾く家・使えぬトイレ 首都圏の水辺、液状化のつめ跡 - 東日本大震災]</ref><ref>[http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20110408-OYT1T00091.htm 液状化、東京・千葉・神奈川で1100棟損壊] 読売新聞、2011年4月8日。</ref><ref>[http://www.ajg.or.jp/disaster/files/201104_watarase_2.pdf 東北地方太平洋沖地震による渡良瀬遊水地および埼玉県南栗橋地区における液状化現象] 瀬戸真之・田村俊和・町田尚久、日本地理学会災害対応本部被害報告、2011年4月7日。</ref><ref>[http://www.ajg.or.jp/disaster/files/201104_inashiki_katori.pdf 東北地方太平洋沖地震による茨城県稲敷市西代地区および千葉県香取市佐原地区における液状化現象の発生と被害状況] 小山拓志・青山雅史、日本地理学会災害対応本部被害報告、2011年4月16日。</ref>。 | ||
+ | |||
+ | 今回の地震による関東地方の揺れは、加速度(揺れの大きさ)自体はそれほど大きくないものの、規模に比例する形で長周期地震動が大きく、それが長時間続いたこと、大きな余震が多発したことによって、液状化の被害が拡大したとの見方がある<ref name="shimizurp1" />。 | ||
+ | |||
+ | 各地の総面積は少なくとも42[[平方キロメートル|km²]]に上り、直前に起こった[[カンタベリー地震 (2011年)|カンタベリー地震]]の34km²を上回る最悪の被害面積となった<ref>{{cite press release | ||
+ | |title = 東日本大震災:東京湾岸、液状化42平方キロ お台場-千葉市、世界最大に | ||
+ | |publisher = [[毎日新聞]] | ||
+ | |date = 2011-4-17 | ||
+ | |url = http://mainichi.jp/select/weathernews/news/20110417ddm001040086000c.html | ||
+ | |accessdate = 2011-4-17 | ||
+ | }}</ref>。 | ||
+ | |||
+ | == 津波 == | ||
+ | === 日本国内 === | ||
+ | ==== 津波警報 ==== | ||
+ | [[ファイル:Flooding from Tsunami near Sendai, Japan2.jpg|thumb|right|200px|[[仙台市]]周辺の海岸線の変化 緑色の線が沈降前の部分<br>(上)浸水後<br>(下)浸水前]] | ||
+ | [[File:2011 Tohoku tsunami flooded area Sendai Natori by GSI.png|thumb|right|200px|国土地理院の調査に基づく仙台市・名取市付近の津波浸水範囲。[[仙台平野]]の広範囲で海岸から4 - 6 km内陸まで浸水した。]] | ||
+ | [[ファイル:2011 Tohoku earthquake observed tsunami heights.png|thumb|right|300px|各地の[[験潮場|検潮所・験潮所・験潮場]]で観測された津波の高さ。<br>[[岩手県]]・[[宮城県]]・[[福島県]]・[[茨城県]]にかけての太平洋岸と、[[北海道]]の一部で3mを超える大津波が観測された。また、太平洋岸の広い範囲で1m以上の津波が観測されている。]] | ||
+ | [[File:2011 Tohoku tsunami height by Joint Research Group 2012-03-01.png|thumb|right|300px|調査により推定された各地の津波の浸水高・遡上高の緯度方向における分布、東北地方太平洋沖地震津波合同調査グループ、2012年3月1日発表による。]] | ||
+ | この地震で気象庁は、気象庁マグニチュード7.9という推定に基づき<ref name="気象庁0808"/>、まだ揺れの続いている中の14時49分、[[岩手県]]、[[宮城県]]、[[福島県]]の沿岸に[[津波警報]](大津波)<ref group="注">なお、この地震で発表された「津波警報(大津波)」は津波警報の一区分として当時用いられていたもので一般には「大津波警報」と呼称されていたが、「大津波警報」が正式名称となるのは東北地方太平洋沖地震後の改善によって制度改正される2013年3月からである。({{Cite web | ||
+ | |date = 2012-01-31 | ||
+ | |url = http://www.nikkei.com/article/DGXNASDG3100Z_R30C12A1000000/ | ||
+ | |title = 「大津波警報」に名称統一 気象庁が改善案 | ||
+ | |publisher = 日本経済新聞 | ||
+ | |accessdate = 2013-01-09 | ||
+ | }})([http://www.jma.go.jp/jma/kishou/books/tsunamikeihou/tsunamikeihou2012.pdf 平成25年3月から津波警報が変わります]、気象庁)</ref>、その他の全国の[[太平洋]]沿岸などに津波警報・[[津波注意報]]を発表し、予想される津波の高さについて、宮城県で6m、岩手県と福島県で3mと発表した。しかし、実際の津波の高さはこれを大きく上回った。通常は地震発生15分後に算出される[[モーメントマグニチュード]]がこの地震では算出できず、津波警報の続報に生かせなかった<ref name="気象庁0808"/>。また15時には岩手県沖の海底水圧計で5mの津波が観測されていたが、津波の予測に水圧計を使うことは気象庁のマニュアルになかった。その後、水圧計よりも陸側に設置されたGPS波浪計や沿岸の検潮所などで高い津波が観測されたため、津波警報・注意報は15時14分、15時30分に更新・拡大された。岩手県釜石沖のGPS波浪計では15時12分に6.7mを観測し、これはマニュアルによれば沿岸では10m以上の高さになるとされる値だったが、15時14分の警報更新では10m以上の予想は宮城県のみで、岩手県と福島県では6mの予想だった<ref>朝日新聞朝刊2012年5月15日付(「プロメテウスの罠」)</ref>。15時30分には岩手県から[[千葉県]][[九十九里]]・[[外房]]までの予想高さが10m以上になった<ref>{{cite web | ||
+ | |url = http://www.bousai.go.jp/jishin/chubou/higashinihon/1/2.pdf | ||
+ | |title = 東北地方太平洋沖地震の概要(東北地方太平洋沖地震を教訓とした地震・津波対策に関する専門調査会資料) |publisher = 気象庁 | ||
+ | |date = 2011-05-28 | ||
+ | |format = PDF | ||
+ | |accessdate = 2011-08-06 | ||
+ | }}</ref><ref name="読売過去の津波">{{Cite web | ||
+ | |url = http://www.yomiuri.co.jp/weather/tsunami/list.htm | ||
+ | |title = 過去の情報:津波情報 | ||
+ | |publisher = 読売新聞 | ||
+ | |date = | ||
+ | |accessdate = 2011-05-21 | ||
+ | }}</ref>が、すでにその時間帯には三陸沿岸に津波が襲来していた<ref>[[山田理#エピソード]]参照</ref>。 | ||
+ | |||
+ | 3月12日3時20分までに太平洋沿岸の[[北海道]]から[[小笠原諸島]]、[[四国]]までと[[青森県]][[日本海]]沿岸には津波警報(大津波)が、北海道日本海沿岸南部や[[東京湾]]内湾、[[伊勢湾]]、[[瀬戸内海]]の一部、[[九州]]、[[南西諸島]]などには津波警報が、日本海や[[瀬戸内海]]の沿岸などには津波注意報が発表され、日本の沿岸の全てで津波警報(大津波)、津波警報、津波注意報のいずれかが発表されたこととなった<ref>{{cite press release | ||
+ | |title = 「平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震」について(第7報) | ||
+ | |publisher = 気象庁 | ||
+ | |date = 2011-03-12 | ||
+ | |url = http://www.jma.go.jp/jma/press/1103/12b/201103120501.html | ||
+ | |accessdate = 2011-05-21 | ||
+ | }}</ref><ref>{{Cite news | ||
+ | |url = http://mainichi.jp/select/weathernews/news/20110312k0000m040208000c.html | ||
+ | |title = 日本の沿岸すべてに津波警報か注意報 | ||
+ | |publisher = 毎日新聞 | ||
+ | |date = 2011-03-12 | ||
+ | |accessdate = 2011-03-12 | ||
+ | }}</ref>。[[仙台市]][[宮城野区]]・[[太白区]]・[[若林区]]・青森県太平洋側沿岸をはじめとして全国各地に[[避難指示]]が発令された<ref>{{cite news | ||
+ | |url = http://www3.nhk.or.jp/news/html/20110311/t10014602691000.html | ||
+ | |title = 東北各県で避難指示や勧告|publisher=NHKニュース | ||
+ | |date = 2011年3月11日 16時57分 | ||
+ | |accessdate = 2011-03-15 | ||
+ | }}</ref><ref>{{cite news | ||
+ | |url = http://www.sankei-kansai.com/2011/03/12/20110312-050709.php | ||
+ | |title = 【東北・太平洋沿岸地震】近畿でも避難指示 | ||
+ | |publisher = 産経新聞 | ||
+ | |date = 2011年3月12日 07時48分 | ||
+ | |accessdate = 2011-03-15 | ||
+ | }}</ref>。気象庁が津波警報・注意報を全て解除したのは、丸二日以上経過した3月13日17時58分だった<ref name="気象庁第16報">{{cite press release | ||
+ | |publisher = 気象庁 | ||
+ | |url = http://www.jma.go.jp/jma/press/1103/13c/201103131830.html | ||
+ | |title = 「平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震」について(第16報) | ||
+ | |language = 日本語 | ||
+ | |date=2011-03-13 | ||
+ | |accessdate = 2011-03-13 | ||
+ | }}</ref>。なお、気象庁が津波警報(大津波)を発表したのは1年ぶり(そのうち、青森・岩手・宮城では1年ぶり、北海道では約18年ぶり)である。 | ||
+ | |||
+ | ==== 観測された津波 ==== | ||
+ | 地震によって、観測史上最大級の非常に大規模な津波が発生し、北海道<ref name="朝日0312">{{cite web | ||
+ | |url = http://www.hokkaido-np.co.jp/news/donai/277103.html | ||
+ | |title = えりも町庶野で最大津波3. 5m観測 | ||
+ | |date = 2011年3月11日 | ||
+ | |publisher = 北海道新聞 | ||
+ | |accessdate = 2011-03-13 | ||
+ | }}</ref>から[[千葉県]]<ref>{{cite web | ||
+ | |url = http://news.tv-asahi.co.jp/ann/news/web/html/210313094.html | ||
+ | |title = 【地震】津波で60代夫婦ら9人死亡 千葉・旭市 | ||
+ | |date = 2011年3月13日 | ||
+ | |publisher = テレビ朝日 | ||
+ | |accessdate = 2011-03-14 | ||
+ | }}</ref>にかけて大津波が押し寄せた。特に[[岩手県]]・[[宮城県]]・[[福島県]]の3県では、海岸沿いの集落が軒並み水没したのをはじめ、[[仙台平野]]などの平野部では[[海岸線]]から数km内陸にわたる広範囲が水没、遡上した津波により河川沿岸ではかなり内陸まで水没した。陸に押し寄せた高い津波は、各地で[[防潮堤]]や[[堤防]]を乗り越え、[[建築物]]や[[構造物]]を破壊し、それらが瓦礫となって車などと一緒にさらに内陸まで侵入した後、引き波となって瓦礫を海まで引きずり出した後、後続の波によって再び内陸へという形で繰り返し沿岸を襲い、甚大な被害を出した<ref name="朝日0312"/><ref>[http://www.asahi.com/special/10005/TKY201103120239.html?ref=recc 「数キロ内陸まで津波」東大地震研・佐竹教授] - asahi.com(朝日新聞) 2011年3月12日</ref><ref>{{cite web | ||
+ | |url = http://zgate.gsi.go.jp/SaigaiShuyaku/20110309/pdf/dig_ele_map/h17miyagi2-8.pdf | ||
+ | |title = 平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震 災害情報集約マップ 宮城2-8 1:25,000 | ||
+ | |date = 2011年3月13日 | ||
+ | |publisher = 国土交通省国土地理院 | ||
+ | |format = PDF | ||
+ | |accessdate = 2011-03-13 | ||
+ | }} - /仙台市荒浜地区の津波到達域</ref><ref>[http://www.nikkei.com/news/headline/article/g=96958A9C93819695E3E3E2E4E28DE3E3E2E1E0E2E3E39191E3E2E2E2 「巨大津波、住宅や車のみ込む 仙台空港は水没」]日本経済新聞 2011年3月11日 19時20分</ref><ref>{{cite web | ||
+ | |url = http://www.nikkei.com/news/latest/article/g=96958A9C93819695E3E3E293978DE3E3E2E1E0E2E3E39793E0E2E2E2 | ||
+ | |title = 沿岸部、集落ごと水没 各地で工場火災や大規模停電も | ||
+ | |publisher = 日本経済新聞 | ||
+ | |date = 2011-03-12 | ||
+ | |accessdate = 2011-03-13 | ||
+ | }}</ref>。また、震源から見て日本列島の裏側に当たる日本海側沿岸や瀬戸内海沿岸、東京湾内でも津波を観測している<ref name="seisvol311_tohoku_2">{{PDFlink|[http://www.data.jma.go.jp/svd/eqev/data/gaikyo/monthly/201103/monthly201103.pdf 平成23年3月 地震・火山月報(防災編)-津波-] 気象庁}}</ref>。航空写真などを基に[[国土地理院]]が分析したところによると、津波により浸水した範囲は、青森・岩手・宮城・福島・茨城・千葉の6県62市町村で561km²に及んだ<ref>{{cite web | ||
+ | |url = http://www.gsi.go.jp/common/000059939.pdf | ||
+ | |title = 津波による浸水範囲の面積(概略値)について(第5報) | ||
+ | |publisher = 国土地理院 | ||
+ | |date = 2011-04-18 | ||
+ | |format = PDF | ||
+ | |accessdate = 2011-05-21 | ||
+ | }}</ref>。 | ||
+ | |||
+ | ==== 計器観測された津波高 ==== | ||
+ | 津波の第一波は、震源に近い観測所では地震発生とほぼ同時刻に数十cm程度の海面変動が観測され、陸に近い分岐断層のずれによる津波が早い段階で到達した可能性も考えられていた<ref name="sanspo0313"/>。しかし、気象庁は後日の精査により、[[釜石港|釜石]]・[[大船渡港|大船渡]]・[[石巻港|石巻]]・[[相馬港|相馬]]の4地点については、津波によるものと海震などによるものとの区別が難しいことから速報値を取り消し、「11日午後2時台」として何分かは「不明」と発表し「今後も第1波到達時刻の特定は難しい」との見解を示した<ref name="kahoku0526">[http://www.kahoku.co.jp/spe/spe_sys1062/20110516_04.htm 釜石・大船渡・石巻・相馬で 津波第1波時刻「不明」に] - 河北新報 2011年5月16日</ref><ref name="sanspo0313">[http://www.sanspo.com/shakai/news/110313/sha1103130505008-n1.htm 警報3分前に第1波…大津波は30-40分後] - SANSPO 2011年3月13日</ref>。[[宮古港]]では15時1分に1m24cmの引き波を観測し、第一波の到達時刻と特定された<ref name="kahoku0526"/>。 | ||
+ | |||
+ | 検潮所の測定による津波の高さは、岩手県の宮古で8.5m(15時26分)以上<ref group="注">「以上」とは、観測機器の故障・破壊、計器の限界によりその数値以上は観測不能を意味する。</ref><ref name="検潮所宮古大船渡">[http://www.jma.go.jp/jma/press/1103/23b/tsunami_miyako_ofunato.html 「宮古」、「大船渡」の津波観測点の観測値について]</ref>、釜石で4.2m(15時21分)以上、大船渡で8.0m(15時18分)以上<ref name="検潮所宮古大船渡"/>、宮城県の石巻市鮎川で8.6m(15時26分)以上<ref name="jmaayu">[http://www.jma.go.jp/jma/press/1106/03b/tsunami_ayukawa2.html 「石巻市鮎川」の津波観測点の観測値について(続報)]</ref>、福島県の相馬で9.3m(15時51分)以上<ref name="jmasoma">[http://www.jma.go.jp/jma/press/1104/13a/201104131600.html 「相馬」の津波観測点の観測値について]</ref>などだった。ただ、東北地方のこれらの検潮所は津波によって途中から観測データを送信できなくなったため、それ以降については記録が残っていない<ref>{{cite web | ||
+ | |language = | ||
+ | |url = http://www.asahi.com/national/update/0312/TKY201103120576.html | ||
+ | |title = 東北太平洋沿岸の津波観測点、ほぼ壊滅 復旧めど立たず | ||
+ | |publisher = 朝日新聞 | ||
+ | |date = 2011-03-13 | ||
+ | |accessdate = 2011-03-20 | ||
+ | }}</ref>。このうち相馬の記録のみ、引き波の後の最初の押し波が全て記録されているが、気象庁はこの記録について、これ以降の津波の記録が他の検潮所と同様に計測できておらず、後続の波がこれよりも高くなった可能性を考慮して「9.3m以上」と表現している。このほか、青森県の八戸で4.2m(16時57分)以上(一時的に欠測の部分あり)<ref name="jmahachi">[http://www.jma.go.jp/jma/press/1105/27b/201105271730.html 「八戸」の津波観測点の観測値について]</ref>、茨城県の大洗で4.0m(16時52分)を記録している<ref name="fdma691">総務省消防庁[http://www.fdma.go.jp/bn/2011/detail/691.html 平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)]</ref>。福島県のいわき市小名浜では3.3m(15時39分)だった<ref name="jmaiwaki">気象庁[http://www.jma.go.jp/jma/press/1103/14c/tsunami_onahama.html 「いわき市小名浜」の津波観測点の観測値について]2011年3月14日。</ref>。距離が近い東北地方だけでなく、北海道の太平洋岸で1-3.5m程度、千葉〜九州の太平洋沿岸で1-3m程度、日本海側でも1m未満の津波が観測された。 | ||
+ | |||
+ | 沖合に設置されたGPS波浪計は、岩手県北部沖〜福島県沖において15時12分から15時19分の間に最大波を観測し、このうち最大のものは岩手県南部沖(釜石沖)の6.7mだった(沿岸ではさらに高くなる)。岩手県南部沖では少なくとも7回の津波を観測した。また、岩手県北部沖〜宮城県北部沖にでは、潮位は最大波の数分前に小さく上昇し、その直後に高く鋭い波形が現れた<ref>{{cite web | ||
+ | |url = http://www.pari.go.jp/files/3651/303113448.pdf | ||
+ | |title = GPS波浪計全地点における津波の観測結果について | ||
+ | |publisher = 港湾空港技術研究所 | ||
+ | |date = 2011-05-16 | ||
+ | |format = PDF | ||
+ | |accessdate = 2011-08-06 | ||
+ | }}</ref><ref>{{cite web | ||
+ | |url = http://www.pari.go.jp/files/3609/130613169.pdf | ||
+ | |title = 久慈、宮古、小名浜の沖合のGPS波浪計による津波の観測結果について | ||
+ | |publisher = 港湾空港技術研究所 | ||
+ | |date = 2011-04-15 | ||
+ | |format = PDF | ||
+ | |accessdate = 2011-08-06 | ||
+ | }}</ref><ref>{{cite web | ||
+ | |url = http://www.mlit.go.jp/report/press/port05_hh_000017.html | ||
+ | |title = 津波は三陸沿岸では7波襲来 -釜石沖GPS波浪計のデータ回収・分析結果- | ||
+ | |publisher = 国土交通省 | ||
+ | |date = 2011-03-28 | ||
+ | |accessdate = 2011-08-06 | ||
+ | }}</ref>。釜石沖に敷設された海底ケーブル式水圧計による海面変動の記録(TM1, TM2)でも、最初に海面が徐々に2m程度上昇したのち、約11分後にパルス的な3m程度の急上昇が見られた。プレート境界の比較的深い部分の断層破壊によってもたらされたのが最初の長く緩やかな海面上昇で、それに続く急激な高い津波は、海溝近くでの大規模な断層破壊によるものと考えられている。 | ||
+ | |||
+ | 一方で、この二つの異なる波長の津波は異なる波源から生じたものとする推定があり、海底電位磁力計による観測結果から長波長の緩やかな海面上昇は宮城県沖の広範囲の断層滑りが原因であるのに対し、短波長のパルス波は震源から約100km北東の海溝付近が波源と考えられ、この位置は明治三陸津波の波源域に近く何らかの関連が示唆されるとしている<ref>[http://www.jamstec.go.jp/j/about/press_release/20131008_2/ 海洋研究開発機構] 東日本大震災で発生した津波が巨大化した原因となった場所を特定</ref>。この、短波長の津波は震源から約150km北東の日本海溝付近で発生した海底地滑りの可能性があり、これが津波を巨大化させた一因である可能性があるという<ref>[http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/131125/dst13112509000002-n1.htm 東日本大震災「海底地滑り」で津波巨大化 岩手県沖に未知の発生源か] 2013年11月26日(火)09:05(産経新聞)</ref>。 | ||
+ | |||
+ | また、波源域から発せられた直接波だけでなく、太平洋の対岸にあたる南米で反射した長周期(30分から60分)の津波を約50時間後に''津波コーダ''として海底水圧計は観測していた<ref>{{PDFlink|[http://wwweic.eri.u-tokyo.ac.jp/viewdoc/scat2011/26SaitoInazu2011.pdf 齊藤竜彦、稲津大祐:東北地方太平洋沖地震の津波コーダ]}}</ref>。 | ||
+ | |||
+ | ==== 推定された津波高 ==== | ||
+ | [[日本気象協会]]は、岩手県宮古市から福島県相馬市までの沿岸の津波高(海上での津波の高さ)は約8-9mあったと推定した<ref name="日本気象協会津波第3報">{{cite web | ||
+ | |url = http://www.jwa.or.jp/static/topics/20110422/tsunamigaiyou3.pdf | ||
+ | |title = 平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震津波の概要(第3報) | ||
+ | |publisher = 日本気象協会 | ||
+ | |date = 2011-04-22 | ||
+ | |format = PDF | ||
+ | |accessdate = 2011-05-21 | ||
+ | }}</ref>。一方、陸上の比較的海岸に近い地点での浸水高は、浸水した痕跡などから、岩手県から宮城県[[牡鹿半島]]までの[[三陸海岸]]で10-15m前後、[[仙台湾]]岸の高いところで8-9m前後としている<ref name="日本気象協会津波第3報"/>。[[陸前高田市]]、[[南三陸町]]、[[宮古市]]などでは建物の4、5階まで浸水した<ref>[http://www.coastal.jp/ttjt/index.php?%E7%8F%BE%E5%9C%B0%E8%AA%BF%E6%9F%BB%E7%B5%90%E6%9E%9C%2F%E5%B2%A9%E6%89%8B%E7%9C%8C 現地調査結果/岩手県]、[http://www.coastal.jp/ttjt/index.php?%E7%8F%BE%E5%9C%B0%E8%AA%BF%E6%9F%BB%E7%B5%90%E6%9E%9C%2F%E5%AE%AE%E5%9F%8E%E7%9C%8C 現地調査結果/宮城県]東北地方太平洋沖地震津波合同調査グループ、2011年7月24日閲覧。 </ref>。津波の溯上高(斜面を駆け上がった高さ)は、三陸海岸では30m以上のところがあった<ref>{{cite web | ||
+ | |url = http://outreach.eri.u-tokyo.ac.jp/eqvolc/201103_tohoku/tsunami/ | ||
+ | |title = 津波調査結果 | ||
+ | |publisher = 東京大学地震研究所 | ||
+ | |accessdate = 2011-05-21 | ||
+ | }}</ref>。全国津波合同調査チームの調査によると、津波の遡上高は岩手県大船渡市の綾里湾において40.1mにまで達したものが最大と見られており、この記録は明治三陸地震の最大記録38.2m(同市綾里地区)を上回り、[[八重山地震#被害|明和の大津波]](発生当時は[[琉球王国|琉球]])を除けば日本で記録された最大の遡上高となった<ref name="津波400"/><ref name="遡上高">[http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20110415-OYT1T00389.htm 大震災の津波、宮古で38・9m…明治三陸上回る] - YOMIURI ONLINE(読売新聞)2011年4月15日</ref><ref name="岩手日報遡上高">{{Cite news | ||
+ | |url = http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20110416_3 | ||
+ | |title = 宮古の津波遡上38.9メートル 明治三陸超える | ||
+ | |newspaper = 岩手日報 | ||
+ | |date = 2011-04-16 | ||
+ | |accessdate = 2011-04-17 | ||
+ | }}</ref>。また東京大学地震研究所の都司嘉宣准教授によると、宮城県女川町の笠貝島では溯上高が43mに達していた可能性がある<ref>{{Cite news | ||
+ | |url = http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20120316-OYT1T01004.htm | ||
+ | |title = 震災津波、最大43mあった可能性…女川の島に | ||
+ | |publisher = 読売新聞 | ||
+ | |date = 2012-03-17 | ||
+ | |accessdate = 2012-03-20 | ||
+ | }}</ref>。他に、宮古市田老地区の[[小堀内漁港]]近くで37.9m、岩手県[[野田村]]で37.8m、宮城県[[女川町]]で34.7m、大船渡市三陸町綾里で30.1mの遡上高が確認されている<ref name="遡上高" /><ref name="岩手日報遡上高"/><ref>[http://news24.jp/articles/2011/05/30/07183680.html 津波の高さ40.5mに達する 国内最高|日テレNEWS24]2011年5月30日報道、6月22日閲覧。</ref><ref>{{Cite news | ||
+ | |url = http://www3.nhk.or.jp/daily/english/13_04.html | ||
+ | |title = March 11th tsunami a record 40-meters high | ||
+ | |publisher = NHK | ||
+ | |date = 2011-06-13 | ||
+ | |accessdate = 2011-06-29 | ||
+ | }}</ref>。福島県の警戒区域内での津波は、佐藤愼司東京大学大学院教授(海岸工学)らと福島県の共同で2012年2月に初めて調査が行われ、最大で21.1m(富岡町小浜)<!--リンク切れにより付け替えた出典からは以下の事実が確認できないためコメントアウトします。<ref>垂直に切り立った崖の上の、崖から10m離れた民家の1階。湾の奥ではない。</ref>-->に達していたことが分かった<ref>{{cite news | ||
+ | |url = http://mainichi.jp/select/jiken/news/20120319ddm002040164000c.html | ||
+ | |title = 東日本大震災:警戒区域、津波最大21メートル 16地点で10メートル超え--東大など調査 | ||
+ | |publisher = 毎日新聞社 | ||
+ | |date = 2012-03-19 | ||
+ | |accessdate = 2012-03-21 | ||
+ | }}</ref>。 | ||
+ | |||
+ | ==== 各地で被害を出した津波 ==== | ||
+ | 宮城県[[女川町]]では、鉄筋コンクリート製のビルが基礎部分ごと地面から抜けて横倒しになった。このような例は世界的にも稀で、町はビルを被害資料として保存する方針である<ref>{{Cite news | ||
+ | |url = http://www.asahi.com/special/10005/TKY201103270118.html | ||
+ | |title = 女川の鉄筋ビル、基礎ごと倒れる 津波17メートル超か | ||
+ | |newspaper = 朝日新聞 | ||
+ | |date = 2011-03-27 | ||
+ | |accessdate = 2011-07-24 | ||
+ | }}</ref><ref>{{Cite news | ||
+ | |url = http://www.asahi.com/special/10005/TKY201107170308.html | ||
+ | |title = 横倒しになったビル保存、津波被害資料に 宮城・女川町 | ||
+ | |newspaper = 朝日新聞 | ||
+ | |date = 2011-07-17 | ||
+ | |accessdate = 2011-07-24 | ||
+ | }}</ref>。 | ||
+ | |||
+ | 東北大学教授の今村文彦は、NHKが仙台市若林区で撮影した津波の映像を分析し、津波の速さは沿岸から1km内陸の地点では秒速約6m・時速20km以上であったと明らかにした<ref>[http://www3.nhk.or.jp/news/html/20110525/k10013089501000.html 仙台平野の津波 時速20km] - NHKニュース 2011年5月25日</ref>。名取川では津波が陸地の倍の速さで逆流し、堤防からあふれ出して流れ落ちる過程でさらに加速したことで内陸6kmまで浸水したり、川沿いの集落も被害を受けた<ref>[http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/110312/dst11031200120002-n1.htm 襲いかかる巨大津波「怖い、死にたくない」] - MSN産経ニュース 2011年3月12日</ref><ref name="bp0314">{{cite web | ||
+ | |language = | ||
+ | |url = http://www.nikkeibp.co.jp/article/news/20110314/263599/ | ||
+ | |title = 仙台空港付近は6km以上津波浸水、パスコが解析 | ||
+ | |publisher = 日経bpネット | ||
+ | |date = 2011-03-14 | ||
+ | |accessdate = 2011-05-15 | ||
+ | }}</ref><ref>[http://mainichi.jp/select/weathernews/news/20110522k0000m040118000c.html 東日本大震災:仙台平野の川 陸地の倍の速さで津波逆流] - 毎日jp(毎日新聞) 2011年5月22日</ref>。 | ||
+ | |||
+ | 仙台平野では[[名取川]]、[[鳴瀬川]]、[[阿武隈川]]、[[七北田川]]などで数km以上津波が遡上した。[[北上川]]では、津波が河口から約50km上流の地点まで遡上したことが河川水位の記録データから判明した<ref>{{cite web | ||
+ | |publisher = 朝日新聞 | ||
+ | |url= http://www.asahi.com/special/10005/TKY201103240410.html | ||
+ | |title = 大津波、北上川を50キロさかのぼる 東北大分析 | ||
+ | |date = 2011-03-24 | ||
+ | |accessdate = 2011-04-02 | ||
+ | }}</ref>。[[十勝川]]においても、河口から約13km上流の地点まで遡上した<ref>{{cite web | ||
+ | |publisher = 北海道開発局 | ||
+ | |url = http://www.hkd.mlit.go.jp/topics/press/press_h2303/22_sanrikujishin_23.pdf | ||
+ | |title = 平成23年東北地方太平洋沖地震により、津波が河川を遡上した痕跡について | ||
+ | |date = 2011-03-22 | ||
+ | |format = PDF | ||
+ | |accessdate = 2011-04-13 | ||
+ | }}</ref>。関東地方では[[利根川]]で河口から約40km上流まで、[[荒川 (関東)|荒川]]で河口から約28km上流まで遡上していることが確認された。 | ||
+ | |||
+ | 岩手県の[[宮古市]][[田老町|田老地区]]では、[[チリ地震津波]]から集落を守ったとされる高さ10m、総延長2433mの[[防潮堤]]を津波が乗り越え、防潮堤は580mにわたって粉砕された<ref>{{cite news | ||
+ | |url = http://sankei.jp.msn.com/region/news/110318/iwt11031810490000-n1.htm | ||
+ | |title = 信じていた強固な防潮堤粉々に 津波防災の岩手・宮古市 | ||
+ | |publisher = 産経新聞 | ||
+ | |date = 2011年3月18日 08時52分 | ||
+ | |accessdate = 2011-03-19 | ||
+ | }}</ref><ref>{{cite news | ||
+ | |url = http://www3.nhk.or.jp/news/html/20110403/t10015076811000.html | ||
+ | |title = 宮古市の津波 38mと判明 | ||
+ | |publisher = NHK | ||
+ | |date = 2011年4月3日 18時48分 | ||
+ | |accessdate = 2011-04-04 | ||
+ | }}</ref>。岩手県[[釜石市]]では、[[ギネス世界記録]]に「世界最深の防波堤」と認定されている全長2km、深さ63mの[[防波堤]]、[[釜石港湾口防波堤]]が平成21年([[2009年]])に完成しており、津波によって防波堤自体は全体の7割が倒壊したものの、釜石市街地への浸水を約6分遅らせることができたとの分析結果が報告されている<ref>{{cite news | ||
+ | |url = http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20110402-OYT1T00753.htm | ||
+ | |title = 世界最深・釜石の防波堤、津波浸水6分遅らせる | ||
+ | |publisher = 読売新聞 | ||
+ | |date = 2011-04-03 | ||
+ | |accessdate = 2011-04-04 | ||
+ | }}</ref>。これに対し、岩手県[[普代村]]では、高さ15.5m、全長155mの防潮堤、[[普代水門]]により村の海岸地域が守られ、村全体で死者0名、行方不明者1名の人的被害に留まっている<ref>{{cite news | ||
+ | |url = http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20110403-OYT1T00599.htm | ||
+ | |title = 明治の教訓、15m堤防・水門が村守る…岩手 | ||
+ | |publisher = 読売新聞 | ||
+ | |date = 2011-04-03 | ||
+ | |accessdate = 2011-04-04 | ||
+ | }}</ref>。一方、釜石市唐丹町小白浜での破壊の状態から、防潮堤は向かってくる津波に対しての耐波力は有していたが、越流した引き波を想定した設計が不十分であったため防潮扉が破壊され、後続波に対しては無防備となったと考えられている<ref>[http://dx.doi.org/10.3811/jjmf.26.11 川崎浩司:津波の基本特性と東北地方太平洋沖地震による津波災害] 混相流 Vol.26 (2012-2013) No.1 p.11-18</ref>。 | ||
+ | |||
+ | その後の余震によっても、たびたび津波警報や津波注意報が出された<ref name="読売過去の津波"/>。7月10日9時57分ごろに発生した三陸沖を震源とするM7.3、最大震度4の余震では、本震以降で初めて津波を観測した(岩手県の大船渡と福島県の相馬でともに10cm)<ref>{{cite news | ||
+ | |url = http://www.asahi.com/special/10005/TKY201107100080.html | ||
+ | |title = 岩手・宮城・福島の津波注意報解除 三陸沖震源の地震 | ||
+ | |publisher = 朝日新聞 | ||
+ | |date = 2011-07-10 | ||
+ | |accessdate = 2011-07-21 | ||
+ | }}</ref>。 | ||
+ | {{multiple image | ||
+ | |header = 津波による被害(宮城県) | ||
+ | |image1 = An aerial view of tsunami damage in an area north of Sendai, Japan, taken from a U.S. Navy helicopter.jpg | ||
+ | |width1 = 120 | ||
+ | |image2 = SH-60B helicopter flies over Sendai.jpg | ||
+ | |width2 = 268 | ||
+ | |image3 = Signpost of prayer and wish.JPG | ||
+ | |width3 = 270 | ||
+ | |footer = <div style="text-align:left">(左)[[気仙沼市]]の[[東日本旅客鉄道|JR]][[気仙沼線]]・[[最知駅]]上空から北向きに[[川原漁港]]周辺を空撮(2011年3月13日)<br>(中)[[仙台市]][[宮城野区]]沿岸上空から北向きに[[仙台港]]周辺を空撮(2011年3月12日)<br>(右)[[名取市]]の[[日和山 (名取市)|日和山]]から北向きに[[閖上町|閖上地区]]を撮影(2011年4月6日)。数台の重機が瓦礫の撤去作業をしている。</div> | ||
+ | |align = left | ||
+ | }} | ||
+ | {{clear}} | ||
+ | {|class="wikitable collapsible collapsed" style="float:center;font-size:small;text-align:center" | ||
+ | !colspan="12"|津波警報・津波注意報の発表時間と切り替えの推移<ref>「平成23年版防災白書 §1-1-1-1 表1-1-3 [http://www.bousai.go.jp/hakusho/h23/bousai2011/html/hyo/hyo003.htm 平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震を原因とする津波]」内閣府、2011年7月</ref>、観測された津波の検潮所での最大波高 | ||
+ | |- | ||
+ | |colspan="12"|津波警報(大津波)が発表された予報区。津波の高さ (m) 表記のうち、標準の太さは津波注意報、'''太字'''は津波警報、<br><u>'''太字下線'''</u>は津波警報(大津波)。"10m<"は10m以上。"N"は警報区分引き下げのみで予想高さなし。"-"は継続。 | ||
+ | |- | ||
+ | |rowspan="2"|予報区 | ||
+ | |colspan="6"|3月11日 | ||
+ | |colspan="2"|12日 | ||
+ | |colspan="2"|13日 | ||
+ | |rowspan="2"|検潮所の最大波高と時刻<br>(注記がないものは11日)<ref name="seisvol311_tohoku_2"/> | ||
+ | |- | ||
+ | |rowspan="19"|{{Nowrap|地震発生}}<br>14:46 | ||
+ | |14:49||15:14||15:30||16:08||22:53||13:50||20:20||{{0}}7:30||17:58 | ||
+ | |- | ||
+ | |北海道太平洋沿岸東部 | ||
+ | |bgcolor="#ffff66"|0.5m | ||
+ | |bgcolor="#ff6666"|'''1m''' | ||
+ | |bgcolor="#cc66ff"|<u>'''3m'''</u> | ||
+ | |bgcolor="#cc66ff"|<u>'''6m'''</u> | ||
+ | |bgcolor="#cc66ff"|- | ||
+ | |bgcolor="#ff6666"|'''N''' | ||
+ | |bgcolor="#ffff66"|N | ||
+ | |bgcolor="#ffff66"|- | ||
+ | |bgcolor="#99ffff"|解除||根室市花咲 286cm (15:57) | ||
+ | |- | ||
+ | |北海道太平洋沿岸中部 | ||
+ | |bgcolor="#ff6666"|'''1m''' | ||
+ | |bgcolor="#ff6666"|'''2m''' | ||
+ | |bgcolor="#cc66ff"|<u>'''6m'''</u> | ||
+ | |bgcolor="#cc66ff"|<u>'''8m'''</u> | ||
+ | |bgcolor="#cc66ff"|- | ||
+ | |bgcolor="#ff6666"|'''N''' | ||
+ | |bgcolor="#ffff66"|N | ||
+ | |bgcolor="#ffff66"|- | ||
+ | |bgcolor="#99ffff"|解除||えりも町庶野 3.5m (15:44) | ||
+ | |- | ||
+ | |北海道太平洋沿岸西部 | ||
+ | |bgcolor="#ffff66"|0.5m | ||
+ | |bgcolor="#ff6666"|'''1m''' | ||
+ | |bgcolor="#cc66ff"|<u>'''4m'''</u> | ||
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+ | |bgcolor="#cc66ff"|- | ||
+ | |bgcolor="#ff6666"|'''N''' | ||
+ | |bgcolor="#ffff66"|N | ||
+ | |bgcolor="#ffff66"|- | ||
+ | |bgcolor="#99ffff"|解除||苫小牧東港 246cm (16:17) 以上 | ||
+ | |- | ||
+ | |青森県日本海沿岸 | ||
+ | |bgcolor="#ffff66"|0.5m | ||
+ | |bgcolor="#ff6666"|'''1m''' | ||
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+ | |bgcolor="#cc66ff"|<u>'''3m'''</u> | ||
+ | |bgcolor="#cc66ff"|- | ||
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+ | |bgcolor="#99ffff"|解除|| || | ||
+ | |- | ||
+ | |青森県太平洋沿岸 | ||
+ | |bgcolor="#ff6666"|'''1m''' | ||
+ | |bgcolor="#cc66ff"|<u>'''3m'''</u> | ||
+ | |bgcolor="#cc66ff"|<u>'''8m'''</u> | ||
+ | |bgcolor="#cc66ff"|<u>'''10m<'''</u> | ||
+ | |bgcolor="#cc66ff"|- | ||
+ | |bgcolor="#cc66ff"|- | ||
+ | |bgcolor="#ff6666"|'''N''' | ||
+ | |bgcolor="#ffff66"|N | ||
+ | |bgcolor="#99ffff"|解除||八戸 4.2m (16:57) 以上 | ||
+ | |- | ||
+ | |岩手県 | ||
+ | |bgcolor="#cc66ff"|<u>'''3m'''</u> | ||
+ | |bgcolor="#cc66ff"|<u>'''6m'''</u> | ||
+ | |bgcolor="#cc66ff"|<u>'''10m<'''</u> | ||
+ | |bgcolor="#cc66ff"|- | ||
+ | |bgcolor="#cc66ff"|- | ||
+ | |bgcolor="#cc66ff"|- | ||
+ | |bgcolor="#ff6666"|'''N''' | ||
+ | |bgcolor="#ffff66"|N | ||
+ | |bgcolor="#99ffff"|解除||宮古 8.5m (15:26) 以上<br>大船渡 8.0m (15:18) 以上<br>釜石 4.2m (15:21) 以上 | ||
+ | |- | ||
+ | |宮城県 | ||
+ | |bgcolor="#cc66ff"|<u>'''6m'''</u> | ||
+ | |bgcolor="#cc66ff"|<u>'''10m<'''</u> | ||
+ | |bgcolor="#cc66ff"|- | ||
+ | |bgcolor="#cc66ff"|- | ||
+ | |bgcolor="#cc66ff"|- | ||
+ | |bgcolor="#cc66ff"|- | ||
+ | |bgcolor="#ff6666"|'''N''' | ||
+ | |bgcolor="#ffff66"|N | ||
+ | |bgcolor="#99ffff"|解除||石巻市鮎川 8.6m (15:26) 以上 | ||
+ | |- | ||
+ | |福島県 | ||
+ | |bgcolor="#cc66ff"|<u>'''3m'''</u> | ||
+ | |bgcolor="#cc66ff"|<u>'''6m'''</u> | ||
+ | |bgcolor="#cc66ff"|<u>'''10m<'''</u> | ||
+ | |bgcolor="#cc66ff"|- | ||
+ | |bgcolor="#cc66ff"|- | ||
+ | |bgcolor="#cc66ff"|- | ||
+ | |bgcolor="#ff6666"|'''N''' | ||
+ | |bgcolor="#ffff66"|N | ||
+ | |bgcolor="#99ffff"|解除||相馬 9.3m (15:51) 以上<br>いわき市小名浜 3.3m (15:39) | ||
+ | |- | ||
+ | |茨城県 | ||
+ | |bgcolor="#ff6666"|'''2m''' | ||
+ | |bgcolor="#cc66ff"|<u>'''4m'''</u> | ||
+ | |bgcolor="#cc66ff"|<u>'''10m<'''</u> | ||
+ | |bgcolor="#cc66ff"|- | ||
+ | |bgcolor="#cc66ff"|- | ||
+ | |bgcolor="#ff6666"|'''N''' | ||
+ | |bgcolor="#ffff66"|N | ||
+ | |bgcolor="#ffff66"|- | ||
+ | |bgcolor="#99ffff"|解除||大洗 4.0m (16:52) | ||
+ | |- | ||
+ | |千葉県九十九里・外房 | ||
+ | |bgcolor="#ff6666"|'''2m''' | ||
+ | |bgcolor="#cc66ff"|<u>'''3m'''</u> | ||
+ | |bgcolor="#cc66ff"|<u>'''10m<'''</u> | ||
+ | |bgcolor="#cc66ff"|- | ||
+ | |bgcolor="#cc66ff"|- | ||
+ | |bgcolor="#ffff66"|N | ||
+ | |bgcolor="#ffff66"|- | ||
+ | |bgcolor="#ffff66"|- | ||
+ | |bgcolor="#99ffff"|解除||銚子 2.5m (17:22) | ||
+ | |- | ||
+ | |伊豆諸島 | ||
+ | |bgcolor="#ff6666"|'''1m''' | ||
+ | |bgcolor="#ff6666"|'''2m''' | ||
+ | |bgcolor="#cc66ff"|<u>'''4m'''</u> | ||
+ | |bgcolor="#cc66ff"|<u>'''6m'''</u> | ||
+ | |bgcolor="#cc66ff"|- | ||
+ | |bgcolor="#ffff66"|N | ||
+ | |bgcolor="#ffff66"|- | ||
+ | |bgcolor="#ffff66"|- | ||
+ | |bgcolor="#99ffff"|解除||八丈島八重根 1.4m(12日2:48) | ||
+ | |- | ||
+ | |小笠原諸島 | ||
+ | |bgcolor="#ffff66"|0.5m | ||
+ | |bgcolor="#ff6666"|'''1m''' | ||
+ | |bgcolor="#ff6666"|'''2m''' | ||
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+ | |- | ||
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+ | |bgcolor="#99ffff"|解除||串本町袋港 151cm(12日1:32) | ||
+ | |- | ||
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+ | |bgcolor="#99ffff"|解除|| ||徳島由岐 115cm (20:28) | ||
+ | |- | ||
+ | |高知県 | ||
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+ | |bgcolor="#ffff66"|- | ||
+ | |bgcolor="#99ffff"|解除||須崎港 278cm (20:59) | ||
+ | |} | ||
+ | |||
+ | === 日本国外 === | ||
+ | {{See also|東日本大震災#日本国外}} | ||
+ | [[太平洋津波警報センター]]が、[[アメリカ合衆国]][[ハワイ州]]現地時間3月10日21時31分(地震発生から1時間45分後)に、同州に対し津波警報を発令<ref>[http://www.weather.gov/ptwc/text.php?id=hawaii.2011.03.11.073148 Warning Statement](英文)Pacific Tsunami Warning Center 2011年3月11日閲覧</ref>。太平洋津波警報センターはその他、ロシアやニュージーランド、南米のチリなども含む約50の太平洋沿岸の国・地域に津波警報を発令した<ref>[http://www.47news.jp/CN/201103/CN2011031101001109.html 「太平洋一帯に津波到達 50の国・地域に警報観測」] ''共同通信''、2011年3月12日01時42分、最終閲覧 2011年3月12日。</ref>。 | ||
+ | |||
+ | 日本から太平洋を隔てて遠く離れた中南米沿岸にも津波が押し寄せる恐れがあるとして、各国は市民に注意を呼び掛けた。沿岸地域や島嶼部では、津波を警戒して避難命令が出された<ref>{{Cite news | ||
+ | |url = http://www.jiji.com/jc/p?id=20110312112627-0579353 | ||
+ | |title = 【中南米各国でも津波注意報=大地震】 | ||
+ | |newspaper = 時事通信 | ||
+ | |date = 2011-03-12 | ||
+ | |accessdate = 2011-03-12 | ||
+ | }}</ref>。 | ||
+ | |||
+ | 南極[[スルツバーガー湾|スルツバーガー棚氷]]({{lang-en-short|Sulzberger Ice Shelf}})付近(南緯77度西経148度)の海上に長さ9.5[[キロメートル|km]]幅6.5km厚さ80[[メートル|m]]の[[氷山]]が漂流していることが[[欧州宇宙機関]]の人工衛星[[Envisat]]による観測で確認され、地震に伴う津波(高さ0.3[[メートル|m]])が繰り返し到達し、[[棚氷]]の一部を破壊し巨大な氷山を造ったと[[アメリカ航空宇宙局|NASA]]が[[2011年]][[8月9日]]明らかにした<ref>{{cite news | ||
+ | |title = Japan tsunami caused icebergs to break off in Antarctica | ||
+ | |url = http://www.esa.int/export/esaCP/SEMV87JTPQG_index_0.html | ||
+ | |publisher = [[欧州宇宙機関]] | ||
+ | |accessdate = 2011-08-10 | ||
+ | |language = 英語 | ||
+ | |trans_title = 南極で日本から来た津波が氷山を造った}}</ref><ref>{{cite news | ||
+ | |title = 東日本大震災で南極棚氷割れて新たな氷山 NASA観測 | ||
+ | |url = http://www.cnn.co.jp/fringe/30003638.html | ||
+ | |publisher = [[CNN]] | ||
+ | |date = 2011-08-10 | ||
+ | |accessdate = 2011-08-10 | ||
+ | }}</ref><ref>[http://www.jiji.com/jc/eqa?g=eqa&k=2011081000067 時事ドットコム:震災の津波、巨大氷山生む=南極で棚氷破壊-欧州宇宙機関] 2011年8月10日6時54分、同日閲覧。</ref>。 | ||
+ | {{multiple image | ||
+ | |image1 = 2011Sendai-NOAA-Energylhvpd9-05.jpg | ||
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+ | |footer = <div style="text-align:left">(左)津波によるエネルギー伝播の試算<br>(中)津波の太平洋沿岸各地への到達時間の試算<br>(右)津波によるエネルギー伝播のシミュレーション映像<br>(データは共に[[アメリカ海洋大気庁|NOAA]]による)</div> | ||
+ | |align = left | ||
+ | }} | ||
+ | {{clear}} | ||
+ | {|class = "wikitable sortable" style="line-height:1.25em;margin-right:0px" | ||
+ | |- style="white-space:nowrap;" | ||
+ | !国・地域!!避難!!津波警報!!津波の高さ!!犠牲者!!class="unsortable"|出典 | ||
+ | |- | ||
+ | |[[台湾]]||有||有||0.1 m||0||<ref name="thejournal1">{{cite web | ||
+ | |url = http://www.thejournal.ie/tsunami-passes-over-tawain-indonesia-braces-for-impact-2011-03/ | ||
+ | |title = Tsunami passes over Taiwan, Indonesia braces for impact • TheJournal | ||
+ | |publisher = Thejournal.ie | ||
+ | |date = 2010-09-23 | ||
+ | |accessdate = 2011-03-11 | ||
+ | }}</ref> | ||
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+ | |[[ニュージーランド]]||無||有||0.4 m||0||<ref name="voxy">{{cite web | ||
+ | |url = http://www.voxy.co.nz/national/tsunami-warning-update-4/5/85276 | ||
+ | |title = Tsunami Warning for New Zealand. | ||
+ | |accessdate = 2011-03-12 | ||
+ | }}</ref> | ||
+ | |- | ||
+ | |[[アメリカ合衆国|アメリカ]]、[[グアム]]||有||有||0.4 m||0||<ref name="guardian Tsunami">{{cite web | ||
+ | |author = Sample, Ian | ||
+ | |url = http://www.guardian.co.uk/world/2011/mar/11/japan-earthquake-tsunami-questions-answers | ||
+ | |title = Japan earthquake and tsunami: what happened and why | ||
+ | |publisher = The Guardian | ||
+ | |date = March 11, 2011 | ||
+ | |accessdate = 2011-03-11 | ||
+ | }}</ref><ref name="AP Guam">{{cite news | ||
+ | |url = http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2011/03/11/AR2011031102233.html | ||
+ | |title = Guam, Marinas lifts tsunami warning | ||
+ | |newspaper = Associated Press | ||
+ | |date = 11 March 2011 | ||
+ | |accessdate = 2011-03-11 | ||
+ | }}</ref><ref name="publicbroadcasting1">{{cite web | ||
+ | |url = http://www.publicbroadcasting.net/wosu/news.newsmain/article/0/0/1774296/World/Some.Pacific.tsunami.alerts.lifted.after.Japan.quake | ||
+ | |title = WOSU: Some Pacific tsunami alerts lifted after Japan quake (2011-03-11) | ||
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+ | |アメリカ、[[北マリアナ諸島]]||有||有||0.4 m||0||<ref name="guardian Tsunami"/><ref name="AP Guam"/> | ||
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+ | |url = http://www.freep.com/article/20110311/NEWS07/110311011/Tsunami-waves-slam-Hawaii-storm-sweeps-islands?odyssey=nav%7Chead |title = Tsunami waves sweep Hawaii, no major damage yet | Detroit Free Press | ||
+ | |publisher = freep.com | ||
+ | |date = 2010-02-27 | ||
+ | |accessdate = 2011-03-11 | ||
+ | }}</ref><ref>{{cite web | ||
+ | |last = Roig | ||
+ | |first = Suzanne | ||
+ | |url = http://www.reuters.com/article/2011/03/11/us-japan-quake-tsunami-hawaii-idUSTRE72A1OW20110311 | ||
+ | |title = Hawaii orders evacuations in Pacific tsunami threat | ||
+ | |publisher = Reuters | ||
+ | |date = | ||
+ | |accessdate = 2011-03-11 | ||
+ | }}</ref> | ||
+ | |- | ||
+ | |アメリカ、[[ミッドウェー島]]||無||無||1.5 m||0||<ref name="www.msnbc.msn.com quake1"> www.msnbc.msn.com [http://www.msnbc.msn.com/id/42024659/ns/world_news-asia-pacific/]. Retrieved on March 11, 2010.</ref> | ||
+ | |- | ||
+ | |アメリカ、ハワイ、[[マウイ島]]||有||有||2.1 m||0||<ref name="www.msnbc.msn.com quake1"/><ref>{{cite news | ||
+ | |author = | ||
+ | |url = http://www.suntimes.com/news/nation/4260099-418/tsunami-waves-hit-oregon-coast.html | ||
+ | |title = Tsunami waves hit U.S. mainland coast | ||
+ | |publisher = Chicago Sun-Times | ||
+ | |date = 2010-02-27 | ||
+ | |accessdate = 2011-03-11 | ||
+ | }}</ref> | ||
+ | |- | ||
+ | |アメリカ、[[アラスカ州]]、[[シェミア島]]||有||有||1.5 m||0||<ref name="www.msnbc.msn.com quake1"/> | ||
+ | |- | ||
+ | |アメリカ、[[アラスカ州]]、[[アリューシャン列島]]||有||有||1.5 m||0||<ref name="www.msnbc.msn.com quake1"/> | ||
+ | |- | ||
+ | |アメリカ、ハワイ、[[ハワイ島]]、[[コナ (ハワイ島)|コナ]]||有||有||3.7 m||0||<ref name="www.msnbc.msn.com quake1"/> | ||
+ | |- | ||
+ | |アメリカ、[[ウェーク島]]||有||有||1.8 m||0||<ref name="publicbroadcasting1"/><ref name="www.msnbc.msn.com quake1"/> | ||
+ | |- | ||
+ | |アメリカ、[[カリフォルニア州]]||有||有||2 m||1||<ref>{{cite news | ||
+ | |last = Johnson | ||
+ | |first = C. | ||
+ | |url = http://www.news10.net/news/story.aspx?storyid=127779&catid=2 | ||
+ | |title = Waves sweep 4 out to sea in Crescent City as tsunami surges reach west coast | ||
+ | |date = 11 March 2011 | ||
+ | |work = [[:en:KXTV|KXTV]] | ||
+ | |accessdate = 2011-03-11 | ||
+ | }}</ref><ref>{{cite web | ||
+ | |author = Mike Anton and Shan Li | ||
+ | |url = http://www.latimes.com/news/nationworld/nation/la-me-crescent-city-california-20110311,0,3043382.story | ||
+ | |title = Crescent City, Santa Cruz hit hard by tsunami from Japan quake | ||
+ | |publisher = Los Angeles Times | ||
+ | |date = 11 March 2011 | ||
+ | |accessdate = 2011-03-11 | ||
+ | }}</ref> | ||
+ | |- | ||
+ | |[[フィリピン]](ほとんどの地域)||有||有||1 m||0||<ref name="news1">{{cite web | ||
+ | |url = http://www.news24.com/World/News/Tsunami-spares-Philippines-Indonesia-20110311.cnt | ||
+ | |title = Tsunami spares Philippines, Indonesia: News24: World: News | ||
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+ | |date = 2011-02-05 | ||
+ | |accessdate = 2011-03-11 | ||
+ | }}</ref><ref name="asiaone1">{{cite web | ||
+ | |author = AFP Fri, Mar 11, 2011 | ||
+ | |url = http://news.asiaone.com/News/Latest%2BNews/Asia/Story/A1Story20110311-267648.html | ||
+ | |title = Small tsunami waves hit Philippines | ||
+ | |publisher = News.asiaone.com | ||
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+ | }}</ref> | ||
+ | |- | ||
+ | |[[パラオ]](一部地域)||有||有||0.11 m||0||<ref name="publicbroadcasting1"/><ref name="news1"/><ref>{{cite web | ||
+ | |url = http://file2store.info/download.php?id=BBE47311 | ||
+ | |title = Easy 2 Use File Hosting | ||
+ | |publisher = File2Store.info | ||
+ | |date= | ||
+ | |accessdate=2011-03-11}}</ref><ref>{{cite web | ||
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+ | |accessdate = 2011-03-11 | ||
+ | }}</ref><ref>{{cite web | ||
+ | |author = Post a Comment | ||
+ | |url=http://www.scientificamerican.com/article.cfm?id=update-7-some-pacific-tsunami-alert | ||
+ | |title = UPDATE 7-Some Pacific tsunami alerts lifted after Japan quake | ||
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+ | |date = | ||
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+ | }}</ref><ref>{{cite web | ||
+ | |url = http://nz.news.yahoo.com/a/-/world/8997961/some-pacific-tsunami-alerts-lifted-after-japan-quake/ | ||
+ | |title = Some Pacific tsunami alerts lifted after Japan quake - Yahoo!Xtra News | ||
+ | |publisher = Nz.news.yahoo.com | ||
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+ | |accessdate = 2011-03-11 | ||
+ | }}</ref> | ||
+ | |- | ||
+ | |[[ツバル]]、[[ナヌメア環礁]]||有||有|| style="white-space:nowrap;" |{{Display none|0.0/}}小さな波2回||0||<ref>{{cite web | ||
+ | |url = http://klima-tuvalu.no/2011/03/11/waiting-for-the-tsunami/ | ||
+ | |title = Waiting for the tsunami | Klima-Tuvalu | ||
+ | |publisher = Klima-tuvalu.no | ||
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+ | |accessdate = 2011-03-11 | ||
+ | }}</ref> | ||
+ | |- | ||
+ | |[[インドネシア]]、[[モルッカ諸島]]、[[北スラウェシ州]]||有||有||0.1 m||0||<ref name="thejournal1"/><ref name="news1"/><ref name="asiaone1"/><ref>{{cite web | ||
+ | |author = March 11th, 2011 AFP | ||
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+ | |title = Indonesia says tsunami hit without damage | Deccan Chronicle | 2011-03-11 | ||
+ | |publisher = Deccan Chronicle | ||
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+ | }}</ref> | ||
+ | |- | ||
+ | |[[インドネシア]]、[[パプア州]]||有||有||1.5 m|| style="white-space:nowrap;" |1(行方不明5)||<ref>{{cite news | ||
+ | |title = 東日本大震災:インドネシアで津波被害、海外で初の死者 | ||
+ | |url = http://mainichi.jp/select/world/news/20110314ddm007040102000c.html | ||
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+ | |location = [[東京都]][[千代田区]] | ||
+ | |date = 2011-03-14 | ||
+ | |accessdate = 2011-03-17 | ||
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+ | |[[ロシア]]、[[オホーツク海]]沿岸||不明||不明||3.3 m||0||<ref name="themoscownews1">{{cite web | ||
+ | |author = 19:13 11/03/2011-6°C | ||
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+ | |title = Japan earthquake sparks Russian tsunami fears | RUSSIA | ||
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+ | |- | ||
+ | |[[千島列島]]([[北方地域|北方領土]]を含む)||有||有||3.3 m||0||<ref name="themoscownews1"/><ref>{{cite web | ||
+ | |author = WalesOnline | ||
+ | |url = http://www.walesonline.co.uk/news/uk-news/2011/03/11/tsunami-russia-moves-11-000-91466-28319479/ | ||
+ | |title = Tsunami: Russia moves 11,000 - UK News - News | ||
+ | |publisher = WalesOnline | ||
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+ | }}</ref> | ||
+ | |- | ||
+ | |[[メキシコ]]、[[太平洋]]沿岸||不明||有||0.7 m||0||<ref>{{cite web | ||
+ | |author = Associated Press | ||
+ | |url = http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2011/03/11/AR2011031103985.html | ||
+ | |title = Mexico detects first, moderate tsunami sea rise | ||
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+ | }}</ref> | ||
+ | |- | ||
+ | |[[カナダ]]、[[ブリティッシュコロンビア州]]||有||有||0.5 m||0||<ref>{{cite web | ||
+ | |author = Associated Press | ||
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+ | |title = First waves from Japan disaster have little effect on B.C. | ||
+ | |publisher = CBC | ||
+ | |date = March 11, 2011 | ||
+ | |accessdate = 2011-03-11 | ||
+ | }}</ref> | ||
+ | |- | ||
+ | |[[フランス領ポリネシア]]、[[タヒチ島]]||有||有||0.4 m||0||<ref>{{cite web | ||
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+ | |title = Tsunami reaches French Polynesia | ||
+ | |publisher = Radio New Zealand International | ||
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+ | |accessdate = 2011-03-11 | ||
+ | }}</ref><ref>{{cite web | ||
+ | |author = Tahiti Infos | ||
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+ | |title = Alerte Tsunami en Polynésie française | ||
+ | |publisher = Tahiti Infos (in french) | ||
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+ | |accessdate = 2011-03-11 | ||
+ | }}</ref> | ||
+ | |- | ||
+ | |フランス領ポリネシア、[[マルキーズ諸島]]||有||有||3.0 m||0||<ref>{{cite web | ||
+ | |url = http://lci.tf1.fr/france/2011-03/tsunami-fin-de-l-alerte-en-nouvelle-caledonie-la-polynesie-francaise-6308388.html | ||
+ | |title = Tsunami : fin de l'alerte en Nouvelle-Calédonie, levée partielle en Polynésie | ||
+ | |site = [[TF1]] | ||
+ | |date = March 11, 2011 | ||
+ | |accessdate = 2011-04-01 | ||
+ | }}</ref> | ||
+ | |- | ||
+ | |[[ペルー]]、[[カヤオ]]||有||有||1.66 m||0||<ref name="weathernews.jp-quake"/> | ||
+ | |- | ||
+ | |[[チリ]]、[[イースター島]]||有||有||0.3 m||0||<ref>{{cite web | ||
+ | |author = Suzanne Goldenberg | ||
+ | |url = http://www.guardian.co.uk/world/2011/mar/11/tsunami-alert-pacific-evacuations | ||
+ | |title = Tsunami alert sparks evacuations from Hawaii to Easter Island | ||
+ | |publisher = The Guardian | ||
+ | |date = March 11, 2011 | ||
+ | |accessdate = 2011-03-11 | ||
+ | }}</ref> | ||
+ | |- | ||
+ | |[[チリ]]、[[アリカ (チリ)|アリカ]]||有||有||0.91 m||0||<ref name="weathernews.jp-quake">{{cite web | ||
+ | |title = 地震情報:ウェザーニュース | ||
+ | |url = http://weathernews.jp/quake/ | ||
+ | |newspaper = [[ウェザーニュース]] | ||
+ | |date = 2011-03-16 | ||
+ | |accessdate = 2011-05-21 | ||
+ | }}</ref> | ||
+ | |} | ||
+ | |||
+ | === 太平洋を往復した津波 === | ||
+ | 津波は太平洋を越え、チリのタルマワノ観測所では2mの津波を観測した (NOAA)。その津波の反射波が日本に戻ってきて47-48時間後に30-60cmの津波が、小名浜、尾鷲、串本の各検潮所で観測されたと見られる<ref>「津波 太平洋を往復」日本経済新聞2014年5月2日朝刊</ref><ref>5月1日日本地球惑星科学連合大会。岡田正実気象研究所客員研究員</ref>。 | ||
+ | |||
+ | == 緊急地震速報 == | ||
+ | {|class="wikitable" style="text-align:right" | ||
+ | |+気象庁:2011年3月11日14時46分に発生した地震の緊急地震速報 | ||
+ | |- | ||
+ | !第報!!発表時刻!!経過時間(秒)!!北緯!!東経!!深さ!!Mj!!備考 | ||
+ | |- | ||
+ | |1||14時46分45.6秒||5.4||38.2||142.7||10km||4.3||最大震度 1程度以上と推定 | ||
+ | |- | ||
+ | |2||14時46分46.7秒||6.5||38.2||142.7||10km||5.9||最大震度 3程度以上と推定 | ||
+ | |- | ||
+ | |3||14時46分47.7秒||7.5||38.2||142.7||10km||6.8|| | ||
+ | |- style="background-color:#e6e6e6;" | ||
+ | |4||14時46分48.8秒||8.6||38.2||142.7||10km||7.2|| | ||
+ | |- | ||
+ | |5||14時46分49.8秒||9.6||38.2||142.7||10km||6.3|| | ||
+ | |- | ||
+ | |6||14時46分50.9秒||10.7||38.2||142.7||10km||6.6|| | ||
+ | |- | ||
+ | |7||14時46分51.2秒||11.0||38.2||142.7||10km||6.6|| | ||
+ | |- | ||
+ | |8||14時46分56.1秒||15.9||38.1||142.9||10km||7.2|| | ||
+ | |- | ||
+ | |9||14時47分02.4秒||22.2||38.1||142.9||10km||7.6|| | ||
+ | |- | ||
+ | |10||14時47分10.2秒||30.0||38.1||142.9||10km||7.7|| | ||
+ | |- | ||
+ | |11||14時47分25.2秒||45.0||38.1||142.9||10km||7.7|| | ||
+ | |- | ||
+ | |12||14時47分45.3秒||65.1||38.1||142.9||10km||7.9|| | ||
+ | |- | ||
+ | |13||14時48分05.2秒||85.0||38.1||142.9||10km||8.0|| | ||
+ | |- | ||
+ | |14||14時48分25.2秒||105.0||38.1||142.9||10km||8.1|| | ||
+ | |- | ||
+ | |15||14時48分37.0秒||116.8||38.1||142.9||10km||8.1|| | ||
+ | |} | ||
+ | 本震に対し、[[気象庁]]は初期微動(P波)検知(14時46分40.2秒)の5.4秒後に予報第一報を発表し、8.6秒後に一般向け[[緊急地震速報]](警報)を[[宮城県|宮城]]、[[岩手県|岩手]]、[[秋田県|秋田]]、[[山形県|山形]]、[[福島県|福島]]の各県に発表した。震度7を観測した宮城県[[栗原市]]ではS波到達まで15秒の猶予があった<ref>{{cite press release | ||
+ | |title = 緊急地震速報の提供状況 | ||
+ | |publisher = 気象庁 | ||
+ | |date = 2011-04-08 | ||
+ | |url = http://www.jma.go.jp/jma/press/1104/08a/1103eew.pdf | ||
+ | |accessdate = 2011-08-10 | ||
+ | }}</ref>。しかし、この地震発生の際に発表された緊急地震速報では、予測震度と実測震度が大きく乖離している地点があり<ref>[http://www.anetrt.net/news/2011/pdf/032301.pdf 平成23年3月11日の東北地方太平洋沖地震の緊急地震速報について] 平成23年3月23日[[ANET]]</ref>、震度5弱以上の強い揺れを観測した[[青森県|青森]]・[[関東地方|関東]]・[[甲信越地方]]には一般向け緊急地震速報は発表されず、青森・関東・甲信越を放送エリアとする民放のテレビ・ラジオ番組、該当地域にない携帯電話の[[エリアメール]]機能などで注意喚起がされなかった。また、地震検知5.4秒後に発表された予報第1報でのマグニチュードは4.3・最大震度1程度以上と過小評価され、一般向けの警報を発表したのはM7.2と推定した地震検知8.6秒後の第4報だった。 | ||
+ | |||
+ | 気象庁[[気象研究所]]は原因としてそれぞれ、最大振幅から推定する[[マグニチュード]]の上限に達してしまったこと・震源域の広がりを十分に考慮できなかったこと、地震の最初の[[振幅]]がきわめて小さかったこと{{refnest|group=注|発生後3秒間の破壊はゆっくり進み、3月9日のM 7.3の前震より震動が小さかった<ref name="Ide2"/>。}}を挙げている<ref>{{PDFlink|[http://www2.jpgu.org/meeting/2011/yokou/MIS036-P66.pdf [[緊急地震速報]]と観測された震度の特徴] 気象庁気象研究所}} 日本地球惑星連合 2011年予稿集</ref>。なお速報の第14報において[[茨城県]]北部でも震度5弱以上が予想されたが警報の更新条件である60秒以内に満たなかったため発表されなかった。 | ||
+ | |||
+ | また本震後に、緊急地震速報が過大に予測されたり、強い地震でも発表されないなど、適切に発表できなくなる問題が発生した。気象庁は原因として、異なる場所でほぼ同時に発生した複数の地震を1つの地震として処理してしまうため、また[[停電]]や通信回線の途絶によりデータ処理に使用できる[[地震計]]の数が減少したためとしている<ref>[http://www.jma.go.jp/jma/press/1103/29a/eew_hyouka.html 平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震以降の緊急地震速報(警報)の発表状況について] 気象庁</ref>。この問題に対し気象庁は、ほぼ同時に起きた地震のうち緊急地震速報(警報)の発表対象としていない小規模の[[地震]]を計算の対象から外すことにより、2つの地震を誤って結び付ける頻度を減らすシステム改修を行った<ref>{{cite press release | ||
+ | |title = 緊急地震速報の改善について | ||
+ | |publisher = [[気象庁]] | ||
+ | |date = 2011-08-10 | ||
+ | |url = http://www.jma.go.jp/jma/press/1108/10a/eew_kaizen.html | ||
+ | |accessdate = 2011-08-10 | ||
+ | }}</ref>。 | ||
+ | |||
+ | == 被害・影響 == | ||
+ | {{main|東日本大震災|福島第一原子力発電所事故}} | ||
+ | 「[[東日本大震災]]」と命名された本地震による日本国内の被害は、地震そのものによる被害に加えて[[津波]]・[[火災]]・[[液状化現象]]・[[福島第一原子力発電所事故]]・[[東日本大震災による電力危機#計画停電|大規模停電]]など多岐に渡り、1都9県が[[災害救助法]]の適用を受けた<ref name="厚生労働省第13報">{{cite press release | ||
+ | |title = 平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震の被害状況及び対応について(第13報) | ||
+ | |publisher = [[厚生労働省]] | ||
+ | |date = 2011-03-14 | ||
+ | |url = http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r98520000014swz.html | ||
+ | |accessdate = 2011-03-15 | ||
+ | }}</ref>。[[警察庁]]発表による死者および届出があった行方不明者の数は合わせて約1万8,500人で、津波被害を受けた[[東北地方]]の[[太平洋]]沿岸を中心に[[関東地方]]や[[北海道]]でも死傷者が出る事態となっている<ref name="NPA"/>。この死者・行方不明者数は、明治以降の地震被害としては[[関東大震災]]の10万5,385人、[[明治三陸地震]]の2万1,959人に次ぐもので<ref>{{cite web | ||
+ | |language = | ||
+ | |url = http://www.data.jma.go.jp/svd/eqev/data/higai/index.html | ||
+ | |title = 被害地震資料 | ||
+ | |publisher = [[気象庁]] | ||
+ | |accessdate = 2011-11-10 | ||
+ | }}</ref>、[[阪神・淡路大震災]]の6,437人を大きく上回る[[第二次世界大戦]]後最悪の巨大自然災害となった<ref>[http://www.47news.jp/CN/201103/CN2011031801000690.html 東日本大震災の死者6911人 「阪神」超え戦後最大] - [[47NEWS]] 2011年3月19日</ref>。 | ||
+ | |||
+ | 津波と原発事故の影響を連続して受けた[[福島県]][[浜通り]]などを中心に[[複合災害]]の状況を呈し、避難区域においては救助・捜索活動が中止される事態も発生した。 | ||
+ | |||
+ | == 対応・支援と復興 == | ||
+ | {{main2|[[東日本大震災に対する支援活動|震災に対する支援活動]]、[[菅内閣 (第2次改造)#東日本大震災への対応|菅内閣の対応]]、[[東日本大震災に対する日本国外の対応|日本国外の対応]]、[[トモダチ作戦]]、[[パシフィック・アシスト作戦]]、[[くしの歯作戦]]も}} | ||
+ | [[File:Kawaguchi City Fire Department Kinkyu-shobo-enjo1.jpg|thumb|250px|right|東日本大震災被災地で活動する川口市消防局救助部隊]] | ||
+ | [[画像:Jsdf fuku koriyama.JPG|thumb|250px|right|自衛隊によって設営された臨時浴場]] | ||
+ | 津波警報の発表があった沿岸地域では、[[消防]]・消防団・警察・自主防災組織・自治体担当者などによる避難誘導が行われたが、中には津波により負傷・殉職した者もいた。発生当日より国内各地から消防の[[緊急消防援助隊]]・警察の広域緊急援助隊が派遣され、(原発避難地域も含めて)被災地の救助・捜索・警備などに当たった。最大約6,100人・総数約28,600人(のべ派遣人数は10万人)の消防隊員が派遣された<ref>[http://www.fdma.go.jp/neuter/topics/houdou/2306/230606_1houdou/01_houdoushiryou.pdf 緊急消防援助隊の活動終了(平成23年6月6日)] 消防庁、2011年7月24日閲覧。</ref>。また最大約4,900人・6月末時点で4,000人以上の警察官<ref>[http://www.npa.go.jp/archive/keibi/biki/keisatsusoti/zentaiban.pdf 東日本大震災に伴う警察措置] 警察庁、2011年7月24日閲覧。</ref>が派遣されたほか、[[海上保安庁]]も救助・捜索・港湾復旧などを行った。また[[自衛隊]]も最大で10万7,000人、7月21日時点でも2万3,000人規模で救助・捜索・避難所支援や復興支援活動を行い<ref>{{cite news | ||
+ | |url = http://www.asagumo-news.com/news/201106/110616/11061602.html | ||
+ | |title = 派遣人員 延べ868万人に | ||
+ | |newspaper = 朝雲新聞 | ||
+ | |date = 2011-06-16 | ||
+ | |accessdate = 2011-06-30 | ||
+ | }}</ref>、7月下旬に岩手県・宮城県<ref>{{cite news | ||
+ | |url= http://www.asagumo-news.com/news/201107/110728/11072802.html | ||
+ | |title= 岩手県下災派終わる、9師団が撤収 | ||
+ | |newspaper= 朝雲新聞 | ||
+ | |date= 2011-07-28 | ||
+ | |accessdate= 2011-08-02 | ||
+ | }}</ref><ref>読売online(2011年8月1日、2011年8月2日閲覧)</ref>、12月下旬に福島県(原発事故対応を含む)<ref>[http://www.mod.go.jp/j/press/news/2011/12/26b.html 東日本大震災の災害派遣終了について]防衛省報道資料・2011年12月28日閲覧</ref>での活動を終えた。 | ||
+ | |||
+ | 国内の多数の企業・団体も震災後に物資提供や金銭などの支援を表明している。また通信・報道企業が[[災害用伝言板]]・安否情報提供の運用や情報インフラ支援などを行ったのをはじめ、震災の影響に応じた様々な支援やサービスを提供しているところがある。([[東日本大震災に対する支援活動|震災に対する支援活動]]参照) | ||
+ | |||
+ | 地震直後より、[[国際連合]]を始めとした[[国際機関]]、[[アメリカ合衆国]]や[[ロシア|ロシア連邦]]を始めとした世界各国が日本に対して支援の用意があると表明、様々な対応や支援を行っている。特にアメリカは、洋上基地として[[原子力空母]][[ロナルド・レーガン (空母)|ロナルド・レーガン]]を派遣するなどの「[[トモダチ作戦]]」を展開した。 | ||
+ | |||
+ | 諸外国政府による公式な対応、支援以外にも、日本国内外を問わず様々な組織・団体または有志が、この地震に対しての支援を表明・実行している。 | ||
+ | |||
+ | この地震に対する救援・支援の輪が広がったことから、[[日本漢字能力検定協会]]が公募選定する[[2011年]]の『[[今年の漢字]]』には『[[wikt:絆|絆]]』が選ばれ、その理由の筆頭に東日本大震災が挙げられた。 | ||
+ | |||
+ | 復興方針の骨格を決める[[東日本大震災復興基本法]]([[6月20日]]可決、[[6月24日]]施行)、国の復興業務を一本化した[[復興庁]]([[2012年]][[2月10日]]設置)を軸として政府の復興事業は進められている。しかし、当初より原発事故や計画停電に関する件を中心として政府や[[東京電力]]などに対して「対応が遅い」などの批判が相次いだ。津波被災地の多くで[[仮設住宅]]の建設や基幹産業である[[水産業]]の中枢である[[港湾]]の復旧が重点的に進められているほか、国の予算配分や有志による義援金の配分に基づいて復興計画が進められている。 | ||
+ | |||
+ | == 教訓 == | ||
+ | === 長期評価の見直し === | ||
+ | この地震では、政府が東北地方沖で従来想定していたものとはかけ離れた規模の地震が発生した。政府の地震調査委員会は、[[東海地震|東海]]、[[東南海地震|東南海]]、[[南海地震]]などの海溝型地震の長期評価を見直すことを決めた<ref>{{cite news | ||
+ | |url = http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20110512-OYT1T00118.htm | ||
+ | |title = 東海・南海など海溝型地震、長期評価見直しへ | ||
+ | |publisher = 読売新聞 | ||
+ | |date = 2011-05-11 | ||
+ | |accessdate = 2011-08-11 | ||
+ | }}</ref>。2011年11月に、三陸沖から房総沖までの長期評価を見直したものを発表し、今回のような地震 (Mw8.4-9.0) が平均600年間隔で発生していると認定した。また、三陸沖から房総沖までの海溝寄りで、津波マグニチュード (Mt) 8.6-9.0([[明治三陸地震]]並み<ref group="注">東北地方太平洋沖地震の津波マグニチュードは9.1-9.4とされている。</ref>)の[[津波地震]]が30年以内に発生する確率が約30%あるとした<ref>{{cite news | ||
+ | |url = http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/111126/dst11112608520000-n1.htm | ||
+ | |title = 三陸沖~房総沖で「M9」30年以内に30% 地震調査委 | ||
+ | |publisher = 産経新聞 | ||
+ | |date = 2011-11-26 | ||
+ | |accessdate = 2011-11-26 | ||
+ | }}</ref><ref>{{cite web | ||
+ | |url = http://www.jishin.go.jp/main/chousa/11nov_sanriku/index.htm | ||
+ | |title = 三陸沖から房総沖にかけての地震活動の長期評価(第二版)について | ||
+ | |publisher = 地震調査委員会 | ||
+ | |date = 2011-11-25 | ||
+ | |accessdate = 2011-11-26 | ||
+ | }}</ref>。ただし、この発表は従来の予測手法によっており、今後さらに検討される<ref>朝日新聞(大阪)2011年11月25日朝刊1面・3面。</ref>。 | ||
+ | |||
+ | === 津波想定の見直し === | ||
+ | 国の中央防災会議の専門調査会は、この地震を教訓とした津波対策について検討した。そのうえで、これまでは過去の文献などから確実に地震の全体像が分かった切迫性のある地震だけを考慮して想定を行ってきたが、これからは確度の低いものでも考えうる最大のものを想定することを求めた。また、この地震による津波が防潮堤を超えて甚大な被害をもたらしたことから、津波のレベルとして、住民の避難を柱にした総合的な対策を取るべき最大規模の津波と、防潮堤などで浸水を防げる比較的頻度の高い津波の、2つを想定する必要があるとした<ref>{{cite news | ||
+ | |url = http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20110619-OYT1T00584.htm | ||
+ | |title = 津波、最大想定に対処…防災会議・中間報告骨子 | ||
+ | |publisher = 読売新聞 | ||
+ | |date = 2011-06-20 | ||
+ | |accessdate = 2011-08-11 | ||
+ | }}</ref><ref>{{cite web | ||
+ | |url = http://www.bousai.go.jp/jishin/chubou/higashinihon/4/tyuukan.pdf | ||
+ | |title = 東北地方太平洋沖地震を教訓とした地震・津波対策に関する専門調査会中間とりまとめ | ||
+ | |publisher = 中央防災会議 「東北地方太平洋沖地震を教訓とした地震・津波対策に関する専門調査会」 | ||
+ | |format = PDF | ||
+ | |date = 2011-06-26 | ||
+ | |accessdate = 2011-08-11 | ||
+ | }}</ref>。 | ||
+ | |||
+ | === 津波警報の見直し === | ||
+ | この地震では最初に発表された津波警報の予想高さが過小評価となって避難の遅れに繋がった面があった。これは、地震発生直後に算出できる気象庁マグニチュードが、モーメントマグニチュード8を超える巨大地震では過小評価となってしまうからである。そのため気象庁は津波警報の改善を検討し、マグニチュード8を超える可能性がある場合には、その海域で想定される最大マグニチュードに基づいて津波警報の第一報を出す方針を決めた。津波警報の発表には、3分程度で算出できる気象庁マグニチュードを通常は基にする。しかし、強い揺れの範囲が明らかに広い場合や[[津波地震]]であると推定できる場合など、気象庁マグニチュードが過小評価である可能性がある場合には、事前に想定された最大のマグニチュードか、あるいは観測から得られる別の適正なマグニチュードを用いて第一報を発表する。このような場合には規模の推定が困難で、また最大限の危機感を伝えるため、第一報では予想高さを発表せず「巨大」などの表現とする。そして時間の経過とともに精度の高い津波警報に切り替えていく。また東北地方太平洋沖地震では第一波として「0.2m」のような低いものが発表されたため、第一波の発表の仕方も工夫するとした<ref>{{cite news | ||
+ | |url = http://www.asahi.com/national/update/0727/TKY201107270709.html | ||
+ | |title = 最大津波想定し警報第一報 M8超規模なら 気象庁 | ||
+ | |publisher = 朝日新聞 | ||
+ | |date = 2011-07-27 | ||
+ | |accessdate = 2011-08-11 | ||
+ | }}</ref><ref>{{cite web | ||
+ | |url = http://www.jma.go.jp/jma/press/1109/12a/torimatome.pdf | ||
+ | |title = 東北地方太平洋沖地震による津波被害を踏まえた津波警報の改善の方向性について(最終とりまとめ) | ||
+ | |publisher = 気象庁 | ||
+ | |format = PDF | ||
+ | |date = 2011-09-12 | ||
+ | |accessdate = 2011-09-14 | ||
+ | }}</ref>。 | ||
+ | |||
+ | === 情報 === | ||
+ | ==== 情報開示・広報 ==== | ||
+ | また、原発事故に関連する事故状況や拡散予測の開示、計画停電の発表などに関して、政府や東京電力などが公表が遅い、公表をすべきとの批判を浴びるような例が多数見られた。これに対して[[:en:Incident Command Post|Incident Command Post]]と呼ばれる専門の情報官が指示や広報を担う[[アメリカ合衆国|アメリカ]]のシステムを参考にし、[[クライシスコミュニケーション]]([[:en:Crisis communication|英語]])の観点から災害時の情報提供・広報活動を見直すべきとする識者もいる<ref>[http://www.mizuho-ir.co.jp/publication/column/2011/crisis0804.html 壊滅的複合災害における危機管理の課題] 多田浩之、みずほ情報総研、2011年8月4日。</ref>。 | ||
+ | |||
+ | ==== 災害時のメディア ==== | ||
+ | 地震発生後の停電地域や津波の被災地を中心に、情報不足が発生した。従来の[[報道機関]]は特別の体制をとって震災に関する報道を行った。他方、従来見られなかったような[[ソーシャルメディア]]を介した簡易性・双方向を特徴とする情報発信・入手が広く用いられた。その一方で[[東日本大震災関連の犯罪・問題行為#サイバー犯罪|サイバー犯罪]]が行われたり、[[東日本大震災関連の犯罪・問題行為#デマ情報|デマ情報]]・[[東日本大震災関連の犯罪・問題行為#チェーンメール|チェーンメール]]が誤った情報を流布させるといった問題も発生した。[[福島第一原子力発電所事故]]関係でも、[[福島第一原子力発電所事故の影響#風評被害|風評被害]]、[[福島第一原子力発電所事故の影響#人体の吸収と健康に与える影響|健康への影響]]や各種基準を巡る情報の錯綜、被曝に関する楽観論と危険論双方の主張の対立、[[日本の原子力政策]]を巡る議論など、様々な方面に波紋を呼んでいる。 | ||
+ | |||
+ | == 注釈 == | ||
+ | {{脚注ヘルプ}} | ||
+ | {{Reflist|group=注}} | ||
+ | |||
+ | == 出典 == | ||
+ | {{Reflist|2}} | ||
+ | |||
+ | == 関連項目 == | ||
+ | *[[東北地方太平洋沖地震に関する記事の一覧]] | ||
+ | *[[東日本大震災]] | ||
+ | *[[福島第一原子力発電所事故]] | ||
+ | *[[日本海溝]] | ||
+ | *[[巨大地震]] | ||
+ | *[[連動型地震]] | ||
+ | *[[群発地震]] | ||
+ | *[[誘発地震]] | ||
+ | *[[三陸沖地震]] | ||
+ | *[[宮城県沖地震]] | ||
+ | *[[福島県沖地震]] | ||
+ | *[[茨城県沖地震]] | ||
+ | *[[阪神・淡路大震災]] | ||
+ | |||
+ | == 外部リンク == | ||
+ | {{外部リンクの注意|date=2012-03}} | ||
+ | {{Wikinewscat|2011年東北地方太平洋沖地震}} | ||
+ | {{Commonscat|2011 Tōhoku earthquake}} | ||
+ | {{Commonscat|2011 Tōhoku earthquake damage|東北地方太平洋沖地震の被害}} | ||
+ | *政府・行政サイトへのリンク | ||
+ | **[http://www.bousai.go.jp/ 内閣府 災害緊急情報(東日本大震災関連情報)] | ||
+ | **[http://www.kantei.go.jp/saigai/ 首相官邸 東日本大震災への対応] | ||
+ | **[http://www.reconstruction.go.jp/ 復興庁] | ||
+ | *本地震の記録・解説へのリンク | ||
+ | **気象庁 | ||
+ | ***[http://www.jma.go.jp/jma/kishou/books/gizyutu/gizyutu_134.html 【気象庁技術報告】平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震調査報告] ISSN 0447-3868 平成24年12月 | ||
+ | ***[http://www.jma.go.jp/jma/menu/jishin-portal.html 東日本大震災 〜東北地方太平洋沖地震〜 関連ポータル] | ||
+ | ***[http://www.data.jma.go.jp/svd/eqdb/data/shindo/Event.php?ID=175313 震度データベース検索 (地震別検索結果)] - 本震の各地の震度 | ||
+ | ***[http://www.data.jma.go.jp/svd/eqev/data/gaikyo/monthly/201103/monthly201103.pdf 平成23年3月 地震・火山月報(防災編)] | ||
+ | ** 地震調査研究推進本部 [http://www.jishin.go.jp/main/oshirase/20110311_sanriku-oki.htm 平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震に関する情報] | ||
+ | **防災科学技術研究所 [http://www.bosai.go.jp/news/oshirase/20110316_01.html 東北地方太平洋沖地震情報] | ||
+ | **[[東京大学地震研究所]] [http://outreach.eri.u-tokyo.ac.jp/eqvolc/201103_tohoku/ 2011年3月 東北地方太平洋沖地震] | ||
+ | **[[京都大学防災研究所]] [http://www.dpri.kyoto-u.ac.jp/web_j/saigai/tohoku2011/index.html 平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震 災害調査活動] | ||
+ | **静岡大学防災総合センター [[小山真人]] [http://sk01.ed.shizuoka.ac.jp/koyama/public_html/etc/EastJM9.html 東日本沖で起きた巨大地震について] | ||
+ | **[[東北大学]]大学院工学研究科附属災害制御研究センター [http://sites.google.com/site/tohokuunivdcrc/home 東北地方太平洋沖地震に関する情報] | ||
+ | **[[日本地球惑星科学連合]] [http://www.jpgu.org/meeting/session/session_html/MIS36_P.html 2011年大会「2011年東北地方太平洋沖地震」 発表一覧(2011年5月22日-27日)] | ||
+ | **Japan Quake Map [http://www.japanquakemap.com/dailyEnergy 毎日の放出エネルギー], [http://www.japanquakemap.com/ 日本の地震地図] - [[カンタベリー大学 (ニュージーランド)|カンタベリー大学]](ニュージーランド) Paul Nichollsによる。 | ||
+ | *津波の記録・解説へのリンク | ||
+ | **[http://www.coastal.jp/ttjt/ 東北地方太平洋沖地震津波合同調査グループ] 全国津波痕跡調査の取りまとめ結果 | ||
+ | **[http://www.pari.go.jp/info/tohoku-eq/ 港湾空港技術研究所] 津波調査結果など | ||
+ | **[http://www.jwa.or.jp/content/view/full/3720/ 日本気象協会 2011年東北地方太平洋沖地震津波の概要(速報)] 津波襲来状況の分析 | ||
+ | 災害情報・ライフライン・伝言・復興支援・ボランティア・法律問題等へのリンクは、[[東日本大震災に対する支援活動]]の各項目を参照。 | ||
+ | |||
+ | {{DEFAULTSORT:とうほくちほうたいへいようおきししん}} | ||
+ | [[Category:東北地方太平洋沖地震|*]] | ||
+ | [[Category:日本の地震]] | ||
+ | [[Category:2011年の地震]] | ||
+ | [[Category:2011年の日本における災害]] | ||
+ | [[Category:東北地方の歴史]] | ||
+ | [[Category:関東地方の歴史]] | ||
+ | [[Category:岩手県の歴史]] | ||
+ | [[Category:宮城県の歴史]] | ||
+ | [[Category:福島県の歴史]] | ||
+ | [[Category:平成時代の地震]] | ||
+ | [[Category:連動型地震]] | ||
+ | [[Category:大地震]] | ||
+ | [[Category:津波地震]] |
2014年12月3日 (水) 00:47時点における版
東北地方太平洋沖地震(とうほくちほうたいへいようおきじしん)は、2011年(平成23年)3月11日(金)14時46分18.1秒[1]、日本の太平洋三陸沖を震源として発生した地震。東日本大震災[2][3][4]を引き起こし、東北から関東にかけての東日本一帯に甚大な被害をもたらした。
目次
概要
この地震は、2011年3月11日14時46分18.1秒[1]、牡鹿半島の東南東約130km付近の太平洋(三陸沖)の海底、深さ約24km[5]を震源として発生した。太平洋プレートと北アメリカプレートの境界域(日本海溝付近)における海溝型地震で[6]、震源域は岩手県沖から茨城県沖にかけての幅約200km、長さ約500km、およそ10万平方キロの広範囲にわたった。地震の規模を示すマグニチュードはMw9.0[7]で、大正関東地震(1923年)の7.9や昭和三陸地震(1933年)の8.4をはるかに上回る日本観測史上最大[8]であるとともに、世界でもスマトラ島沖地震(2004年)以来の規模で、1900年以降でも4番目に大きな超巨大地震であった[9][10]。
地震によって大規模な津波が発生した。最大で海岸から6km内陸まで浸水[11]、岩手県三陸南部、宮城県、福島県浜通り北部では津波の高さが8m-9m[12]に達し、明治三陸地震(1896年)の津波を上回る最大溯上高40.1m(岩手県大船渡市)を記録する[13]など、震源域に近い東北地方の太平洋岸では、高い津波が甚大な被害をもたらした。津波は関東地方の太平洋岸でも被害をもたらしたほか、環太平洋地域を中心に世界の海岸に達した。また、宮城県北部で最大震度7、岩手県から千葉県にかけて震度6弱以上を観測するなど広範囲で強い揺れとなり、関東地方の埋立地で大規模な液状化現象が発生した。一方東北太平洋岸では、地盤沈下により浸水被害が長期的に続いている。余震も過去例に無いペースで発生したうえ、通常の余震域外でも地震活動が活発化している[14][15]。
津波、液状化、建造物倒壊など、東北の岩手県、宮城県、福島県の3県、関東の茨城県、千葉県の2県を中心とした被害は大きく、この地震による死者・行方不明者計約1万8,500人の大半は東北の3県が占めた。また、発電施設被害による大規模停電や一連の震災により、日本全国および世界に経済的な二次被害がもたらされた。
一方、地震と津波により福島第一原子力発電所事故が発生し、10万人を超える被災者が屋内退避や警戒区域外への避難を余儀なくされた。警戒区域外でも、放射性物質漏れによる汚染が起きているほか、日本の原子力発電所の再稼働問題、電力危機なども発生している。
本地震の特徴として、いくつかが挙げられる。
- 海溝型地震であったこと : 北アメリカプレートと、その下に沈み込む太平洋プレートの境界部、日本海溝と呼ばれる地域で発生した海溝型地震であった。
- 連動型地震であったこと : 数十年 - 百数十年間隔で発生する海溝型のM8前後の大地震ではなく、それらが複数同時に発生する連動型地震であった。日本では19世紀終盤の近代観測開始以来初めて明瞭に連動型地震と断定されるものであった(スーパーサイクル参照)。
- 東北太平洋沖でこのような連動型地震が発生する事態は「想定外」であった : 地質調査や文献調査では、南海トラフ沿いにおいて20世紀中盤から、関東地域において20世紀終盤から広く認識されていた一方、東北太平洋沖、北海道や千島列島の太平洋沖、九州や南西諸島の太平洋沖ではそれぞれ21世紀に入ってから(特に2004年のスマトラ島沖地震以降)その可能性を示す知見が得られつつあった程度で、地震学界でも強く認識されていなかった。そのため、被害想定でもM8前後の海溝型地震までしか想定されていなかった。本地震後、新たな知見の集約や地震想定を見直す動きが活発化している(#教訓参照)。
- 超巨大地震であったこと : Mw9.0は「超巨大地震」に分類され、19世紀終盤からの世界観測史上数回しか発生していない未曾有の規模であり、日本国内では観測史上最大の規模であった。
- 広範囲で強い揺れを感じたこと : 規模が大きく震源域が南北に長かったため平行する本州・東日本の広範囲で強く揺れた。また、減衰しにくい長周期地震動によって名古屋、大阪など遠方でも揺れを観測した。
- 揺れが長時間続いたこと : 本震の地震動は東日本全域で6分間以上継続し、長い揺れとして体感された。長周期地震動は10分間以上、地球を自由振動させる超長周期地震動に至っては数十時間にわたって観測された。断層が滑る過程で、強い地震波を放出する破壊が数回に分けて断続的に発生したことが原因だとする説が発表されている。
- 短周期の揺れが主体であったこと : 地震の規模に比して長周期の揺れは小さく、短周期の揺れが主体であったため、地震による直接の家屋被害は比較的起きにくかったといえる[16]。ただし、家屋被害は宮城県と福島県を中心に広範囲に渡って発生している。
- 高い津波が発生したこと : 東北・関東・北海道などの太平洋岸に数m以上の津波が到達、内陸の浸水が広範囲に及んだ。津波地震でみられるような海溝寄りにおけるゆっくりとした断層の滑りや、津波が高さを増すような複数回にわたる滑りが生じていたことなどが原因だとする説が発表されている[17][18][19][20]。
- 大きな地殻変動が生じたこと : 東日本全域にわたる東方向への地殻変動や東北太平洋岸の地盤沈下などが、本震により急激に発生、その後も速度を緩めながらゆっくりと進行している。
- 液状化現象が多発したこと : 関東地方の津波の影響を受けなかった埋立地を筆頭に液状化が顕著に現れた。
- 前震とみられる地震があったこと : 本震発生2日前の3月9日、三陸沖でM7.3、最大震度5弱の地震が発生した[21][22]。震度1以上の余震は3月11日午前まで発生した[注 1]。
- 余震や誘発地震が多発していること : その規模の大きさに比例して余震の回数・規模ともに大きく、地震学で通常「余震域」とされる地域の外で「誘発地震」が発生した。研究者・行政双方から、東日本では地殻変動の影響で被害をもたらすような地震の発生が促されているとの発表がなされ、警戒が強められている。
名称
東日本大震災#名称 も参照 地震が発生した3月11日、気象庁はこの地震を「平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震」と命名した[23]。
英文による名称として
- 「The 2011 off the Pacific coast of Tohoku Earthquake」 - 気象庁、平成23年(2011年)3月11日命名[23]。
- 「Tohoku Region Pacific Coast Earthquake」 - 日本政府、首相官邸[4]。
- 「Tohoku - Pacific Ocean Earthquake」 - 防衛省、外務省、国土交通省、経済産業省など[24]。
- 「The Tohoku earthquake」 - アメリカ地質調査所 (USGS)、2011年3月16日時点[10][25]。
- 「The Sendai (earth)quake」 - 英語圏メディア[26]。
- 「The Japan (earth)quake」 - 英語圏メディア[27][28]。
などがある。
地震発生後、しばらくの間は各メディアや組織・団体において震災としての名称は統一されておらず、「東日本大震災」や「東北関東大震災」などの呼称が用いられていたが、日本政府は2011年4月1日の持ち回り閣議で、この地震による震災の名称を「東日本大震災」とすることを了解、発表し[3]、それ以降は各メディアでの呼称も「東日本大震災」に統一された。
その後、略称として月日より取られた「3.11」という記述もメディアではしばしば見られる。なお、「3.11」は2011年新語・流行語大賞トップテンに選出された。
余震の報道の際には「とうほくちほうたいへいようおきじしん」ではあまりに長いので、「2011年の超巨大地震」と通称される。
本震
気象庁や防災科学技術研究所などによると、この地震の要素は以下の通り。なお、発生時刻や震源は既知の地下構造モデルによって算出された理論上の精密値であり、実際の要素と多少のずれが生じている可能性がある。
- 発生時刻: 2011年(平成23年)3月11日 金曜日 14時46分18.1秒[1](日本標準時)
- 震源: 三陸沖(牡鹿半島の東南東約130km付近、北緯38度6分12秒 東経142度51分36秒)
- 震源の深さ: 24km[注 2]
- 地震の規模
- モーメントマグニチュード (Mw) 9.0
- 気象庁マグニチュード (Mj) 8.4[29]
- 最大震度: 震度7(宮城県栗原市築館町、計測震度6.67[30])
- 最大加速度 (PGA): 2,933ガル(宮城県栗原市)
- 断層型: 逆断層型(西北西-東南東方向に圧力軸を持つ)
- 地震の種類: 太平洋プレートが北アメリカプレート(オホーツクプレート)の下に沈み込んでいる沈み込み帯(海溝)である日本海溝で起きた海溝型地震
この地震により震度6弱以上を観測した地域は以下の通り[31](震度5弱以上を観測した地域の一覧は東北地方太平洋沖地震の前震・本震・余震の記録#本震を参照)。3月30日と6月23日に一部の震度データが修正されている[32][33]。この地震では発生から約3分後(14時49分)の震度速報で震度7が発表された[34]。速報の段階で震度7が発表されたのはこの地震が初めてである[注 3]。ちなみにこの地震における計測震度6.67は観測史上最大のものである。
震度 | 都道府県 | 市区町村 |
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7 | 宮城県 | 栗原市 |
6強 | 宮城県 | 涌谷町 登米市 美里町 大崎市 名取市 蔵王町 川崎町 山元町 仙台市(宮城野区) 石巻市 塩竈市 東松島市 大衡村 |
福島県 | 白河市 須賀川市 国見町 鏡石町 天栄村 楢葉町 富岡町 大熊町 双葉町 浪江町 新地町 | |
茨城県 | 鉾田市 日立市 高萩市 小美玉市 那珂市 笠間市 筑西市 常陸大宮市 | |
栃木県 | 大田原市 宇都宮市 真岡市 市貝町 高根沢町 | |
6弱 | 岩手県 | 大船渡市 釜石市 滝沢村 矢巾町 花巻市 一関市 藤沢町 奥州市 |
宮城県 | 気仙沼市 南三陸町 白石市 角田市 岩沼市 大河原町 亘理町 仙台市(青葉区・若林区・泉区) 松島町 利府町 大和町 大郷町 富谷町 | |
福島県 | 福島市 郡山市 二本松市 桑折町 川俣町 西郷村 中島村 矢吹町 棚倉町 玉川村 浅川町 小野町 田村市 伊達市 本宮市 いわき市[注 4] 相馬市 広野町 川内村 飯舘村 南相馬市 猪苗代町 | |
茨城県 | 水戸市 北茨城市 ひたちなか市 茨城町 東海村 常陸太田市 土浦市 石岡市 取手市 つくば市 鹿嶋市 潮来市 美浦村 坂東市 稲敷市 かすみがうら市 行方市 桜川市 常総市 つくばみらい市 城里町 | |
栃木県 | 那須町 那須塩原市 芳賀町[注 5] 那須烏山市 那珂川町 | |
群馬県 | 桐生市 | |
埼玉県 | 宮代町 | |
千葉県 | 成田市 印西市 |
宮城県栗原市で最大震度7を観測し、激しい揺れは2分間続いた[35][36][37]。震度7を観測したのは、2004年の新潟県中越地震以来7年ぶり、観測史上3回目[8]。仙台では震度6強を観測した[35][注 6]。このほかにも宮城県、福島県、茨城県、栃木県の一部で震度6強を観測するなど、震源域が広かったことから強震が広範囲にわたった。また、気象庁の震度推計分布図[38]によると、福島県いわき市で局地的に震度7相当の揺れがあったほか、防災科学技術研究所の強震観測網[39]によると、栃木県芳賀町にある観測点で震度7相当の揺れ(計測震度6.51[30])を観測していたことも分かっている[40]。ただし前者は震度計による観測ではないため、後者は気象庁の震度発表対象の震度計ではないため、いずれも観測点の震度には反映されていない。
このほかに東北・関東の一部では震度5強と震度5弱、北海道・東北・関東・東海・甲信越では震度4、北海道・東北・関東・東海・甲信越・近畿では震度3を観測した[35]。遠く鹿児島市でも震度1を観測しており、震源から1300km以上離れていることから、地震波はS波だけでも5分以上かけて到達している。東京大学地震研究所の解析によると、本震の揺れは東日本全体で約6分間続いた[41]。 日本で体に感じる揺れがなかったのは中国地方、四国地方、九州地方のそれぞれ一部と南西諸島のみ。長野市松代町の気象庁精密地震観測室は、地震発生から2時間半おきに、この地震によると見られる5回の表面波を確認。地震波は時速14000km(大気中のマッハ11相当)で地球上を5周したと見られる[42]。
メカニズム
規模
日本観測史上最大の規模
気象庁は当初マグニチュードを、気象庁マグニチュードで7.9と速報値を発表したが[35]、後に8.4という暫定値を発表した[43]。その後、新たに[44]モーメントマグニチュードで8.8と発表[45]し、1900年以降で最大だった1933年昭和三陸地震のMw8.4[46]や1963年択捉島沖地震のMw8.5を上回って、日本の近代地震観測史上最大となった。さらに、3月13日には外国の安定した遠地波形データも用いて9.0と発表した[7][注 7][注 8]。通常、日本の地震で使用されるマグニチュードは「気象庁マグニチュード (Mj)」と呼ばれるもので、発表されたM7.9、8.4は気象庁マグニチュードの値であったが、M8.8、9.0は「モーメントマグニチュード (Mw)」の値であった[7][注 9]。M9.0は、大正関東地震(1923年)の約45倍、兵庫県南部地震(1995年)の約1450倍のエネルギーに当たる[47]。
気象庁は、地震発生3分後にMj7.9と推定した時点ではマグニチュードの「頭打ち」が起こっているとは認識できず、想定されていた宮城県沖地震が発生したものと判断した[48]。しかし実際には地震があまりに巨大だったため、地震発生から約1時間14分後(16時)に発表された暫定値の気象庁マグニチュード8.4でも正確な規模の把握はできなかった。通常15分程度で算出できるモーメントマグニチュードも、国内の広帯域地震計がほぼ振り切れたため対応できず、国外の地震波形データを用いMw8.8と算出したのは約54分後(15時40分)と時間が掛かった(報道発表は精査後の17時30分、地震発生から約2時間44分後)[49][50]。しかし、長野県長野市松代にある気象庁精密地震観測室では、アメリカ地質調査所 (USGS) が運営するライブ・インターネット地震サーバー (LISS:Live Internet Seismic Server) などのデータを解析[51]し地震から約10分後にはM9を算出していたがこの計算結果は警報に使用されなかった[52]。また、アメリカ地質調査所は当初、モーメントマグニチュードを8.8と発表[53]、地震発生から約34分後に8.9、約6時間後に9.0と速報値、同15日に確定値を発表し[9][50]、1900年以降に世界で発生した地震の中で4番目の規模と発表した[10]。
海溝型地震・広い震源域
気象庁や東京大学地震研究所などによると、この地震は、断層面が水平に対して10度と傾きが浅く、西北西-東南東方向(ほぼ東西方向に近い)に圧縮される、低角逆断層(衝上断層)型のずれであった。水平方向の変位量が大きく、東北地方の太平洋沖地域に特徴的なタイプの海溝型地震である[7][54]。断層の破壊が始まった震源地は三陸沖だが、最終的に断層が破壊した震源域は日本海溝下のプレート境界面に沿って南北に長く、岩手県沖から茨城県沖までの南北約500km、東西約200km、深さ約5km - 40kmの範囲で、合計約10万km²の広範囲に及ぶ[7][55]。一方、スマトラ島沖地震 (2004年)では破壊域が長さ1000kmを越えたが、東北地方太平洋沖地震ではわずか500kmの破壊域でM9を発生させていて、これは宮城県沖の震央付近での変位量が極めて大きかったことを意味している[56]。
連動型地震
気象庁は地震発生後、この地震は単一ではなく、3つの地震が連動したもの(連動型地震)と解析した[7][6]。会見で同庁地震予知情報課の課長は、「5分前後かけて連続して発生するという、複雑な起こり方をしている。極めてまれで、気象庁の観測で初めての経験」と述べた[57]。文部科学省の地震調査委員会は13日に臨時会を開き、破壊断層は南北に400km、東西に200kmの広範囲で、少なくとも4つの震源領域で3つの地震が連動発生したと述べた[58]。東京大学地震研究所は、「大きな断層破壊が、1.宮城県沖、2.宮城県のさらに沖合、3.茨城県北部沖の陸に近い部分、の順に起こった」と説明している[59]。このうち第2の断層破壊で非常に大きな地殻変動が起きており、最大滑り量は30m超あるいは60mと推定されている[60][61]。この最大滑り量は2004年スマトラ島沖地震など世界の他の超巨大地震よりも大きく世界最大のものである。震源域の中で強い地震波を放出した点(破壊が大きいところ、セントロイド)は大きく震源の東側付近と茨城県沖の2つに分かれており[62][63][55]、連動型地震特有の長く複雑な破壊過程を経た。震源域が広いため広範囲で揺れを観測し、プレート境界深部が破壊したため震源域近部では強震となった。また、プレート境界浅部が2度にわたって破壊したことで2つのピークを持つ大津波を生じた。
地震波の解析により、プレート境界の海溝側の浅い部分と陸地側の深い部分で往復する形で破壊が進行したことが判明し、2011年5月20日付けのサイエンスに発表された[18]。海溝側の浅い部分の破壊は津波地震の特徴でもあり、これにより津波が巨大化した可能性も指摘されている[19]。
- 発生から3秒間は浅い(約25km)海溝側で、3月9日に発生したM 7.3の前震よりも小さい、緩やかな初期破壊。
- 40秒かけて深部(約40kmまで)に破壊が伝播し、短周期の地震波により陸上の激しい揺れをもたらす。
- 続いて発生60-75秒後にかけて浅い海溝付近でダイナミックオーバーシュート(dynamic overshoot、動的過剰滑り)により長周期の地震波と大規模な津波を発生。
- その後、再び深部へ破壊が伝播し、発生90秒後にかけて短周期の地震波により再度陸上の激しい揺れをもたらす。大きな破壊は100秒後までに止む。
この蓄積された歪を超える滑りであるダイナミックオーバーシュートによる強大な津波の発生メカニズムが明らかとなり、1896年の明治三陸地震津波は海溝側の浅部の滑りにより強大な津波が発生したものと理解される[64]。
また、海底活断層や約100万年前に日本海溝から北米プレート下に沈み込んだ海山が関与している可能性も指摘されている[65][66]。この地域のプレート境界は元来摩擦が少なく固着しにくいとされ、M9規模の超巨大地震が発生した原因はこれまで不明となっていたが、この海山が留め金として働いていた可能性があるという[注 10]。
小山 (2013) らは、本地震が従来連動型地震の起こりにくいとされてきた比較的高角の沈み込み帯である日本海溝で発生したこと、三陸沖中部から茨城県沖の陸側の震源域の連動に加えて海溝寄りまで震源域となり2重の地震セグメント帯 (Double Segmentation) であったことなどから、Single Segmentationと推定される1707年宝永地震や1960年チリ地震などとは異なる発生過程をたどったと考えた。従来低角でチリ型の沈み込み帯に分類されていた南海トラフやチリ海溝南部は地震前には明確な地震空白域を形成しているが、本地震の発生した日本海溝では明確な空白域は見られない、あるいはDouble Segmentationと推定される本地震や1964年アラスカ地震などでは狭い範囲に超大すべり域が存在するなどの特徴が見られ、超巨大地震にも多様性があることが示された[67]。
地震波・揺れの特徴
本地震の本震による揺れの特徴として、広範囲で強い揺れに見舞われたこと、揺れの継続時間が長かったこと、長周期地震動が広範囲で長時間発生したこと、短周期の揺れが主体で家屋被害は比較的起きにくかったことが挙げられる。
本震では、地震動の発生源である断層の破壊が複雑な過程で約100秒間も続いた[18]。この中には、1.宮城県沖、2.宮城県のさらに沖合、3.茨城県北部近海での計3回の大きな断層破壊が含まれており、各地の地震波形にそれが表れている。地震波は秒速3-7kmという限りある速度で伝播するため、異なる場所で発生した地震波が時間差で到達し、破壊継続時間以上の長さで強震が継続した[68]。
青森県から神奈川県にかけての各地で、震度4以上の揺れの継続時間が軒並み2分(120秒)を超え、特に崩壊範囲の中間に位置する福島県いわき市で3分10秒(190秒)に達するなどした[69]。また、地震動を感じ始めてから最大の震動を記録するまでの時間が長く、宮城県仙台市では約30秒後、茨城県日立市では約70秒経過後であった[70]。仙台市や塩竈市でも3分程度揺れが継続し、数十秒間だった1995年兵庫県南部地震や1978年宮城県沖地震と比べて非常に長かった[71]。
また日本全国で長周期主体の地震動を観測した。変位応答スペクトル波形では周期7秒付近に変位40 - 50cmのピークがあり、7秒前後の固有振動周期をもつ建物の揺れが大きかったと分析されている。また高層建築物の高層階で片振幅最大30 - 60cm程度の変位が観測された[72][73]。それでも、M9という地震の規模の割には長周期の揺れは小さかった[74]。
岩手・宮城・福島・茨城・栃木の各県で観測された本震の地震波の波形を速度応答スペクトル解析した結果によると、極短周期地震動・短周期地震動に当たる周期0.1 - 1秒の範囲で最も大きな揺れが見られる地点が多く、それより長い周期では相対的に揺れは小さかった[72]。宮城県栗原市築館(震度7)、塩竈市、茨城県日立市では、「キラーパルス」(一般的な木造住宅への破壊力が最も生じやすい揺れの周期)に当たる周期1 - 2秒では100カイン (cm/s) であり、木造家屋の倒壊被害が目立った1995年の兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災)における200 - 300カインに比べて小さく、家屋被害は起きにくい揺れだったと考えられる[75][74]。震度7を観測した栗原市においても全半壊した建物は47棟で、死者は0人だった[76]。一方で家屋被害は宮城県と福島県を中心に、茨城県にまで及んだ。震源域の中間に位置する福島県では、震源に近い浜通りだけではなく、内陸の中通り地方でも土砂の崩壊や家屋損壊が目立ち、矢吹町(震度6弱)では30%の家屋が全半壊し、郡山市(震度6弱)でも2万棟の家屋が全半壊するなど、他県の内陸市町村に比べて特に被害が集中した。
過去の地震・想定地震との比較
地震調査委員会の想定
この地震の震源となった三陸沖は、フォッサマグナより東側の日本(東北日本孤)を乗せている北アメリカプレート(オホーツクプレート)に対して、太平洋の広範囲を乗せている太平洋プレートが年間約8cmの速さで東南東から押し寄せ、青森県から千葉県にかけての沖合にある日本海溝を境にして東北地方・関東地方の下に沈み込んでいる[77]。太平洋プレートが沈み込んでいるこの付近には、M7を超えるような海溝型地震の震源域が多数存在しており、本地震発生前の段階で地震調査委員会ではこの地域を以下の8つの領域に区切ってその発生間隔や確率を評価していた[78][79]。
日本海溝の海溝型地震の発生評価[80] (2011年1月1日、地震調査委員会) |
東北地方太平洋沖地震による破壊の程度 (4月11日発表)[81] |
発生評価 [82] (2012年1月1日) | ||||
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領域 (上掲の想定震源域画像参照) |
M | 30年以内の 発生確率 |
M | 30年以内の 発生確率 | ||
三陸沖北部 | 固有地震 | M8.0前後 | 0.5 - 10% | - | M8.0前後、 Mt8.2前後 |
0.7 - 10% |
固有地震以外 | M7.1 - 7.6 | 90%程度 | M7.1 - 7.6 | 90%程度 | ||
三陸沖中部 | - | - | 震源域にも含まれる | - | - | |
宮城県沖 |
固有地震 | M7.4前後 | 99% | 震源域にも含まれる | M7.4前後 | 不明 |
固有地震以外 | M7.0 - 7.3 | 60%程度 | ||||
(宮城県沖と三陸沖南部海溝寄りの連動) | M8.0前後 | - | - | |||
すべり量が大きい ※本震の震源域 | ||||||
三陸沖南部 海溝寄り |
固有地震 | M7.7前後 | 80 - 90% | M7.9程度 | ほぼ0% | |
固有地震以外 | M7.2 - 7.6 | 50%程度 | ||||
福島県沖 | M7.4前後が 複数回連続 |
7%程度以下 | 震源域にも含まれる | M7.4前後が 複数回連続 |
10%程度 | |
茨城県沖 | 固有地震 | M6.7 - 7.2 | 90%程度以上 | 震源域にも含まれる ※M7.6の最大余震の震源域 |
M6.9 - 7.6 | 70%程度 |
固有地震以外 | M6.7 - 7.2 | 90%程度か それ以上 | ||||
房総沖[注 11] | - | - | - | - | - | |
三陸沖北部から房総沖の海溝寄り | 津波地震 | M8.2前後 | 20%程度 | 一部すべり量が大きい | Mt8.6 - 9.0 | 30%程度 |
正断層型 | M8.2前後 | 4 - 7% | M8.2前後、 Mt8.3前後 |
4 - 7% | ||
東北地方太平洋沖型の地震 | - | - | Mw8.4 - 9.0 | ほぼ0% |
このうち「宮城県沖地震」の領域は30年以内にM7.4前後の地震が99%で発生するという評価がなされていた上、平成17年の地震によってそのアスペリティの一部(3つのうち1つ)が破壊された、つまり宮城県沖地震は平成17年(2005年)に部分的に再来したと考えられ、残りの2つのアスペリティは近いうちに破壊されて地震を起こすと考えられていた[83][注 12]。
断層の破壊が最初に始まった(震源)「三陸沖南部海溝寄り」やその海溝側にあたる「三陸沖から房総沖の海溝寄り」の中部で20mを超える非常に大きな断層運動が発生したのをはじめ、この地震の南北500km・東西200kmにおよぶ震源域は、「三陸沖中部」、「宮城県沖」、「福島県沖」、「茨城県沖」の計6つの領域に及んでいた。破壊は牡鹿半島沖の震源から南北へ連鎖的に進んでいったが、北米プレートの下に沈み込んだフィリピン海プレートの北東端が地殻破壊の南下を食い止め、「房総沖」の北隣の「茨城県沖」で止まった[84]。また、北側では1994年三陸はるか沖地震あるいは1968年十勝沖地震(「三陸沖北部」に該当する)の震源域南端付近で止まっている[85]。このような広い震源域を持つM9の巨大地震は、従来想定されていなかった。
想定に入れられなかった過去の巨大地震
この地震の震源域は、869年(貞観11年)に宮城から福島にかけての太平洋沖で発生したM8.4(産業技術総合研究所による)の貞観地震の推定震源域と類似しており、地震発生直後よりこの再来である可能性が指摘された[86][87]。貞観地震は以前より文献記録によって知られていたものの、2000年代になって津波堆積物の調査によって石巻・東松島で海岸から3km内陸まで遡上、仙台で同2km、名取・岩沼で同4km、亘理・山元で同2kmと大規模な津波を伴う巨大地震であったことが明らかになった。堆積物の広域調査から同様の巨大地震は紀元前390年頃、允恭天皇年間(430年頃)、貞観11年(869年)、明応年間(1500年頃)と過去4回発生しており、再来間隔は450 - 800年程度と推定する報告があった[88]。また、東北学院大学の地質調査により、約2千年前の弥生時代にも津波が発生しており、本地震で発生した津波浸水域と同程度の浸水域が仙台平野では発生していた可能性があることが地震後報道された[89]。これらのことから、東北地方太平洋沖地震発生後に海溝型地震の長期評価見直しを進めた政府の地震調査委員会は2011年11月24日、津波堆積物の調査結果を反映して、紀元前4-3世紀頃、4-5世紀頃、869年の貞観地震、15世紀頃[注 13]、今回の地震、合わせて都合5回、三陸から房総にかけて約600年周期で海溝型地震が発生していると認定し、次回の地震規模はM8.3-9.0としている[82][90]。なお、869年貞観地震は日本海溝深部、1896年明治三陸地震は日本海溝浅部の、お互い隣接する細長い震源領域の地震と考えられており、本地震は「貞観地震と明治三陸地震が同時発生した」と見る研究者もいる[14]。
2011年4月13日、東北大学の当地震の緊急報告会[91]で、東北アジア研究センター教授の平川新は、江戸時代に整備された宿場町が、今回の地震で津波被害を受けていないことを指摘。「慶長16年(1611年)に発生した慶長三陸地震では、当地震と同等規模の津波浸水域が発生したとされ、その経験を基に宿場・街道などが整備された」、「明治時代以降の土地利用で津波経験の記憶を喪失した」との報告を行った[92]。また、同報告会では、貞観地震で発生した津波よりも本地震で発生した津波の方が大規模だったとの報告も行われている[93]。
石橋克彦は「日本三代実録」の記録を基に、今回の地震が貞観地震より大規模なもので震源域が南に延びていたかもしれないと推定している。理由は、貞観地震では京都(今回震度3)や関東(今回震度4-5)の地震記事がない[94]というものである[95]。
岩手県大槌町では岩手県や大槌町の調査により、本地震による津波の浸水範囲は、明治三陸地震による津波の浸水範囲とほぼ同程度だったことが判明している[96]。同年5月15日にこれが発表されるまで町側は津波の規模や被害を想定外としていたが、実際には本地震から過去115年前にも同規模の津波が襲来したことが明らかになり、改めて三陸沿岸一帯が「津波常襲地帯」であることが浮き彫りになった[96]。
予知および前兆現象
東北地方太平洋沖地震では地震予知は成功せず[97][98]、巨大地震の発生前に起こるとされているプレスリップ(前兆すべり)も観測されなかった[99]。 地震学界で確立されていると考えられていた地震の規模・発生域と発生間隔を予測する確率論的な「長期予知」においても、今回のように東北地方太平洋沖の広範囲が破壊してMw9.0に達するような巨大地震は予見されておらず、前項の地震調査委員会の発生評価にもなかったことから、「想定外」の事態であった。
ただ、今回のような地震を予見しうる手掛かりはいくつかあった。比較沈み込み学の「日本海溝は沈み込む太平洋プレートが古いため超巨大地震は発生しない」という定説に対して、古い海洋プレートが沈み込んでいる地域で起きた2004年スマトラ島沖地震によって疑問が提起されていた。また2000年代に日本の地震学界での支持が広がっていた「アスペリティモデル」に対しても矛盾が指摘されていて、地震の活動度に地域差がある東北沖では地震の少ない地域では「非地震性のすべり」がひずみを解消しているという説を見直す動きもあった。また2000年代後半以降、地質調査により仙台平野内陸などでほとんど知られていなかった巨大地震の津波の痕跡が次々と明らかになっていてこれらの知見を確率論的地震予知に反映しようとする動きが始まっていた。しかし、2011年3月11日時点では、超巨大地震発生の想定にはまだ至っていなかった(東北地方太平洋沖地震及び津波のメカニズムも参照)。
こうした経緯から、地震後は従来の説を見直す動きや様々な方法で地震予知をしようとする動きが活発化している。また、地震の発生想定の拡充を求める意見や、「確率が低いから地震は来ない」といった楽観論を生みやすい確率論的な地震予知に対する批判・反省を行う向きがあり、予知よりも減災・防災に力を入れるべきとする見解を表明する地震学者もいる[100][101]。
事後の検証において、1976年から2011年までの期間に本震震源域で発生した Mw 5.0 以上の地震と潮汐力の関係を調査したところ、1976年からの約25年間は相関関係がなかった。しかし、2000年頃から次第に相関関係が現れ、本震の発生直前では明瞭な傾向が出現し、断層に掛かる力が最大になる時間帯に地震が多く発生していた。特に、前震とされる3月9日11時45分(三陸沖)M 7.3 の震源と本震の破壊開始点の間の領域付近には強い相関が現れていたが、本震以降は潮汐力との関係は見られなくなった[102]。
静穏化
1995年2月に行われた地震予知連絡会会報の第53巻では、1926年から1960年までのM6.5以上のデータを解析したところ、本震のきっかけとなったとされている2011年3月9日11時45分頃 (JST) に三陸沖を震源として発生したM7.3の地震の震源と本震の震源周辺に生じていた地震空白域が気象庁より報告されている[103]。また、2007年頃より東北地方全体の M5 以上の地震回数が減少し『静穏化』現象が発生していた[104][105]。また、2011年2月中旬ころより東北地方(陸域)全体の地震活動も低下していた[106]。この静穏化の後、後述の前震活動が始まった。
前震活動
主な前震の記録参照
3月9日(水)11時45分(本震の約51時間前)に、本震震源の約50km北東に当たる北緯38度19.7分、東経143度16.7分の深さ8kmを震源とするMw7.3、宮城県栗原市・登米市・美里町で最大震度5弱を観測する地震が発生し、青森県から福島県にかけての太平洋沿岸に津波注意報が発表され、大船渡市で0.6mの津波を観測した[107][108][109]。また、翌3月10日6時23分にはその近くでM6.8・最大震度4の当時最大余震と考えられていた地震が発生するなど[110][111]、3月11日の巨大地震当日にかけて震度1以上を観測する余震が発生していた。気象庁はこれが「前震だった可能性がある」としている[112]。また、2011年2月13日から、3月9日の地震とほぼ同じ場所でM5.5を最大とするM5クラスの地震がまとまって発生していた[113]。
これより約1カ月前の2月中旬以降、2度のスロースリップイベント(ゆっくりすべり)が発生し、3月11日の本震の破壊開始点に向かう微小地震の震源移動が続いていた。1度目は、2月中旬から2月末にかけて、2度目は3月9日のM7.3の地震の発生後で、これらのスロースリップにより、モーメントマグニチュード(Mw) 7.1に相当する地震エネルギーが解放されたと考えられる。このスロースリップが、巨大地震の発生を促進した可能性が指摘されている[114]。
地震学において前震では、地震の規模と回数の関係式(グーテンベルグ・リヒター則)における系数b値が通常の1よりも小さな値となり、「地震の規模に比して小さな余震が少ない」ことが知られている。この3月9日の地震ではb値が約0.47と、通常の日本海溝付近における0.8に比べて顕著に小さく、前震の可能性が高い有力な根拠の一つとされているほか、日本海溝地域で1960年代から2011年までb値が減少し続けていたことが明らかとなった[115]。
ただし、3月11日の本震と震源域が重複せず隣接していることから、前震ではなく9日の地震により11日の地震が誘発された可能性を指摘する研究者もいる[116][117]。
電離層全電子数
北海道大学教授の日置幸介によるGEONET(GPSの連続観測網)の公開データを用いた調査では、地上局とGPS局を結ぶ経路がちょうど震源域上空の電離層における最大電子密度高度約300kmと交差する局において電離層全電子数 (TEC) の変化を推定した結果、電子密度の増大が地震発生の約40分前から発生しており、これを地図面に投影すると20分前から地域の特定ができることが分かり、1994年北海道東方沖地震や2010年チリ地震でも確認されたことから「巨大地震の直前予知には有望な手法」だとしている[118]。また、電気通信大学名誉教授の早川正士は、アメリカ・ワシントン州ジム・クリークの超長波局NLK[注 14]が250キロワットで送出している24.8kHzビーコンの、東京調布での夜間継続観測において、地震発生約5日前の3月5日と3月6日電離層に振幅が小さくなる異常があったとしている[119][120]。
すべり欠損
プレートの相対的平均速度から期待される相対変位量から実際の相対変位量を引いた値が、すべり欠損と呼ばれるが、宮城県沖ではこのすべり欠損が蓄積し続けていたと考えられる。つまり、歪みの蓄積量に対し地震による放出量が不足し、放出されない歪みが蓄積され続けていた。実際の観測データで見ると2003年と2005年に相次いで宮城県沖地震が発生したが2003年と2005年の放出量は1978年より少なく、一部の研究者は注視していた[121]。
余震・誘発地震活動
主な余震・誘発地震の記録参照
余震
余震の多発
余震活動は極めて活発で[122]、本震から1時間足らずの間にM7以上の強い地震が立て続けに発生した[123]。一連の余震は、岩手県沖から茨城県沖までの幅約200km、長さ約500kmの範囲を震源としている[7]。本震の直後、東北大学地震・噴火予知研究観測センターが設置していた地震計の3割が破壊されたり、通信回線が途絶したりするなどしてセンターは余震の観測データを受け取れなくなり、気象庁が発表する地震情報や緊急地震速報の発令に支障が生じる事態となった[124]。
まず30分後の15時15分には茨城県沖を震源とするM7.6の最大余震が発生し、茨城県鉾田市当間で震度6強を観測した[125] [112][126][注 15]。M5以上の余震は3月中に466回あった。2014年10月2日までに観測されたものでは、M5以上が821回、M6以上が113回、M7以上が9回、最大震度4以上のものは331回、最大震度1以上のものは11,148回あった[127]。M5以上の余震の回数は日本観測史上最大であった1994年北海道東方沖地震の4 - 5倍であり、記録的なペースで推移している[14]。特に福島県浜通りから茨城県北部にかけては、4月11日の地震を最大として活発な地震活動がみられ、M3以上の地震は2012年8月までに1600回を超えた[128]。
また発生数もさることながら、単独で被害をもたらすような大きな余震が時間を経て度々発生するのも本地震の特徴である。本震から1ヶ月近く経過した4月7日には、宮城県沖を震源とするM7.2、最大震度6強の余震(震源の深さ66km、スラブ内地震)が発生、4人の死者が出た[125][129][130]。また、4月11日には福島県浜通りを震源とするM7.0、最大震度6弱[注 16]の余震(福島県浜通り地震、内陸地殻内地震。)が発生、4人の死者が出た[131][130]。さらに、本震から4ヶ月後の7月10日には三陸沖を震源とするM7.3、最大震度4の余震が発生し、小規模な津波が観測された。2012年3月14日には千葉県東方沖を震源とするM6.1、最大震度5強の余震が発生し1人の死者が出た[132]。同日には三陸沖の北部でもM6.9の地震があり、津波を観測したが、気象庁は余震に該当するかどうかは不明としている。本震から一年経過後も、活発な余震活動が継続しており、本震から21ヶ月後の2012年12月7日にも三陸沖を震源とするM7.3、最大震度5弱の余震が発生、最大98cmの津波を観測した[133]。
気象庁は3月13日から4月21日にかけて、M7.0以上の地震が3日以内に発生する「余震の発生確率」を発表、当初は70%と高かったが次第に低下していった[7][134](余震の発生確率を参照のこと)。その後4月28日には、減少がみられることから発生確率の発表を行わなくなり「今後もまれに大きな余震が起こることもある」とした[135]。一方同年4月時点で、東京大学の井出哲准教授は「M7レベルの地震は10回以上は起きる」、東京大学地震研究所の大木聖子助教は「最大余震が1年後に発生することもありうる」、との指摘をしている[136]。また、同年11月18日に気象庁は地震予知連絡会で、同月15日から12月14日までの1か月間に本震域や周辺においては15%の確率でM7以上の余震が発生するとの分析結果を報告した。これは発生したM5以上の余震の傾向から得たもの。また余震は減少傾向にはあるものの3月11日以前の7倍の確率であり、大きな余震への警戒を要するとしている[137]。
余震の広域性
一連の余震は、本震の震源域に当たる岩手県沖から茨城県沖までの幅約200km・長さ約500kmの範囲と、そこに隣接する海溝軸の東側(海溝外縁隆起帯=アウターライズ)を震源としている[7][138]。多くは本震と同種の「海溝型地震」(プレート境界地震)であるが、震源域西側の地殻の浅い所では「内陸地殻内地震」(内陸直下型地震:大陸プレート内地震)、震源域西側の地殻の深い所では「スラブ内地震」(深発地震:海洋プレート内地震の一種)、海溝軸東側では「アウターライズ地震」(海洋プレート内地震の一種)も発生している。特に日本海溝東側の海溝外縁隆起帯(アウターライズ)では本震による地殻変動の影響で、余震が発生した場合に後述のようにより規模が大きくなる可能性が高まったことも指摘されている。このほか、次節で述べるように震源域から数百kmも離れた所でM6以上の比較的大きな地震が多数発生しており、巨大地震による地殻変動の影響が考えられることも今回の地震で特徴的とされる。
誘発地震
今回の地震では震源域から離れたところでも被害地震(遠隔誘発地震)が発生している。これらも大きな視点では、今回の一連の地震活動の中に含まれると考えられており、震源域で発生する余震と区別して「誘発地震」や「広義の余震」[139]と呼ばれている。 複数の専門家が、本地震によって東日本を中心に地殻変動や応力の変化が生じ、地震の発生が促進された地域があるとの見解を発表している[140][141]。
表面波による動的誘発
神奈川県箱根町の箱根火山地下浅部では、本震の揺れが継続中であった14時49分から50分にかけてM3.8-4.2の地震が4回立て続けに発生し、本震の地震動と重なって局地的に最大で震度6弱の揺れを観測したことが、神奈川県温泉地学研究所が独自に設置した地震計の地震波解析で判明した。震源は駒ケ岳・大涌谷の深さ2-6km地点、M4規模であったため強い揺れは0.5秒程であった。箱根の断層が本震の影響を受けやすい向きであったために、本震による長周期の地震動(表面波)に誘発されたものとみられている。この地震は箱根に本震の表面波が到達した頃から発生しており、本震の地震波に伴う地盤の動的応力変化によって発生した動的な誘発地震と考えられている[142][143][144]。
また、京都大学防災研究所の宮沢理稔が行った、気象庁や研究機関など日本各地約1500箇所の地震計のデータから本震や余震による直接の地震波を取り除く手法による解析では、本震後約15分間に関東から伊豆諸島、四国、九州までの広い範囲で約80-100回以上、M5未満の誘発地震が発生していたことが判明した。以前より活動が活発な飛騨や北伊豆で顕著に増加した。さらに誘発地震は本震の震源域から南西方向に秒速3.1-3.3kmで広がっており、これは表面波の伝達速度と一致する。本震のLg波 Rg波などの表面波により起励され、「火山近傍」「プレート境界付近」「近年の規模の大きな地震が発生した余震域」[145]などの地震が起きやすい地域で誘発されたとみられていて、動的誘発作用(ダイナミックトリガリング)によるものと推察されている。動的誘発作用が広がっていく過程が確認されたのは初めてとされる[146][147][148]。
本震後の北アメリカプレート(オホーツクプレート)内部での誘発地震
3月12日未明には長野県北部地震 (M6.7) が、15日夜には静岡県東部地震 (M6.4) がそれぞれ発生した(いずれも最大で震度6強を観測)。これらの地震は内陸の活断層における地震であり、気象庁は3月12日に「太平洋沖での地震と直接関係はないが、地殻変動などにより誘発された可能性は否定できない」と述べ[149]、今後も震度6弱の余震が連続して起こる可能性があると注意を呼びかけた[7]。
この他には、秋田県内陸北部、福島県浜通り、茨城県南部、長野県中部でも震度5強以上の地震が発生している[138][150]。気象庁精密地震観測室(長野県長野市松代)では、6月30日に長野県中部の地震 (M5.4) が発生した震源域付近において、本地震後から震度1以上の有感地震の増加を観測しており、本地震による地殻変動が影響した可能性があるとの見解を示している。震源域の付近に位置し本震後に発生確率が上がったとされた牛伏寺断層との関連については、「震源の状況から別の断層によるものとみられる」との見解を示している[150]。また、福島県会津地方から山形県置賜地方にかけては本震以降に群発地震が発生し、2011年5月7日のM4.6を最大として2011年12月末までに体に感じない微小地震を含め、16000回を越える地震を観測している。
本震後には東日本全体で地殻変動が観測されていることから、これらの地震は東日本内陸部の地殻に加わっていた応力が大きく変化した事が引き金になって発生したものと考えられている[151]。このような地震は特殊な例ではなく、過去の海溝型の大地震後にも余震域周辺および震源域とは離れた場所で、数年間に渡って誘発地震が発生したケースがある[152]。
本震後のプレート境界での誘発地震
関東地方南方沖では北アメリカプレートと太平洋プレートに加えてその下にフィリピン海プレートが沈み込んでいて、沈みこんだプレートが地下50-100km程度に位置する茨城県南部は以前より地震が多発している地帯だが、今回の本震後も誘発地震が多数発生した。3月24日 (M4.8) と4月2日 (M5.0) の地震は沈み込んだフィリピン海プレートと上盤側の北アメリカプレートとの境界付近で発生しているが[153]、4月16日 (M5.9) と7月15日 (M5.4) の地震はフィリピン海プレートの下にさらに沈み込んでいる太平洋プレートとのプレート境界付近で発生しており[154][155]、震源となるプレート境界が異なっている。いずれも震源地としては内陸部であるが、プレート境界で発生する海溝型地震に分類されている(詳細は「東北地方太平洋沖地震の前震・本震・余震の記録」を参照)。
その他の地域では本震における未破壊領域となっている、南北に長い日本海溝にある今回の震源域の南端(房総沖および千葉県東方沖)や北端(三陸沖北部、1994年の三陸はるか沖地震の震源域)での波及地震の発生が懸念されている[注 17]。さらに、この他にも同海溝の北隣にある千島海溝(十勝沖及び根室半島沖)、北アメリカプレート内の他の境界部(糸魚川静岡構造線および日本海東縁変動帯)での波及地震に注意する必要があるという指摘がある[156]。
加えて、産業技術総合研究所の石川有三招聘研究員は関東南部におけるフィリピン海プレートの境界部でも地震活動が活発化していると指摘している[157]。南関東直下地震の確率が上昇したとの報道が2011年9月以降にされているほか、調査により関東地方地下のフィリピン海プレートの深さが従来の想定よりも浅い所にあることが判明したことを受けて2012年3月には同地震の見直した震度推定が公表される[158]など、関東地方でも被害地震の発生が懸念されている。
東北太平洋沖で早ければ2011年4 - 5月中にも再びM8級の巨大地震が発生する可能性が高いと見る専門家もおり、これが4月に報道されていた[159]。京都大学防災研究所の遠田晋次准教授は、M8級の誘発地震が発生した場合、仙台市に10mの津波が襲来すると計算している[159]。文部科学省の地震調査委員会(地震調査研究推進本部)は、「三陸沖から房総沖の海溝寄り」の領域で発生すると予測されていた津波地震の想定Mt(津波マグニチュード)を従来の8.2前後から8.6-9.0前後に更新し、誘発される可能性があると発表した[160][161]。また、同じくM9規模の超巨大地震である2004年のスマトラ島沖地震のように、数年かけて周辺で大地震が続発する可能性があるという指摘[162]もなされている。
スロースリップ現象の誘発
千葉県房総半島沖では、明瞭な振動を伴わないスロースリップが誘発され、従来は平均6年間隔で発生していたが前回の発生から4年目で発生した[163](「千葉県東方沖地震 (1987年)#千葉県東方沖のスロースリップ現象」も参照)。この活動の総放出エネルギー量は、モーメントマグニチュードMw6.5と推定されている[164]。
地殻変動
地震活動の変化
本震のすべり量が大きい日本海溝の海溝軸付近では、プレート境界より深いところの海洋プレート内部では余震が多発しているものの、プレート境界の逆断層型の余震は少ない。原因として、本震時にすべり量が大きかった場所ではひずみが十分に開放された一方、その周囲では本震や余効変動によってひずみが蓄積しているため余震が多発しているのではないかという考えがあるほか、この地域では通常プレート間の固着が非常に強固であることから、本震後すぐに強固な固着が復活してしまった可能性が指摘されている[165][166]。
また、震源域に近い海域での大規模な誘発地震の発生が注目されている。宮城県・福島県遠方沖、日本海溝東側の海溝外縁隆起帯にあたる太平洋プレート上に設置した海底地震計等により4月から2ヶ月間行われた、海洋研究開発機構 (JAMSTEC) による海洋プレート内地震の調査では、深さ約20キロの浅い領域は本震発生以前の正断層型のまま変化はないが、約40キロの深い領域では本震発生以前の逆断層型から正断層型の地震に変化していた。本震の影響によりプレート内部の応力の方向が変化している可能性などが考えられ、これまでと異なり深い部分まで応力の方向が揃ったため、プレート内部の地震がM8級の巨大地震に及ぶ可能性も指摘されている[167][168]。日本海溝東側のように沈み込む手前の海洋プレート内で発生する地震はアウターライズ地震と呼ばれており、大きな津波が発生しても震源が陸地から遠いため揺れが小さくなるといった「津波地震」と類似した特徴があるため、避難行動が遅れて被害が拡大する恐れがある。本震40分後の15時25分に発生したM7.5の余震が該当し、過去には1933年昭和三陸地震もこのタイプで甚大な津波被害を出した。
地殻変動・沈降(地盤沈下)
本震および、余震を含む余効変動により、大きな地殻変動が発生した。東日本全域が東方向に10cm以上移動するなどその範囲は広い。東北から関東、甲信越までの東北日本の地殻は普段より太平洋プレートの沈み込みによる西方向への圧縮力を受けていたが、東北地方太平洋沖地震とその後の余効変動では逆に東方向への引っ張り力を受けており、地震活動の変化が懸念されている。また陸側の太平洋プレート上の震源域付近では隆起、震源域の西側では沈降が発生したため、東北から関東にかけての太平洋岸では軒並み地盤沈下が起きて二次被害をもたらしている。震源に近いところではさらに大きな地殻変動が起きていて、研究によっては震源に近い海底で東に推定50m以上という、世界の地震観測史上類を見ない急激な移動が生じた。
- 国土地理院の計測による上下方向の最大移動は、宮城県石巻市鮎川浜の電子基準点付属標「牡鹿」で1.14m沈降である。
- 国土地理院の計測による水平方向の最大移動は、宮城県女川町江島の二等三角点「江ノ島」での東南東方向5.85mである[169]。また、岩手県陸前高田市で4.473m、東京都足立区で0.41m動いた。遠い所では新潟県村上市1.41m、石川県輪島市0.58m、福井県勝山市0.26m、岐阜県飛騨市で0.33m移動している。なお3月12日の長野県北部地震 (M6.7) は、水平移動0.92m[注 18]の場所で起こっている。
- 国土地理院の計測によると、すべての日本の地図(経緯度)の基準となる東京都港区麻布台(狸穴)にある日本経緯度原点が、27.67cmだけ真東へ移動した。また、国会前庭にある日本水準原点が、24mmだけ沈下した[注 19]。
- 陸域観測技術衛星 (ALOS)「だいち」のレーダーからも、広範囲で地殻変動があったことが解析された[170][171]。
- 同上の地球観測研究センターでは被災地の地球観測衛星写真を公開している[172]。また、GoogleはGoogle EarthおよびGoogle マップで被災前後の地球観測衛星写真を公開している[173]。
- 海底基準点(海底に設置された電子基準点)のデータでは、震源域のほぼ真上に位置する「宮城沖1」が東南東に約24m移動し、約3m隆起したものが最大であった。他の地点でも、「宮城沖2」が東南東に約15m移動し約60cm沈下、「福島沖」が東南東に約5m移動するなどのデータが観測された。「宮城沖1」は本震だけで約20m以上移動したと見られ、これらの観測結果により、震源付近の海底の移動距離は陸上の約4倍以上となることが確認された。(本震前と約3週間後の3月28日 - 29日の比較、GPS観測、海上保安庁4月6日発表[174])
- 海洋研究開発機構の調査によると、震源近くから海溝付近では、南東〜東南東に約50m、上方に約7mから10mの地殻変動があった[175]。
本地震による津波が陸地をさかのぼったことに加えて、広範囲で地盤沈下が発生したことで、東北地方太平洋側の海岸が一部沈没した。津波によるものと地盤沈下によるものを合わせた浸水面積は、青森県から千葉県までで合計561km²に達した。海岸線の一部沈没により一部自治体の面積が減少し、将来的に地図の書き換えが必要になると考えられるが、国土地理院は被災地に配慮し、地図の書き換えは当面行わないとした。自然災害による面積の変更は例が無いという[176][注 20][177]。国土地理院は平成23年(2011年)4月5日から10日にかけて3県13市町28か所の水準点、三角点や電子基準点の標高を計測し、以下の通り地盤沈下の変動量を発表した[178][179][180]。
岩手県 | 宮城県 | 福島県 | |||
---|---|---|---|---|---|
市町村 | 地盤沈下の変動量 | 市町村 | 地盤沈下の変動量 | 市町村 | 地盤沈下の変動量 |
宮古市 | 0.50m | 気仙沼市 | 0.74m | 相馬市 | 0.29m |
山田町 | 0.53m | 南三陸町 | 0.69m | ||
大槌町 | 0.35m[179] | 牡鹿半島 | 1.2m[179][181] | ||
釜石市 | 0.66m | 石巻市 | 0.78m | ||
大船渡市 | 0.73m | 東松島市 | 0.43m | ||
陸前高田市 | 0.84m | 岩沼市 | 0.47m |
地震後は余効変動が継続し、GEONETによる観測結果から地震時に沈降した茨城県沿岸から宮城県沿岸にかけては地震2年後の調査時点で余効変動により隆起に転じ部分的に回復したが、三陸海岸北部では依然沈降が続いていることが判明した[182]。また、この余効変動は本震より深部のプレート境界滑りによるものと考えられるが、その回復的隆起は小さい。東北地方太平洋岸は10万年スケールの地質学的なデータでは年間約0.5ミリメートル隆起していると推定されるのに対し、100年スケールの測地学的な観測データは沈降を示しており、さらに今回の超巨大地震で大きく沈降し余効変動でも相殺できるとは考えにくく矛盾があるとされた[183]。
自転への影響
この地震によって地球の自転がわずかに速くなり、一日の長さ(平均太陽日)が1.8µs(マイクロ秒)だけ短くなった[184]。
副振動
この地震の本震発生時から終息後数分間、副振動(セイシュ)とみられる、閉鎖性水域の水面のゆっくりとした大きな変動が観測された。日本では少なくとも2か所、西湖で1 - 2分周期・1m程度の水位変化が観測されたほか、芦ノ湖でもゆっくりとした1m程度の水位変化が観測された。長周期地震動と地殻変動が原因と推定されている[185]。また、ソグネ・フィヨルドの中域に位置するノルウェーのライカンゲルでも観測されているほか、カナダのニューファンドランド島では井戸の水位変動が観測された[186]。
火山活動
東北地方、関東地方、中部地方、伊豆諸島を中心に日本各地の火山において、地震後火山性地震の活発化が観測されたが、噴火の前兆とされるような活動は見られず次第に沈静化した。しかし、871年鳥海山噴火や1707年富士山噴火(宝永大噴火)、1991年ピナトゥボ山噴火、2006年ムラピ山噴火などの例から、噴火が誘発される可能性は否定できないとする報告がある[14]。
液状化
この地震により、東日本の広範囲で地盤の液状化現象が観測された。規模が大きかった千葉県浦安市では、埋め立て地が大半を占める土地柄の影響で中町・新町地区を中心に市面積の85%が液状化する大きな影響を受けたのをはじめ[187]、同じ東京湾岸の、千葉市、船橋市、習志野市、東京都江東区新木場、江戸川区、港区、中央区、大田区、神奈川県横浜市金沢区、川崎市のほか、河川周辺の造成地でも香取市、我孫子市、茨城県ひたちなか市、神栖市、潮来市、稲敷市、埼玉県久喜市南栗橋、宮城県大崎市などで被害が発生した[188][189][190][191][192][193][194][195]。
今回の地震による関東地方の揺れは、加速度(揺れの大きさ)自体はそれほど大きくないものの、規模に比例する形で長周期地震動が大きく、それが長時間続いたこと、大きな余震が多発したことによって、液状化の被害が拡大したとの見方がある[71]。
各地の総面積は少なくとも42km²に上り、直前に起こったカンタベリー地震の34km²を上回る最悪の被害面積となった[196]。
津波
日本国内
津波警報
この地震で気象庁は、気象庁マグニチュード7.9という推定に基づき[48]、まだ揺れの続いている中の14時49分、岩手県、宮城県、福島県の沿岸に津波警報(大津波)[注 21]、その他の全国の太平洋沿岸などに津波警報・津波注意報を発表し、予想される津波の高さについて、宮城県で6m、岩手県と福島県で3mと発表した。しかし、実際の津波の高さはこれを大きく上回った。通常は地震発生15分後に算出されるモーメントマグニチュードがこの地震では算出できず、津波警報の続報に生かせなかった[48]。また15時には岩手県沖の海底水圧計で5mの津波が観測されていたが、津波の予測に水圧計を使うことは気象庁のマニュアルになかった。その後、水圧計よりも陸側に設置されたGPS波浪計や沿岸の検潮所などで高い津波が観測されたため、津波警報・注意報は15時14分、15時30分に更新・拡大された。岩手県釜石沖のGPS波浪計では15時12分に6.7mを観測し、これはマニュアルによれば沿岸では10m以上の高さになるとされる値だったが、15時14分の警報更新では10m以上の予想は宮城県のみで、岩手県と福島県では6mの予想だった[197]。15時30分には岩手県から千葉県九十九里・外房までの予想高さが10m以上になった[198][199]が、すでにその時間帯には三陸沿岸に津波が襲来していた[200]。
3月12日3時20分までに太平洋沿岸の北海道から小笠原諸島、四国までと青森県日本海沿岸には津波警報(大津波)が、北海道日本海沿岸南部や東京湾内湾、伊勢湾、瀬戸内海の一部、九州、南西諸島などには津波警報が、日本海や瀬戸内海の沿岸などには津波注意報が発表され、日本の沿岸の全てで津波警報(大津波)、津波警報、津波注意報のいずれかが発表されたこととなった[201][202]。仙台市宮城野区・太白区・若林区・青森県太平洋側沿岸をはじめとして全国各地に避難指示が発令された[203][204]。気象庁が津波警報・注意報を全て解除したのは、丸二日以上経過した3月13日17時58分だった[205]。なお、気象庁が津波警報(大津波)を発表したのは1年ぶり(そのうち、青森・岩手・宮城では1年ぶり、北海道では約18年ぶり)である。
観測された津波
地震によって、観測史上最大級の非常に大規模な津波が発生し、北海道[206]から千葉県[207]にかけて大津波が押し寄せた。特に岩手県・宮城県・福島県の3県では、海岸沿いの集落が軒並み水没したのをはじめ、仙台平野などの平野部では海岸線から数km内陸にわたる広範囲が水没、遡上した津波により河川沿岸ではかなり内陸まで水没した。陸に押し寄せた高い津波は、各地で防潮堤や堤防を乗り越え、建築物や構造物を破壊し、それらが瓦礫となって車などと一緒にさらに内陸まで侵入した後、引き波となって瓦礫を海まで引きずり出した後、後続の波によって再び内陸へという形で繰り返し沿岸を襲い、甚大な被害を出した[206][208][209][210][211]。また、震源から見て日本列島の裏側に当たる日本海側沿岸や瀬戸内海沿岸、東京湾内でも津波を観測している[212]。航空写真などを基に国土地理院が分析したところによると、津波により浸水した範囲は、青森・岩手・宮城・福島・茨城・千葉の6県62市町村で561km²に及んだ[213]。
計器観測された津波高
津波の第一波は、震源に近い観測所では地震発生とほぼ同時刻に数十cm程度の海面変動が観測され、陸に近い分岐断層のずれによる津波が早い段階で到達した可能性も考えられていた[214]。しかし、気象庁は後日の精査により、釜石・大船渡・石巻・相馬の4地点については、津波によるものと海震などによるものとの区別が難しいことから速報値を取り消し、「11日午後2時台」として何分かは「不明」と発表し「今後も第1波到達時刻の特定は難しい」との見解を示した[215][214]。宮古港では15時1分に1m24cmの引き波を観測し、第一波の到達時刻と特定された[215]。
検潮所の測定による津波の高さは、岩手県の宮古で8.5m(15時26分)以上[注 22][216]、釜石で4.2m(15時21分)以上、大船渡で8.0m(15時18分)以上[216]、宮城県の石巻市鮎川で8.6m(15時26分)以上[217]、福島県の相馬で9.3m(15時51分)以上[218]などだった。ただ、東北地方のこれらの検潮所は津波によって途中から観測データを送信できなくなったため、それ以降については記録が残っていない[219]。このうち相馬の記録のみ、引き波の後の最初の押し波が全て記録されているが、気象庁はこの記録について、これ以降の津波の記録が他の検潮所と同様に計測できておらず、後続の波がこれよりも高くなった可能性を考慮して「9.3m以上」と表現している。このほか、青森県の八戸で4.2m(16時57分)以上(一時的に欠測の部分あり)[220]、茨城県の大洗で4.0m(16時52分)を記録している[221]。福島県のいわき市小名浜では3.3m(15時39分)だった[222]。距離が近い東北地方だけでなく、北海道の太平洋岸で1-3.5m程度、千葉〜九州の太平洋沿岸で1-3m程度、日本海側でも1m未満の津波が観測された。
沖合に設置されたGPS波浪計は、岩手県北部沖〜福島県沖において15時12分から15時19分の間に最大波を観測し、このうち最大のものは岩手県南部沖(釜石沖)の6.7mだった(沿岸ではさらに高くなる)。岩手県南部沖では少なくとも7回の津波を観測した。また、岩手県北部沖〜宮城県北部沖にでは、潮位は最大波の数分前に小さく上昇し、その直後に高く鋭い波形が現れた[223][224][225]。釜石沖に敷設された海底ケーブル式水圧計による海面変動の記録(TM1, TM2)でも、最初に海面が徐々に2m程度上昇したのち、約11分後にパルス的な3m程度の急上昇が見られた。プレート境界の比較的深い部分の断層破壊によってもたらされたのが最初の長く緩やかな海面上昇で、それに続く急激な高い津波は、海溝近くでの大規模な断層破壊によるものと考えられている。
一方で、この二つの異なる波長の津波は異なる波源から生じたものとする推定があり、海底電位磁力計による観測結果から長波長の緩やかな海面上昇は宮城県沖の広範囲の断層滑りが原因であるのに対し、短波長のパルス波は震源から約100km北東の海溝付近が波源と考えられ、この位置は明治三陸津波の波源域に近く何らかの関連が示唆されるとしている[226]。この、短波長の津波は震源から約150km北東の日本海溝付近で発生した海底地滑りの可能性があり、これが津波を巨大化させた一因である可能性があるという[227]。
また、波源域から発せられた直接波だけでなく、太平洋の対岸にあたる南米で反射した長周期(30分から60分)の津波を約50時間後に津波コーダとして海底水圧計は観測していた[228]。
推定された津波高
日本気象協会は、岩手県宮古市から福島県相馬市までの沿岸の津波高(海上での津波の高さ)は約8-9mあったと推定した[12]。一方、陸上の比較的海岸に近い地点での浸水高は、浸水した痕跡などから、岩手県から宮城県牡鹿半島までの三陸海岸で10-15m前後、仙台湾岸の高いところで8-9m前後としている[12]。陸前高田市、南三陸町、宮古市などでは建物の4、5階まで浸水した[229]。津波の溯上高(斜面を駆け上がった高さ)は、三陸海岸では30m以上のところがあった[230]。全国津波合同調査チームの調査によると、津波の遡上高は岩手県大船渡市の綾里湾において40.1mにまで達したものが最大と見られており、この記録は明治三陸地震の最大記録38.2m(同市綾里地区)を上回り、明和の大津波(発生当時は琉球)を除けば日本で記録された最大の遡上高となった[13][231][232]。また東京大学地震研究所の都司嘉宣准教授によると、宮城県女川町の笠貝島では溯上高が43mに達していた可能性がある[233]。他に、宮古市田老地区の小堀内漁港近くで37.9m、岩手県野田村で37.8m、宮城県女川町で34.7m、大船渡市三陸町綾里で30.1mの遡上高が確認されている[231][232][234][235]。福島県の警戒区域内での津波は、佐藤愼司東京大学大学院教授(海岸工学)らと福島県の共同で2012年2月に初めて調査が行われ、最大で21.1m(富岡町小浜)に達していたことが分かった[236]。
各地で被害を出した津波
宮城県女川町では、鉄筋コンクリート製のビルが基礎部分ごと地面から抜けて横倒しになった。このような例は世界的にも稀で、町はビルを被害資料として保存する方針である[237][238]。
東北大学教授の今村文彦は、NHKが仙台市若林区で撮影した津波の映像を分析し、津波の速さは沿岸から1km内陸の地点では秒速約6m・時速20km以上であったと明らかにした[239]。名取川では津波が陸地の倍の速さで逆流し、堤防からあふれ出して流れ落ちる過程でさらに加速したことで内陸6kmまで浸水したり、川沿いの集落も被害を受けた[240][11][241]。
仙台平野では名取川、鳴瀬川、阿武隈川、七北田川などで数km以上津波が遡上した。北上川では、津波が河口から約50km上流の地点まで遡上したことが河川水位の記録データから判明した[242]。十勝川においても、河口から約13km上流の地点まで遡上した[243]。関東地方では利根川で河口から約40km上流まで、荒川で河口から約28km上流まで遡上していることが確認された。
岩手県の宮古市田老地区では、チリ地震津波から集落を守ったとされる高さ10m、総延長2433mの防潮堤を津波が乗り越え、防潮堤は580mにわたって粉砕された[244][245]。岩手県釜石市では、ギネス世界記録に「世界最深の防波堤」と認定されている全長2km、深さ63mの防波堤、釜石港湾口防波堤が平成21年(2009年)に完成しており、津波によって防波堤自体は全体の7割が倒壊したものの、釜石市街地への浸水を約6分遅らせることができたとの分析結果が報告されている[246]。これに対し、岩手県普代村では、高さ15.5m、全長155mの防潮堤、普代水門により村の海岸地域が守られ、村全体で死者0名、行方不明者1名の人的被害に留まっている[247]。一方、釜石市唐丹町小白浜での破壊の状態から、防潮堤は向かってくる津波に対しての耐波力は有していたが、越流した引き波を想定した設計が不十分であったため防潮扉が破壊され、後続波に対しては無防備となったと考えられている[248]。
その後の余震によっても、たびたび津波警報や津波注意報が出された[199]。7月10日9時57分ごろに発生した三陸沖を震源とするM7.3、最大震度4の余震では、本震以降で初めて津波を観測した(岩手県の大船渡と福島県の相馬でともに10cm)[249]。
{{#if:An aerial view of tsunami damage in an area north of Sendai, Japan, taken from a U.S. Navy helicopter.jpgSH-60B helicopter flies over Sendai.jpgSignpost of prayer and wish.JPG|{{#if:津波による被害(宮城県)|
津波による被害(宮城県)
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(中)仙台市宮城野区沿岸上空から北向きに仙台港周辺を空撮(2011年3月12日)
(右)名取市の日和山から北向きに閖上地区を撮影(2011年4月6日)。数台の重機が瓦礫の撤去作業をしている。
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津波警報・津波注意報の発表時間と切り替えの推移[250]、観測された津波の検潮所での最大波高 | |||||||||||
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津波警報(大津波)が発表された予報区。津波の高さ (m) 表記のうち、標準の太さは津波注意報、太字は津波警報、 太字下線は津波警報(大津波)。"10m<"は10m以上。"N"は警報区分引き下げのみで予想高さなし。"-"は継続。 | |||||||||||
予報区 | 3月11日 | 12日 | 13日 | 検潮所の最大波高と時刻 (注記がないものは11日)[212] | |||||||
地震発生 14:46 |
14:49 | 15:14 | 15:30 | 16:08 | 22:53 | 13:50 | 20:20 | 7:30 | 17:58 | ||
北海道太平洋沿岸東部 | 0.5m | 1m | 3m | 6m | - | N | N | - | 解除 | 根室市花咲 286cm (15:57) | |
北海道太平洋沿岸中部 | 1m | 2m | 6m | 8m | - | N | N | - | 解除 | えりも町庶野 3.5m (15:44) | |
北海道太平洋沿岸西部 | 0.5m | 1m | 4m | 6m | - | N | N | - | 解除 | 苫小牧東港 246cm (16:17) 以上 | |
青森県日本海沿岸 | 0.5m | 1m | 2m | 3m | - | N | 解除 | ||||
青森県太平洋沿岸 | 1m | 3m | 8m | 10m< | - | - | N | N | 解除 | 八戸 4.2m (16:57) 以上 | |
岩手県 | 3m | 6m | 10m< | - | - | - | N | N | 解除 | 宮古 8.5m (15:26) 以上 大船渡 8.0m (15:18) 以上 釜石 4.2m (15:21) 以上 | |
宮城県 | 6m | 10m< | - | - | - | - | N | N | 解除 | 石巻市鮎川 8.6m (15:26) 以上 | |
福島県 | 3m | 6m | 10m< | - | - | - | N | N | 解除 | 相馬 9.3m (15:51) 以上 いわき市小名浜 3.3m (15:39) | |
茨城県 | 2m | 4m | 10m< | - | - | N | N | - | 解除 | 大洗 4.0m (16:52) | |
千葉県九十九里・外房 | 2m | 3m | 10m< | - | - | N | - | - | 解除 | 銚子 2.5m (17:22) | |
伊豆諸島 | 1m | 2m | 4m | 6m | - | N | - | - | 解除 | 八丈島八重根 1.4m(12日2:48) | |
小笠原諸島 | 0.5m | 1m | 2m | 4m | - | N | - | - | 解除 | 父島二見 182cm (16:46) | |
千葉県内房 | 0.5m | 1m | 2m | 4m | - | N | - | 解除 | 館山市布良 172cm (17:06) | ||
相模湾・三浦半島 | 0.5m | - | 2m | 3m | - | N | 解除 | 小田原 94cm (15:49) | |||
静岡県 | 0.5m | - | 2m | 3m | - | N | - | 解除 | 御前崎 144cm (17:19) | ||
和歌山県 | 0.5m | - | 2m | 3m | - | N | N | - | 解除 | 串本町袋港 151cm(12日1:32) | |
徳島県 | 0.5m | - | 2m | 3m | - | N | - | 解除 | 徳島由岐 115cm (20:28) | ||
高知県 | 0.5m | - | 2m | - | 3m | N | N | - | 解除 | 須崎港 278cm (20:59) |
日本国外
東日本大震災#日本国外 も参照 太平洋津波警報センターが、アメリカ合衆国ハワイ州現地時間3月10日21時31分(地震発生から1時間45分後)に、同州に対し津波警報を発令[251]。太平洋津波警報センターはその他、ロシアやニュージーランド、南米のチリなども含む約50の太平洋沿岸の国・地域に津波警報を発令した[252]。
日本から太平洋を隔てて遠く離れた中南米沿岸にも津波が押し寄せる恐れがあるとして、各国は市民に注意を呼び掛けた。沿岸地域や島嶼部では、津波を警戒して避難命令が出された[253]。
南極スルツバーガー棚氷(英:Sulzberger Ice Shelf)付近(南緯77度西経148度)の海上に長さ9.5km幅6.5km厚さ80mの氷山が漂流していることが欧州宇宙機関の人工衛星Envisatによる観測で確認され、地震に伴う津波(高さ0.3m)が繰り返し到達し、棚氷の一部を破壊し巨大な氷山を造ったとNASAが2011年8月9日明らかにした[254][255][256]。
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国・地域 | 避難 | 津波警報 | 津波の高さ | 犠牲者 | 出典 |
---|---|---|---|---|---|
台湾 | 有 | 有 | 0.1 m | 0 | [257] |
ニュージーランド | 無 | 有 | 0.4 m | 0 | [258] |
アメリカ、グアム | 有 | 有 | 0.4 m | 0 | [259][260][261] |
アメリカ、北マリアナ諸島 | 有 | 有 | 0.4 m | 0 | [259][260] |
アメリカ、ハワイ州(ほとんどの地域) | 有 | 有 | 2.1 m | 0 | [262][263] |
アメリカ、ミッドウェー島 | 無 | 無 | 1.5 m | 0 | [264] |
アメリカ、ハワイ、マウイ島 | 有 | 有 | 2.1 m | 0 | [264][265] |
アメリカ、アラスカ州、シェミア島 | 有 | 有 | 1.5 m | 0 | [264] |
アメリカ、アラスカ州、アリューシャン列島 | 有 | 有 | 1.5 m | 0 | [264] |
アメリカ、ハワイ、ハワイ島、コナ | 有 | 有 | 3.7 m | 0 | [264] |
アメリカ、ウェーク島 | 有 | 有 | 1.8 m | 0 | [261][264] |
アメリカ、カリフォルニア州 | 有 | 有 | 2 m | 1 | [266][267] |
フィリピン(ほとんどの地域) | 有 | 有 | 1 m | 0 | [268][269] |
パラオ(一部地域) | 有 | 有 | 0.11 m | 0 | [261][268][270][271][272][273] |
ツバル、ナヌメア環礁 | 有 | 有 | 小さな波2回 | 0 | [274] |
インドネシア、モルッカ諸島、北スラウェシ州 | 有 | 有 | 0.1 m | 0 | [257][268][269][275] |
インドネシア、パプア州 | 有 | 有 | 1.5 m | 1(行方不明5) | [276] |
ロシア、オホーツク海沿岸 | 不明 | 不明 | 3.3 m | 0 | [277] |
千島列島(北方領土を含む) | 有 | 有 | 3.3 m | 0 | [277][278] |
メキシコ、太平洋沿岸 | 不明 | 有 | 0.7 m | 0 | [279] |
カナダ、ブリティッシュコロンビア州 | 有 | 有 | 0.5 m | 0 | [280] |
フランス領ポリネシア、タヒチ島 | 有 | 有 | 0.4 m | 0 | [281][282] |
フランス領ポリネシア、マルキーズ諸島 | 有 | 有 | 3.0 m | 0 | [283] |
ペルー、カヤオ | 有 | 有 | 1.66 m | 0 | [284] |
チリ、イースター島 | 有 | 有 | 0.3 m | 0 | [285] |
チリ、アリカ | 有 | 有 | 0.91 m | 0 | [284] |
太平洋を往復した津波
津波は太平洋を越え、チリのタルマワノ観測所では2mの津波を観測した (NOAA)。その津波の反射波が日本に戻ってきて47-48時間後に30-60cmの津波が、小名浜、尾鷲、串本の各検潮所で観測されたと見られる[286][287]。
緊急地震速報
第報 | 発表時刻 | 経過時間(秒) | 北緯 | 東経 | 深さ | Mj | 備考 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 14時46分45.6秒 | 5.4 | 38.2 | 142.7 | 10km | 4.3 | 最大震度 1程度以上と推定 |
2 | 14時46分46.7秒 | 6.5 | 38.2 | 142.7 | 10km | 5.9 | 最大震度 3程度以上と推定 |
3 | 14時46分47.7秒 | 7.5 | 38.2 | 142.7 | 10km | 6.8 | |
4 | 14時46分48.8秒 | 8.6 | 38.2 | 142.7 | 10km | 7.2 | |
5 | 14時46分49.8秒 | 9.6 | 38.2 | 142.7 | 10km | 6.3 | |
6 | 14時46分50.9秒 | 10.7 | 38.2 | 142.7 | 10km | 6.6 | |
7 | 14時46分51.2秒 | 11.0 | 38.2 | 142.7 | 10km | 6.6 | |
8 | 14時46分56.1秒 | 15.9 | 38.1 | 142.9 | 10km | 7.2 | |
9 | 14時47分02.4秒 | 22.2 | 38.1 | 142.9 | 10km | 7.6 | |
10 | 14時47分10.2秒 | 30.0 | 38.1 | 142.9 | 10km | 7.7 | |
11 | 14時47分25.2秒 | 45.0 | 38.1 | 142.9 | 10km | 7.7 | |
12 | 14時47分45.3秒 | 65.1 | 38.1 | 142.9 | 10km | 7.9 | |
13 | 14時48分05.2秒 | 85.0 | 38.1 | 142.9 | 10km | 8.0 | |
14 | 14時48分25.2秒 | 105.0 | 38.1 | 142.9 | 10km | 8.1 | |
15 | 14時48分37.0秒 | 116.8 | 38.1 | 142.9 | 10km | 8.1 |
本震に対し、気象庁は初期微動(P波)検知(14時46分40.2秒)の5.4秒後に予報第一報を発表し、8.6秒後に一般向け緊急地震速報(警報)を宮城、岩手、秋田、山形、福島の各県に発表した。震度7を観測した宮城県栗原市ではS波到達まで15秒の猶予があった[288]。しかし、この地震発生の際に発表された緊急地震速報では、予測震度と実測震度が大きく乖離している地点があり[289]、震度5弱以上の強い揺れを観測した青森・関東・甲信越地方には一般向け緊急地震速報は発表されず、青森・関東・甲信越を放送エリアとする民放のテレビ・ラジオ番組、該当地域にない携帯電話のエリアメール機能などで注意喚起がされなかった。また、地震検知5.4秒後に発表された予報第1報でのマグニチュードは4.3・最大震度1程度以上と過小評価され、一般向けの警報を発表したのはM7.2と推定した地震検知8.6秒後の第4報だった。
気象庁気象研究所は原因としてそれぞれ、最大振幅から推定するマグニチュードの上限に達してしまったこと・震源域の広がりを十分に考慮できなかったこと、地震の最初の振幅がきわめて小さかったこと[注 23]を挙げている[290]。なお速報の第14報において茨城県北部でも震度5弱以上が予想されたが警報の更新条件である60秒以内に満たなかったため発表されなかった。
また本震後に、緊急地震速報が過大に予測されたり、強い地震でも発表されないなど、適切に発表できなくなる問題が発生した。気象庁は原因として、異なる場所でほぼ同時に発生した複数の地震を1つの地震として処理してしまうため、また停電や通信回線の途絶によりデータ処理に使用できる地震計の数が減少したためとしている[291]。この問題に対し気象庁は、ほぼ同時に起きた地震のうち緊急地震速報(警報)の発表対象としていない小規模の地震を計算の対象から外すことにより、2つの地震を誤って結び付ける頻度を減らすシステム改修を行った[292]。
被害・影響
「東日本大震災」と命名された本地震による日本国内の被害は、地震そのものによる被害に加えて津波・火災・液状化現象・福島第一原子力発電所事故・大規模停電など多岐に渡り、1都9県が災害救助法の適用を受けた[293]。警察庁発表による死者および届出があった行方不明者の数は合わせて約1万8,500人で、津波被害を受けた東北地方の太平洋沿岸を中心に関東地方や北海道でも死傷者が出る事態となっている[294]。この死者・行方不明者数は、明治以降の地震被害としては関東大震災の10万5,385人、明治三陸地震の2万1,959人に次ぐもので[295]、阪神・淡路大震災の6,437人を大きく上回る第二次世界大戦後最悪の巨大自然災害となった[296]。
津波と原発事故の影響を連続して受けた福島県浜通りなどを中心に複合災害の状況を呈し、避難区域においては救助・捜索活動が中止される事態も発生した。
対応・支援と復興
震災に対する支援活動、菅内閣の対応、日本国外の対応、トモダチ作戦、パシフィック・アシスト作戦、くしの歯作戦も参照
津波警報の発表があった沿岸地域では、消防・消防団・警察・自主防災組織・自治体担当者などによる避難誘導が行われたが、中には津波により負傷・殉職した者もいた。発生当日より国内各地から消防の緊急消防援助隊・警察の広域緊急援助隊が派遣され、(原発避難地域も含めて)被災地の救助・捜索・警備などに当たった。最大約6,100人・総数約28,600人(のべ派遣人数は10万人)の消防隊員が派遣された[297]。また最大約4,900人・6月末時点で4,000人以上の警察官[298]が派遣されたほか、海上保安庁も救助・捜索・港湾復旧などを行った。また自衛隊も最大で10万7,000人、7月21日時点でも2万3,000人規模で救助・捜索・避難所支援や復興支援活動を行い[299]、7月下旬に岩手県・宮城県[300][301]、12月下旬に福島県(原発事故対応を含む)[302]での活動を終えた。
国内の多数の企業・団体も震災後に物資提供や金銭などの支援を表明している。また通信・報道企業が災害用伝言板・安否情報提供の運用や情報インフラ支援などを行ったのをはじめ、震災の影響に応じた様々な支援やサービスを提供しているところがある。(震災に対する支援活動参照)
地震直後より、国際連合を始めとした国際機関、アメリカ合衆国やロシア連邦を始めとした世界各国が日本に対して支援の用意があると表明、様々な対応や支援を行っている。特にアメリカは、洋上基地として原子力空母ロナルド・レーガンを派遣するなどの「トモダチ作戦」を展開した。
諸外国政府による公式な対応、支援以外にも、日本国内外を問わず様々な組織・団体または有志が、この地震に対しての支援を表明・実行している。
この地震に対する救援・支援の輪が広がったことから、日本漢字能力検定協会が公募選定する2011年の『今年の漢字』には『絆』が選ばれ、その理由の筆頭に東日本大震災が挙げられた。
復興方針の骨格を決める東日本大震災復興基本法(6月20日可決、6月24日施行)、国の復興業務を一本化した復興庁(2012年2月10日設置)を軸として政府の復興事業は進められている。しかし、当初より原発事故や計画停電に関する件を中心として政府や東京電力などに対して「対応が遅い」などの批判が相次いだ。津波被災地の多くで仮設住宅の建設や基幹産業である水産業の中枢である港湾の復旧が重点的に進められているほか、国の予算配分や有志による義援金の配分に基づいて復興計画が進められている。
教訓
長期評価の見直し
この地震では、政府が東北地方沖で従来想定していたものとはかけ離れた規模の地震が発生した。政府の地震調査委員会は、東海、東南海、南海地震などの海溝型地震の長期評価を見直すことを決めた[303]。2011年11月に、三陸沖から房総沖までの長期評価を見直したものを発表し、今回のような地震 (Mw8.4-9.0) が平均600年間隔で発生していると認定した。また、三陸沖から房総沖までの海溝寄りで、津波マグニチュード (Mt) 8.6-9.0(明治三陸地震並み[注 24])の津波地震が30年以内に発生する確率が約30%あるとした[304][305]。ただし、この発表は従来の予測手法によっており、今後さらに検討される[306]。
津波想定の見直し
国の中央防災会議の専門調査会は、この地震を教訓とした津波対策について検討した。そのうえで、これまでは過去の文献などから確実に地震の全体像が分かった切迫性のある地震だけを考慮して想定を行ってきたが、これからは確度の低いものでも考えうる最大のものを想定することを求めた。また、この地震による津波が防潮堤を超えて甚大な被害をもたらしたことから、津波のレベルとして、住民の避難を柱にした総合的な対策を取るべき最大規模の津波と、防潮堤などで浸水を防げる比較的頻度の高い津波の、2つを想定する必要があるとした[307][308]。
津波警報の見直し
この地震では最初に発表された津波警報の予想高さが過小評価となって避難の遅れに繋がった面があった。これは、地震発生直後に算出できる気象庁マグニチュードが、モーメントマグニチュード8を超える巨大地震では過小評価となってしまうからである。そのため気象庁は津波警報の改善を検討し、マグニチュード8を超える可能性がある場合には、その海域で想定される最大マグニチュードに基づいて津波警報の第一報を出す方針を決めた。津波警報の発表には、3分程度で算出できる気象庁マグニチュードを通常は基にする。しかし、強い揺れの範囲が明らかに広い場合や津波地震であると推定できる場合など、気象庁マグニチュードが過小評価である可能性がある場合には、事前に想定された最大のマグニチュードか、あるいは観測から得られる別の適正なマグニチュードを用いて第一報を発表する。このような場合には規模の推定が困難で、また最大限の危機感を伝えるため、第一報では予想高さを発表せず「巨大」などの表現とする。そして時間の経過とともに精度の高い津波警報に切り替えていく。また東北地方太平洋沖地震では第一波として「0.2m」のような低いものが発表されたため、第一波の発表の仕方も工夫するとした[309][310]。
情報
情報開示・広報
また、原発事故に関連する事故状況や拡散予測の開示、計画停電の発表などに関して、政府や東京電力などが公表が遅い、公表をすべきとの批判を浴びるような例が多数見られた。これに対してIncident Command Postと呼ばれる専門の情報官が指示や広報を担うアメリカのシステムを参考にし、クライシスコミュニケーション(英語)の観点から災害時の情報提供・広報活動を見直すべきとする識者もいる[311]。
災害時のメディア
地震発生後の停電地域や津波の被災地を中心に、情報不足が発生した。従来の報道機関は特別の体制をとって震災に関する報道を行った。他方、従来見られなかったようなソーシャルメディアを介した簡易性・双方向を特徴とする情報発信・入手が広く用いられた。その一方でサイバー犯罪が行われたり、デマ情報・チェーンメールが誤った情報を流布させるといった問題も発生した。福島第一原子力発電所事故関係でも、風評被害、健康への影響や各種基準を巡る情報の錯綜、被曝に関する楽観論と危険論双方の主張の対立、日本の原子力政策を巡る議論など、様々な方面に波紋を呼んでいる。
注釈
- ↑ 震度1以上を観測し公表された余震は翌10日午前中にいったん収束(2011年3月9日の震央分布図 - 日本気象協会)、同日夕方から震度を弱めて再び引き続いたが(2011年3月10日の震央分布図 - 日本気象協会)、11日午前7時44分頃を最後に再度収束した(2011年3月11日の震央分布図 - 日本気象協会)
- ↑ なお、震源域の深さは上端5km、下端40kmとされている。 (国土地理院 平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震 震源断層モデルの概念図)
- ↑ この地震より前に震度7を観測した地震には兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災)と新潟県中越地震がある。兵庫県南部地震では発生直後は最大震度が6とされ、震度7が発表されたのは発生から21日後だった(当時は現在と異なり、震度6までは地震計で計測し、震度7は被害状況を見て判断することになっていた)。新潟県中越地震では発生直後は最大震度が6強とされ、震度7が発表されたのは発生から7日後だった(このときは機械と通信回線の故障から地震計の記録が直ちに送られず、震度7の記録は後から回収された地震計の記録から求められた)。
- ↑ いわき市については、気象庁の震度推計分布図によると局地的に震度7相当の揺れがあったとみられている。
- ↑ 芳賀町については、防災科学技術研究所の設ける観測点で震度7相当の揺れ(計測震度6.51)を観測している。
- ↑ 仙台管区気象台(河岸段丘)の震度:6弱、最大加速度(ガル):南北成分410、東西成分312、上下成分144、ベクトル合成535。K-NET仙台(沖積層)の震度:6強、最大加速度(ガル):南北成分1517、東西成分982、上下成分290、ベクトル合成1830。
- ↑ M9.0という規模は連続して発生した3つの断層破壊(地震)を総合評価して計算されたものであるが、気象庁は最初に三陸沖で発生した断層破壊を単体でみてもM8.8という巨大地震(2つ目の断層破壊が発生したのは最初の断層破壊の約2分30秒後であるため、最初のものについては単独評価が可能)であるとしている。
- ↑ こうした速報値、暫定値で数値が変わることを報道などで「修正」や「訂正」という表現がなされるが、速報性を重視して多少精度を犠牲にしたもので暫定的な値であることは織り込み済みのものである。通常のルーチン作業を経て決定された値で、何らかのミスなどで値が変更になったわけではないので誤解を招く表現である。震源要素(速報値、暫定値、確定値)の違いについて - 平成15年7月 地震・火山月報(防災編)
- ↑ 巨大地震ではマグニチュードの増加に比例して長周期の地震動は大きくなるが、短周期の地震動は増加率が小さいため、地震波の大きさを重視した一般的なマグニチュードでは「頭打ち」が起こる。この影響を取り除くため、断層の動いた範囲(断層面積)・量(変位量)・ずれやすさ(剛性率)の積で表される地震モーメントMテンプレート:subを重視したのがモーメントマグニチュードである。地震動による被害のみを見る場合はMjの方が実態に近い一方、モーメントマグニチュードは津波の高さとの相関性が高い。明治三陸地震のような短周期成分が少ない、いわゆる津波地震の場合、Mjでは地震の規模を過小評価してしまう。(『地震の大きさをはかる -さまざまなマグニチュード-』PDF 『なゐふる』55号 p.4、日本地震学会、2006年5月 参照)
- ↑ 海山と推定される地下の構造が宮城県沖の海底約150km下に存在することについては、本地震の6年前にすでに報告されている。また、1994年に発生したインドネシアの地震は海山が原因とされており、本地震とも地殻変動が類似している。
- ↑ 「房総沖」については、
- ↑ 宮城県沖地震は1930年代のように数年かけて3つのアスペリティが順に破壊し数回に分けて地震を起こすタイプと、昭和53年(1978年)のように一気にすべて破壊し1回の地震を起こすタイプがあるとされる
- ↑ 1420年の常陸国の津波記録(都司嘉宣 『千年震災』 ダイヤモンド社、2011年 参照)、あるいは1454年の享徳地震が15世紀の津波堆積物に符合する(保立道久の研究雑記参照)との見方がある。
- ↑ Continental Electronicsによる運営[1]。
- ↑ 2011年4月21日に気象庁は、同所の地震計は「震度が周辺に比べ過大に観測されている」として、地域代表性という観点から以後の観測情報の活用を停止しているが、設置状況に問題はなく観測は正常に行われていたとしている。(「震度観測点の地震情報への活用停止等について」 気象庁発表)
- ↑ いわき市の一部で推定震度7。気象庁の震度推計分布図参照。
- ↑ 2012年3月14日には三陸沖北部の地震 (M6.9) と千葉県東方沖の地震 (M6.1) が同じ日に続けて発生したが、前者の地震はアウターライズ地震(海洋プレート内地震)で本地震との関連性は不明、後者の地震は大陸プレート内地震で本地震の余震とされており、共にプレート境界における海溝型地震ではない。(参考:週間地震概況(平成24年3月9日-3月15日)PDF 気象庁)
- ↑ 東北地方太平洋沖地震だけによる変動は約70cmと推定されている。
- ↑ つくば市にあるVLBIによる観測と、GPSによる観測を照合して決定された。
- ↑ 国土地理院によれば。また浸水地域に近い陸地では、潮汐(満潮)や波浪による浸水被害が発生していて、防潮堤が被害を受けて機能していない後背低地などで被害が長期化している。
- ↑ なお、この地震で発表された「津波警報(大津波)」は津波警報の一区分として当時用いられていたもので一般には「大津波警報」と呼称されていたが、「大津波警報」が正式名称となるのは東北地方太平洋沖地震後の改善によって制度改正される2013年3月からである。( (2012-01-31) 「大津波警報」に名称統一 気象庁が改善案 日本経済新聞 2012-01-31 [ arch. ] 2013-01-09 )(平成25年3月から津波警報が変わります、気象庁)
- ↑ 「以上」とは、観測機器の故障・破壊、計器の限界によりその数値以上は観測不能を意味する。
- ↑ 発生後3秒間の破壊はゆっくり進み、3月9日のM 7.3の前震より震動が小さかった[64]。
- ↑ 東北地方太平洋沖地震の津波マグニチュードは9.1-9.4とされている。
出典
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- ↑ 壊滅的複合災害における危機管理の課題 多田浩之、みずほ情報総研、2011年8月4日。
関連項目
- 東北地方太平洋沖地震に関する記事の一覧
- 東日本大震災
- 福島第一原子力発電所事故
- 日本海溝
- 巨大地震
- 連動型地震
- 群発地震
- 誘発地震
- 三陸沖地震
- 宮城県沖地震
- 福島県沖地震
- 茨城県沖地震
- 阪神・淡路大震災
外部リンク
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- 政府・行政サイトへのリンク
- 本地震の記録・解説へのリンク
- 気象庁
- 【気象庁技術報告】平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震調査報告 ISSN 0447-3868 平成24年12月
- 東日本大震災 〜東北地方太平洋沖地震〜 関連ポータル
- 震度データベース検索 (地震別検索結果) - 本震の各地の震度
- 平成23年3月 地震・火山月報(防災編)
- 地震調査研究推進本部 平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震に関する情報
- 防災科学技術研究所 東北地方太平洋沖地震情報
- 東京大学地震研究所 2011年3月 東北地方太平洋沖地震
- 京都大学防災研究所 平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震 災害調査活動
- 静岡大学防災総合センター 小山真人 東日本沖で起きた巨大地震について
- 東北大学大学院工学研究科附属災害制御研究センター 東北地方太平洋沖地震に関する情報
- 日本地球惑星科学連合 2011年大会「2011年東北地方太平洋沖地震」 発表一覧(2011年5月22日-27日)
- Japan Quake Map 毎日の放出エネルギー, 日本の地震地図 - カンタベリー大学(ニュージーランド) Paul Nichollsによる。
- 気象庁
- 津波の記録・解説へのリンク
- 東北地方太平洋沖地震津波合同調査グループ 全国津波痕跡調査の取りまとめ結果
- 港湾空港技術研究所 津波調査結果など
- 日本気象協会 2011年東北地方太平洋沖地震津波の概要(速報) 津波襲来状況の分析
災害情報・ライフライン・伝言・復興支援・ボランティア・法律問題等へのリンクは、東日本大震災に対する支援活動の各項目を参照。