交通事故

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交通事故とは車両などによる事故のことを指す。一般的には道路における自動車自転車歩行者などの間に発生した道路交通事故を指すことが多い。広義では鉄道船舶航空機などにおける事故を含む。

また、公共交通機関において旅客が転倒したり、車内設備と接触したりして負傷する車内人身事故も交通事故として取り扱われる。

以下では基本的に道路交通事故について記述する。踏切事故を含めた鉄道の事故は鉄道事故、船舶の事故は海難事故水難事故川下りなど)、航空機の事故は航空事故の項をそれぞれ参照。

日本の法令上の交通事故[編集]

交通事故の定義[編集]

交通事故の定義を定める根拠法令等には、

  1. 道路交通法:道路における車両等(自動車原動機付自転車自転車などの軽車両トロリーバス路面電車)の交通に起因する人の死傷又は物の損壊(道路交通法第67条第2項)
  2. 自動車安全運転センター法:道路交通法第67条第2項に定めるものに道路外で発生したものを含む
  3. 自動車損害賠償保障法:自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によって他人の生命又は身体を害したときは、これによって生じた損害を賠償する責に任ずる。(自賠責法第3条)
  4. 厚生労働省疾病、傷害及び死因分類:基本分類コードV01-V99

などがある。一般的に「交通事故」といえば道路交通法上の交通事故を指す。

交通事故の範囲と損害賠償義務[編集]

道路交通法において交通事故とはされないものに関連しては下記が規定される。

  • 道路交通法上の「道路」外での事故
    道路交通法における「道路」は、道路法に規定する道路道路運送法に規定する自動車道及び一般交通の用に供する全ての場所である。よって、道路交通法上の「道路」外での事故には交通事故証明書は発行されない。
    ただしここで言う道路交通法上の「道路」は、単に私有地や駐車場と言う事により対象外となるものではない(詳細は道路#日本の法律上の定義を参照)。おおよそ純然たる人の専有する土地(家屋、マンション、企業など)や、工場の構内道路など公衆の立ち入りが制限されているものを除いては、おおむね道路交通法上の「道路」に該当する可能性がある事に、注意が必要である。また通説・判例上も争いがある点でもあるので現実の事故の際には注意を要する。
  • また、交通事故証明書の発行の有無と、警察への交通事故への届出義務(道路交通法第72条)の有無とが一致すると言う事実は(判例・通説などにより)検証されていないため、これも現実の事故の際には注意を要する。
  • また、交通事故証明書の発行の有無と、被害者への損害賠償義務の有無は、無関係であり、証明書発行の有無によって損害賠償義務の有無は左右されない(後述)。
  • 運転免許証の要件として「道路外致死傷」が新設され、道路交通法上でも一定の影響を及ぼすようになった。
  • 車両等の交通(道路上での運転および駐車・停車)に起因しない事故
    例えば、自動車等が自然に爆発炎上したような場合、自動車等の正規の場所に搭乗中の人が当該自動車等のドアやその窓に身体を挟まれたような場合や、駐車場に駐車している車両が崖崩れなどの災害により被害に遭った場合など。なお、ドアの開閉により道路を通行中の他の人・車と接触し、または接触の危険があった事を原因として事故が起きた場合には、交通事故となる。また、車両等の運転中に崖崩れなどの外的要因により事故となった場合も交通事故となる。
    なお、自動車損害賠償責任保険や任意の自動車保険の支払基準については上記と無関係である(後述)
  • 歩行者の単独事故、または歩行者同士の衝突事故

道路交通法上の交通事故に該当するか否かと、法律上の損害賠償義務(自動車損害賠償保障法第3条、民法709条など)と、さらに自動車損害賠償責任保険や任意の自動車保険の支払基準については、おおよそそれぞれ無関係である。

  • 自動車損害賠償保障法第3条「自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によつて他人の生命又は身体を害したときは、これによつて生じた損害を賠償する責に任ずる。」の規定に関連しては下記が規定される。
    • 木材製作所私有地敷地内の道路において駐車中の普通貨物自動車に積載した原木の丸太を当該貨物自動車から荷下ろしする際にフォークリフトのフォークにより当該貨物自動車の荷台から反対側の地面に突き落とすことにより荷下ろしをし、よって居合わせた児童が丸太の下敷きになり死亡した事故は、当該貨物自動車を「当該装置の用い方に従い用いること」によつて生じたものである。(積極、昭和63年6月16日最高裁判所第一小法廷判決・昭和59(オ)1063)
    • 道路上において材木を積載した大型貨物自動車を駐車させ、別のフォークリフトを使用して当該貨物自動車の材木を荷下ろししている際に、フォークの高さ調整のためにフォークリフトは道路外の空き地に停止していたがフォーク部分が道路上に突き出しており、折から道路上を進行してきた他の自動車にフォーク部分が衝突し、よって自動車の運転者を負傷させた事故は、当該貨物自動車を「当該装置の用い方に従い用いること」によつて生じたものではないが、依然として民法709条による損害賠償義務がある。(賠償について積極、昭和63年6月16日最高裁判所第一小法廷判決・昭和61(オ)1261)

加害者の責任[編集]

初期対応[編集]

道路交通法第72条は、交通事故に関係した車両等の運転者等について次のような義務を課している。

  1. 直ちに運転を停止する義務(事故発生直後に現場を去らないなど)
  2. 負傷者の救護義務(負傷者を安全な場所に移動し、可能な限り迅速に治療を受けさせることなど)
  3. 道路上の危険防止の措置義務(二次事故の発生を予防する義務)
  4. 警察官に、発生日時、死傷者・物の損壊の状況や事故後の措置、積載物を報告する義務
  5. 報告を受けた警察官が必要と認めて発した場合に(通常は必ず発する)警察官が到着するまで現場に留まる命令に従う義務

また、民事上の責任を果たすために以下のことを行う必要がある。

  1. 相手の身元確認
  2. 任意保険会社への連絡

刑事上の責任[編集]

刑事上の責任は、自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(自動車運転死傷行為処罰法)違反、道路交通法違反(行政処分ではなく特別刑法として罰則に定められているもの - 刑事罰)による責任である。

交通事故の定義とは関係なく、車両等の運転者が人を死傷させた場合は、行為の様態に応じて次の罪に問われる可能性がある。

反則行為の結果として交通事故を引き起こした場合には交通反則通告制度の適用はない(道路交通法125条2項)。

自動車等を利用して故意に人の死傷や物の損壊を起こした場合には自動車等を利用した故意犯となり刑法上の殺人罪傷害罪器物損壊罪等に問われる。人身事故および建造物損壊事故を除く、過失の物損事故の場合は、行為者に刑事罰が科されることはない。

民事上の責任[編集]

交通事故を含む事故において故意または過失により他人の権利(生命、身体または財産)を侵害した場合、それによって発生した損害賠償する責任を負う(民法不法行為原則)。人身事故、建造物損壊事故および物損事故の全てが該当する。

自動車または原動機付自転車の運行により人の生命または身体を侵害した場合には、加害者側で被害者の過失を立証しなければこれによって生じた損害(他人の生命、身体に対するものに限る)についてその責めを負い、重大な賠償責任を負担する事が殆どである(詳しくは交通事故の過失割合を参照)。

行政処分[編集]

行政法上の責任として道路交通法上の運転免許に関する行政処分があり、事故や責任の重さに応じて運転免許証の取り消し、停止などがある。

人身事故における行政処分では、加害者の過失が少しでも認められた場合、安全運転義務違反(2点)および人身に係る交通事故の付加点数(最低2点、最大20点)で最低でも合計4点の付加点数が付くこととなる。

なお、人身事故および建造物損壊事故を除く、物損事故の場合は、運転者が行政処分を受けることはない。

交通事故発生の原因[編集]

四輪車が引き起こす主な事故[編集]

  • 速度超過
  • 飲酒運転薬物使用運転
  • 携帯電話使用
    • 着信音がしたため走行しながら携帯電話を探そうとする
    • メールを打とうと画面を見ながら走行したための前方不注意
    • 運転中の情報から音が遮断されることによるリスク増大(視覚のみに頼る)→(未使用時と比較した場合、手持ちが事故発生率4.9倍のリスク、ハンズフリーでも3.8倍のリスク)
  • 運転とは関係ない動作をしながら運転するながら運転
  • 病気による事故
  • 疲労運転過労運転、居眠り運転は非常に危険性が高いが機器による数値化ができないため警察の取締りができない。
  • 認知症
  • 急な車線変更
  • 方向指示器合図を行わない
  • 二輪車、自転車の巻き込み
    • 前方の信号が変わる直前、直後の方向指示器合図による左折
    • 進路変更なしの左折(幅寄せなし)
  • 死角の目視をしないことによる進路変更(特に左後方)
  • 右への進路変更を伴う大回り左折(内輪差の問題ではなく、車幅感覚を見切れないドライバーがほとんど)
  • 信号無視
  • 対向車線の逆走事故
    • 高速道路での対向車線逆走
    • 細い道路での自転車、二輪車、四輪車のいずれかとすれ違う際、片方あるいは両方の四輪車側が真ん中をはみ出しているにも関わらず徐行しない場合(一般ドライバーにも多く見られる)
  • サンキュー事故 - 右折時に対向直進車が右折してもいいよと譲ってくれた時に速やかに右折しようとした所、車の死角から二輪車が直進する際に衝突するなどが代表的。二輪が譲った際の四輪車直進と四輪車右折より多い。→死角が多いにも関わらず確認を怠り右折するため
  • 脇見運転
  • 無免許運転
  • 共同危険行為等(共同危険型暴走族、違法競走型暴走族)
  • 整備不良
  • 左ハンドル車両による追い越し時、右折時等の視認性不良により生じる問題(左側通行の場合、右ハンドル車両と比較すると構造上対向車の視認性が著しく劣り、左側通行の場合は左ハンドル、右側通行の場合は右ハンドル車両が、視認性が劣ることにより生じる危険から禁止されている国も多い)
  • ブレーキとアクセルの踏み間違え事故
  • 無理な追い越し-はみ出し追い越し禁止区間等で自転車や原動機付自転車を追い越す際に多発(同一車線上内をスレスレで高速度で追い越す際の衝突事故が多い。このような追い越しが多発する現状では自転車の場合は安全に車道を走行することが難しいため、歩道走行も条件付で認められている。原動機付自転車も同様ではあるが、歩道走行は認められていないため、30km/h走行では安全確保が難しい道路がある)
  • 横断歩道での歩行者優先を無視した走行
  • 路上駐停車
  • 過剰性能(速度違反と排気量=パワーには相関関係が認められる)
  • 過剰サイズ(視界不良による巻き込み事故や、高重心による横転事故が多発)
  • 道路上への動物の飛び出し - 侵入防止柵、アニマルトンネル(動物用に地下に設置される専用のトンネル)、アニマルパスウェイ(動物用に空中に架設される専用の橋)などによる回避策が講じられることが多い。
  • 漫然運転
  • フェード現象

貨物自動車が引き起こす主な事故[編集]

  • 積載超過
  • 高さ制限

原動機付自転車・自動二輪車が引き起こす主な事故[編集]

  • 速度超過
  • 飲酒運転
  • 急な車線変更(ジグザグ走行)
  • 信号無視(黄色信号以降、赤信号直後による交差点突入は加速する傾向が強い)
  • 存在の見落とされ(四輪車の死角で走行したり、目立たない服装を着用して運転したりすることにより確率は高まる)
  • 無免許運転
  • 共同危険行為等(共同危険型暴走族、違法競走型暴走族)
  • 雨天時のマンホールやペイント上の通過(ブレーキやバンクで容易にスリップする)
  • 誤ったポジションでの走行
  • 車線左端を走行する過度のキープレフトは後続車に道を譲るものと誤解される可能性があり、流れに乗っていても危険な併走、追い越しをされやすくなる。駐車場からの車との飛び出し衝突リスクや側道からの頭出しによる衝突リスク、交差点での対向車からの視認性が悪くなることにより右直事故に遭遇する危険性が高くなる。
  • 無理なすり抜け - 他車両との接触により事故に発展する危険がある。
  • 横断歩道での歩行者優先を無視した走行
  • 虫や雨等による視界不良→視界不良の影響は四輪車より大きい

自転車が引き起こす主な事故[編集]

  • 飲酒運転 - 違反している意識の欠如
  • 歩行者を無視した歩道走行
  • 無灯火による見落とされ
  • 信号無視の横断
  • 右車線の逆走
  • 携帯電話や携帯オーディオの使用、喫煙などのながら走行
  • 手持ちや固定による傘差し
  • 二人乗りや三人乗り、荷物の過積載
  • 並列走行
  • 横断歩道での歩行者優先を無視した走行

歩行者が引き起こす主な事故[編集]

日本の芸能人の交通事故[編集]

芸能人スポーツ選手が事故を引き起こすことは、イメージダウンにつながりCMやドラマを降板しなければならなくなったりと芸能活動において大きく支障が生じる。もちろん、芸能人らが事故の被害者となるケースもある。

かつては女優などは事務所が用意した運転手付きの車に送迎させていたのが多かったが、近年では経費削減のため少なくなり、仕事場へ向かうのもプライベートでも自ら運転するというケースが増えている。また、芸能リポーターの梨元勝は生前「付き人もいて送迎が当たり前だったスターが今や不在となり実力のないタレントが芸能界に多くなっていることの表れ」との意見を述べていた。

交通事故の心身への影響[編集]

交通事故の心身への影響は最も軽い場合には無傷(外傷・骨折等がないだけでなく、むち打ち症などの後遺障害さえない)のこともあるが、最悪の場合走行中の車両との衝突は衝撃が大きく、はねられた場合、全身あるいは頭部を強打して即死するケースが発生する。はねられず車両に轢かれた場合は、車輪に巻き込まれたり、踏みつけられたりするなどで体の至る所が切断、圧迫され、内臓破裂、または内臓血管が飛び出したり、人身事故現場に散乱するなど、原型をとどめない状態になることもあり、凄惨な状態での死に至ることもある。

事故直後に精神的に受ける負傷者の不安感など傷以外の精神的後遺症の問題も大きくなり、救命救急医の指導資格制度、ドクターヘリなど最近は充実してきたが、交通事故の多発が問題視された愛知県(後述の表にも記載)において春日井市が「ドクターカー」モデルとして全国初でテスト実施、負傷者のバイタルサインを電波で飛ばしながら基幹病院の待機医とのやり取りを推し進め、その場で除細動器(アンビュレーター)を使用できる消防士を中心にした救急救命士の国家資格を制定した。車は(株)トヨタと共同開発。医療関係の資格なしで行えるAED設置の発展に寄与した。負傷者の体だけでなく心、精神への配慮が推し進められているが、人的・機材的・予算的な壁も多い。一般的認知はNHKをはじめとする報道機関などマスコミとの啓発・協力体制が必要であった。

身体への影響[編集]

重傷度の高い順に挙げれば、頸髄損傷、胸部外傷、気道閉塞(顔面損傷や頚部外傷など)、腹腔内・骨盤損傷などである。これらに比べれば、四肢の損傷のみによって死に至ることは少ない。

殊に頸髄損傷は、仮に生き残ったとしてもクオリティ・オブ・ライフを著しく低下させる。受傷直後は損傷が無くても、傷病者が不用意に首を動かすことによっても発症し易い。「交通事故に遭ったら、不用意に頭・首・肩を動かさない」事を徹底することが必要である。(JPTECJATECの項も参照のこと)

衝突状況やそのときの被害者の持ち物・状態・心身の状態、天候などによって、類似した状況下の事故でも大きく異なる。歩行者・自転車に乗った人などと、ごく低速の自動車・オートバイなどがぶつかった時、歩行者が大きなかばんを持っていてそのかばんにぶつかった場合などは、人的被害が皆無かまたそれに近い場合もある。

労働災害や自然災害といった他の要因による事故と比較して、被害者が頭部や腰部に激しい衝撃を受ける蓋然性が高いことから、被害者に遷延性意識障害を始めとする重度後遺障害が残る例が少なからず見られる。また、脳に強い衝撃を受けた場合には、頭部に外傷がなくとも高次脳機能障害に至る場合がある頭部外傷外傷性脳損傷の項も参照のこと)。

歩行者[編集]

歩行者は自転車との衝突、あるいは歩行者同士の衝突でさえ、路面に頭部を打ち付けて死亡事故になることがある。

近年、自動車メーカーは歩行者に対する安全性も考慮し以下のような対策がなされている。

  • バンパーの位置を、成人の大腿・骨盤の位置から下腿の位置に下げる(後者の部位に骨折・裂傷を負っても致命的とはなりにくい)
  • 上記部位を支点として乗用車の前面に上半身が衝突しても、頭部がフロントガラスでなくボンネットに当たるようにする(ボンネットの部材を衝撃吸収型にすることで、胸部・頭部への致命傷を起きにくくする)

自動車搭乗者[編集]

シートベルト未装着や携帯電話使用への取り締まり、エアバッグの装備、合わせガラスの採用、クラッシャブルゾーンの採用、モノコックボディの高剛性化、ABSの普及など、安全装備を採用した自動車が増え、搭乗者の死亡減少に役立っている。 しかし、いかなる安全装備を以てしても致命傷を予防することは不可能である。例えば胸郭内で心臓大動脈が動揺することによる大動脈解離や、頭部への衝撃による脳挫傷・外傷性クモ膜下出血は、エアバッグの効果にも限度があり、速度の超過や薬物の使用、飲酒運転は大きな事故を招く。

オートバイ・自転車搭乗者[編集]

オートバイの交通事故は、ボディに覆われていない事から大きな事故になる場合がある。詳細はオートバイの事故を参照のこと。

自転車にも同様の危険があり、専用ヘルメットなどの安全装備が奨励されている。

精神医学的影響[編集]

松岡らによれば、交通事故を経験した人間の多くが、気分障害不安障害強迫性障害など何らかの精神医学的後遺症を来たすとしている。

統計[編集]

日本の交通事故[編集]

交通事故死亡者数[編集]

事故死亡者の統計は、警察が集計した、事故による被害者が事故発生から24時間以内に死亡した場合のものが主に用いられており、下記の人数も基本的には24時間以内死者数である。警察の統計としては、その他に30日以内に死亡した場合のものもあり、厚生労働省の統計としては、1年以内に死亡した場合のものもある。

2014年の24時間以内死者数は4113人で、これは2014年の国内の自動車保有台数が約8027万台なのと比較して自動車保有台数が2000万台に届いていなかった頃の1950年の4202人より少なく、いかに死者が激減したかを物語っている。また、救急医療の発達によって24時間以上生存しているだけで死者数はあまり減少していないという誤った認識が存在するが、2012年の30日以内死者数は4571人、1年以内死者数は6277人とどちらも24時間以内死者数と同様に減少している。30日以内死者数は統計を取り始めた1993年以降、1年以内死者数は統計を取り始めた1965年以降もっとも少ない人数となっている。

2014年の交通事故死者数は前年より260人減の4113人と14年連続で減少した一方、65歳以上の高齢者の死者数は2193人で、全体に占める割合は53.3%と過去最多だった。高齢者人口の増加と高齢者の致死率がほかの年代より高いことが要因となっている。

2012年の交通事故による人口10万人当たりの1年以内死者数は5人であり、これは他の死亡原因と比較すると、地震の5人(阪神淡路大震災のあった1995年の数値)と同等、火事の1.7人、他殺の0.52人より多いが、自殺の24人よりは少ない。

交通事故発生件数[編集]

国内の自動車保有台数の増加により交通事故も比例して増加し、2004年には95万2709件と過去最悪を記録した。その後は国内の自動車保有台数も8000万台程度で安定し、2014年には自動車保有台数が約8027万台と史上最も多くなっているにも関わらず、事故発生件数は57万3465件と10年連続で減少している。これは、自動車保有台数がまだ約4824万台だった1986年よりも少ない件数である。

交通事故負傷者数[編集]

事故発生件数と連動して1990年代より増加し、1999年から2007年までは連続して年間負傷者数100万人を突破し、2004年には118万3616人と過去最悪を記録した。その後、事故発生件数と共に減少傾向にあり、2014年の負傷者数は70万9989人となっている。

交通事故の歴史[編集]

戦後の高度経済成長期に自動車保有率の上昇と呼応して交通事故が増加し、1959年には年間交通事故死者数が1万人を突破する事態となった。戦争でもないのに膨大な人数が犠牲となることから、「交通戦争(第一次交通戦争)」と比喩される事となった。特に1970年は、自動車保有台数が1652万台程度しか存在しないにも関わらず、交通事故で年間で1万6765人(1年以内死者数では約2万2千人)が死亡し、史上最悪の年となった。交通事故発生件数も、1969年には第一次交通戦争の終了までで最も多い72万880件となった。
  • 1970年代 第一次交通戦争の終了 交通事故対策の始まりによる事故発生件数、死者数の減少
警察道路管理者などが教育対策に取り組んだこと、シートベルトの普及等の自動車の安全性が向上したこと、道路整備等の交通環境の改善が進められたこと等で、事故率、死亡率が減少し、事故件数、死者数ともいったん減少した。交通事故死者数は、1976年には再び1万人を割り、1979年には第一次交通戦争の開始から最も少ない8048人となった。交通事故発生件数も、1977年には第一次交通戦争の開始から最も少ない46万649件となった。
  • 1980年代1990年代 第二次交通戦争の始まり 事故率の下げ止まりと自動車保有台数の増加による事故件数、死者数の増加
1980年代に入り、第一次交通戦争から始まった安全対策が普及しきったことから、減少し続けてていた交通事故率が下げ止まった。自動車保有台数、走行距離を加味した交通事故率の指標である死傷事故率は、1970年には300(件/億台キロ)を超える水準だったが、1980年には120(件/億台キロ)程度まで下がった。しかし、その後2010年頃まで約30年間にも渡り、事故率は約120~100(件/億台キロ)の範囲で横ばいとなってしまった。
そのため、1970年代後半から事故率は下がらないのに自動車保有台数が増加したため再び交通事故が増加し始め、それに伴い死者数は1988年に再び1万人を超え、「第二次交通戦争」とも言われる状況となった。1992年には第一次交通戦争が終了して以降では最悪となる1万1452人となった。事故発生件数も、同年には72万4678件となっている。
  • 1990年代~2000年代 第二次交通戦争の終了 交通事故死者数の減少による第二次交通戦争の終了と、逆に交通事故件数の増加
第二次交通戦争では自動車保有台数の増加と共に、交通事故犠牲者は自動車の乗員が主なものとなり、1990年代には乗車中死者数は歩行者死者数の約1.7倍にまで増加したが、1990年代に自動車アセスメントが開始され、エアバッグ衝撃吸収ボディ、プリテンショナー(衝突時締付け)機能つきシートベルトなどといった車両側の安全装備の向上の取り組みが行われ、2008年から歩行者の死者数を下回っている。また、厳罰化等により飲酒運転等の危険運転も減少し、死者数の減少に繋がった。
死者数は1996年に再び1万人を割り、2004年には7425人にまで減少し第二次交通戦争と言われる状況は終了した。一方で事故辺りの死亡率は減少したにも関わらず、事故発生率じたいは減少しなかったため、事故発生件数は逆に増加し、同年には史上最悪となる95万2709件となった。
  • 2010年代 交通事故率そのものの減少による交通事故発生件数の減少、交通事故死者数の減少
2010年頃から約30年間に渡り横ばいだった事故率が減少し始めた。約120~100(件/億台キロ)の範囲で横ばいだった死傷事故率は、2014年にはおよそ78(件/億台キロ)程度まで減少した(2014年事故件数57万3465件、2012年度末の走行台キロ7319億台キロより計算)。それに伴い、交通事故発生件数、交通事故死者数共に減少を続けている。
1990年~2000年代と異なり、事故辺りの死亡率の減少が止まっており、交通事故死者数の減少は交通事故発生件数の減少と比例する形でしか進んでいない。警察白書では致死率の下げ止まりの要因として、エアバッグ装着、シートベルト着用がほぼ全車に普及しきって頭打ちとなった事等を上げている。

交通事故が多い産業[編集]

傾向として、運輸業や卸売業など、業務に車を使用する産業で事故が起きやすい。

  • 営業販売中の場合、卸売業の事業所の33.1%、道路旅客運送業の事業所の34.7%で交通事故が発生している(全体では、13.5%)
  • 配送作業中の場合、道路貨物運送業の事業所の53.3%、卸売業の事業所の20.6%で交通事故が発生している(全体では、13.8%)

出典:「労働安全衛生基本調査(2000年)」(厚生労働省)

交通事故が多い都道府県[編集]

警察庁「平成21年中の交通死亡事故の特徴及び道路交通法違反取締り状況について」

  1. 東京都 56,358件
  2. 大阪府 51,697件
  3. 愛知県 50,976件
  4. 福岡県 44,340件
  5. 神奈川県 43,017件
  6. 埼玉県 38,689件
  7. 兵庫県 36,360件
  8. 静岡県 35,878件
  9. 千葉県 26,300件
  10. 北海道 19,503件

なお、平成21年の人口10万人当たり交通事故発生件数は以下の通りである

  1. 香川県 1,173.2件 - 平成15年~23年まで9年連続ワースト1。
  2. 宮崎県 972.1件
  3. 群馬県 953.0件
  4. 静岡県 946.2件
  5. 佐賀県 911.0件
  6. 岡山県 883.9件
  7. 福岡県 877.5件
  8. 山梨県 749.0件
  9. 和歌山県 717.2件
  10. 徳島県 697.9件

交通事故が多い高速道路[編集]

警察庁交通局「平成25年中の交通事故の発生状況」より

交通事故死者数が多い都道府県[編集]

平成24年の交通事故死者数の多い都道府県は以下の通りである。(警察庁「平成24年中の交通事故死者数について」より)

1. 愛知県 235人 - 平成15年以降10年連続でワースト1。→名古屋走り
2. 北海道埼玉県 200人
4. 東京都 183人
5. 大阪府 182人
6. 神奈川県兵庫県 179人
8. 千葉県 175人
9. 福岡県 161人
10. 静岡県 155人

平成25年2月に愛知県警で平成3年から平成23年までの交通事故死者数で600人の計上漏れがあったことが公表され、再集計の結果、平成15年以降10年連続で交通事故死者数が全国最多であったことが明らかになっている。

なお、人口10万人当たり交通事故死者数は以下の通りである(平成21年)

1. 山梨県 7.4人
2. 香川県 7.0人
3. 茨城県福井県 6.7人
5. 宮崎県 6.5人
6. 鳥取県 6.3件
7. 徳島県 6.1件
8. 岩手県栃木県岐阜県三重県 6.0件

世界の交通事故[編集]

人身事故発生件数(人口10万人当たり)ワースト3は、サウジアラビアの1,305件、日本745件、アメリカ626件と、自動車交通の普及している国で占められている。一方死者数(同)は南アフリカ30.5人、マレーシア24.6人、ロシア24.0人であり、医療事情の影響がうかがえる。

アジアに焦点を絞ると、人身事故発生件数(同)がサウジアラビア・日本に続いて多いのは韓国443件、モンゴル275件、イスラエル245件という順である(前掲資料)。

また、事故死を交通手段別に分類すると、メキシコ・韓国・ポーランドリトアニア・日本などは、ドライバーの弱者優先の意識が低い、車道ばかりで歩行者道の無整備などの理由からか歩行者や自転車、そしてオートバイの比率が高い。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]