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* 青少年への影響を考慮した薬物問題報道についての要望 - 2009年11月2日、この年の夏に芸能人による薬物事件が多発したことを受け、各テレビ局の報道について薬物使用に関して警告などを促さずに興味を持たせる報道が見られるとして、テレビ各社に「極めて慎重な配慮」を要望した。 | * 青少年への影響を考慮した薬物問題報道についての要望 - 2009年11月2日、この年の夏に芸能人による薬物事件が多発したことを受け、各テレビ局の報道について薬物使用に関して警告などを促さずに興味を持たせる報道が見られるとして、テレビ各社に「極めて慎重な配慮」を要望した。 | ||
* フジテレビ「生爆烈お父さん27時間テレビスペシャル!!」 - 2013年10月22日、『[[FNS27時間テレビ (2013年)]]』において男性タレントが女性アイドルグループメンバーにプロレス技を掛けると共に暴行したとされる問題について、「バラエティー番組も『人間の尊厳』『公共の善』を意識して作られるべき」との見解を示した。 | * フジテレビ「生爆烈お父さん27時間テレビスペシャル!!」 - 2013年10月22日、『[[FNS27時間テレビ (2013年)]]』において男性タレントが女性アイドルグループメンバーにプロレス技を掛けると共に暴行したとされる問題について、「バラエティー番組も『人間の尊厳』『公共の善』を意識して作られるべき」との見解を示した。 | ||
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+ | ==== 放送局への回答の要請 ==== | ||
+ | ※放送局への回答を要請し、何らかの措置がとられた事例を記述 | ||
+ | * 2003年1月、アニメ『[[機動戦士ガンダムSEED]]』において、主人公のキラ・ヤマトとフレイ・アルスターが肉体関係を持ったと暗示させる表現について「戦争が人々を破壊していく極限状況のもとでは、人は如何にもろい存在なのか」ということを表現するのに必要なキャラクターであると説明している。 | ||
+ | * 2003年2月及び3月、[[アダルトゲーム]]原作のアニメ番組『[[らいむいろ戦奇譚#テレビアニメ版|らいむいろ戦奇譚]]』について性行為を想起させるシーンが含まれているため、他の放送局では深夜時間帯に編成されていたものを夕方6時からの放送に編成した[[サンテレビジョン|サンテレビ]]に対し回答要請を行ったが、同局は「深夜枠に空きが無かったため、枠が空いていた時間帯に編成しました」と回答、その後同局は3月末の番組終了及び[[改編]]を以て、当該番組を含め2枠あった夕方時間帯のアニメ番組枠を全て廃止する措置をとった。 | ||
+ | * 2004年10月、フジテレビのバラエティ番組『[[はねるのトびら]]』の中で放送されていた[[コント]]「村田さなえ」のキャラクター設定(特定の[[ジュース]]以外のものを飲むと[[アレルギー]]を発したり、興奮すると体がかゆくなり血が出るまでかきむしってしまう等)が[[アトピー性皮膚炎|アトピー]]患者や[[食物アレルギー]]患者を笑いのネタにしているとの視聴者からの苦情を受け、同局への回答を要請した。これを受けて同番組は公式ホームページ上に番組プロデューサー名で謝罪文を掲載、当該コントを一旦休止しキャラクター設定を変更した上でコントを再開した。 | ||
+ | * 2009年6月、サンテレビの[[深夜番組]]『[[今夜もハッスル]]』について、全編を通して猥褻な内容の番組であり中高生も夜更かしをする週末の深夜0時台に放送するには不適切であるとの視聴者からの苦情を受け、同局への回答を要請した。これを受けて6月末、サンテレビは間髪入れずに同番組の打ち切りを決定、1983年からおよそ26年続いた[[お色気番組]]の制作から一度は撤退したものの翌2010年10月、放送時間帯を約1時間半繰り下げた上でかつて同局で放送されていた『[[おとなの子守唄]]』を装い新たに復活させる形で再開した。 | ||
+ | * 2009年8月31日に放送されたテレビ朝日の[[特撮]]番組『[[仮面ライダーディケイド]]』の最終回において、主人公のディケイドと他の仮面ライダーが対峙するシーンの途中で放送を終了、その直後に[[仮面ライダー×仮面ライダー W&ディケイド MOVIE大戦2010|劇場版仮面ライダーディケイド]]の告知をしたことについて、「(子供に)散々期待をさせておいて、それを裏切った」という旨の批判的な意見が多数寄せられていることを受け、2009年10月に同局に対し回答要請を行った。同局の[[早河洋]]社長は同月29日の定例記者会見の中で、「私どもの考え方としてはテレビシリーズの結末と映画の告知の境目がはっきり分かるようにすべきで、演出方法は不適切だった」と謝罪した。その後の再放送分の最終回では、該当部分を再編集し劇場版との連動部分を直接的な告知にならないように改変している。 | ||
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+ | == 放送倫理・番組向上機構の公平性・中立性 == | ||
+ | === 役員の選任 === | ||
+ | 役員の選任について、放送事業者の役職員およびその経験者以外の者から理事長1名と理事3名を選任することにより、公平性や中立性を担保している。しかし、理事長は構成員が推薦し、理事長が理事3名を選任することになるので構成員の影響力を完全には排除できていない。また、各委員会のメンバーは評議員会により選任されるが、評議員会は理事会により選任されている。政府から独立性はある程度(NHKの独立性については除く)できていると思われるが、放送事業者からの独立性は担保されていない組織作りとなっている。 | ||
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+ | === 委員会の構成 === | ||
+ | 各委員会の委員の中には、放送事業者に関わりのある人物がおり公平性や中立性を担保できる構成になっていない。 |
2016年8月20日 (土) 20:40時点における版
放送倫理・番組向上機構(ほうそうりんり・ばんぐみこうじょうきこう)は、日本放送協会(NHK)や日本民間放送連盟(民放連)とその加盟会員各社によって出資、組織された任意団体である。理事会、評議員会、事務局と3つの委員会(放送倫理検証委員会、放送と人権等権利に関する委員会(放送人権委員会)、放送と青少年に関する委員会(青少年委員会))によって構成されている。
ロゴマークは、錯視図形『ルビンの壷』の要領で、BとPの文字で横を向いた人の上半身を浮かび上がらせたものである。
目次
目的と立場
BPO規約第3条「目的」において「本機構は、放送事業の公共性と社会的影響の重大性に鑑み、言論と表現の自由を確保しつつ、視聴者の基本的人権を擁護するため、放送への苦情や放送倫理上の問題に対し、自主的に、独立した第三者の立場から迅速・的確に対応し、正確な放送と放送倫理の高揚に寄与することを目的とする」と掲げている。
2007年6月20日衆議院決算行政監視委員会において、民放連(当時)の広瀬道貞会長は「放送事業者は、いわば、BPOの判断というのは最高裁の判断みたいなもので、ここが判断を出したら、いろいろ言いたいことはあっても、すべて守っていく、忠実に守っていく、そういう約束の合意書にNHK及び民放各社がサインをしてBPOに提出しております」と述べている。審理にあたっては当事者双方の意見聴取を行い、主張の正当性についての証拠確認、証人尋問、補充調査等は行わない。
2007年12月4日衆議院総務委員会において、BPOの飽戸弘理事長は「BPOの役割は、番組を監視して罰するところではないということもやはり国民の皆さんにしっかりと、あくまでも放送事業者自身が自主的にさまざまな問題を解決していく、そのためにBPOは応援していく、視聴者と放送局の仲介をするところであるということを国民の皆さんにも周知して知っていただくということが必要だと思います」と述べている。
設立経緯
旧郵政省に設置された『多チャンネル時代における視聴者と放送に関する懇談会』が1996年12月に出した報告書の中で、「視聴者の苦情に対応するための第三者機関を設けるべき」との意見が盛り込まれたことを受け、NHKと民放連が1997年5月に『放送と人権等権利に関する委員会機構』(略称:BRO)を設置した。BROのもとに第三者の有識者で構成される「放送と人権等権利に関する委員会」(略称:BRC)が置かれた。
後にBROは機能強化のため、「放送番組委員会」及び「放送と青少年に関する委員会」を擁する放送番組向上協議会と2003年7月に統合することで、現在の放送倫理・番組向上機構(BPO)に改組された。
一方、2009年7月に佐藤勉元総務大臣は放送協議会総会でBPOに対して独立性の高い機関ではなく業界関係者による組織のため、お手盛りであるといった問題点を指摘している。
沿革
- 1965年 - 1月に日本放送協会(NHK)、日本民間放送連盟(民放連)、日本放送連合会(放送連合)の三者により、放送連合内に『放送番組向上委員会』(第一次)を設置。
- 1969年 - 放送連合が3月24日を以て解散し、これに伴い『放送番組向上委員会』も解消。5月29日、NHK及び民放連によって、新たに『放送番組向上協議会』が任意団体として設立され、同協議会内に「放送番組向上委員会」(第二次)を設置。
- 1997年 - 5月1日、NHK及び民放連(当時の会長は氏家齊一郎)により、『放送と人権等権利に関する委員会機構』(BRO)が任意団体として設立され、6月9日、BROによって「放送と人権等権利に関する委員会」(BRC)を設置。
- 2000年 - 4月1日、「放送番組向上委員会」内に「放送と青少年に関する委員会」を設置。
- 2002年 - 「放送番組向上委員会」が3月末を以て解散。翌4月、『放送番組向上協議会』内に「放送番組委員会」を設置。
- 2003年 - 『放送番組向上協議会』とBROがNHK及び民放連により統合され、7月1日、現在の放送倫理・番組向上機構(BPO)を設立。また、「放送番組委員会」、BRC、「放送と青少年に関する委員会」の3委員会をBPOが継承。
- 2007年 - 5月12日、「放送番組委員会」が「放送倫理検証委員会」に改組。
組織概要
理事会
最高意思決定機関は「理事会」で、理事長と理事9名の計10名で構成される。理事長は、放送事業者の役職員及びその経験者以外から理事会で選任され、 理事は、同様に放送事業関係者以外から理事長が3名を選任、設立母体であるNHKと民放連がそれぞれ3名を選任している。なお、政府からの独立性を理念の一つとしているため、放送事業を所管する総務省との人的・財的繋がりは無い。
理事会メンバー
- 現在(2016年4月時点)
- 理事長(非常勤) - 濱田純一(前東京大学総長)
- 専務理事(常勤) - 三好晴海
- 理事・事務局長(常勤) - 高橋宗和
- 理事(非常勤) - 坂井修一(東京大学情報理工学系研究科教授、歌人)
- 理事(非常勤) - 藤久ミネ(評論家)
- 理事(非常勤) - 山野勝(坂道研究家)
- 理事(非常勤) - 荒木裕志(日本放送協会理事)
- 理事(非常勤) - 行成卓巳(日本放送協会考査室室長)
- 理事(非常勤) - 河内一友(日本民間放送連盟放送基準審議会議長、毎日放送会長)
- 理事(非常勤) - 木村信哉(日本民間放送連盟専務理事)
- 監事(非常勤) - 新井徹(日本放送協会編成局計画管理部経理部長)
- 監事(非常勤) - 山内弘(日本民間放送連盟事務局長)
評議員会
放送事業者及びその関係者を除く7名以内で構成され、BPO内の『放送倫理検証委員会』、『放送と人権等権利に関する委員会』、『放送と青少年に関する委員会』の3つの委員会の委員を選任する権限を有する。
評議員メンバー
- 現在(2015年6月時点)
- 議長 - 半田正夫(青山学院大学名誉教授、弁護士)
- 議長代行 - 宮原賢次(住友商事名誉顧問)
- 評議員 - 辻井重男(中央大学研究開発機構教授)
- 評議員 - 坂東眞理子(昭和女子大学理事長、学長)
- 評議員 - 藤原作弥(ジャーナリスト、元日本銀行副総裁)
- 評議員 - 堀田力(さわやか福祉財団会長、弁護士)
- 評議員 - 山田太一(脚本家)
- 過去
- 平岩弓枝(作家)
- 伊藤正己(東京大学名誉教授、元最高裁判所判事)
- 堤清二(財団法人セゾン文化財団理事長、元セゾングループ代表)
- 津村節子(作家)
- 五代利矢子(評論家)
- 福原義春(資生堂名誉会長)
- 篠田正浩(映画監督) ほか
事務局
事務局は理事会の統轄下にあり、更に本事務局が下記の3つの委員会を統括、他に視聴者応対と総務を統括する。
委員会
放送倫理検証委員会
2007年に設置された放送番組の倫理を高め、質の向上を図るための審議を行う委員会で視聴者から寄せられた意見(後述)を基に、放送番組の取材・制作のあり方や番組内容に関する諸問題について審議を行い、必要に応じて「意見」を公表してゆく。また、虚偽の内容により視聴者に著しい誤解を与えた番組が放送された際には当該番組について審理を行い、「勧告」や「見解」を公表、当該放送局に再発防止策の提出とその報告を求められる権限を有する。
委員
- 現在(2016年4月時点)
- 委員長 - 川端和治(弁護士)
- 委員長代行 - 是枝裕和(映画監督、テレビディレクター)
- 委員長代行 - 升味佐江子(弁護士)
- 委員 - 岸本葉子(エッセイスト)
- 委員 - 斎藤貴男(ジャーナリスト)
- 委員 - 渋谷秀樹(立教大学大学院法務研究科教授)
- 委員 - 鈴木嘉一(放送評論家、ジャーナリスト)
- 委員 - 中野剛(弁護士)
- 委員 - 藤田真文(法政大学社会学部教授)
- 過去
- 村木良彦(メディアプロデューサー)
- 市川森一(脚本家)
- 里中満智子(漫画家)
- 水島久光(東海大学文学部教授)
- 小出五郎(科学ジャーナリスト)
- 森まゆみ(作家・編集者)
- 香山リカ(精神科医、テレビコメンテーター) ほか
- 旧放送番組委員会時代
委員会決定
- 審理の結果、意見・勧告・見解がなされた事案
- TBS『みのもんたの朝ズバッ!』不二家関連の2番組に関する見解(2007年8月6日) - TBS『みのもんたの朝ズバッ!』
- FNS27時間テレビ「ハッピー筋斗雲」に関する意見(2008年1月21日) - フジテレビ『FNS27時間テレビ みんな なまか だっ!ウッキー!ハッピー!西遊記!』
- テレビ朝日『報道ステーション』マクドナルド元従業員制服証言報道に関する意見(2008年2月4日) - テレビ朝日『報道ステーション』
- 光市母子殺害事件の差戻控訴審に関する放送についての意見(2008年4月15日)
- NHK教育テレビ『ETV2001シリーズ戦争をどう裁くか』第2回「問われる戦時性暴力」に関する意見(2009年4月28日) - NHK『ETV2001シリーズ戦争をどう裁くか』
- 日本テレビ『真相報道 バンキシャ!』裏金虚偽証言放送に関する勧告(2009年7月30日) - 日本テレビ『真相報道 バンキシャ!』
- 最近のテレビ・バラエティー番組に関する意見(2009年11月17日)
- TBS『報道特集NEXT』ブラックノート詐欺事件報道に関する意見(2010年4月2日) - TBS『報道特集NEXT』
- 参議院議員選挙にかかわる4番組についての意見(2010年12月2日) - 信越放送『SBCニュースワイド』、長野朝日放送『abnステーション』、TBS『関口宏の東京フレンドパークII』、BSジャパン『絶景に感動!思わず一句 初夏ぶらり旅』
- 日本テレビ 「ペットビジネス最前線」報道に関する意見(2011年5月31日) - 日本テレビ『news every.サタデー』
- 日本BS放送『"自"論対論 参議院発』に関する意見(2011年6月30日) - 日本BS放送『"自"論対論 参議院発』
- 情報バラエティー2番組3事案に関する意見](2011年7月6日) - テレビ東京『月曜プレミア!主治医が見つかる診療所』、毎日放送『イチハチ』
- 東海テレビ放送『ぴーかんテレビ』問題に関する提言(2011年9月22日) - 東海テレビ『ぴーかんテレビ』
- テレビ東京『ありえへん∞世界』に関する意見(2011年9月27日) - テレビ東京『ありえへん∞世界』
- 旧放送番組委員会時代
- 『発掘!あるある大事典II』問題に関する有識者委員の「声明」(2007年2月7日) - 関西テレビ『発掘!あるある大事典II』
放送と人権等権利に関する委員会
1997年に設置。2008年まではBRCという略称が用いられ、主に放送人権委員会と呼ばれている。放送番組によって名誉やプライバシーなどの人格権を侵害された個人及び団体を、無料で救済するための委員会。放送によって権利を侵害されたと考える当事者からの「申立て」に基づき審理、権利侵害の有無や放送倫理上の問題の有無を判断する。判断結果は、「見解」または「勧告」としてまとめられ、申立て人と当該放送局に通知された後に公表、委員会の「見解」「勧告」は広く一般に周知されるよう、当該放送局で放送することが義務付けられている。
また、苦情申立て人と当該放送局の間に立ち当事者間の話し合いを要請し問題の解決を図る「仲介・斡旋」も行っており、これによって「勧告」などの委員会決定に至ること無く解決した事例も多く存在している。
原則として申立てることが出来るのは、権利を侵害されたと考える個人またはその直接の利害関係人だけであり、その他にも現時点で係争中の事案や損害賠償請求を目的としたもの、BPO加盟社以外の放送局の番組などは審理の対象とならない。
委員
- 現在(2016年4月時点)
- 委員長 - 坂井眞(弁護士)
- 委員長代行 - 奥武則(法政大学社会学部教授)
- 委員長代行 - 市川正司(弁護士)
- 委員 - 紙谷雅子(学習院大学法学部教授)
- 委員 - 城戸真亜子(洋画家)
- 委員 - 白波瀬佐和子(東京大学大学院人文社会系研究科教授)
- 委員 - 曽我部真裕(京都大学大学院法科研究科教授)
- 委員 - 中島徹(早稲田大学大学院法務研究科教授)
- 委員 - 二関辰郎(弁護士)
- 過去
- 有馬朗人(物理学者、元東京大学総長、元理化学研究所理事長)
- 大宅映子(ジャーナリスト、テレビコメンテーター)
- 飽戸弘(現BPO理事長)
- 坂本春生(元官僚、セゾン総合研究所理事長)
- 五代利矢子(評論家)
- 崔洋一(映画監督)
- 中沢けい(小説家)
- 大石芳野(写真家)
- 田中里沙(宣伝会議取締役編集室長) ほか
委員会決定
この委員会決定には「勧告」、「見解(問題あり)」、「見解(問題なし)」の3つの判断がある。
- 勧告(人権侵害、あるいは重大な放送倫理違反があるとされた事案)
- 自動車ローン詐欺事件報道(第12号・2000年10月6日) - 1999年9月13日に放送された伊予テレビ(現:あいテレビ)『キャッチあい』の中で、詐欺事件の舞台として自動車販売店が映像に出た際、映像の選択、ぼかし処理、字幕スーパーの表現などが不適切であったため、販売店が特定されてしまい、視聴者に容疑者とあたかも共犯関係にあるかのような印象を与えたとして、少数意見が付記された人権侵害と認定。
- 熊本・病院関係者死亡事故報道(第17号・2002年3月26日) - 2000年8月6日に放送されたテレビ朝日『週刊ワイドコロシアム』で、熊本県で起きた交通事故について保険金殺人の可能性が高いと報道したことについて、十分な裏付けがないまま報道。当事者への配慮に欠けていたとして、少数意見が付記された人権侵害と認定。
- 中学校教諭・ 懲戒処分修正裁決報道(第22号・2004年5月14日) - 2003年10月14日に放送された北海道文化放送『UHBスーパーニュース』内の「今日の特集」コーナーで、中学校教諭へのセクハラによる懲戒免職処分が北海道人事委員会の裁決で停職処分に修正されたことを批判的に報道した際に、具体的事実関係及び懲戒処分とその修正過程を客観的に調査し、教諭側の主張を丁寧にフォローすることを怠ったとして、少数意見が付記された人権侵害と認定。
- 国会・不規則発言編集問題(第23号・2004年6月4日) - 2003年9月15日に放送されたテレビ朝日『ビートたけしのTVタックル』の中で、編集ミスにより参議院議員(放送当時は自民党衆議院議員)の藤井孝男が北朝鮮拉致問題に関する国会審議中に不規則発言を行ったかのように放送されたとして、人権侵害と認定。
- 産婦人科医院・行政指導報道(第25号・2005年7月28日) - 2005年1月25日に放送されたNHK名古屋放送局『ほっとイブニング』と、NHKラジオ第1・中部ブロックにおける報道の中で、愛知県豊明市の産婦人科医が受けた行政指導について、当該指導を受けた時期を明示せず、現在も違法行為を行っているかのように報道されたとして、重大な放送倫理違反と認定。
- バラエティ番組における人格権侵害の訴え(第28号・2006年3月28日) - 2005年6月25日に放送された関西テレビ『たかじん胸いっぱい』において、女優・タレントの杉田かおるが元夫で実業家の鮎川純太との結婚生活を振り返るトークを展開した際、元夫の私生活を明け透けに披露して名誉を傷つける発言を行った。また、7月9日の放送でも、6月25日の放送回で杉田が披露したトークに基づき、他の出演者が再び鮎川の名誉を傷つける発言を行ったとして、人権侵害と認定。バラエティ番組への勧告措置はこれが初めて。
- 徳島・土地改良区横領事件報道(第39号・2009年3月30日) - 2008年7月23日に放送されたテレビ朝日『報道ステーション』において、徳島・土地改良区横領事件に元衆議院議員の野中広務が関与しているかのように報道。事実ではないとして、補足意見・少数意見が付記された重大な放送倫理違反と認定。
- 保育園イモ畑の行政代執行をめぐる訴え(第40号・2009年8月7日) - 2008年10月19日に放送されたTBS『サンデージャポン』内のコーナー「みなさんのためのワイドショー講習」の中で、イモ畑を所有する保育園とその関係者らが高速道路建設における大阪府の行政代執行に反対する抗議活動を行っている模様を報じた際、まるで園児らを盾に使ったかのように報道。また、番組コメンテーターらもこのVTRに基づき当該保育園の責任者を批判する発言をしたとして、重大な放送倫理違反と認定。
- 割り箸事故・医療裁判判決報道(第41号・2009年10月30日) - 2008年2月13日に放送されたTBS『みのもんたの朝ズバッ!』のコーナー「ズバッ!8時またぎ」の中で、1999年7月に起きた、杏林大病院割りばし死事件をめぐる民事裁判の判決報道で、判決時の事実認定とは異なる再現映像を制作し放送、番組コメンテーターらもこのVTRに基づき当該医師を批判する発言を行ったとして、名誉棄損には当たらないものの重大な放送倫理違反と認定された。
- 見解(放送倫理違反、ないし放送倫理上問題があるとされた事案)
※放送局名及び番組名は対象事案のみ記載。
- サンディエゴ事件報道(第1号 - 第4号・1998年3月19日) - TBS、テレビ朝日、テレビ東京(NHKのみ「問題なし」)
- S幼稚園報道(第5号・1998年10月6日) - NHK
- 帝京大学ラグビー部員 暴行容疑事件報道(第6号 - 第10号・1999年3月17日) - 日本テレビ、フジテレビ、テレビ朝日(TBSとテレビ朝日は「問題なし」)
- 隣人トラブル報道(第11号・1999年12月22日) - フジテレビ・関西テレビ『スーパーナイト』
- 援助交際ビデオ関連報道(第13号 - 第15号・2001年1月30日) - 名古屋テレビ、テレビ愛知、中京テレビ
- インターネットスクール報道(第16号・2002年1月17日) - 日本テレビ『NNNきょうの出来事』
- 出演者比喩発言問題(第18号・2002年9月30日) - テレビ朝日・朝日放送『サンデープロジェクト』
- 女性国際戦犯法廷・ 番組出演者の申立て(第20号・2003年3月31日) - NHK『ETV2001』
- 山口県議選事前報道(第21号・2003年12月12日) - テレビ山口『TYS夕やけニュース21』
- 喫茶店廃業報道(第26号・2005年10月18日) - 毎日放送『VOICE』
- 新ビジネス“うなずき屋”報道(第27号・2006年1月7日) - テレビ東京『日経スペシャル ガイアの夜明け』
- エステ店医師法違反事件報道(第31号・2007年6月26日) - 日本テレビ『NNNニュースD』、『NNN Newsリアルタイム』、『NEWS ZERO』
- 高裁判決報道の公平・公正問題(第36号・2008年6月10日) - NHK『ニュースウオッチ9』
- 群馬・行政書士会幹部不起訴報道」(第37号・2008年7月1日) - エフエム群馬
- 拉致被害者家族からの訴え(第43号・2010年3月10日) - テレビ朝日『朝まで生テレビ!』
- 上田・隣人トラブル殺人事件報道(第44号・2010年8月5日) - テレビ朝日『報道ステーション』
- 大学病院教授からの訴え(第46号・2011年2月8日)- テレビ朝日・朝日放送『サンデープロジェクト』
放送と青少年に関する委員会
2000年に設置された、放送が青少年に与える影響やかかわり方などを視聴者から寄せられた意見・苦情(後述)などに基づき審議することなどを通して、青少年が視聴する放送番組の向上を目指す委員会。主に青少年委員会と呼ばれている。委員会は審議結果を「見解」、「提言」、「声明」などにまとめて公表、放送局に対して回答を要請したり、改善を求める。
委員
- 現在(2016年4月時点)
- 委員長 - 汐見稔幸(白梅学園大学学長)
- 副委員長 - 最相葉月(ノンフィクションライター)
- 委員 - 稲増龍夫(法政大学社会学部教授)
- 委員 - 大平健(精神科医)
- 委員 - 菅原ますみ(お茶の水女子大学教授)
- 委員 - 中橋雄(武蔵大学社会学部教授)
- 委員 - 緑川由香(弁護士)
- 過去
- 山谷えり子(生活ジャーナリスト、現参議院議員)
- 尾木直樹(教育評論家)
- 原寿雄(ジャーナリスト)
- 見城美枝子(エッセイスト)
- 大日向雅美(恵泉女学園大学教授)
- 平田オリザ(劇作家、演出家)
- 川端裕人(作家) ほか
見解・提言
- バラエティー系番組に対する見解 - 2000年11月29日の記者会見で、フジテレビの『めちゃ×2イケてるッ!』の1コーナー「七人のしりとり侍」とテレビ朝日の『おネプ!』の1コーナー「ネプ投げ」について、「しりとりゲームで間違えた人を罰ゲームと称してメッタ打ちにしており、“暴力的でいじめを肯定している”」(前者)、「女性を投げる際に下着や肌を意図的に見せるのは、“セクシュアルハラスメントや女性蔑視に当たる”」(後者)との苦情に基づく「見解」を発表、これを受けて両テレビ局は、2000年末を以て当該コーナーを中止した。
- 「消費者金融CMに関する見解」について - 2002年12月20日の記者会見で、多くの視聴者から「消費者金融のテレビCMの多くは、宣伝効果を上げるよう若者向けに親しみやすく制作されていたり、また、CMソングは幼児が覚えて口ずさめるほどリズミカルに作曲されている点などが、“お金が無ければ借りればよい”という誤ったメッセージを青少年に伝えるものだ」という懸念があった旨を発表、BPOは民放連及び加盟各社に対し、民放連の定める「児童及び青少年の視聴に十分、配慮する時間帯」である17時から21時までの時間帯は消費者金融CMの放送自粛などを要望した。
- 「血液型を扱う番組」に対する要望 - 2004年12月8日の記者会見で、民放の複数のテレビ番組で取り扱われた血液型による性格判断について、視聴者から「非科学的である」、「学校や職場で血液型による差別意識が生じている」といった苦情が寄せられたのを受けて、テレビ各社に対し民放連が定める放送基準の「第8章 表現上の配慮」54条に基づき、放送内容についての配慮を要望した。
- 注意喚起 児童の裸、特に男児の性器を写すことについて - 2008年4月11日、以前から「視聴者の意見」に男児の全裸や性器を修正せずに映すことに対する批判意見が年々急増していることを鑑み、たとえこれらのシーンを“家族的シーン”として放送したものであっても、インターネットなどで児童ポルノに転用される恐れがあるとの見解を示し、テレビ各社に注意喚起を行った。
- 青少年への影響を考慮した薬物問題報道についての要望 - 2009年11月2日、この年の夏に芸能人による薬物事件が多発したことを受け、各テレビ局の報道について薬物使用に関して警告などを促さずに興味を持たせる報道が見られるとして、テレビ各社に「極めて慎重な配慮」を要望した。
- フジテレビ「生爆烈お父さん27時間テレビスペシャル!!」 - 2013年10月22日、『FNS27時間テレビ (2013年)』において男性タレントが女性アイドルグループメンバーにプロレス技を掛けると共に暴行したとされる問題について、「バラエティー番組も『人間の尊厳』『公共の善』を意識して作られるべき」との見解を示した。
放送局への回答の要請
※放送局への回答を要請し、何らかの措置がとられた事例を記述
- 2003年1月、アニメ『機動戦士ガンダムSEED』において、主人公のキラ・ヤマトとフレイ・アルスターが肉体関係を持ったと暗示させる表現について「戦争が人々を破壊していく極限状況のもとでは、人は如何にもろい存在なのか」ということを表現するのに必要なキャラクターであると説明している。
- 2003年2月及び3月、アダルトゲーム原作のアニメ番組『らいむいろ戦奇譚』について性行為を想起させるシーンが含まれているため、他の放送局では深夜時間帯に編成されていたものを夕方6時からの放送に編成したサンテレビに対し回答要請を行ったが、同局は「深夜枠に空きが無かったため、枠が空いていた時間帯に編成しました」と回答、その後同局は3月末の番組終了及び改編を以て、当該番組を含め2枠あった夕方時間帯のアニメ番組枠を全て廃止する措置をとった。
- 2004年10月、フジテレビのバラエティ番組『はねるのトびら』の中で放送されていたコント「村田さなえ」のキャラクター設定(特定のジュース以外のものを飲むとアレルギーを発したり、興奮すると体がかゆくなり血が出るまでかきむしってしまう等)がアトピー患者や食物アレルギー患者を笑いのネタにしているとの視聴者からの苦情を受け、同局への回答を要請した。これを受けて同番組は公式ホームページ上に番組プロデューサー名で謝罪文を掲載、当該コントを一旦休止しキャラクター設定を変更した上でコントを再開した。
- 2009年6月、サンテレビの深夜番組『今夜もハッスル』について、全編を通して猥褻な内容の番組であり中高生も夜更かしをする週末の深夜0時台に放送するには不適切であるとの視聴者からの苦情を受け、同局への回答を要請した。これを受けて6月末、サンテレビは間髪入れずに同番組の打ち切りを決定、1983年からおよそ26年続いたお色気番組の制作から一度は撤退したものの翌2010年10月、放送時間帯を約1時間半繰り下げた上でかつて同局で放送されていた『おとなの子守唄』を装い新たに復活させる形で再開した。
- 2009年8月31日に放送されたテレビ朝日の特撮番組『仮面ライダーディケイド』の最終回において、主人公のディケイドと他の仮面ライダーが対峙するシーンの途中で放送を終了、その直後に劇場版仮面ライダーディケイドの告知をしたことについて、「(子供に)散々期待をさせておいて、それを裏切った」という旨の批判的な意見が多数寄せられていることを受け、2009年10月に同局に対し回答要請を行った。同局の早河洋社長は同月29日の定例記者会見の中で、「私どもの考え方としてはテレビシリーズの結末と映画の告知の境目がはっきり分かるようにすべきで、演出方法は不適切だった」と謝罪した。その後の再放送分の最終回では、該当部分を再編集し劇場版との連動部分を直接的な告知にならないように改変している。
放送倫理・番組向上機構の公平性・中立性
役員の選任
役員の選任について、放送事業者の役職員およびその経験者以外の者から理事長1名と理事3名を選任することにより、公平性や中立性を担保している。しかし、理事長は構成員が推薦し、理事長が理事3名を選任することになるので構成員の影響力を完全には排除できていない。また、各委員会のメンバーは評議員会により選任されるが、評議員会は理事会により選任されている。政府から独立性はある程度(NHKの独立性については除く)できていると思われるが、放送事業者からの独立性は担保されていない組織作りとなっている。
委員会の構成
各委員会の委員の中には、放送事業者に関わりのある人物がおり公平性や中立性を担保できる構成になっていない。