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宇都宮 健児(うつのみや けんじ、1946年12月1日 - )は、日本の弁護士。日本弁護士連合会前会長(2010年 - 2011年度)。
多重債務問題、消費者金融問題の専門家。日弁連消費者問題対策委員会委員長、東京弁護士会副会長などを歴任。現在は週刊金曜日編集委員、全国ヤミ金融対策会議代表幹事、オウム真理教犯罪被害者支援機構理事長、反貧困ネットワーク代表、年越し派遣村名誉村長を務める。
目次
経歴[編集]
愛媛県東宇和郡高山村(現:西予市明浜町)田之浜に傷痍軍人の長男として生まれる[1]。故郷の田之浜は江戸時代前期に開発された半農半漁の地だった。1955年、一家で大分県国東半島に開拓入植[1]。
1959年、熊本県に住む母方の叔父の元に預けられる。中学、高校、大学と卓球部に所属した[1]。1965年、熊本県立熊本高等学校卒後。東京大学に入学し、駒場寮で暮らす[1]。
1968年、司法試験合格[1]。1969年、東大を中退して[2]司法修習生となり、1971年、弁護士登録(東京弁護士会)[1]。岡安法律事務所に入所。1979年、佐藤法律事務所に入所。1983年、宇都宮健児法律事務所を開設[3][4]、後に東京市民法律事務所とする[5]。
2010年、日本弁護士連合会会長選挙に立候補。元副会長の山本剛嗣との選挙戦となる。2月5日に投票が行われ、得票数では山本に及ばなかったが、全国に52ある弁護士会のうち地方を中心とする42会で山本を上回る。同選挙においては、最多得票者は全国の3分の1以上の会においてそれぞれ最多票を得なければ当選できないという規定(日弁連会則61条2項)があるため、史上初の再投票となる。3月10日の再投票では、宇都宮が山本を上回る得票を獲得し、かつ46会で最多票を得て当選した[6]。
2012年、史上初の再選を目指して再び日弁連会長選挙に立候補。異例の3度に渡る投票の結果、元副会長で東京弁護士会所属の山岸憲司に敗れ、再選は成らなかった[7]。
同年11月9日、人にやさしい東京をつくる会からの支援を受けて東京都知事選に立候補表明した。キャッチコピーとして「東京なのに宇都宮、弁護士なのに健児」を標榜して脱原発、福祉の充実、格差是正などを訴えたが[8]、猪瀬直樹に大差をつけられ次点となり落選した。
2013年には、脱原発を求める市民グループによる脱原発政治連盟の呼びかけ人に名を連ねた[9]。
人物[編集]
大分県に入植した当初は、家族とともに電気もない土地を開墾する。勉強・スポーツ共に秀で、親類と話し合った結果、中学から熊本県に移り住む。親を楽にさせたいという思いからプロ野球選手を志したが、体格的な問題から中学1年時に断念。勉学に打ち込み、東京大学に合格。経済的な理由から入寮した駒場寮では当時学生運動が盛んで、寮生らと議論を重ねる中で弁護士を志す[1]。
大学在学中に司法試験に合格。当初は顧客開拓が思うようにいかず、簿記学校の講師をしながら生計を立てる[10]。1970年代後半、当時ほとんど顧みられることのなかった多重債務者の弁護を引き受けた[10]。そして、サラ金被害者向けに、弁護士費用分割払いを初めて実践[10]。宇都宮らの活動により、グレーゾーン金利の違法性が確定することとなった[11]。
しかし、依頼者が急増した結果、当時勤務していた事務所から「サラ金問題をやるなら事務所を辞めてくれ」と言われ独立[10]。独立した1983年には貸金業規正法、出資法改正法が成立したこともあり、事務所は追い風に乗った[3][4]。以降、豊田商事事件[12]、地下鉄サリン事件、オレンジ共済事件[12]、KKC事件[12]、日栄事件[12]、八葉グループ事件、五菱会事件[5]、商工ファンド事件などに取り組む。オウム真理教幹部に殺害された坂本堤弁護士の妻は、宇都宮の事務所で勤務していた[3]。
映画『夜逃げ屋本舗』を監修[5]したほか、宮部みゆきの小説『火車』に登場する弁護士のモデルである。
主張・政策 [編集]
死刑制度反対[編集]
2010年4月、中国政府が1972年以来となる日本人の死刑を執行したが、これに対して日本政府が毅然とした態度で死刑を執行しないよう強く要望しなかったことについて、日弁連会長として遺憾の意を表明した[13]。
2011年3月10日、大阪・愛知・岐阜連続リンチ殺人事件で3人の被告について死刑判決が出たこと、複数の報道機関が実名報道を行ったことに対して、日弁連会長として遺憾の意を表明した[14]。
放射線量見直し要求[編集]
2011年4月27日、福島第一原子力発電所事故の影響で増大している放射線量について、文部科学省が福島県内の学校・幼稚園などで屋外活動を制限する際の目安とした線量の見直しを求めた[15]。
表現規制反対[編集]
宇都宮は東京都青少年の健全な育成に関する条例可決前から改正反対を主張しており、2010年12月、「新条例案では、依然として、当連合会がこれまで指摘してきた問題点が十分には解消されていないため、当連合会は、新条例案に対しても改めて反対する」[16]と発言している。
選択的夫婦別姓制度導入について[編集]
宇都宮は選択的夫婦別姓制度導入を強く求めている。別姓訴訟を支える会へのメッセージでは、「日本国憲法は、第13条で個人の尊厳を,第24条で婚姻は両性の合意のみに基づいて成立すること、そして婚姻について法律は個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して制定されなければならないことを規定しています。氏名は、その人の人格の表象であり、それなしに人は社会で生きていくことができません。改姓を望まない人にも改姓を強制する制度は、その人格権を侵害するものです。また、圧倒的多数の夫婦が夫の氏を選択しており(2009年は96.3%)、望まない場合にも改姓を強いられているのは、実際には女性です。民法第750条は、一見中立的ですが、現実には性差別規定に他なりません。選択的夫婦別姓制度の導入は、憲法上の要請といえるでしょう。」と述べている[17]。
著書[編集]
共著を含め、50点以上の著書がある。
単著[編集]
- 『こうすれば必ず成功するサラ金地獄からの脱出法』(自由国民社、1984年)
- 『カード破産と借金整理法 - クレジット・ローン110番』(自由国民社、1990年)
- 『だれでもわかる自己破産の基礎知識 - カード破産・借金地獄からの脱出法』(花伝社、1992年)
- 『わかりやすい自己破産 - 自己破産を知らずして借金整理はできない…』(山川直人絵、自由国民社、1993年)
- 『自己破産のススメ - 救いあるカード・サラ金地獄脱出法』(ぴいぷる社、1993年)
- 『正しい弁護士の選び方・活用法』(ぴいぷる社、1994年)
- 『自己破産のすすめ - 大不況・大失業時代の借金整理法』(花伝社、1998年)
- 『個人再生手続の基礎知識 - わかりやすい個人再生手続の利用法』(花伝社、2001年)
- 『イラストでわかる悪質商法から身を守る方法』(なかむら治彦絵、東洋経済新報社、2001年)
- 『ヤミ金融撃退マニュアル - 恐るべき実態と撃退法』(花伝社、2002年)
- 『消費者金融 - 実態と救済』(岩波新書、2002年)
- 『自己破産と借金地獄脱出法 - 取り立てをこれでストップ! 』(主婦と生活社、2003年)
- 『ヤミ金・サラ金問題と多重債務者の救済 - 返さなくてもよい借金がある』(明石書店、2004年)
- 『多重債務の正しい解決法 - 解決できない借金問題はない』(花伝社、2007年)
- 『弁護士冥利 - だから私は闘い続ける』(東海大学出版会、2009年)
- 『弁護士、闘う - 宇都宮健児の事件帖』(岩波書店、2009年)
- 『反貧困 - 半生の記』(花伝社、2009年)
- 『大丈夫、人生はやり直せる - サラ金・ヤミ金・貧困との闘い』(新日本出版社、2009年)
- 『13歳から学ぶ日本の貧困 - 日本をむしばむ"貧困"が60分で見えてくる』(青志社、2009年)
編著[編集]
- 『多重債務被害救済の実務』(勁草書房、2005年)
共著[編集]
共編[編集]
- 『個人債務者再生手続実務解説Q&A』(木村達也、小松陽一郎との共編、青林書院、2001年)
- 『もうガマンできない!広がる貧困 - 人間らしい生活の再生を求めて』(猪股正、湯浅誠との共編、明石書店、2007年)
- 『反貧困の学校 - 貧困をどう伝えるか、どう学ぶか』1、2(湯浅誠との共編、明石書店、2008年)
- 『派遣村 - 何が問われているのか』(湯浅誠との共編、岩波書店、2009年)
- 『命と絆は守れるか? - 震災・貧困・自殺からDVまで』(浅見昇吾、稲葉剛との共編、三省堂、2012年)
監修[編集]
- 『他人事ではない自己破産 - 男の借金、女の借金、どうする!?マニュアル』(主婦の友社、1998年)
- 『借金地獄で死ぬ人助かる人 - 自己破産はこわくない』(バディ堀井原作、夏目けいじ画、リヨン社、1998年)
- 『サラ金・商工ローン・日掛け金融絶対借りるな! - 自分でできる自己破産と借金整理法決定版』(本の泉社、2000年)
- 『高金利「金貸し」対決マニュアル - 「実録人生伝」付き』(小学館文庫、2000年)
- 『借金地獄からの脱出法 - クレジット・サラ金・商工ローン・ヤミ金融に負けない被害救済法』(全国クレジット・サラ金被害者連絡協議会編、本の泉社、2002年)
- 『親と離れて暮らす長男長女のための本 - ファミリー判』(中経出版、2002年)
- 『どんと来い!借金地獄 - サラ金・ヤミ金・商工ローン・カードローン多重債務必勝法』(全国クレジット・サラ金被害者連絡協議会編、ベストセラーズ、2003年)
- 『お金で死なないための本 - いつでもカード、どこでもローンの落とし穴』(千葉保、クレサラ探偵団著、イラ姫絵、太郎次郎社エディタス、2007年)
- 『お金で泣かないための本 : 困るまえに読む!お金のトラブル回避術』(千葉保、利息解読プロジェクト著、イラ姫絵、太郎次郎社エディタス、2011年)
メディア[編集]
雑誌[編集]
- ロイヤーズマガジン - 弁護士の肖像(08年7月号)
テレビ番組[編集]
- プロフェッショナル 仕事の流儀 第5回「仕事も人生もやり直せる」(NHK総合テレビ)
- クローズアップ現代 第2861号「過払い金が狙われる 〜相次ぐ弁護士トラブル〜」(NHK総合テレビ)
- ルビコンの決断(2009年9月17日、テレビ東京)
- 福祉ネットワーク 「この人と福祉を語ろう 困っている人はみんなで助けよう」(2010年5月19日、NHK教育テレビ)
脚注[編集]
- ↑ 1.0 1.1 1.2 1.3 1.4 1.5 1.6 () 魂の仕事人 第10回 其の一 人材バンクネット [ arch. ] 2011-07-17
- ↑ (2011-02-20) 日弁連会長の宇都宮健児さん「人間は他人のためにがんばれる」2度もクビに 1/4 産経新聞 2011-02-20 [ arch. ] 2011-07-17
- ↑ 3.0 3.1 3.2 () 魂の仕事人 第10回 其の三 人材バンクネット [ arch. ] 2011-07-17
- ↑ 4.0 4.1 (2011-02-20) 日弁連会長の宇都宮健児さん「人間は他人のためにがんばれる」2度もクビに 3/4 産経新聞 2011-02-20 [ arch. ] 2011-07-17
- ↑ 5.0 5.1 5.2 () 魂の仕事人 第10回 其の四 人材バンクネット [ arch. ] 2011-07-17
- ↑ (2010-03-11) 宇都宮健児氏、日弁連会長選挙当選の要因 JANJAN 2010-03-11 [ arch. ] 2011-07-17
- ↑ (2012-04-27) 日弁連会長に山岸氏 「会の執行にまい進」 日本経済新聞 2012-04-27 [ arch. ] 2012-04-30
- ↑ 都知事選:宇都宮健児氏が立候補表明…「東京から脱原発」 - 毎日新聞 2012年11月9日
- ↑ 参院選へ緑茶会発足 「脱原発」結集 1次推薦40人 - 東京新聞2013年4月25日
- ↑ 10.0 10.1 10.2 10.3 () 魂の仕事人 第10回 其の二 人材バンクネット [ arch. ] 2011-07-17
- ↑ (2011-07-16) "逃げ得"を絶対に許すな!武富士創業家を追い詰める「1万人訴訟」計画が発動 2011-07-16 [ arch. ] 2011-07-17
- ↑ 12.0 12.1 12.2 12.3 () 魂の仕事人 第10回 其の二 人材バンクネット [ arch. ] 2011-07-17
- ↑ (2010-04-06) 中国政府の邦人に対する死刑執行及びさらなる死刑執行通告に関する日弁連コメント 日本弁護士連合会 2010-04-06 [ arch. ] 2011-07-17
- ↑ (2011-03-10) 「死刑確定させるのは遺憾」日弁連会長が声明 実名報道も批判 産経新聞 2011-03-10 [ arch. ] 2011-07-17
- ↑ (2011-04-27) 日弁連、学校の線量見直し求める 会長「安全性に問題」 共同通信 2011-04-27 [ arch. ] 2011-07-17
- ↑ 日本弁護士連合会:「東京都青少年の健全な育成に関する条例の一部を改正する条例案」に関する会長声明
- ↑ 別姓訴訟を支える会応援メッセージ
外部リンク[編集]
- 東京市民法律事務所 ウェブサイト
- 人にやさしい東京をつくる会 公式ウェブサイト
- 宇都宮けんじ(@utsunomiyakenji)- Twitter
- utsunomiyakenji - YouTube UserChannel
- utsunomiya_kenjiTV - Ustream
- 宇都宮健児あいさつ - 全国労働組合総連合第23回定期大会 来賓あいさつ
- 今週の会長 2010年 - 日弁連会長時代のバックナンバー(2010年)
- 今週の会長 2011年 - 日弁連会長時代のバックナンバー(2011年)
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