円 (通貨)

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(えん)は、日本通貨単位。通貨記号は¥円記号)、ISO 4217の通貨コードはJPY旧字体ではローマ字ではYenと表記する。しばしば日本円(にほんえん)ともいう。

現在、通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律(昭和62年6月1日法律第42号)により「通貨の額面価格の単位は円とし、その額面価格は一円の整数倍とする」と定められている(通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律2条1項)。

概要[編集]

現在の日本の通貨単位である円は、明治4年5月10日1871年6月27日)に制定された新貨条例(明治4年5月10日太政官布告第267号)で定められたものである。当時の表記は旧字体の「圓」であった。通貨単位としての円は「新貨条例」の廃止後も「貨幣法」(明治30年3月29日法律第16号)に受け継がれ、さらに現在は「通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律」に受け継がれている。

外国為替市場など日本以外の通貨との関りの深い分野では、「日本円」という表記や呼称がよく用いられる。

通貨単位[編集]

「円(圓)」という単位名は中国に由来する。中国では、銀は鋳造せずに塊で貨幣として扱われたが(銀錠)、18世紀頃からスペインと、それ以上にその植民地であったメキシコから銀の鋳造貨幣が流入した(洋銀)。これらはその形から、「銀円」と呼ばれた。後にイギリス香港造幣局は「香港壱圓」と刻印したドル銀貨を発行したのはこの流れからである。「銀円」は、その名と共に日本にも流入し、日本もこれを真似て通貨単位を「円」と改めた。1870年、日本は、香港ドル銀貨と同品位・同量の銀貨を本位貨幣とする銀本位制度を採用すると決定したが、直後に伊藤博文が当時の国際情勢を鑑みて急遽金本位制に変更することを建議した[1]。明治政府が貨幣の形状から「円」と名付けたとする説は、俗説である[1]

ローマ字表記が「en」ではなく「yen」である理由は幾つか想定されるが、最大の理由は、幕末から明治にかけての英米国人が「yen」と綴り、それが国際化したためと考えられる。史上初の本格的な英和・和英辞典であるヘボンの『和英語林集成』(初版1867年)では、「円」以外にも、「エ」「ヱ(we)」で始まる単語は全て「ye」と綴られている。これは先行する W.H.メドハーストの『英和和英語彙』(1830年)に倣ったものである。メドハーストは日本を訪れたことも日本人に会ったこともなく、ジャカルタバタヴィア)で、和蘭辞典や日本を訪れたことのある人々の情報を元にこれを著した。この語彙集には「e」と「ye」が混在し、冒頭の仮名一覧には「エ・え」に「e」「ye」の両方が当てられている)。しかしヘボンは、日本語の「エ」がごく一部地域を除いて、je1 je [je] ではなくe1 e [e] と発音されていたことを知っていたから、ヘボン式ローマ字が確立した第三版(1886年版)に至って、「円」と格助詞の「へ」以外、「エ」は全て「e」に改めた[2]。この時点で、すでに「円」は「yen」として定着していたと考えられる。その理由として、西洋語では「yen」の方が、他の単語と混同しにくいことが挙げられよう(仏語の前置詞 en など)。綴りに引かれて、外国では「イェン」jɛn1 jɛn [jɛn] といった具合に「y」を発音する場合が多い。なお、歴史的仮名遣いは「ゑん(wen)」である。(je1 je [je] からe1 e [e] への移行時期については、日本語の項の音韻史、または「」の項を参照)

補助単位としては、

  • - 1円の100分の1(1円=100銭)
  • - 1円の1000分の1、1銭の10分の1(1円=1000厘、1銭=10厘)

が規定されるが、銭および厘単位の補助貨幣および小額政府紙幣1953年末に小額通貨の整理及び支払金の端数計算に関する法律(昭和28年法律第60号)によって小額通貨が整理された際に使用・流通禁止処分が取られた。現在、「銭」や「厘」の単位は通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律によって「一円未満の金額の計算単位」と定められており(通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律2条2項)、為替株式の取引、少額物品の単価見積で単位としての銭が便宜的に使用されるにすぎない。

なお、円にはいくつか種類があり、第二次世界大戦終戦までは内地で流通した日本円の他、外地通貨である台湾円台湾で流通)や朝鮮円朝鮮及び関東州で流通)も存在した(南洋群島は例外的に日本円が流通)。

また、中国の通貨単位である「」の正式名称は「(=圓・円)」である。かつて「"圓"の画数が多い」という理由で、その代わりに同音(yuan)の「元」が当てられ、今日に至る。韓国北朝鮮の「ウォン」も「圓(=円)」の朝鮮語読みである。台湾ニュー台湾ドル香港香港ドルも、国内での名称は「元」ないし「圓」である。すなわち、これら東アジアの諸通貨は、みな本質的には「圓」という名称を共有しているといえる。

同様に通貨記号"¥"も日本の円と中国人民元で共有している。

なお中国語では日本円を「日圓」「日元」、米ドルを「美元」、ユーロを「欧元」というように、国・地域名を冠してそこで用いられる通貨を指す用法も派生した。

詳細は を参照

流通硬貨・紙幣[編集]

現在も継続的に発行されているものは硬貨6種類、紙幣4種類である。

硬貨[編集]

詳細は 日本の硬貨 を参照

紙幣[編集]

詳細は 日本銀行券 を参照

歴史[編集]

「円」制定の経緯[編集]

1871年明治政府貨幣の基本単位にを用いることを決定した。このとき、純金1500mgを1円(すなわち金平価1500mg)とする金本位制の導入が試みられ、20円、10円、5円、2円、1円の日本初の洋式本位金貨が鋳造、発行された。この量目は米国訪問中の伊藤博文が建言したものであり、当時の国際貨幣制度確立案として米国下院に提案中だった1ドル金貨の金純分とほぼ等しい。

また、当時明治政府が鋳造し流通していた明治二分判(量目3g 金純分22.3%)2枚(=1)の純金および純銀含有量の合計の実質価値に近似でもあり、新旧物価が1両=1円として連結し、物価体系の移行に難が少ないとして採用された(なお、江戸幕府最後の二分判である万延二分判と明治二分判の純金含有量はほぼ同じである)。

金・銀本位制[編集]

しかし輸入増加、西南戦争日清戦争等による不換紙幣・銀行券の濫発、金流出等により実際には金本位制は機能せず、事実上銀本位制のままだった。これは当時発行されていた日本銀行券が本位金貨が存在したのにもかかわらず、兌換銀券であったことでも頷ける。

その後、日清戦争の賠償金として受け取った金を兌換準備充当の正貨として、1897年貨幣法が制定され、第2次金本位制度が確立し、ようやく紙幣の金兌換が実現した。

ただし、このとき定められた1円の金平価は750mgと半減し、しかも兌換準備充当正貨は英国に置いたままの在外正貨の形で運用された。これに伴い1871年から発行された最初の本位金貨は、この時から額面の2倍の通用力を有すこととなった。一方新貨幣法による本位金貨は20円、10円、5円のみとなり、1円金貨は発行されなかった。これらの本位金貨は戦後も廃止されず、1988年4月1日に通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律が施行されるまで名目上は現行通貨であった。

この金兌換は1917年まで継続されたが、第一次世界大戦による金本位制停止で金輸出禁止、兌換も停止された。

終戦後の混乱を経て、1930年に金の輸出を自由化して金本位制度を復活させる措置(金解禁)が取られたが、1931年12月には金輸出・金兌換が再び禁止となり日本の金本位制は崩壊、その後は管理通貨制度に移行した。同時期に勃発した十五年戦争により、物資不足からのインフレは徐々に進行する。終戦後は、生産設備の壊滅・賠償引当、経済統制の弛緩、不作、占領経費の円建て支払いなどの理由によりインフレが加速、新円切替に至る。

金為替本位制[編集]

第二次世界大戦以後のIMF体制(いわゆるブレトン・ウッズ体制)下では、米ドルを介した金為替本位制により、1円の金平価は2.4685mgとなった。この価格は、1ドルの金平価1/35トロイオンスを、当時の対ドル円為替相場である1ドル=360円で割って算出されたものである[3]。米ドルを基軸通貨とする体制はこれまでの金本位制に対し、俗に「ドル本位制」と呼ばれる。

この対ドル固定相場制に基づく金為替本位制は1971年ニクソン・ショックにより終結し1973年には変動相場制に移行した。

変動相場制[編集]

変動相場制への移行後、上下を続けた円相場は1970年代末にアメリカのインフレ対策への失望から急速に円高へ進んだ(ドル危機)。ポール・ボルカーFRB議長により新金融調節方式が採用されるとドルの金利は急速に上昇し、合わせて円相場は円安へ向かった。1985年、高すぎるドル相場の安定的是正を目指してプラザ合意が行なわれると、円相場は1年で2倍の円高となった。バブル経済期に一時的な円安を迎えた後、1995年にかけて円高が進み1ドル=70円台後半まで円高が進んだ。1990年代後半には「強いドル政策」と日本の金融危機により円安が進行。以後、緩やかに円高に向かう。

現在はハードカレンシーのひとつ、且つアメリカドル、ユーロと並び世界三大通貨(日本ではG3通貨とも。乃至はスターリング・ポンドとあわせて世界4大通貨)として国際的に認知され、信用されている。円の特徴としては、日本が経常黒字国であること、物価上昇率が低いこと、低金利であることが挙げられる。市場のボラティリティが低い状況下では、低金利の円を借り入れて他通貨に投資する動き(いわゆる円キャリー取引)が活性化するため、緩やかに円安が進む傾向にある。一方、ボラティリティの上昇局面には、こうした投資の巻き戻しに加えて、経常黒字、低い物価上昇率といった要因が意識されるため、円高が急速に進む傾向にある。円高と円安のリスクのどちらがより大きいかを示す指標であるリスクリバーサルは、過去10年以上にわたりほぼ一貫して円高リスクの方が大きいことを示唆している。

2000年代中盤にかけての世界的な低ボラティリティ環境下では、低金利の円は減価を続けた。米ドルと米ドル以外の主要国通貨も含めた通貨の国際的な購買力を示す実質実効為替レートで見ると、2007年にはプラザ合意以前の円安水準へと逆戻りし(右上グラフ青線)、円はもはやローカル通貨でしかないという評価もされた[4][5]。円に対するこうした評価は、円に対する先安感を助長し、先述した円キャリー取引を加速させた。しかし、2008年にかけて、金融危機が深刻化する中で円の独歩高が進行しており、過度の円安期待が歪んだものであったことを示唆している。

円の流通高[編集]

円の流通高は2009年3月末現在において現金ベースで81兆4,215億円であり、このうち日本銀行が発行する紙幣が76兆8,977億円、財務省が発行する硬貨が4兆5,237億円である。円の通貨流通高とは、現金の総額と捉えることもできる。紙幣は国立印刷局が印刷・製造しており、製品そのものは市中に出回っている紙幣以外に日本銀行の金庫内にも保管されており、必要に応じて発行される。個人や企業への支払に使う紙幣を調達するために、金融機関が日本銀行に保有している当座預金から資金を引き出して、日本銀行の窓口で紙幣を受け取ることによって日本銀行券は発行される。

経済活動に使われる資金としての円は、現金以外にも銀行に個人や企業が保有している当座預金や普通預金などほとんど現金と同様に日々の取引の決済に利用できる資金などもある。日本では、金融機関以外の民間企業、個人や地方公共団体などが保有している現金に当座預金、普通預金、定期性預金などを加え、さらにCD(譲渡性預金)を加えたM2+CDが市中にある円資金の流通量の指標として使われることが多い(詳しくはマネーサプライを参照)。

為替レート[編集]

米ドル - 円[6][7]

1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
1949年から
1971年まで
360(固定相場)
1972年 308(1971年12月より切り上げ)
1973年 301.15 270.00 265.83 265.50 264.95 265.30 263.45 265.30 265.70 266.68 279.00 280.00
1974年 299.00 287.60 276.00 279.75 281.90 284.10 297.80 302.70 298.50 299.85 300.10 300.95
1975年 297.85 286.60 293.80 293.30 291.35 296.35 297.35 297.90 302.70 301.80 303.00 305.15
1976年 303.70 302.25 299.70 299.40 299.95 297.40 293.40 288.76 287.30 293.70 296.45 293.00
1977年 288.25 283.25 277.30 277.50 277.30 266.50 266.30 267.43 264.50 250.65 244.20 240.00
1978年 241.74 238.83 223.40 223.90 223.15 204.50 190.80 190.00 189.15 176.05 197.80 195.10
1979年 201.40 202.35 209.30 219.15 219.70 217.00 216.90 220.05 223.45 237.80 249.50 239.90
1980年 238.80 249.80 249.70 238.30 224.40 218.15 226.85 219.20 212.00 211.75 216.75 203.60
1981年 205.20 208.85 211.40 215.00 223.50 225.75 239.75 228.75 231.55 233.35 214.15 220.25
1982年 228.45 235.20 248.30 236.30 243.70 255.55 256.65 259.60 269.40 277.40 253.45 235.30
1983年 238.40 235.55 239.30 237.70 238.60 239.80 241.50 246.75 236.10 233.65 234.20 232.00
1984年 234.74 233.28 224.75 226.30 231.63 237.45 245.45 241.70 245.40 245.30 246.50 251.58
1985年 254.78 259.00 250.70 251.40 251.78 248.95 236.65 237.10 216.00 211.80 202.05 200.60
1986年 192.65 180.45 179.65 168.10 172.05 163.95 154.15 156.05 153.63 161.45 162.20 160.10
1987年 152.30 153.15 145.65 139.65 144.15 146.75 149.25 142.35 146.35 138.55 132.45 122.00
1988年 127.18 128.12 124.50 124.82 124.80 132.20 132.53 134.97 134.30 125.00 121.85 125.90
1989年 129.13 127.15 132.55 132.49 142.70 143.95 138.40 144.28 139.35 142.15 142.90 143.40
1990年 144.40 148.52 157.65 159.08 151.75 152.85 147.50 144.50 137.95 129.35 132.75 135.40
1991年 131.40 131.95 140.55 137.42 137.97 138.15 137.83 136.88 132.95 131.00 130.07 125.25
1992年 125.78 129.33 133.05 133.38 128.33 125.55 127.30 123.42 119.25 123.35 124.75 124.65
1993年 124.30 117.85 115.35 111.10 107.45 106.51 105.60 104.18 105.10 108.23 108.82 111.89
1994年 109.55 104.30 102.80 102.38 104.38 98.95 99.93 99.57 98.59 97.37 98.98 99.83
1995年 98.58 96.93 88.38 83.77 83.19 84.77 88.17 97.46 98.18 101.90 101.66 102.91
1996年 106.92 104.58 106.49 104.29 108.37 109.88 107.13 108.40 111.45 113.27 113.44 115.98
1997年 122.13 120.88 123.97 126.92 116.43 114.30 117.74 119.39 121.44 120.29 127.66 129.92
1998年 127.34 126.72 133.39 131.95 138.72 139.95 143.79 141.52 135.72 116.09 123.83 115.20
1999年 115.98 120.32 119.99 119.59 121.37 120.87 115.27 110.19 105.66 104.89 102.42 102.08
2000年 106.90 110.27 105.29 106.44 107.30 105.40 109.52 106.43 107.75 108.81 111.07 114.90
2001年 116.38 116.44 125.27 124.06 119.06 124.27 124.79 118.92 119.29 121.84 123.98 131.47
2002年 132.94 133.89 132.71 127.97 123.96 119.22 119.82 117.97 121.79 122.48 122.44 119.37
2003年 119.21 117.75 119.02 119.46 118.63 119.82 120.11 117.13 110.48 108.99 109.34 106.97
2004年 105.88 109.08 103.95 110.44 109.56 108.69 111.67 109.86 110.92 105.87 103.17 103.78
2005年 103.58 104.58 106.97 105.87 108.17 110.37 112.18 111.42 113.28 115.67 119.46 117.48
2006年 117.18 116.35 117.47 114.32 111.85 114.66 114.47 117.23 118.05 117.74 116.12 118.92
2007年 121.34 118.59 118.05 119.41 121.63 123.48 118.99 116.24 115.27 114.78 110.29 113.12
2008年 106.63 104.34 99.37 104.05 105.46 105.33 108.13 108.80 104.76 97.01 95.31 90.28
2009年 89.51 97.87 98.31 97.67 96.45 95.56 95.61 92.78 89.76 91.11 86.15 92.13
2010年 90.19 89.34 93.27 94.18 91.49 88.66 86.37 84.24 83.32 80.68 84.03 81.51
2011年 82.04 81.68 82.84 81.60 81.60 80.42 77.59 76.58 76.70 76.72 77.50 77.81
2012年 76.94 78.47 82.37 81.42 79.70 79.27 78.96 78.68 78.17 78.97 80.92 83.60
2013年 89.15 93.17 94.79 97.70 101.08 97.56 99.77 97.94 99.31 97.85 99.90 103.61
2014年 104.26 102.23 102.26

外貨準備[編集]

日本円は世界中の国で外貨準備として用いられており、2011年では第4位の通貨である。

脚注[編集]

  1. 1.0 1.1 「円」の項『世界大百科事典26』 平凡社、2009年
  2. 各版ローマ字対照表
  3. 円の角度が360度であることに由来すると言う説があるが、これは俗説で正しくない。物価情勢などを考えて計算されたものである。
  4. 「YEN漂流 私はこう見る」 日本経済新聞2008年1月5日
  5. 天木直人円は今やローカル通貨と言い放った元財務官僚」『天木直人のブログ』2008年1月6日
  6. 日本銀行ホームページの時系列データにある「外国為替相場 / text」を元にした。
  7. 2011年10月度以降は、「日本銀行時系列統計データ検索サイト」の主要指標グラフ「為替」(日本標準時17時時点における東京外国為替市場の直物為替相場、月中平均値)を元にしている。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]