火山帯
火山帯(かざんたい、volcanic belt)とは、火山がある程度の幅をもって列をなしているもの。日本では過去に国内の火山を地理的な観点から7つの火山帯に区分していたが、火山学的には全く関連のない火山までもまとめていることもあり、現在では用語自体があまり使われない傾向にある。使う場合でも環太平洋火山帯のように規模の大きなものに用いることが多い。
目次
概要[編集]
日本では過去に、国内の火山を千島火山帯、那須火山帯、鳥海火山帯、富士火山帯(富士箱根火山帯、富士箱根伊豆火山帯)、乗鞍火山帯、白山火山帯(大山火山帯)、霧島火山帯の7つの火山帯に区分していたが、これは単なる地理的な区分であった。その後、個別の火山の岩石学的研究が進み、さらにプレートテクトニクスの研究が進んで、プレートの沈み込みに伴うマグマ発生・上昇・火山形成過程が明らかになってくると、火山学上はこのように細かく分ける意味がないこと、逆に形成過程のまったく異なる火山を同一の火山帯に区分していた場合もあることがわかったため、上記の火山帯名は使われなくなった。
現在では「火山帯」という用語自体があまり使われない傾向にあり、使う場合でも環太平洋火山帯のように規模の大きなものに用いることが多い。日本の火山を火山帯に区分する場合は、プレートテクトニクス理論に基づき、太平洋プレートの沈み込みに起因するものを東日本火山帯、フィリピン海プレートの沈み込みに起因するものを西日本火山帯と呼ぶ。上記の古い火山帯区分で言うと、白山火山帯(大山火山帯)を狭義の白山火山帯(中部・北陸地方)と狭義の大山火山帯(中国地方)に分け、千島火山帯から狭義の白山火山帯までが東日本火山帯、狭義の大山火山帯から霧島火山帯までが西日本火山帯に相当する。
火山列[編集]
火山帯をさらに細分する場合は、火山フロントからの距離に応じた細長い火山列(かざんれつ、volcanic chain)に区分するのが合理的である。これは沈み込んだ海洋プレートの到達深度によって発生するマグマの成分が異なるからである。東日本火山帯ではこのような火山列が顕著で、北関東〜信越地方では3列、東北地方では4列、北海道南西部では5列が認められる。
区分と主な火山[編集]
日本で過去に用いられていた7つの火山帯に属する主な火山は以下の通りである。
千島火山帯[編集]
千島火山帯(ちしまかざんたい)は、北海道の中央部から知床半島を通り、千島海溝と平行に千島列島へと延びる火山群である。主な火山は、十勝岳、大雪山、雄阿寒岳、雌阿寒岳、羅臼岳、爺爺岳などである。屈斜路湖、阿寒湖、摩周湖などはこの地域の火山活動によって形成されたカルデラ湖である。
那須火山帯[編集]
那須火山帯(なすかざんたい)は、北海道北西海上の利尻島から東北地方中央部を通り那須岳から浅間山へ至る火山群である。日本海溝と平行しており、東北地方部分は奥羽山脈とほぼ一致する。主な火山は北から、利尻山、羊蹄山、有珠山、恐山、八甲田山、八幡平、岩手山、秋田駒ヶ岳、栗駒山、蔵王山、吾妻山、安達太良山、磐梯山、那須岳、燧ケ岳、高原山、男体山、赤城山、浅間山などである。この地域に位置する洞爺湖、支笏湖、十和田湖、田沢湖はカルデラ湖であり、猪苗代湖や中禅寺湖は火山活動によって形成された堰止湖である。
鳥海火山帯[編集]
鳥海火山帯(ちょうかいかざんたい)は、北海道南西海上の渡島大島から那須火山帯と平行して東北地方の日本海側を通り、新潟県南部の苗場山に至る火山群である。主な火山は北から、渡島大島、岩木山、森吉山、鳥海山、月山、浅草岳、守門岳、燧ヶ岳、苗場山などである。
富士火山帯[編集]
富士火山帯(ふじかざんたい)は、富士箱根火山帯(ふじはこねかざんたい)あるいは富士箱根伊豆火山帯(ふじはこねいずかざんたい)とも呼ばれ、新潟県西部から長野県、山梨県、静岡県を通り、太平洋上を伊豆・小笠原海溝に沿って伊豆諸島、小笠原諸島へと延びる火山群である。主な火山は北から、新潟焼山、妙高山、黒姫山、蓼科山、八ヶ岳、富士山、箱根山、天城山、伊豆大島、三宅島、八丈島、ベヨネース列岩、硫黄島、福徳岡ノ場などである。
乗鞍火山帯[編集]
乗鞍火山帯(のりくらかざんたい)は、岐阜県と長野県の県境である飛騨山脈に沿った火山帯である。主な火山は北から、立山火山、焼岳、乗鞍岳、御嶽山などである。
白山火山帯[編集]
白山火山帯(はくさんかざんたい)もしくは大山火山帯(だいせんかざんたい)は、岐阜県と石川県の県境である白山から中国山地を通って九州北部まで延びる火山群である。中部地方部分を狭義の白山火山帯、中国地方以西を狭義の大山火山帯として区分する場合もある。主な火山は東から、白山、大山、三瓶山、鶴見岳、由布岳、九重連山、雲仙岳などである。
霧島火山帯[編集]
霧島火山帯(きりしまかざんたい)は、九州中央部の阿蘇山を北端として南西方向に延び、南西諸島に至る火山群である。琉球海溝とほぼ平行している。主な火山は北から、阿蘇山、霧島山、桜島、開聞岳、薩摩硫黄島、諏訪之瀬島などである。九州南部では火山活動によって阿蘇カルデラ、姶良カルデラ、鬼界カルデラなどのカルデラ地形が形成されている。
関連項目[編集]
- 火山前線(火山フロント)