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2009年8月9日 (日) 16:44時点における版
ポケモンショックとは、1997年12月16日にテレビ東京および系列局の同時ネットで放送されたテレビアニメ『ポケットモンスター』(ポケモン)の視聴者が、光過敏性発作などを引き起こして病院に搬送された出来事。
「ポケモンショック」の名称は俗称で、他にも
- 「ポリゴンショック」
- 「ポケモン(ポリゴン)事件」
- 「ポケモン(ポリゴン)騒動」
- 「ポケモン(ポリゴン)フラッシュ」
などとも呼ばれ、また、アニメ技法から「パカパカ」などと呼ばれる。
発端と原因
事故の発端となったのは、1997年12月16日にテレビ東京系列で放送されたテレビアニメ『ポケットモンスター』第38話「でんのうせんしポリゴン」の映像であった。
この回の内容は、主人公たちがコンピュータ内で起きている事件を解決するためにコンピュータ内部に入り込むというものであった。この回ではコンピュータの世界を表現するために、パカパカを始めとするストロボ、フラッシングなどの激しい点滅を、25箇所にわたって1秒間以上連続して使用しており[1]、特に番組後半はこれらが連続して使用された(特に顕著だったのがピカチュウの十万ボルトがワクチンソフトのミサイルに当たった場面である)。当時の視聴率は関東地区で16.5%、関西地区で10.4%で[2]、各局の同時ネットにより、345万人の子供(4 - 12歳)が見ていたと推定されている[1]。
この回の放送直後、放送を見ていた視聴者の一部が体調不良を訴え、各地で病院に搬送された。病院に搬送された患者の多くは児童で、テレビ東京が最終的に把握した子供は約750人に上り、そのうち135人が入院した。患者の症状は主に、発作様症状、眼・視覚系症状、不定愁訴、不快気分、頭痛、吐き気などであった。原因は、上記の激しい光の点滅を断続的に見たことにより、光過敏性発作が引き起こされたためとされる。
報道
事故直後、この事故はマスコミで大々的に報じられた。第一報を伝えたのは午後9時台の『NHKニュース9』であった。翌日以降、新聞やワイドショーなどで、大きく取り上げられた。「ポケモン人気」がマスコミにも注目され始めた時期ということもあり、事故直後は、ワイドショーを中心に、ポケモン自体に対する批判やバッシングが行われ、任天堂の株価が大暴落を起こすほどの影響がでた。しかし(ゲーム脳に絡んだ批判を前提とした行政調査の一環と思われる項目だが)、NHKが1997年3月に放送したアニメ『YAT安心!宇宙旅行』第25話でも同様の原因で気分を悪くしていた視聴者がいたことを明らかにしたことや、各放送局の調査で自社のアニメも同じような危険性をはらんでいることが判明し、次第に収まっていった。
各局の対応
事故後、テレビ東京は原因が究明されて再発防止策がとられるまで、特番を含めた『ポケットモンスター』関連の放送を全て休止することを発表した。事故の翌週以降、同枠はアニメ『学級王ヤマザキ』に差し替えられた。この他にもテレビ東京は、ポケモン関連番組・コーナーの放送自粛、レンタルビデオ店にアニメのレンタル自粛の要請、テレビ東京の系列外で遅れネットにて放送されるローカル局に放送自粛の要請を行った。
放送中止となった年末年始特別番組は以下の通り。
- 『情報!ソースが決め手"お父さんのためのポケモン講座"』 - 年間総集編に差し替え。
- 『64マリオスタジアム・スペシャル』 - ポケモンのコーナーがあった為、1998年1月18日に延期にし、「楽しいムーミン一家」(再放送)に差し替え。
- 『大晦日だよポケットモンスターアンコール』 - 「モジャ公」(再放送)に差し替え。
- ミニ番組枠『ポケモンクイズ』 - ミニ番組枠で放送予定だった。「お年玉付き新春オススメとくばん」に差し替え。
再発防止対策として、12月18日にNHKが「アニメーション問題等検討プロジェクト」を立ち上げ、その際にNHKが1997年3月に放送したアニメ『YAT安心!宇宙旅行』第25話において、放送後に同様の原因で4人の児童が体調不良を訴えていた事例があったことを明かし、そのとき原因究明をしていれば今回の事故は起こらなかったかも知れないとして陳謝した。また、厚生省(当時)が「光感受性発作に関する臨床研究班」を発足させた他、郵政省(当時)も「放送と視聴覚機能に関する検討会」を設置、NHKと日本民間放送連盟(民放連)も共同ガイドラインを策定することで合意した。NHKは「クローズアップ現代」で、ポケモンショックについて緊急特番を放送した。
テレビ東京はこの他に、海外のガイドラインのうち罰則も規定されているイギリスの独立テレビジョン協会のガイドラインを参考にして他局よりも一段厳しいガイドラインを策定するため、1998年始め早々に調査団を派遣した他、アメリカにも同様の調査団を派遣した。この他に、局内調査はもちろん、外部調査チームの受け入れ、アニメチェッカーの開発と導入を行うなど、事故の当事者として最大限の再発防止策をとった。
アニメの再開
事故後もアニメの放送再開を希望する声は多く、テレビ東京に1998年1月30日までに寄せられた意見3,076件のうち、放送再開を望む意見は全体の72%を占める2,223件だった。3月30日には、NHKと民放連のガイドラインが発表される見込みが出てきたとして、早ければ4月16日に再開できるとし、放送再開を前に事故の検証番組を放送することを発表した。その後4月8日に、NHKと民放連は、光の点滅などを規定したガイドラインを発表。4月11日、午後1時00分~午後2時00分に「アニメポケットモンスター問題検証報告」がテレビ東京系6局で放送された(その後、4月16日に再放送)。ポケモンは放送枠を以前の火曜日から木曜日のゴールデンタイムに移動し、4月16日に放送が再開された。再開時の視聴率は16.2%だった[2]。
事故以降の第38話及びポリゴンの扱い
当時放映されていたアニメにはその後、光の強いシーンは露骨に光量が抑えられるなどの修正がなされたが、この回に限っては修正不能と判断され、後日販売されたビデオ・DVD・再放送枠からもカットされ、欠番扱いとなっている。放送時に録画されたテープ等の現存が確認されているが、現在この回を視聴する事は非常に困難である。一部の動画共有サイトなどで視聴できることがあり、中には動画投稿者が修正を加えたものまでも存在するが、基本的に危険性が高いため視聴の機会がある場合は厳重な注意が必要である。
事故後にニッポン放送『犬山犬子のポケモンアワー』で、犬山犬子(現・犬山イヌコ)と当時のポケモン制作スタッフとの対談が、次世代ワールドホビーフェア'97にて行われた。その際、「『でんのうせんしポリゴン』の修正版の放送があるの? それと、次回分で予告された『ルージュラのクリスマス』の放送はやるか?」というリスナーの質問に対し、スタッフは「あの回(第38話)は幻にしてほしい」「なかった話としてほしい、あと次回分で予告された『ルージュラのクリスマス』の放送は必ずやるので安心してほしい」と回答した。その後『ルージュラのクリスマス』は、同時期に製作されていた『イワークでビバーク』との二本立ての番外編として放送された。
この事故以降、このエピソードに登場したポケモンであるポリゴン及びその進化形(ポリゴン2、ポリゴンZ)は、劇場版で登場したことがあるのみで、テレビアニメ本編では一切登場していない。
他のアニメ作品に与えた影響
注意を促すテロップの表記
この事故を機に、「テレビを見るときは部屋を明るくして離れて見てください。」と勧告するテロップや、アニメキャラクター達による警告[3]が在京・在阪キー局(テレビ東京・フジテレビ・テレビ朝日・ytv・CBC系)を中心に各アニメ番組の冒頭で流されるようになり、アニメ制作の教訓となった。ただし、放送局によっては出していない局もあるほか(NHK・MBSなど)、全日帯では出していても早朝や深夜帯では出さない局(TUFなど)もある。後に多くのローカル局でも導入されるようになった。
また、劇場版作品はテレビとは異なる映像基準で作成されており、公開される映画館では「ごくまれに光が原因で体に異常を感じる体質の人がいる」旨の注意書きが掲示されている。『劇場版ポケットモンスター ミュウツーの逆襲』のテレビコマーシャルでは、「激しい光の点滅を使用していない」旨の表示がされた。またアニメ作品でなくてもこのテロップが表示されることもあり、特にポケモンショックの直後である1997年12月30日にテレビ東京で放送された映画『ゴジラvsモスラ』においても、同内容のテロップが表示された。
点滅箇所の回避
本事故ほどではないが、背景等の赤青連続切り替えや、他にも強いストロボはこの時代のアニメで多用されていた。そのため本事故の発生以降、他のアニメ作品でもそういった点滅シーンが避けられるようになり、違うものに差し替えられるなどの対応が行われた。過去のアニメ作品の再放送や、アニメ作品のビデオ化・DVD化などに当たって再編集が行われていることがあり、そういった場面では突然画像が一時停止する、突然コマ送りになるなど不自然な編集もやむなくなっている。ただし、再編集が行われていない作品もある。また、アニマックスやキッズステーションなどでの再放送では、再編集は行われていない。また、バラエティ番組にてアニメ作品を紹介する際には再編集が行われていないものを流すケースが多い。
事故後に点滅箇所が削られたアニメ
- 烈火の炎
- るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-
- 剣風伝奇ベルセルク
- 少女革命ウテナ
- クレヨンしんちゃん(「げんこつ」画面が点滅するバージョンから別バージョンに変更)
- はれときどきぶた(光量が抑えられた)
- 爆走兄弟レッツ&ゴー!!
- 勇者王ガオガイガー(ムック本にてその時の経緯についたコメントがある)
- 救命戦士ナノセイバー(最終回のラストバトルが全面的にコマ送りに。修正のみならず再放送も中止となった)
- 忍たま乱太郎(NHK教育テレビの再放送の際は一部シーンを静止画もしくはコマ送りに編集して放送、CS放送では不明)
- ドラえもん(大山のぶ代版)(2話目の再放送の時によく見られたが、ドラえもんがポケットから道具を出す画面の背景が静止画となったほか、ドラミ&ドラえもんズ ロボット学校七不思議!?でもTV放映時にはロボット学校のコンピューターが落雷によりバグを起こす場面において、ディスプレイ部分の映像が当初のスロットのように早くて派手なものから、遅く地味なものに差しかえられている)
- ドラゴンボール(2003年の地上波再放送時のみ。ピッコロと悟空の打ち合いシーンがほぼ静止画)
- 中華一番!
その他影響
以降のエピソードには映画『劇場版ポケットモンスター ミュウツーの逆襲』に登場するポケモン、ミュウツーやNINTENDO64用ソフト『ポケモンスナップ』の主人公、トオルが登場するなど、関連商品との連動が見られたが、この事故によって以降のエピソードの放送スケジュールが遅れたために映画の公開、ソフトの発売とはずれが生じてしまった。
この事故は海外でも広く知られるところとなり、「最も多くの視聴者に発作を起こさせたテレビ番組」として、ギネス・ワールド・レコーズに認定された。
アメリカでは幾つかのテレビアニメで取り上げられ、ジョークの対象になった。『ザ・シンプソンズ』のエピソード「Thirty Minutes Over Tokyo」(日本未放映)では、日本にやってきた主人公一家がテレビアニメのロボットが目を点滅させるのを観た結果てんかんの発作を起こすシーンがあり、『サウスパーク』のチンポコモンでも、登場人物の一人がポケモンを模したゲーム画面を見て発作を起こし死亡する描写がある。別のコメディアニメ『Drawn Together』(日本未公開)では、ピカチュウのパロディとして登場する謎の生物が発作について言及している。
この事故を参考にアメリカとロシアが同様のてんかん症状を引き起こさせる光線点滅兵器の開発に着手しているとの記事が米誌U.S. News and World Report誌の話として1997年12月24日の朝日新聞に掲載された。信憑性は定かではないが、アメリカ側は非殺傷兵器としての研究、ロシア側はパソコンのモニター画面にパカパカを表示させて利用者を気絶させるコンピュータウイルスの開発ということだった。
演出家・富野由悠季はこの事故について、問題の箇所が青とピンクの補色であった事も原因だと意見を述べている。また、この事についてマスコミが触れなかった事や、どのテレビ番組にも「テレビは部屋を明るくして見よう」というテロップが流されるようになったことも、無神経だと批判している。さらに光効果はセルの枚数を減らすことができるので、「安易に使いすぎている作品が増えている」とも言及している。
このポケモンショックの影響により、当時テレビ東京で使われていたオープニング・クロージングが放送を終了する原因となった。
参考文献
- 『ポケモンストーリー(下)』(畑山けんじ、久保雅一、角川文庫、2002年、99-150頁、ISBN 4-04-364502-3)
- 『映像の原則 ビギナーからプロまでのコンテ主義』
脚注
関連項目
- 自見庄三郎 - 事故当時の郵政大臣。医師でもあり、素早い再発防止策の策定に尽力した。
- バベル
- YAT安心!宇宙旅行
- 欠番
- 封印作品
世界観
ポケモン
- 概説
- ポケットモンスター (架空の生物)
- ポケモン一覧 (全国図鑑順)
- 1-51(25:ピカチュウ) - 52-101 - 102-151(151:ミュウ) - 152-201 - 202-251 - 252-297 - 298-342 - 343-386 - 387-440 - 441-493 - 494-545 - 546-598 - 599-649 - 650-721 - 722-809- 810-
- バグポケモン・デマポケモン
人物
地理
ゲーム
本編
GB
- 第1世代 赤・緑・青・ピカチュウ
- 第2世代 金・銀・クリスタル
GBA
- 第3世代
- オリジナル ルビー・サファイア・エメラルド
- リメイク ファイアレッド・リーフグリーン
DS
- 第4世代
- オリジナル ダイヤモンド・パール・プラチナ
- リメイク ハートゴールド・ソウルシルバー
- 第5世代 ブラック・ホワイト(2)
3DS
- 第6世代
- オリジナル X・Y
- リメイク オメガルビー・アルファサファイア
- 第7世代 サン・ムーン
- 第7世代
その他
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