報道特別番組
報道特別番組(ほうどうとくべつばんぐみ、略称:報道特番)とは、政治的、もしくは社会的に重大な事件・事故及び災害などの事態が発生した場合に、通常時の番組を休止、あるいは中断して急遽放送される特別番組である。多くは昼間の時間帯で数時間に渡って放送されることが多いが、重大な事故、事件の場合はゴールデン・プライムタイムの通常番組を休止してまで長時間に渡って放送されることもある。
報道特別番組が編成される可能性のあるケース[編集]
- 皇室関連
重篤な病気や崩御などの不幸の場合のみならず、婚約・結婚や懐妊・出産などの慶事の場合であっても報道特別番組が編成されることがある。
昭和天皇が崩御した1989年1月7日(午前8時以後)と1月8日は、通常番組編成を全て休止し特別編成に差し替え、また国民全てが喪に服すために派手な歌舞音曲も自粛するという観点から民間放送のコマーシャルの放送も自粛した。2月24日の大葬の礼の時間中も同様の処置が取られている。
- 国内政治
内閣総理大臣指名選挙、組閣及び内閣改造や衆議院解散、国会による証人喚問などの場合。また、衆議院議員総選挙及び参議院議員通常選挙の開票速報(選挙特番)も報道特番のひとつの形といえる。
これ以外には、2005年の郵政国会(第162通常国会及び総選挙後の第163特別国会)における、郵政民営化法案の本会議採決が行われた際にも編成された。この法案は小泉純一郎首相(当時)の悲願であり、第162通常国会における採決の際には「否決された場合は衆議院解散に踏み切る」(郵政解散)との宣言があったとは言え、法案採決の模様を中継する報道特別番組が編成されたのは数少ない。
- 災害
台風や豪雨による水害、震災、火山の噴火、火災などで大きな被害が出ている、又はその可能性のあるような場合。最近では1995年1月の阪神・淡路大震災及び2004年10月の新潟県中越地震ではゴールデン、プライムタイムの通常放送を休止した。
- 重大な刑事事件
テロやハイジャック、大量殺人など、多数の死傷者が出ているとみられる、もしくは多数の市民の生命が危険に晒されるような事件が発生した場合。1972年2月のあさま山荘事件や1989年8月の東京・埼玉連続幼女誘拐殺人事件、1998年7月の和歌山毒物カレー事件、2000年5月の西鉄バスジャック事件がその一例。特に1995年の全日空857便ハイジャック事件時は、ゴールデン・プライムタイムの番組を全て休止した。
- 強制捜査
国民的関心の高い事件(上の「重大な刑事事件」以外にも政治事件や経済事件も含まれる)において、当事者に対して強制捜査が行われた場合。過去にはロッキード事件(1976年)やリクルート事件(1989年)などで特番を組んだことがある。最近では、2006年1月のライブドア社に対する強制捜査(ライブドア事件参照)や、2006年6月の村上ファンドに対する強制捜査などがある。
- 大事故
旅客機の墜落事故や大きな鉄道事故など多数の死傷者が出ているとみられるような事故が発生した場合。1985年8月の日本航空123便墜落事故や2005年4月のJR福知山線脱線事故がその一例。
- 刑事裁判
オウム真理教による事件など、大きな事件の初公判及び判決の言渡しの場合。
- 海外の事件・事故
諸外国の要人の死亡や大規模なテロ事件、国家による武力行使事態の場合。1963年11月のケネディ大統領暗殺事件や1983年9月の大韓航空機撃墜事件、1991年1月の湾岸戦争、2001年9月のアメリカ同時多発テロ、2003年3月のイラク戦争、2006年7月の北朝鮮のミサイル発射、2006年10月の北朝鮮の核実験がその一例。
- スポーツ
スポーツ選手が世界記録を達成した場合、引退を表明した場合は報道特別番組が編成されることがある。1977年9月の王貞治のホームラン世界記録樹立、2006年7月の中田英寿引退表明がその一例。
- その他
その他にも、国民的関心の高いと思われる場合は報道特別番組が編成されることがある。
- 追悼特番
また、報道特番とは異なる が、著名人が死亡した場合に追悼番組が編成される場合がある。
芸能人においては、関係の深い放送局において追悼特番が編成されることがある。しかしながら、資料映像の準備や出演者の都合、レギュラー番組の編成などの関係で、死去直後に追悼番組が編成されることは少ない。また、ニュースやワイドショーなどで追悼の特集を組まれる例も多く、追悼特番を編成された例自体、あまり多くない。石原裕次郎、手塚治虫、美空ひばり、尾崎豊、逸見政孝、横山やすし、渥美清、いかりや長介、植木等月影千草らは、複数の民放で死去後早い時期に追悼特番が編成された。
スポーツ界、特にプロ野球で功績を残した人物が死亡した場合、プロ野球ニュースやすぽると!(いずれもフジテレビ系列)などで追悼特集を組まれることがある。近年では大杉勝男、津田恒実、藤井将雄、仰木彬の例がある。
政治家の場合、民放よりNHKでの放送実績が多い。内閣総理大臣経験者では、過去に池田勇人、吉田茂、佐藤栄作、大平正芳、田中角栄、小渕恵三がそれぞれ死去した際に各局が報道特番を組んだ。池田と吉田と佐藤の場合は、戦後の総理大臣としては多大な貢献を残したことだったが、田中の場合は、戦後最大の疑獄事件であるロッキード事件で戦後の首相経験者として最悪の刑を受けたことと、日中国交正常化を成し遂げたこと、総理退陣後も政界に多大な影響力を及ぼしたことが理由だった。
実際の放送[編集]
NHK及びテレビ東京を除く各キー局は、各局横並びで報道特別番組を放送することが多い。選挙や裁判など時間帯がある程度決まっている場合は、その日の新聞のテレビ欄にも最初から特別番組の内容を掲載したり、「中断あり」などと掲載するのが普通である。事件・事故・災害など突発的な場合は、まずNHKが特別番組に切り替え、他局も追随して特別番組に切り替えるのがパターンである。
しかし、予定外の報道特別番組の場合は放送中、もしくは放送予定の番組を休止する(休止しなくても、放送時間が2時間以上繰り下がることもある)ことになるため、テレビ局に視聴者からの苦情が来ることがよくある(例:新潟県中越地震の際、テレビ朝日が「ドラえもん」の特番を開始5分で打ち切ったことに対する苦情)。また、放送予定だった番組は後日改めて放送することになるため、その時間帯を確保する必要も出てくる(バラエティ番組では、1週分の収録を休止し、収録ペースを元に戻すことが多い)。CMが全部吹っ飛ぶ為、営業担当部門はスポンサーの宣伝部門に謝罪の連絡を入れるのに走り回る事になる。ちなみにこれは報道特番でないプロ野球中継延長についても同じである。
当然各局が同じ事件や事故などについて放送することになるため、その内容も似たものになりがちで、扱われる事例によっては食傷気味になる視聴者もいる。このため、通常番組を放送していることの多いテレビ東京にチャンネルを合わせる人も多く、普段は視聴率最下位のことが多いテレビ東京が、この時は視聴率を上げるケースがよく見られる。
なお、テレビ東京では、報道特別番組の代わりにニュース番組の放送を延長して対応することも多い。
CM[編集]
報道特別番組が編成される場合、民放のCM放送については、各局、各系列によって契約が少しずつ異なることから違いがあり、当該時間帯のスポンサーをそのまま特番のスポンサーに置き換えて提供クレジット込みで放送するか、全てパーティシペーション(スポットCM)扱いになることがある。
ただ、多くの民間企業が宣伝目的の広告を自粛する。このような場合はACジャパンや政府広告、JAROなどのCMに差し替わることがある。
また、時間帯や内容によってはCMの一部もしくは全てが放送されないこともあるため、その際には営業担当社員がスポンサーや広告代理店に事実関係の報告をし承諾を得る連絡に追われることになる。ただしスポンサー契約の際にあらかじめ「報道特別番組など突発的な臨時編成を組む場合の対応」についての特約条項が盛り込まれるようになり、混乱は少なくなった。
とは言え、報道特別番組実施中の放送進行は手動となっていることがほとんどである。特約があるとはいえCMの契約は細かく、それぞれに合わせてCM放送データの自動番組制御装置へのデータ入力作業は煩雑で、極限られた時間中にこれを行うことはミスを招く結果となり、発局ローカルCMがそのまま流れる、地元ローカルのCMが出ない、あるいは中断する、CMに入らずスタジオの映像のまま打ち合わせの風景が流れるといった放送事故(CM事故)も多い。
関連項目[編集]
- 各ネットワークの報道特別番組のページには特別番組の放送事例が掲載されている。Wikipedia:ウィキペディアは何でないかにあるニュース速報に関した文面も参照のこと。
外部リンク[編集]
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