JFEスチール
JFEスチール株式会社(ジェイエフイースチール、英文社名 JFE Steel Corporation)は、日本の大手鉄鋼メーカー(高炉メーカー)である。持株会社・JFEホールディングスを頂点とする「JFEグループ」の中核企業。
粗鋼生産量において、日本国内では新日鐵住金に次いで第2位、世界では第5位の規模を持つ。2003年に、川崎製鉄(川鉄)と日本鋼管 (NKK) が統合して発足した。
目次
概要[編集]
高炉を所有し、鉄鉱石を原料に最終製品の鋼材の生産までを一貫して行う、「高炉メーカー」と呼ばれる鉄鋼メーカーである。JFEグループの中核企業で、グループ全体の売上高のうち約80%を占める鉄鋼事業を担当する。2002年に川鉄とNKKが経営統合してJFEグループが発足した後、翌2003年に行われた事業再編の際に両社の鉄鋼部門が統合し、JFEスチールは発足した。なお、手続上は川鉄が非鉄鋼部門を分離した上でNKKの鉄鋼部門を継承して社名変更した形を採っており、一方のNKKは川鉄のエンジニアリング部門を継承してJFEエンジニアリングに社名を変更している。
鉄鋼メーカーの規模の指標である粗鋼の年間生産量は約2600万トン(2009年度)[1]で、日本国内では新日鉄に次いで第2位。世界鉄鋼協会の統計によれば、粗鋼の生産量は世界第5位(2009年時点)である[2]。
製造拠点は、神奈川県および千葉県にある東日本製鉄所、岡山県および広島県にある西日本製鉄所、愛知県にある知多製造所の3か所がある。そのうち、東日本・西日本両製鉄所は高炉を構える「銑鋼一貫製鉄所」と呼ばれる大規模な工場である。これらの製造拠点において、鋼板類や条鋼類、鋼管などの鋼材を中心とする製品を製造している。鋼材は、国内では建築および土木・自動車・産業機械・電気機械などの分野向けに販売されるが、およそ半数が韓国・中国・ASEAN諸国向けを中心とする輸出に回される[3]。
傘下の企業は約200社ある。高炉メーカーよりも小規模な電気炉メーカーや半製品を加工し鋼材とするメーカーなどの鉄鋼メーカーが中心だが、2次製品のメーカー、化学メーカー、鉱業業者、建設業者、あるいは情報システム企業も含まれる。
日本国外への進出は前身企業時代の1980年代から本格化しており、2010年3月時点では韓国・中国・タイ・アメリカなどに出資する鉄鋼メーカーがある。出資企業には高炉メーカーは含まれず、電気炉メーカーも韓国の東国製鋼のみで、輸出した半製品を鋼材に加工するタイプのメーカーがほとんどであったが、2012年2月にインドの大手高炉メーカーJSWスチールの株式15%を取得、持分法適用会社とすることを発表した。[4]その他の国外大手高炉メーカーでは、ドイツのティッセンクルップ、カナダのドファスコとそれぞれ自動車用鋼板の分野で技術提携をしている。
拠点と事業[編集]
製造拠点[編集]
JFEスチールの事業は、国内の3拠点(実質6工場)において展開されている。製品は、鋼材では、船舶や大形構造物に使用される厚板、自動車・電気製品・缶などに使用される薄板・表面処理鋼板、モーターなどに使用される電磁鋼板、建築・土木分野で使用されるH形鋼・鋼矢板などの形鋼や軌条、自動車部品や建築物に使用される棒鋼・線材、流体の輸送や機械部品などに使用される鋼管が主なもの。鋼材以外では、粉末冶金などに使用される鉄粉、広い分野で使用されるチタン圧延品の製造も行う。
工場とその所在地、主な生産品目を以下に示す。
工場名 | 所在地 | 主な生産品目 | |
---|---|---|---|
東日本製鉄所 | (千葉地区) | 千葉県千葉市中央区川崎町 | 薄板・表面処理鋼板・ステンレス鋼板・鋼管・鉄粉 |
(千葉地区)西宮工場 | 兵庫県西宮市朝凪町 | ステンレス鋼板 | |
(京浜地区) | 神奈川県川崎市川崎区扇島 | 厚板・薄板・表面処理鋼板・鋼管 | |
西日本製鉄所 | (倉敷地区) | 岡山県倉敷市水島川崎通り1丁目 | 厚板・薄板・表面処理鋼板・電磁鋼板・鋼管・形鋼・線材・棒鋼 |
(福山地区) | 広島県福山市鋼管町 | 厚板・薄板・表面処理鋼板・電磁鋼板・鋼管・形鋼・軌条・チタン | |
知多製造所 | 愛知県半田市川崎町1丁目 | 鋼管 |
本社・支社等[編集]
本社は、東京都千代田区内幸町二丁目2番3号の、「日比谷国際ビル」に入居する。これに対し支社は、国内9都市(札幌市・仙台市・新潟市・名古屋市・富山市・大阪市・広島市・高松市・福岡市)にある。
日本国外の海外事務所は、アメリカ・メキシコ・オーストラリア・ブラジル・イギリス・インド・シンガポール・タイ・インドネシア・フィリピン・韓国・中国の12か国である。一部を除き、JFEスチールとは別の現地法人が運営している。
沿革[編集]
- 川崎製鉄(川鉄)時代の沿革については、「川崎製鉄#沿革」を参照
- 2002年9月27日 - 川崎製鉄(川鉄)と日本鋼管 (NKK) の2社が、株式移転により持株会社のJFEホールディングスを設立。
- 2003年4月1日 - 川鉄・NKKで会社分割による事業再編を実施。川鉄は非鉄鋼事業を分割した上でNKKの鉄鋼事業を継承し、JFEスチール株式会社に社名変更。また、化学事業をJFEケミカルに、橋梁鉄構事業を川崎橋梁鉄構(2008年にJFEエンジニアリングに合併)に分割。
- 2003年10月1日 - 神戸製鋼所(神戸製鋼)と共同で、溶接材料生産会社のKOBE・JFEウェルディング(現・KOBEウェルディングワイヤ)を設立。
- 2003年12月 - 中国の鉄鋼メーカー・広州鋼鉄企業集団と共同で、中国に亜鉛めっき鋼板メーカーの広州JFE鋼板を設立。
- 2005年4月1日 - KOBE・JFEウェルディングおよび溶接材料販売会社のJFE溶接棒(現・JKW)の株式を神戸製鋼に譲渡。溶接材料の生産・販売から撤退した。
- 2005年6月6日 - ブラジルの鉄鋼メーカー・ツバロン製鉄の株式をアルセロール(現・アルセロールミッタル)に売却。
- 2006年9月25日 - 韓国の鉄鋼メーカー・東国製鋼と、出資拡大を含む提携強化を発表。その後同社を持分法適用会社とした。
- 2010年7月27日 - インドの鉄鋼メーカー・JSWスチールと、資本参加と技術供与に関して提携。2012年2月に同社を持分法適用会社とした。
- 2011年4月1日 - 都市開発事業の再編に伴い、JFE都市開発を合併[5]。
歴代社長・会長[編集]
JFEスチール発足後(2003年以降)の「代表取締役社長」は、以下の通り。
- 數土文夫 - 2003年4月就任(元・川鉄社長)、2005年4月退任(JFEホールディングス社長に異動)
- 馬田一 - 2005年4月就任、2010年4月退任(JFEホールディングス社長に異動)
- 林田英治 - 2010年4月就任
「代表取締役会長」は以下の通り。
- 半明正之 - 2003年4月就任(元・NKK社長)、2007年4月退任
グループ企業(JFEスチールグループ)[編集]
2010年3月末時点でJFEスチールの傘下には、JFEホールディングスの連結子会社162社および持分法適用会社33社が属する。
主なグループ企業は以下の通り。
- 電気炉メーカー
- JFE条鋼株式会社 - 形鋼・棒鋼・線材の製造・販売を行う。完全子会社。
- ダイワスチール株式会社 - 棒鋼の製造・販売を行う。
- 豊平製鋼株式会社 - 棒鋼の製造・販売、橋梁等の製作を行う。札幌証券取引所(札証)上場。
- 東北スチール株式会社 - 棒鋼の製造・販売を行う。
- 鋼材加工品メーカー
- JFE建材株式会社 - 建築材料等鉄鋼2次製品の製造・販売を行う。
- JFE鋼板株式会社 - めっき鋼板や建築材料の製造・販売を行う。
- JFEコンテイナー株式会社 - ドラム缶等容器類の製造・販売を行う。
- JFE鋼管株式会社 - 鋼管の製造・販売を行う。
- JFE継手株式会社 - 継手の製造・販売を行う。
- JFE鋼材株式会社 - 鋼板の剪断加工・溶接加工を行う。
- ガルバテックス株式会社 - 亜鉛めっき加工を行う。
- その他製品のメーカー
- JFEメカニカル株式会社 - 機械装置の製造・販売を行う。
- JFEアドバンテック株式会社 - 計量器・計測器の製造・販売を行う。
- 水島合金鉄株式会社 - フェロマンガン等フェロアロイ(合金鉄)の製造・販売を行う。
- JFEマテリアル株式会社 - フェロクロム等フェロアロイの製造・販売を行う。
- JFE精密株式会社 - 素形材製品の製造・販売を行う。完全子会社。
- JFEケミカル株式会社 - 化成品の製造・販売を行う。
- 品川リフラクトリーズ株式会社 - 耐火物の製造・販売を行う。東京証券取引所第1部(東証1部)・大阪証券取引所第一部(大証1部)・札証上場。
- 日本鋳造株式会社 - 鋳造品の製造・販売を行う。東証2部上場。
- その他の業者
- JFE物流株式会社 - 海運業・陸運業・港湾運送業などを手がける物流企業。
- JFEシビル株式会社 - 土木・建築工事を請負う建設業者。完全子会社。
- JFE電制株式会社 - 電気工事を請負う建設業者。完全子会社。
- JFE東日本ジーエス株式会社 - 仕出給食・レストラン・ボウリング場経営・緑化・ビル管理・環境分析・警備事業などを手がける総合サービス業。完全子会社。
- JFEミネラル株式会社 - 石灰石等の採掘・販売を手がける鉱業業者。
- JFEライフ株式会社 - 不動産業・保険代理業・旅行代理業等を手がける。
- JFEシステムズ株式会社 - コンピュータシステムの開発・販売等を行う情報システム企業。東証2部上場。
- 株式会社エクサ - 日本アイ・ビー・エムと共同出資で設立された情報システム企業。
- JFEテクノリサーチ株式会社 - 材料分析・解析、環境調査等の事業を行う。完全子会社。
- JFE商事ホールディングス株式会社 - 商社のJFE商事を傘下に持つ持株会社。東証1部・大証1部上場。
- 瀬戸内共同火力株式会社 - 火力発電や電力の販売を手がける電力会社。
- ジェコス株式会社 - 建設仮設材のリース・販売を手がける卸売業者。東証1部上場。
- 日本国外のグループ企業
- 東国製鋼株式会社 - 韓国で鋼材の製造・販売を行う電気炉メーカー。約15%出資。
- 広州JFE鋼板有限公司 - 中国で冷延鋼板・亜鉛めっき鋼板の製造・販売を行う。中国の鉄鋼メーカー・広州鋼鉄企業集団と折半出資。
- タイ・コールド・ロールド・スチール・シート (Thai Cold Rolled Steel Sheet Public Co., Ltd) - タイで亜鉛めっき鋼板の製造・販売を行う。約80%出資。
- カリフォルニア・スチール・インダストリーズ (California Steel Industries, Inc.) - アメリカで熱延・冷延鋼板やめっき鋼板の製造・販売を行う。50%出資。
人材育成[編集]
- 優秀な社員を兵庫県尼崎市の産業技術短期大学(1962年一般社団法人日本鉄鋼連盟が設立)に派遣して、人材育成を行っている。具体的には、「製造現場における知識創造と人材の多機能育成政策・綿密な能力開発策のひとつとして、企業内選抜を経て中堅技術者への昇進に結びつく産業技術短期大学への派遣を行う政策の実行」であり、このような人材育成形態(教育訓練形態)を「オフ・ザ・ジョブ・トレーニング・OFF-JT」という。
脚注[編集]
- ↑ 平成22年3月期決算短信による。
- ↑ worldsteel top producers 2009
- ↑ 2010年3月期有価証券報告書による。
- ↑ [1]
- ↑ 「都市開発事業の再編について」、2010年11月30日付JFEホールディングスニュースリリース、2011年4月1日閲覧
参考文献[編集]
- 『メイド・イン・ジャパン-日本製造業変革への指針-』(ダイヤモンド社、1994年)
- 『産業技術短期大学大学案内2011』(産業技術短期大学、2010年)
- 『産業技術短期大学五十年のあゆみ』(学校法人鉄鋼学園 産業技術短期大学、2012.4.25)
ほか
関連項目[編集]
外部リンク[編集]
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