カネカ
株式会社 カネカ(英称:Kaneka Corporation)は、大阪府大阪市北区中之島と東京都港区赤坂に本社を置く日本の化学メーカーである。
概要
化成品、機能性樹脂、発泡樹脂、食品、ライフサイエンス、エレクトロニクス、合成繊維事業を営む。最近では、老化の進行を抑制するとされるコエンザイムQ10のトップ原料製造メーカーとして有名。資生堂薬品・小林製薬・DHCなど各社に供給している。
社名は前身企業である鐘淵紡績(後の鐘紡→カネボウ、現・クラシエホールディングス、カネボウ化粧品)の創業地である東京都墨田区鐘ヶ淵にちなむものであるが、カネカ自体は鐘ヶ淵との直接の関係はない。
沿革
- 1949年9月1日 - 鐘淵紡績より非繊維事業を分離して鐘淵化学工業株式会社を設立
- 1961年 - 化粧品事業を鐘淵紡績へ譲渡
- 1968年 - カネミ油症事件発生
- 1971年 - 石鹸事業を鐘紡(同年商号変更)へ譲渡
- 2002年 - 機能性食品素材「カネカ・コエンザイムQ10」発売
- 2004年9月1日 - 社名を略称でありグループ会社名や一般でも広く使用されている株式会社カネカに変更
クラシエとの関係
1949年9月1日、鐘紡の企業再建整備計画の認可に基づき、同社の非繊維事業すべてを分離して鐘淵化学工業が新しく設立された。当時から略称は「カネカ」で、そのロゴは「カネボウ」と同一のデザインを使用。当初は苛性ソーダ、搾油、石鹸、食用油、酵母、食品類、製紙、和紙、エナメル電線、化粧品、デンプン等きわめて多岐な事業を営んでいて、1961年までカネボウ化粧品、1971年まで「カネボウ絹石鹸」・「カネカ絹石鹸」・シャンプー類を製造販売していた。その後、化粧品・石鹸事業は鐘紡本体に戻され、苛性ソーダ、食用油、酵母以外の事業を順次整理して現在に至る。
現在はカネカ・クラシエホールディングス・カネボウ化粧品の三社間に資本関係・人的関係は無い。コエンザイムQ10の供給に関しても、クラシエやカネボウ化粧品ではなく、その同業他社である資生堂グループと業務提携している。
カネカ流“新入社員ハイテク研修”仲間と絆深めて失敗を成功へ
困難に直面しても決してあきらめず、必ず解決法を考える精神を植えつけようと、大手化学メーカーのカネカは新入社員に過酷な研修を課している。25年も続く伝統の研修は通称「ハイテク研修」と呼ばれる。しかし、先端技術のハイテクではない。「はいつくばってテクテク歩く」を縮めたもので、知恵と根性を頼りに、ひたすら山道や海岸を歩く。さて、いったいどんな研修なのだろう。
4月、新入社員約90人が淡路島に集結した。ここが「ハイテク研修」の場だ。同研修は昭和62年にスタート。大阪府北部にある剣尾山のふもと、能勢町の府立総合青少年野外活動センターが拠点だったが、同施設が昨年春に閉鎖されたため、今年から淡路島に舞台を移した。
「ハイテク研修」は山道や海岸など計15キロのコースを、指定されたチェックポイントを通過しながら、約3時間かけて歩く。
新入社員は10チームに分かれ、チェックポイントが書かれた地図と定規、たこ糸を渡される。重要なのは前日に開く作戦会議。まず、各チェックポイント間の距離を割り出さなければならない。曲がりくねった道はたこ糸をはわせ、それを伸ばして定規に当てて距離を割り出す。距離や等高線が示す道の傾斜を考えながら、各チェックポイントの到着目標時刻を設定していく。
これだけでも相当頭を使うが、正味大変なのは当日になってから。時計や携帯電話は没収され、磁石(コンパス)を持つのも禁止される。頼りは自分たちの知恵だけだ。設定した各チェックポイントの到着目標時刻に、いかに近い時刻で通過するかを競う。それだけに事前のの作戦会議が重要になる。
人事部人材開発グループリーダーの畑昭さんは、ちょうど研修が始まった年に入社した“1期生”。
「この研修を企画したのは、当時、社員教育に情熱を持っていた人たちです。そのころ、『ハイテク』が流行語になっていた影響もあるようです。研修は日常業務に欠かせないプランニングや議論、コミュニケーションの大切さを知ってもらうのが目的で、内容は25年前からほとんど変わっていません」と話す。
とはいえ、危険な側面も否定できない。
「遭難しないよう、万一に備えて道順を知っているスタッフが各グループに同行しますが、方向を見失って、コースからどんどん離れてしまうグループも当然出てきます」と畑さん。
各グループの知恵も見物の1つ。「歩幅を一定に保って、歩数から距離を確認したり、あらかじめ目盛りをつけて、底に穴を開けたペットボトルの水が減った量で時間を計る『水時計』を作ったり…。参加者は毎年知恵をしぼっています」という。
「以前、歩きながら自分の脈を数えて、そこから時間を計算する人もいましたが、山道を歩いているうちに、だんだんと脈拍が速くなっていくので、これは効果はなかったようです」といった笑い話も。チェックポイントをすべて通過し、ゴールに到着しても、それで終わりではない。
各グループで「なぜ計画した時刻通りに通過できなかったか」「役割分担は機能したか」「安全性は守れたか」、さらに「落としたごみなどを回収したか」といったことまで検証し、成果を発表する。「計画と結果にギャップが生じたとき、次はどうすれば成功につなげられるのるかを考える。ここが大切なんです」と畑さん。
「僕自身も計画通りにいかず、しんどかった。でも、剣尾山の山頂にたどり着いて、広大な風景を見たときの達成感は忘れられません。みんなでとことん議論して、苦楽をともにした仲間との絆も深まります」と振り返る。チームワークを核とした計画と行動。そして、失敗を成功につなげる精神-。厳しい時代を生き抜くビジネスマンに求められる素質である。そして、それは豊かなモノに囲まれた“便利な環境”では、身につかないものかもしれない。
事業所
- 大阪本社(大阪市北区)
- 東京本社(東京都港区)
- 名古屋営業所(名古屋市中村区)
- 高砂工場(兵庫県高砂市) - 主力生産拠点。塩ビモノマー・食品・医薬品など
- 大阪工場(大阪府摂津市) - 発泡樹脂製品、血液浄化システム、特殊塩化ビニル樹脂など
- 滋賀工場(滋賀県大津市) - エレクトロニクス素材
- 鹿島工場(茨城県神栖市) - 合成樹脂製品
- RDセンター:高砂、大阪
- 海外:アメリカ、ベルギー、シンガポール、マレーシア、オーストラリア、中国など
主要製品
- 化成品部門 - 苛性ソーダ、塩ビ樹脂
- 機能性樹脂部門 - MBS樹脂(世界シェア50%)、変成シリコーンポリマー
- 発泡樹脂製品部門 - ポリスチレンなど各種発泡樹脂、塩ビサッシ、外断熱・二重通気工法住宅「ソーラーサーキット」
- 食品部門 - マーガリン、ショートニング、パン酵母(イースト)など
- ライフサイエンス部門 - コエンザイムQ10(世界シェア65%)、医薬品中間体(ペニシリン中間体など)、医療機器(血液浄化システム)
- エレクトロニクス部門 - ポリイミドフィルム(世界シェア30%)、薄膜シリコン型太陽電池など
- 合成繊維部門 - モダアクリル繊維「カネカロン®」(世界シェア80%)
主要グループ会社
- カネカケンテック
- カネカソーラーテック
- サンポリマー
- カネカエンジニアリング
- カネカテクノリサーチ(分析及び調査)
- カネカ・クリエイティブ・コンサルティング(人材紹介・派遣及び教育・研修)
- カネカメディックス(医療機器の開発・製造・販売)
- カネカフード(マーガリン・ショートニングなどの製造)
- カネカ食品販売グループ(マーガリン・ショートニング・イーストなどの販売)
- カネカサンスパイス(香辛料製造販売)
- ユアヘルスケアー(カネカブランドの健康食品取り扱い)
- 太陽油脂(業務用食用油脂メーカー)
- イビデン樹脂(イビデンとの合弁、合成樹脂メーカー)
- サンビック(業務用ビニール樹脂の製造)
- セメダイン(市販・業務用接着剤メーカー)
- 龍田化学株式会社(プラスチックシート加工)
- バイオマスター(再生・細胞医療ベンチャー、2012年子会社化)
関連項目
- フォンテーヌ - かつての出資子会社。同社が開発した合繊を使用した女性用ウィッグを販売する目的で設立される。現在はアデランスのブランド名。
- カネミ油症事件
- 知花くらら(2011~2012年度企業イメージキャラクター)
- ダウ・コーニング - 日本法人(ダウ・コーニング・アジア)が展開していた医療機器事業を買収。