上海万博
上海国際博覧会(しゃんはいこくさいはくらんかい、Expo 2010 Shanghai China、簡;中国2010年上海世界博览会、繁;中國2010年上海世界博覽會)とは2010年5月1日から同年10月31日まで、中華人民共和国上海市の上海世博園で開かれている国際博覧会である。約160年の国際博覧会の歴史において、発展途上国における初めての開催である[1]。
過去に万博に参加したことがない北朝鮮が初めて出展したことでも知られる。また、資金難で2000年のハノーヴァー万国博覧会への参加を見送ったアメリカ合衆国も今回は出展し、参加国・地域、国際機関は万博史上最多の246を数え[1]、なかでもアフリカ大陸からの参加国は50を上回る。
建設、運営費用などの総事業費は約286億元(約3,900億円)、地下鉄や空港などのインフラ建設や都市整備などを含めると4千億元(約5兆5千億円)もの資金が投入された。
目次
概要
2002年12月3日にモナコで開かれたBIE(博覧会国際事務局)総会で、メキシコシティ(メキシコ)、モスクワ(ロシア連邦)、麗水(韓国)、ヴロツワフ(ポーランド)を破って開催が決定した。2005年日本国際博覧会(愛知万博、愛・地球博)に続き、総合的なテーマを取り扱う博覧会としては2度目の大規模な国際博覧会(登録博覧会)である。テーマは「より良い都市、より良い生活」(「城市、让生活更美好」、"Better City Better Life")。
会場面積(観覧エリア)は黄浦江の両岸にまたがり、主として企業パビリオンが建ち並ぶ西岸の「浦西エリア」と主として各国のパビリオンが並ぶ東岸の「浦東エリア」に分かれ、両方を合わせると328ヘクタールにおよび、過去最大の広さである。会場の両端の距離は約4キロメートルであり、会場内の移動に地下鉄やバスが使用される。
万博のテーマソング『歓楽節拍123』を歌うのは台湾のアイドルグループ飛輪海である。公式マスコットは「海宝(ハイバオ、かいほう)」、また、ロゴマークは漢字の「世」とアラビア数字の「2010」を組み合わせたものである。
会期中の5ヶ月間で、1970年に大阪府で開かれた日本万国博覧会(大阪万博)をうわまわる、史上最多の7,000万人の入場をめざす[1]。
経過
堺屋太一によれば、1984年に堺屋が汪道涵上海市長に中国発展の起爆剤として万博開催を提案し、1985年からは新しく上海市長となった江沢民のもとで万博構想の具体化がすすめられたという[2]。
上海万博を開催するに先だって中国政府は、知的所有権にかかわるいくつかの条約を批准し、国内的にも、著作権や商標権の侵害を本格的に取り締まる法律の整備をおこなった[2]。
- 2002年12月3日:BIE総会で、上海万博の開催が決定
- 2004年11月29日:シンボルマークを公開
- 2006年8月19日:会場建設着工式
- 2007年12月18日:公式マスコットキャラクター「海宝」を発表
- 2010年4月30日:開会式
- 2010年5月1日:開幕、初日の入場者数は約20万人[3]
開幕式
開幕式は4月30日夜20時(北京時間)に行われた。中国の胡錦濤国家主席は万博会場近くでの歓迎夕食会で「上海万博は、中国と各国の人民の交流に新たな章を記すことになる」と語り、オープンセレモニーでは、イタリアの世界的なテノール歌手アンドレア・ボチェッリによってオペラ「トゥーランドット」のアリア「誰も寝てはならぬ」が歌われた。用意された花火は、2008年8月の北京オリンピック開幕式よりも2万発多い10万発であった[4]。
開幕式には、中国共産党の最高指導部であるからは6人が政治局常務委員出席し、海外からは約20人の首脳が参加した。胡錦濤主席は、一人ひとり握手で迎えて記念撮影し、歓迎夕食会を開催した[5]。
- 政治局常務委員
政治局常務委員の9人のうち、胡錦濤国家主席、李長春、習近平、李克強、賀国強、周永康の6人のみが参加し、温家宝総理、賈慶林、呉邦国の3人は参加しなかった[6]。
- 江沢民
上海閥のリーダーで、前国家主席の江沢民は悲願だった万博の一連の式典に姿を現さなかった。今回の万博誘致で指導的な役割を果たした江沢民の不参加は、胡錦濤との確執の深刻化や健康不安説などさまざまな憶測を呼んだ[7]。
- 海外要人
外国国家元首や政府首脳約20人が出席した。万博初参加の北朝鮮からは金永南最高人民会議常任委員長が出席した。中国におけるアフリカ重視の外交政策を反映して、アフリカ諸国からの要人の参加が目立ち、主要国のG8からは日本の仙谷由人国家戦略担当相、フランスのサルコジ大統領のみの参加であった。
国名 | 参加者 |
---|---|
テンプレート:MLI | アマドゥ・トゥマニ・トゥーレ大統領 |
韓国 | 李明博大統領 |
北朝鮮 | 金永南最高人民会議常任委員長 |
日本 | 仙谷由人国家戦略担当相 |
テンプレート:GAB | アリー・ボンゴ・オンディンバ大統領 |
テンプレート:COG | ドニ・サスヌゲソ大統領 |
ケニア | ムワイ・キバキ大統領 |
テンプレート:MLT | ジョージ・アベラ大統領 |
ベトナム | グエン・タン・ズン首相 |
モンゴル | ツァヒアギーン・エルベグドルジ大統領 |
フランス | ニコラ・サルコジ大統領 |
テンプレート:MWI | ビング・ワ・ムタリカ大統領 |
カンボジア | フン・セン首相 |
テンプレート:ARM | セルジ・サルキシャン大統領 |
テンプレート:SYC | ミシェル大統領 |
カザフスタン | カリム・マシモフ首相 |
トルクメニスタン | グルバングル・ベルディムハメドフ大統領 |
テンプレート:FSM | マニー・モリ大統領 |
オランダ | ヤン・ペーター・バルケネンデ首相 |
欧州委員会 | ジョゼ・マヌエル・ドゥラン・バローゾ委員長 |
パレスチナ自治政府 | マフムード・アッバース議長 |
施設
主要施設
- 万国博覧センター
- 中国館
- 生命陽光館
- テーマ館
- 上海万博文化センター
日本からの出展
日本からは、政府と民間企業が約130億円を折半して日本館を出展した。これにより日本館の出資費用約65億円は国費によってまかなわれたことになる。また、民間企業が中心となって出展した日本産業館のほか、大阪府と大阪市も共同で地方自治体出展している[6]。
- 日本館[政府出展(一部民間企業)]
- テーマ:「心の和、技の和」
- 日本館パビリオンの愛称は、「紫蚕島(かいこじま)」。 エココントロール技術を採用し、外部は発電可能な超軽型フィルムで囲まれ、内部は循環式呼吸ホールなどの最新技術を駆使している。館長は江原規由。日本館展示を貫く象徴となっている鳥は一時は絶滅の危機に瀕したトキで、里山の再生と環境保護をうったえる。日本館のシンボルマーク=“笑顔のつながり”は、株式会社HAKUHODO DESIGNの岡室健が考案。日本貿易振興機構(ジェトロ)が音頭をとる。高性能カメラやロボット、壁と一体化したテレビジョンなどが人気を呼んでいる。
- 日本産業館[民間企業出展]
- テーマ:「Better Life from JAPAN(日本が創るより良い暮らし)」
- 日本産業館は、日本の企業や自治体が連合して出展する大規模な展示館。アジアで唯一の外国民間出展企業館であり、海外開催の国際博覧会では異例の大規模民間出展となる。総合プロデューサーは堺屋太一で同館の代表を兼ねる。
- 大阪府・大阪市ケース(ベストシティ実践区)[地方自治体出展]
- テーマ:「環境先進都市 水都大阪の挑戦」
- 経済成長とともに水の浄化や再生などの環境対策に取り組み、水を活かして持続発展可能な都市づくりを行ってきた「水都大阪」の官民の環境技術や先進的取り組みを紹介する。大阪府と大阪市がそれぞれ1億円ずつ出資し、民間企業を合わせた建設・運営費4億円でパビリオンを建設した。プロデューサーは橋爪紳也大阪府立大学教授。
- 2010年上海万博公園彫刻プロジェクト(園区沿江景観帯)[民間出展]
- テーマ:「未来にツナガル街、人、友情」
- 博覧会場内の河沿いボードウォークに藤井浩一朗作のアクリル彫刻作品「父子情」を永久設置、その序幕イベントを開催するとともに復旦大学上海視覚芸術学院や上海市内ギャラリーで日中美術家のグループ展覧会等の関連プログラムを開催。キュレーターは深瀬鋭一郎。
パビリオン一覧
- テーマ館
- テーマ館
- 都市人館
- 都市生命館
- 都市プラネット館
- 都市足跡館
- 都市未来館
- Aゾーン
- Bゾーン
- Cゾーン
- アフリカ連合館
- アルジェリア館
- アンゴラ館
- アルゼンチン館
- オーストリア館
- ベラルーシ館
- ベルギー・EU館
- ボスニアヘルツェゴビナ館
- ブラジル館
- カナダ館
- カリブ共同体館
- アンティグアバーブーダ館
- バハマ館
- バルバドス館
- ペルー館
- カリブ共同体館
- カリブ開発銀行館
- ドミニカ館
- グレナダ館
- ガイアナ館
- ハイチ館
- ジンバブエ館
- セントクリストファーネイビス館
- セントルシア館
- セントビンセントおよびグレナディーン諸島館
- スリナム館
- トリニダードトバゴ館
- チリ館
- コロンビア館
- クロアチア館
- キューバ館
- チェコ館
- デンマーク館
- エジプト館
- エストニア館
- ヨーロッパ連合館一
- ヨーロッパ連合館二
- フィンランド館
- フランス館
- ドイツ館
- ギリシア館
- ハンガリー館
- アイスランド館
- アイルランド館
- イタリア館
- 中南米州連合館
- ラトビア館
- リビア館
- リトアニア館
- ルクセンブルグ館
- メキシコ館
- モナコ館
- オランダ館
- ナイジェリア館
- ノルウェー館
- ペルー館
- ポーランド館
- ポルトガル館
- ルーマニア館
- ロシア館
- セルビア館
- スロバキア館
- スロベニア館
- 南アフリカ館
- スペイン館
- スウェーデン館
- スイス館
- チュニジア館
- トルコ館
- ウクライナ館
- イギリス館
- アメリカ館
- ベネズエラ館
- Dゾーン
- Eゾーン
スポンサー
- グローバルパートナー
日本での宣伝
2007年3月から、上海市人民政府新聞弁公室および上海万博事務協調局が上海万博のPRイベントを日本で開催している。なお、上海万博のPRが中国国内以外で行われるのはこれが初めてであった。
また2008年3月、日本イメージ大使に谷村新司、コシノジュンコ、福原愛の3人が選ばれた[8]。同年12月17日には、上海万博日本PR館が東京虎ノ門の森ビルにオープンした。
なお、2010年6月13日には上海万博文化センターにおいて日本のアイドルグループSMAPによるファンの集いが予定されている[9]。
万博外交
開幕式には、南北朝鮮の首脳がそろって参加し、胡錦涛主席と個別に会談した。李明博韓国大統領は、韓国軍の哨戒艦艇「天安」沈没をめぐる調査結果が出た際の協力を要請し、万博開幕式を首脳間の意思疎通の場として利用した[5]。「万博発祥の国」の首脳として開幕式に出席したフランスのサルコジ大統領は、大統領にとって2007年以来の2度目の中国公式訪問となり、冷え込んだ中仏関係の修復を内外に印象づけた。アメリカのヒラリー・クリントン国務長官、ロシアのドミートリー・メドヴェージェフ大統領・ウラジーミル・プーチン首相、また、日本の鳩山由紀夫首相も開催期間中に上海を訪れる意志を表明している[5]。
40年ぶりにパビリオンを出した台湾(中華民国)からは与党中国国民党の連戦・呉伯雄が出席した。上海万博事務局によれば、今回の万博には、中国と国交関係を結ばず、台湾と外交関係を有する23か国のうち、19か国が参加している[5]。
その他の話題
- 2007年より上海国際博覧会に向けての曲の公募を毎年行っており、2009年度にJAM Projectが「Only One」の北京語バージョンで応募。その結果、2009年度世界ベストソングに選ばれた[11]。
開場・開館時間
万博会場の通常開場時間は9:00から24:00までであり、また、会場内の各パビリオンの開館時間は通常9:30から22:30までである。来場者は21:00より前に入場し、当日の24:00以前に退場しなければならない。夜間券の入場時間は17:00から21:00までの間となる。
会場へのアクセス
浦東国際空港から
- 羽田空港以外からの便は浦東国際空港へ到着する。
- 浦東国際空港には国際線と一部の国内線が発着している。
- 電車
- 浦東国際空港駅から上海トランスラピッドで竜陽路駅まで移動(約8分)その後地下鉄7号線に乗り換え、耀華路駅へ。
- 浦東国際空港駅から地下鉄2号線で龍陽路駅まで移動、竜陽路駅で7号線に乗り継いで耀華路駅へ。
- バス
- エアポートシャトルバスが空港から上海市内まで15~30分間隔で運行。
- タクシー
- 浦東国際空港から会場周辺まで、約40~50分
上海虹橋空港から
- 羽田空港からの直行便は上海虹橋空港へ到着する。
- 上海虹橋空港には主に中国国内の国内線が発着している。
- 電車
- 虹橋第2ターミナル駅から地下鉄2号線で静安寺駅まで行き、7号線に乗り換えて耀華路駅へ。
- バス
- 路線バス
- 空港または空港近くのバス停から、人民広場行き、廬浦大橋行きなど市内行きのバスが運行している。
- エアポートバス
- ターミナルAの前から出発している。浦東国際空港行きと静安寺横の城市航站行きの2路線が、6時00分から22時50分までの間に20-30分間隔で運行している。
- タクシー
- Aターミナルの2播出口を出てすぐの正規の乗り場から乗車。上海市内までの所要時間は約20-40分。
問題
- 盗作疑惑
- 上海万博PRソング
- 上海万博PRソングで中国の著名な作曲家繆森の作品とされてきた『2010等你来(2010年が君を待ってる)』(歌およびMV出演:ジャッキー・チェンなど)が、岡本真夜の楽曲『そのままの君でいて』とソックリだとして盗作疑惑が持ち上がっていた[12]。中国ではインターネットを中心に批判が持ち上がり、日本のメディアでも大きく取り上げられた。事務局では事実確認のため一時使用停止し[13]、その後、岡本真夜の所属事務所に使用許可を求めた。岡本側は曲の使用を認めたが[14]、当局はこの使用申請受け入れについて言論統制によって国内での報道を禁止した[15]。なお、当初この曲は開会式で歌われる予定であったが、歌われなかった。
- 2010等你来 も参照
- パビリオン「中国館」
- パビリオン「中国館」が安藤忠雄設計のセビリア万博「日本館」の盗作ではないかという指摘が中国国内でおこっている[16]。既存する建築物の意匠を採り入れることは建築の世界ではしばしばあることだが、一連の盗作騒動を激化させることに中国館が一役買うかたちとなった。設計した華南理工大学建築学院副院長の倪陽は「中国館のスタイルは建築デザインの世界で広く使われているもの。安藤氏が創造したものではない」と反論している。さらに中国社会科学院建築研究院は、「(中国館、セビリア万博時の日本館)ともに伝統的な中国の建築技法から影響を受けている。盗作というのならば、最初にコピーしたのは日本の方だ」と主張している[17]。
- 万博公式マスコット「海宝(ハイバオ)」
- インフラ・人員問題
- 上海はホテル不足が問題視されている。来場者のベッド数としておよそ59万人分必要とされるが、大幅に不足しており問題を抱えている。いっぽう、万博従業員も約25万人を必要としているが不足している。特に通訳の不足が深刻である。
- マナー(文化的)問題
- 上海市政府は、「市民の素養」と題した46項目のルールを制定。順番を守って地下鉄に乗ること、タクシーの窓から唾を吐かないことを指示し、パジャマ姿での外出や万博会場から1キロメートル以内は屋外で洗濯物を干すことを禁止するほか、警備の警官はニンニクやニラ、ネギなど口臭の原因となる食べ物を口にしないなど、さまざまな規制を打ち出している。市民への不満対策には、チケット無料配布や開幕前日から公休指定5日間などの優遇策を行う[20][21]。
- 行列のマナーもわるく、常に押し合いへし合いの状態になる。アメリカ館では、英語で注意したスタッフに中国人客から一斉に野次と怒号が寄せられたこともあった[22]。パビリオンに入場する際に行列に割り込みをするのは日常茶飯事となっている[23]。
- 治安問題
- 少数民族問題や独裁体制、格差社会への不満から、暴動やテロの発生に対する懸念ももたれている。中国公安部、交通運輸部および上海市人民政府は、上海万博の安全な開催を保障するために万博期間中に上海市に進入する全ての車輌に対する検問の実施と通行証による管理を行うことを決定した。しかし、検問による検査がフリーパスとなる「上海進入車輌通行証(進滬車輌通行証)」が偽造され、販売されている[24]。
- 感染症発生時の対応
- 偽造(ニセ)入場券問題
- 超人気の入場券、5月1日の開幕当日の偽造券が横行している。中国地元紙は、インターネット上で転売されている開幕日の入場券のなかに数多くのニセモノが含まれていると警告している[24]。しかし、開幕後の5月26日はニセ入場券での入場も明らかとなった。入手を試みる中国の内陸部や、海外などからの来場者は簡単にだまされていて問題となっている[26]。
- 使用済み入場券の販売
- 万博会場付近では、不法業者が「使用済み入場券」を「未使用」と偽って販売する手口が横行している。そのために事務局では、正規ルートでの入場券の購入をすすめてはいる[26]。
- ニセモノ販売
- 万博会場周辺や豫園などの観光スポット周辺などでは、公式マスコットである「海宝」のニセモノ商品の販売が横行している。中国当局は、2カ月余りで、既に435件を摘発し、コピー商品12万8,000点を押収した。万博事務局は、「万博の知的財産権に対する宣伝を強め、市民に正規商品を買うよう提唱している」と説明している[27]。しかし「違法コピー天国」と批判される中国では、開幕後も「『万博ビジネス』でひともうけしよう」という人が後を絶たず白昼堂々と売られている。また、正規品に比べて価格も安いために購入者も絶えず、この国の知的財産権保護の難しさを見せつけている[28]。
- 過剰な商業主義
- 果物皮むき器にロゴマークのシールが貼られているだけの商品が、正式なライセンスを得たオフィシャル商品として市内の公式商品専門店「オフィシャル・ライセンスド・プロダクツ・ストア」で販売されている[29]。
- 偽の各国名産品
- アフリカの43カ国が共同出展したアフリカ館の即売コーナーで売られているアフリカ各国の名産品は、デザインこそアフリカ風であるが、すべて中国国内で製造されたものである。そのために来場者からは「中国製のアフリカ土産など買いたくない」とそっぽを向かれている[30]。
- 日本国旗の不掲揚
- 万博開幕時から、日本館では日の丸の掲揚・掲示が行われていない。展示館内に国旗の掲揚・掲示が義務づけられていないために、中国人の反日感情に配慮したためとの見方があるものの、日本館関係者は外国開催では過去にも国旗を掲げないケースがあったとそれを否定している[31]。
- 万博取材許可証の発行のミス
- 突貫工事
- 開幕数日前になっても、パビリオンの展示物の1割は未完成である。そのために部外者の立ち入りを禁止し、急ピッチでの突貫工事を進めているが、開幕には一部の展示物が間に合いそうにないと懸念され[33]、実際に間に合わなかったケースが少なくない。また、4月30日の段階でも開幕式がおこなわれるステージ裏側はハリボテが見える状態であった[34]。建設作業未経験者までもがかき集められた多くの突貫工事は、安全上の問題点も心配されている。しかし、「開催期間が半年なので、建物も半年保てばいい」といったスタンスであるという[35]。
- 未開館のパビリオン
- ベネズエラや南アフリカ共和国、エジプトなど一部の外国パビリオンは工事が遅れていて、開幕日の当日になっても開幕することができずに閉まったままである[36]。
- 未開館のパビリオンでは出入り口等に"close"と表示されているにもかかわらず、中国人客が不法に侵入する事件が相次いでいる[22]。
- 地元メディアによれば、クウェート、ブータン、ブルキナファソの3か国は、開幕直前になって出展を断念した[37]。
- 過剰な参加国勧誘
- 参加国数を史上最多にするために組織委員会が1億ドル(約94億円)の基金を設け、約120の発展途上国がこの支援を受けて展示館建設などをおこなった[38]。ここまでして参加国数を増やすやり方に、「私たちはいつそんなに豊かになったのか」「国内にどれだけの失業者がいると思っているのか」など中国のインターネット上では異論の声が相次いでいる[4]。
- リニアの未着工
- 国土全体が国有地である共産国家の中国では、住民の土地からの立ち退きは政府が強制的に断行するなか、なぜか当初計画されていたリニアモーターカーの駅が、住民の反対運動により未着工となった。そのために、空港より直通でのアクセスがなくなった[39]。
- 言論統制
- 中国共産党宣伝部は国内のメディアに対し多くの指示を出しており、準備の遅れやリハーサル時の混乱など共産党にとって都合の悪い情報についての報道が禁止された。また、万博開幕報道について「大いに力を入れるように」との言論統制に関する指示を出した[40]。
- 台湾館の扱い
- 台湾館は1970年の大阪万博以来ひさしぶりに姿をみせた。万博公式サイトでは当初、中国館について、「本体と省市連合館、香港、マカオ、台湾各館の『3部分から構成』」と紹介していた。しかし2009年12月に台湾側が「国内扱い」となっていることに気づき、万博事務局に抗議した。これを受けて「本体と地区館の『2つで構成』」との表記に変更されたが、台湾側は、台湾館を「外国国家館区に属する」として反発している。パビリオンの立地も、中国館の脇に寄り添うように配置されている香港・マカオの両館とは異なり、台湾館は大通りをはさんだ向かい側に位置している[41]。
- 武装警察主体の過剰警備
- 武装警察本部の共産党委員会の指示の下、数万人規模の中国人民武装警察部隊(中国人民解放軍の兵士・将校)の隊員により警備が行われており、主に万博会場周辺の警戒、重点ターゲットの防衛、武装パトロール、重点地域の守備などが担当されている。また、他にも万博警備のために警官約4万6,000人を投入し、上海市内では約200万人の市民ボランティアが動員されて市街の巡回活動をおこなっている[42][43]。
- 来場客の水増し発表
- パビリオンの休業
- 来場客が少ないため、5月上旬の段階で一部のパビリオンが勝手に休んでおり、目標としてきた7,000万人の動員は不可能と見なされている[46]。
- ゴミ問題
- 万博に訪れる中国人来場者の多くはゴミの分別についての理解が欠如しているため、園内ボランティアに過重な負担がのしかかっており、市内でもゴミ箱からあふれ出たゴミが地面に積もっている様子が報道されている[47]。
- 無料の入場券のバラまき
- 中国は、大阪万博が記録した6,422万人を超える史上最高の7,000万人の入場者数を目標としている。そのためにメンツをかけた組織的な動員作戦より、上海市当局や万博事務局は住民に無料の入場券をバラまいたり、学校や職場に対して団体入場の動員をかけたりしている[48]。
- ニセ幼児・ニセ障害者
- 幼児連れの入場者や障害者のために用意された優先ゲートが、不正に使用されるケースが多発している。会場内で3歳以下の幼児のために貸し出しているベビーカーに小学生の子供を乗せ、「ニセ幼児」と優先入場する中国人の親が後を絶たない。また、車いすの入場者に数名が付き添って優先ゲートに並び、入館後に車いすから「障害者」であるはずの人物(ニセ障害者)が立ち上がって元気に歩き出すケースも多発している。多くのパビリオンでは年配者の場合は障害者の証明書などがなくても、車いすでの優先入館を配慮してもらえるために、このような善意の悪用が常態化している[48]。
- 住民の強制立ち退き問題
- 万博を開催するにあたって中国政府は1万8,000世帯を強制的に立ち退かせて会場敷地を確保した。これについては、立ち退き住宅の補償ベースが市価の20分の1にすぎなかったことや立ち退きを拒否した人が一方的に解雇されるなどの不当な措置のため、地元住民からは激しい怒りの声があがっており、海外の人権団体からも強い反発を招いた。そのいっぽうでは、共産党幹部など一部の特権階級だけが不動産バブルの恩恵をフルに享受できるという社会的不平等のいっそうの拡大と不公正の蔓延が指摘されている[49][50]。
事件・事故
事件・事故
- 入場ゲート
- 5月1日、中国館に近い入場ゲートでは開園前から長蛇の列ができ、中国館に入るための入場予約券をめぐって小競り合いが起きて混乱した。そのため、テロ警戒として多数の中国人民武装警察部隊の隊員が動員されたが、開園時には隊員の制止は振り切られてしまった。入場予約券をめぐっては、殴り合い寸前まで熱くなった中国人たちの姿も多数見られた[31]。
- 会場全体
- 中国館
- 入館希望者が殺到している中国館では、5月2日には数十人が「(入場するための)券をよこせ」と警備員を取り囲む騒ぎとなった。また、この予約券を持たぬまま勝手に列に並び、入口の係員の制止を無視して強引に入館するものも現れるなど混乱しており、「秩序の維持」という課題の解決が求められている[52]。
- イタリア館
- 日本館
その他
- 入場希望者の身柄拘束
- 浙江省出身の人権活動家である馮正虎が万博会場を訪れたところ、中華人民共和国公安部当局に身柄を拘束され、3日間にわたって監禁されたる問題が発生した[54]。
- 会場内での言論弾圧
- 台湾の作家でテレビコメンテーターの朱学恒が「阿宅反抗軍」(意味:オタク反抗軍)と書かれたTシャツを着ていたところ、警備員事務所に連行された。「反抗軍」には何ら軍事的、武力的な意味はないが、会場内では中国当局による過剰な反応が多発している[54]。
大阪万博と上海万博
大阪万博と上海万博との類似性を強調するのが自身大阪万博の開催を主導した堺屋太一である。堺屋によれば、大阪でも上海でも、
- 工業力による会場および都市づくり
- 大量の観客を円滑に運ぶ管理能力
- 全世界からの出展者をむかえる外交的成果
の3点を内外に披露し、「近代工業社会」を誇示する点で類似しており[55]、そこでは生活の質や生活様式、人びとの消費行動や行動様式が大幅に変化することが期待されている。また、堺屋は上海万博は「近代工業社会の最大にして最期のイベントになるだろう」と予言し[55]、中国人の消費のレベルをあげ、生活の質を向上させる変化の起爆剤になれば万博は成功だとしている[55]。ただし、上海万博閉幕ころにはバブル経済が弾けて中国経済全体が落ち込む可能性があり[55]、テイクオフののちには中国が「世界標準」を主張する可能性が少なくないとしている[55]。
朝日新聞編集委員の外岡秀俊も、万博の歴史に新たなページをひらいたのは1970年の日本であったとしている。フランスでは革命により王室を失い、代わって国民統合の象徴としての意味を担わされたのが産業振興であり、産業博覧会であった。20世紀にフランスに代わって万博を主導したのはアメリカ合衆国であったが、そこにも国民統合の意味合いがあった。外岡は、吉見俊哉東京大学教授のことばを引用しながら、そこに新しくアジアの「成功物語」をもちこんだのが日本であり、1964年の東京オリンピックから1970年の大阪万博までの流れは、韓国における1988年のソウルオリンピックから1993年の大田国際博覧会、そして、中国における2008年の北京オリンピックから2010年の上海オリンピックへの流れというかたちで受けつがれたと論じている[56]。
脚注
- ↑ 1.0 1.1 1.2 朝日新聞、2010年5月1日朝刊1面
- ↑ 2.0 2.1 『文藝春秋』2010年6月号(2010年5月10日発売)p.154
- ↑ 人気パビリオンは4時間待ちも…上海万博初日(YOMIURI ONLINE) - 読売新聞 2010年5月1日
- ↑ 4.0 4.1 朝日新聞、2010年5月1日朝刊2面
- ↑ 5.0 5.1 5.2 5.3 朝日新聞、2010年5月1日朝刊6面
- ↑ 6.0 6.1 asahi.com(朝日新聞社):上海万博、開幕式に首脳約20人 巨大市場に世界が注視 - 国際 - 朝日新聞 2010年5月1日
- ↑ 念願の開幕式に江沢民氏の姿なく 憶測呼ぶ (2/2ページ) - 産経新聞 2010年5月1日
- ↑ (2008-03-26) 日本イメージ大使、卓球の愛ちゃんら3人が選ばれる レコードチャイナ 2008-03-26 [ arch. ] 2010-05-30
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- ↑ 上海万博の公式テーマソングに盗作疑惑!これって岡本真夜の歌じゃない? - サーチナ 2010年4月15日
- ↑ 上海万博曲は盗作?岡本真夜側「事実確認中」 - スポニチ 2010年4月17日
- ↑ 急展開!岡本真夜の楽曲「上海万博PR曲」に - スポニチ 2010年4月20日
- ↑ お蔵入り?岡本さんの「そのままの君でいて」 : 国際 : YOMIURI ONLINE(読売新聞) - 読売新聞 2010年5月1日
- ↑ 不毛なパクリ論争に巻き込まれた上海万博、今度は「中国館」に飛び火 - サーチナ 2010年4月22日
- ↑ 1日開幕、パクリ疑惑に懸命に反論 - 産経新聞 2010年4月29日
- ↑ 上海万博マスコットにもパクリ疑惑、米国キャラに「生き写し」 - 中国新聞社 2010年4月21日
- ↑ とまらない上海“万パク” 今度はイメキャラに盗作疑惑浮上 - 夕刊フジ 2010年4月22日
- ↑ 上海にパジャマ外出禁止令 万博対策、市民は支持せず - MSN産経ニュース 2009年11月20日
- ↑ 上海万博控え規制次々 いら立つ市民に優遇策 - 東京新聞 2010年4月2日
- ↑ 22.0 22.1 2010年5月10日発売週刊ポスト(2010年5月21号)p.48
- ↑ 【上海万博】香港パビリオンでドサクサにまぎれて入場する人たち - サーチナ 2010年5月8日
- ↑ 24.0 24.1 上海万博開幕前夜】(上)「万パク」狂想曲 (3/3ページ) - 産経新聞 2010年4月29日
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- ↑ 上海万博:マスコットのコピー横行 「そもそも米キャラの盗作」 - 毎日jp(毎日新聞) 2010年4月24日
- ↑ (2010-05-11) コピー商品、開幕後も横行、取り締まり困難 MSN産経ニュース 2010-05-11 [ arch. ] 2010-05-11
- ↑ 【上海万博】何でも上海万博オフィシャル商品に!果物皮むき器も - サーチナ 2010年4月29日
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- ↑ 上海万博、展示物の1割未完成 準備大詰め - 日本経済新聞 2010年4月29日
- ↑ 【上海万博】開幕式場のハリボテが丸見え!「隠せばいいのに」との声 - サーチナ 2010年4月29日
- ↑ 上海万博、パクリ騒動など問題山積 (1/2ページ) - 日本経済新聞 2010年4月29日
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- ↑ 上海万博で会場内ローソンが“悲鳴”―人集まらず、金落とさず - サーチナ 2010年5月10日
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- ↑ 「ゴミ箱から溢れ、地面に積もるゴミ」 上海万博でゴミ分別が問題に - サーチナ 2010年5月13日
- ↑ 48.0 48.1 【上海万博】開幕1カ月、伸びぬ入場者800万人 障害者装うニセ車いすも横行 - MSN産経ニュース - 産経新聞 2010年5月30日
- ↑ 中国のメンツが生んだ「上海万博難民」 - iza! 4月26日
- ↑ 万博で場外乱闘 立ち退き住民の怒り、会場跡地でひと稼ぎ… - Y!ニュース5月1日(産経新聞)
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- ↑ 52.0 52.1 会場気温30度!熱射病も懸念、日本館は人気2位 - MSN産経ニュース2010年5月2日
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- ↑ 54.0 54.1 (2010-05-31) 上海余話 「オタク反抗軍」はNG? MSN産経ニュース 2010-05-31 [ arch. ] 2010-05-31
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- ↑ 朝日新聞、2010年5月19日朝刊14面「ザ・コラム」
関連項目
ギャラリー
- Saudi Arabia Pavilion of Expo 2010.jpg
サウディアラビア館
- 世博美國館.jpg
アメリカ館
- UK Pavilion board in Expo 2010.jpg
イギリス館
- Germany Pavilion of Expo 2010 2.jpg
ドイツ館
- Russia Pavilion of Expo 2010.jpg
ロシア館
- India Pavilion of Expo 2010.jpg
インド館
- Brazil Pavilion of Expo 2010 2.jpg
ブラジル館
- Oil Pavilion of Shanghai Expo 2010.jpg
石油館
- 世博土耳其館.jpg
トルコ館
- Netherlands Pavilion of Expo 2010 2.jpg
オランダ館
- Food at Shanghai Expo.jpg
会場内での食べ物
外部リンク
- http://jp.expo2010.cn (日本語)
- 上海国際博覧会 日本館公式サイト
- 2010年上海万博 -日本産業館- 公式サイト
- 上海世博会大阪館(上海万博大阪出展公式サイト)
- 2010年上海万博公園彫刻プロジェクト日本委員会 公式サイト
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