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2014年5月31日 (土) 02:29時点における最新版
福岡猫虐待事件(ふくおかねこぎゃくたいじけん)は、2002年に男性が虐待した猫の写真をインターネット上で公開した事件である。事件後に猫につけられた名前から、こげんたちゃん事件、こげんた事件とも呼ばれるほか、マスメディア上で報道された際にはインターネット猫虐待事件とも呼ばれた。ネットコミュニティでは男性のハンドルネームからディルレヴァンガー事件、ディルレ事件と呼ばれることも多い。
目次
概要[編集]
この事件は、2002年5月6日、電子掲示板2ちゃんねるのペット関連隔離板である“ペット大嫌い”板(現“生き物苦手”板)に、ある男性によって、“おい!おまえら”と題されるスレッドが作成されたことに端を発する。
事件[編集]
オスカール・ディルレヴァンガー(ナチス・ドイツ武装親衛隊准将)の名から取ったとされる“ディルレヴァンガー”を名乗る、福岡県福岡市在住の男性(事件後、広島県呉市内の親元に引き戻された)は、その後マンション自室のユニットバス内でハサミや針金等を使って尾や耳を切る・首を締めるなどして野良猫を虐待、この模様をデジタルカメラで撮影して、同スレッド上で教えられたアップローダーで写真を公開し、実況中継を行った。また同人物は、2ちゃんねる上で最も人が多い板のひとつであるニュース速報板にもスレッドを起こし、この行為を自ら2ちゃんねる全体に知らしめた。
反応[編集]
同事件はインターネット上で波紋を呼び、数日中に複数の2ちゃんねらーによってログ解析や写真の分析がなされ、通報が殺到、ついに男性は福岡県警により書類送検される。この際、男性は「猫は逃がした」と供述したが、事件を知った人々により写真が調べられ、どう見ても問題の猫が生きていたとは思われない等の理由により、件の男性への不信感が爆発。刑事訴追を求める署名運動が起こされ、同時に男性の個人情報などがインターネット上のさまざまな場所で公開される「逮捕祭」が勃発し、同事件を追及するウェブサイトが乱立した。
この男性への不信感は、警察の尋問に対して「はさみや紐は引越しのために購入した」や「酔っていて、かっとなって」などと答えていたことにも関係する。使用されたはさみが波板と呼ばれる工事材料を切るための専用の工具であったこと、発作的な殺害という割には問題のスレッドの書き込み時間が長く、また執拗な虐待の内容を延々と書き込んだりアップロードし続けていたこと、加えて同男性が「生き物嫌い」板で以前よりハムスターを虐待する様子を頻繁に文章で書き綴っていたことなどから、2ちゃんねる利用者らに、あからさまな嘘であると判断された。なおこれらの嘘が、後に「証拠隠滅を働くおそれがある」として福岡県警が逮捕に踏み切った理由ともなった。
なお同事件はインターネット上で一斉に広まったため素早く報道各社が反応、テレビ放送・新聞などのニュースで一斉に報じられ、社会的にも大きな反応を引き起こしている。
逮捕へ[編集]
この際に、事件を知った市民より同県警へと逮捕を求める嘆願書が殺到したことにより(最終的に実刑を求める嘆願書と併せ3,000通を超えたという)、福岡県警側は書類送検から急遽対応を改め、獣医師に問題の写真鑑定を依頼、これにより猫の死亡が確認されたため、同男性は逮捕され、取り調べを受けた。
男性は九州大学卒業後、光学機器メーカーに勤めていたが、職場でリストラが進み、社内の雰囲気にいたたまれなくなって辞職して蓄えで生活していた時期にこの事件を起こしたという。男性は公判の中で、餌を与えたが糞をされたので憎悪がわいたとも、ネット上で騒がれたかったとも動機を述べている。しかしその弁明は余りに拙いため、今日でも生き物苦手板では揶揄の対象にされている模様である。
逮捕され取り調べられた結果、男性は猫の殺害を認めたため、動物愛護法違反により懲役6か月・執行猶予3年の判決を受けた。このとき、男性の個人情報が不特定多数によって公開されたことなどにより、犯人はすでに社会的制裁を受けたとして、減刑措置がとられている。
他の事件への影響[編集]
この判決は、後の動物虐待事件にも影響し、同様の刑量判決が、その後の複数の事件裁判で出されている。
同事件以降、海外の動物虐待事件と凶悪事件の因果関係が取り沙汰され、動物虐待事件は凶悪犯罪の予兆であるともされ、動物虐待事件の予防・検挙が、近年多発する児童に対する通り魔などの犯罪を予防することになるとする論調も生まれている。(動物虐待の項を参照)
生き物苦手板に関して[編集]
なお、この「生き物苦手(旧ペット大嫌い)板」であるが、元々はマナーの悪い飼い主に対する批判で、趣味のカテゴリー内にあったペット関連の掲示板が、フレーム問題や荒らしによってコミュニティが混乱したため、この議論や煽りを分離するために設置されたと伝えられている。
しかしいつの頃からか、ホラー(スプラッタ)マニアや動物虐待を趣味と公言する者が集まりだし、元の飼い主に対する問題提起や批判を行っていた利用者を締め出してしまっていた。当時のログおよび当時を知る同掲示板利用者複数筋の情報では、事件当時はそのような者たちが、自分の行為を正当化するなど自己瞞着状態に陥っていたとする話も聞かれ、男性も「罰金を払えば済むだけで捕まらない」と嘯いていたという。
なお男性は動物愛護管理法の罰則強化改正を知らずにいた様子も窺え、世情に疎かったことも指摘されている。事件当時の同法規定によれば、「100万円以下の罰金または懲役1年未満」であるため、当時無職であった同男性が罰金を払えたかどうかは微妙である。同男性は、この掲示板の中で当時吹聴されていた旧法規定「3万円以下の罰金」だと思い込んでいたようだ。
事件・逮捕直後は累を恐れて動物虐待行為を仄めかしていた掲示板利用者が激減、一頃は動物虐待行為に対する批難一色に染まった(→炎上)。近年では一部の動物虐待行為に嗜好を示す者が舞い戻ってきてはいるものの、実質的な犯罪行為の実行が疑われるケースでは、他の利用者から通報されているともいい、事件当事のように直接的な犯行をほのめかすケースはほとんどなくなっている模様だ。
- ただし全く無いと言うわけでもなく、2006年4月に公園で捕まえた猫を踏んで殺害、その写真を投稿した東京都江戸川区の男性(20歳)が逮捕されたケース(→産経新聞・発達障害があることを理由に懲役6月執行猶予3年の判決)や、2007年2月にフェレットを首を絞めたり殴りつけて虐待して苦痛を与えている動画を投稿していた神奈川県厚木市の男性(30歳)が同4月に逮捕され、2005年11月以降にフェレットやハムスター、ミニウサギなど30以上の動物を虐待し死亡させていたことが明らかになったケース(→毎日新聞・50万円の罰金・他の虐待は事実関係が確認できないため不起訴)が報じられている。どちらも、苦手板閲覧者らにより通報され、後にインターネット経由で多数の厳罰を求める嘆願書が送られている模様である。
現在のところ、ペットを含む動物とその所有者(飼い主)に対する批判といった、元々の掲示板設置経緯に沿った議論も少数見られるものの、動物虐待行為を愛好ないし非難する側が双方荒らすことから真剣な議論は行われておらず、主に古くからあるペットに関する掲示板の方で静かに続いている。現状の内容は、専ら動物虐待行為に対する擁護論と批判論の衝突と並行して、無意味なレスやコピーアンドペーストによる愉快犯的な荒らし行為が続いていたり、また動物関連のニュースや、他の2ちゃんねるの掲示板同様の他愛ないおしゃべりで埋め尽くされている。
関連事象[編集]
この事件は2ちゃんねるのみならず、他のネットコミュニティにも影響を与え、犯人の男性に対しては多くのネット愛好者が不快感を表明、他方では猫愛好家・動物愛護団体などが暗数となっている動物虐待事件の問題で、度々同事件を引用している。
この事件において犠牲となった猫は、後に同事件を最初から最後まで追跡したバラエティ・ニュースサイトの探偵ファイルが手配したペット葬(なお死体は未発見であるため、男性がネット上に公開した画像のみが用いられた)の際に、僧侶により戒名としてこげんたと名付けられた。これに複数サイトが追従したことから、この名が共通呼称として知られている。
同事件に際しては、不特定多数の匿名人物らが犯人探しに奔走、書類送検直後に男性の写真(高校生の時と大学生の時とされる)がネット上に公開される・自宅住所を公開される・家族(親)の職場(公立中学校)が公開されるという事態に発展、親にまで非難の電話がかかることで、その仕事を妨害する事態も発生した。なお地元テレビ局の取材した報道番組では、親戚の男性(匿名・顔モザイク)を名乗る者が「(猫1匹を殺したくらいで)大したことでもないのに騒ぎすぎる」と発言しており、これが親族までもが顰蹙を買う一因にもなったようだ。この追及が後に「社会的制裁をすでに受けた」として未決勾留期間を執行猶予期間から差し引くという減刑にもつながっている。
同事件に際して殺害された猫の追悼サイトから、サイト閲覧者などから寄せられた追悼文等をまとめた書籍が当初、サイト運営者らの自費出版の形で発売され、後の2004年7月には全国的に販売された。同書籍の印税などは、動物虐待を防止する運動に利用されているという。
同男性に対するインターネット上の扱い[編集]
当初よりインターネット上で犯人探しが行われ、また書類送検時の供述内容から不信感が爆発した訳だが、これにより高校時代の写真や、大学生時代の写真が方々で公開された。
生き物苦手板は現在でも、趣味として動物虐待を仄めかす通称「黒ムツ(黒いムツゴロウの略)」がおり、またこれを批難する側も同掲示板を利用している。しかし犯人の男性に対しては、動物虐待を仄めかす側からは「やり方が稚拙」と批判され、動物虐待を批判する側からは変質者扱いされており、この状況は事件当時から2007年現在まで、あまり変化は見られない。
この中では、男性や男性の親族に対する嫌悪感や憎悪に基く誹謗中傷や「見つけ出して暴行する・殺害する」という脅迫に等しい書き込みもみられ、同男性が公判時に事件を起こした理由の一つとして「目立ちたかった」と述べていることから、実名を挙げて論う・罵る・嘲笑するといった不特定多数の行動も、当人が望んだ結果に過ぎないという意見もある一方、「犯罪者になら何を言っても構わないのか」と問題を提起する者もいる。
いずれにしても、掲示板上では利用者間で匿名であるため、マッチポンプが疑われるものも含め、時折同男性に対する扱いの議論も起きているが、この議論は散発的に起こっては立ち消えとなるなど、依然決着はついていない。
「懲役6か月・執行猶予3年」の判決に前後して、男性は両親の住む広島県に引き戻されたが、その近所で男性の所業を触れ回った者も出ており、同男性を取り巻く近隣社会の扱いは、かなり冷たかったであろうことも想像に難くない。なお同男性は上の「探偵ファイル」が判決後に行った「ちゃんとネット謝罪してくださいよ」という問いかけに対し、「前向きに考えている」とコメントをしたことが伝えられている([1])が、それ以降は実社会・ネットコミュニティ共に沈黙を保っており、近況は不明である。
関連項目[編集]
- かつては2ちゃんねるも匿名性を持っていたが、中傷事件などが相次いだ事から、利用者サイド間では一定の匿名性があるものの、管理側からは匿名性が無いようなシステムとなっている。同事件発生時にはすでに、スレッド(話題の提示)を作った者のIPアドレスが記録されるようになっていた。
外部リンク[編集]
このページはウィキペディア日本語版のコンテンツ・福岡猫虐待事件を利用して作成されています。変更履歴はこちらです。 |