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(→殺害されたセレブ夫妻。その背景の「闇」) |
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このクロニクル社は2012年12月に開示検査を受け、1月25日、「一部の会計処理の訂正を要する可能性のある事象が判明」し、「金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)の疑義に関する事実関係の調査分析をする」とするIR情報を発表。第三者委員会の設置を決めた。 | このクロニクル社は2012年12月に開示検査を受け、1月25日、「一部の会計処理の訂正を要する可能性のある事象が判明」し、「金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)の疑義に関する事実関係の調査分析をする」とするIR情報を発表。第三者委員会の設置を決めた。 | ||
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誠さんは、闇の世界が見え隠れする仕事をしていた。現在、主犯として逮捕されている渡辺は闇世界の差し金で犯行に及んだのか。 | 誠さんは、闇の世界が見え隠れする仕事をしていた。現在、主犯として逮捕されている渡辺は闇世界の差し金で犯行に及んだのか。 |
2013年7月19日 (金) 11:36時点における版
霜見 誠(しもみ まこと)とは、宮崎県出身のスイス在住の投資ファンドマネージャー。運用額300億円、本人年収は5億円だった。
2012年12月に運用トラブルから、水産加工物販売会社社長、渡辺剛らに妻・美重さんとともに殺害された。
セレブ夫婦
2012年12月の一時帰国中に事件に巻き込まれた霜見さんは、多額の資金を運用するスゴ腕ファンドマネジャーとして知られ、人脈には、芸能界と通じる有名実業家の名も浮かぶ。華麗な生活の半面、市場環境の急激な悪化で「トラブルを抱えていた」との指摘もある。
現代の神隠しが一気に動いた。霜見誠さんと妻、美重さんとみられる遺体が2013年1月29日、埼玉県久喜市内の元農地で発見された。警視庁捜査1課は、死体遺棄で住所不定、職業不詳の桑原隆明を潜伏先の沖縄県宮古島市で逮捕。同容疑で食品関連会社役員の男ら数人の行方を追っている。
霜見さんは宮崎県出身。親族によると、同県内に住む妹と中部地方に姉がいる。親族の女性の一人は「優しく物静かな子だった。『これ』と決めたらテコでも動かない所があった」と振り返り、悲しみに暮れた。
熊本県内の大学を卒業後、東京に本社がある証券会社に入り、福岡・北九州支店に配属。短大を卒業して同期入社した美重さんと職場結婚した。
証券会社で同僚だった男性は「人懐っこく明るい性格で、顧客の信頼も厚かった」と評価する一方、「若い頃から野心家。会社より自分のために人脈を広げ、多少危なくても、うまい話があれば逃さないタイプだった」と話した。
約20年前に独立し、「数年前には約300億円の資産を運用し、年収が約5億円に達したと聞いた」(関係者)。ファンドマネジャーとして成功を収め、現在はリヒテンシュタインを本社とする投資ファンドの運営に携わり、スイスと日本を行き来していた。
夫妻には子供がおらず、飼い犬をかわいがり、高級食材の大間のマグロやフォアグラを与えるほど溺愛していたという。美重さんは、自身のブログに愛犬とともに欧州各地を周遊する様子を「夏の思い出は、地中海クルージング」「クリスマス直前のパリへ」などと綴っていた。
人脈の幅広さも有名だった。霜見さんの運営するファンドが新株予約権の一部を引き受けた上場企業は、女性タレントと結婚した有名実業家が一時、役員にいたことで知られる。
「(霜見さんの)周辺人脈の中には、引退した元有名プロ野球選手の資産運用に関わった人もいたようだ。ただ、取引は不調に終わり、元プロ野球選手が『多額の損失を出した』と騒いでもめたと聞いている」(証券業界関係者)
死体遺棄容疑で逃亡を続ける食品関連会社役員の男は、霜見さんと投資を通じて知り合ったとされる。
「2008年のリーマン・ショック以降、株価暴落などの金融危機でファンドマネジャーのほとんどが厳しい環境に置かれた。霜見さんは富裕層を対象に高額の資産を運用していただけに、運用をめぐってトラブルになっていたとも考えられる」(捜査関係者)
「数年前は年収5億」「明るくて美人」
スイスから一時帰国中に殺害されたとみられる霜見誠さんと美重さん夫婦。霜見さんは敏腕投資家として世界を股にかけて活躍し、スイスの自宅ほか、東京都心にも複数のマンションを所有していた。美重さんとともに愛犬2匹をかわいがり、ヨットやダイビングに興じるなど優雅な暮らしぶりだった。
知人らによると、霜見さんは宮崎県出身で、熊本県内の大学を卒業後、東京に本社がある証券会社に就職した。福岡・北九州支店に配属され、地元出身で短大を卒業して同期入社した美重さんと職場結婚した。
その後、霜見さんは国際部門に異動し、海外の投資家らと交流を深めたのを機に、約20年前に独立。数年前には約300億円の資産を運用し、年収が約5億円に上っていたという。
証券会社で同僚だった男性は「人懐っこく明るい性格で、顧客の信頼も厚かった」と評価する一方、「若い頃から野心家。会社より自分のために人脈を広げ、多少危なくても、うまい話があれば逃さないタイプだった」と話した。
現在はリヒテンシュタインに本社がある投資ファンドのマネジャーで、スイスと日本を行き来する生活。最後に生存が確認された銀座のほか、六本木や赤坂、千葉にも高級マンションを所有し、高級外車2台を乗り回していた。
夫婦共通の趣味はヨットで、数年前に入会金170万円、年会費24万円のヨットクラブに入会。2012年8月には東京・江戸川の花火大会をクルーザーから楽しんだ。関係者は「クルージング中にも、よく仕事の電話がかかってきて、英語で会話していた」と語る。
美重さんは「はきはきとした明るい美人」で、愛犬2匹をいつも連れ歩いていた。美重さんのものとみられるブログによると、愛犬家仲間を招待してホテルでパーティーを開き、日本からスイスにトリマーを呼び寄せるなどしていた。
「日本に一時帰国です」「お洋服を見る暇もない」。ブログでは、11月下旬にスイスから帰国後、京都や福島に旅行するなど、余暇を満喫している様子がうかがえる。最後に更新されたのが失踪前日の12月6日午後11時ごろで、犬の写真などが掲載されていた。失踪当日の同月7日も愛犬2匹と一緒にマンションを出た夫婦。2人とみられる遺体は発見されたが、愛犬は見つかっていないという。
年収5億、愛犬に大間マグロ
霜見誠さんは、周囲から「センスの良い投資家」と評される手腕で、資産を築いた。知人らへの取材からは、妻美重さんとともに愛犬を連れ、世界を股に掛けて活躍する姿が浮かぶ。
霜見さんは宮崎県出身。大学卒業後、東京都内に本社がある証券会社に就職し、初任地は北九州支店だった。当時から海外志向があったのか、その後は国際部門にも所属。元同僚は「今につながる人脈を築いたのだろう」と指摘する。
霜見さんは十数年前に証券会社を退社し、スイスに拠点を置いて投資、資産管理の事業で成功した。元同僚によると、6、7年前に年収を尋ねた際、霜見さんは「5億円だね」と答えた。時価総額300億円近い株を取引していたという。
美重さんとは二十数年前、証券会社時代に職場結婚。子どもがいない夫婦は愛犬2匹をかわいがり、ある知人は「家族そのものだった」と溺愛ぶりを語る。近所の愛犬家を招いた犬の誕生会では、高級な青森県大間産のマグロを食べさせることもあった。
チューリヒ、パリ、モナコ…。美重さんとみられる人物のブログには、愛犬を連れ世界を飛び回る様子がつづられていた。更新は失踪の前日、12月6日に途絶えていた。
「パソコン1台に携帯3台」を駆使する多忙な仕事ぶり
複数のメディアの情報によると、霜見誠さんと美重さん夫婦は「3年ぐらい前に、日本は税金が高いから」といって、スイス・チューリッヒに住むようになった。
日本にも頻繁に帰国。最後に生存が確認された東京・銀座の自宅マンションのほか、六本木や赤坂、千葉市にも高級マンションを所有し、フェラーリとベンツの2台の高級外車に乗っていた。
趣味は夫婦でヨット。子供がいないこともあってか、2匹のトイ・プードルを溺愛していたようで、愛犬家を招いた犬の誕生会では高級な青森県大間産のマグロを食べさせた。
美重さんのものとみられるブログによると、わざわざ日本からスイスにトリマーを呼び寄せるなど、セレブ暮らしを楽しんでいた。
夫の誠さんは、リヒテンシュタインに本社がある投資ファンドの敏腕マネジャーとして活躍していた。宮崎県出身。熊本県内の大学を卒業後、東京に本社がある証券会社に入社。営業部門を経て国際部門に異動。海外の投資家らと交流を深めたのをきっかけに、約20年前に独立したという。
証券会社で同僚だった男性の証言では、「人懐っこく明るい性格で、顧客の信頼も厚かった」。半面、「野心家で会社より自分のために人脈を広げ、多少のリスクがあっても、ハイリターンを狙っていくタイプだった」とも話している。
その仕事ぶりは、「優秀なトレーダーで、飲みに行く時もパソコン1台に携帯3台を持っていた」と、超が付く多忙ぶりだった。時価総額で約300億円の資産を運用し、6、7年前の年収が「5億円」にのぼっていたという。優雅な生活ぶりからは「年収5億円」もウソではなさそうだし、たしかにファンドマネジャーの年収は高額で知られてもいる。そうだとしても、そんなにも 高い収入を得られるのだろうか――。
投資家は「敏腕マネジャー」について回る
国際金融アナリストの小田切尚登氏は、「証券会社に勤めるサラリーマンのファンドマネジャーではどうかと思いますが、海外でまさに『腕一本』でやっていたのであれば、可能性はあります」と話している。
ファンドマネジャーの報酬は、大きく2つ。
一つは手数料収入(信託報酬)で、これは資産残高に応じて、毎年2~3%が確実に得られる。たとえば、資産残高が100億円あれば、2億円のもうけ。運用資産が多ければ多いほど、ファンドマネジャーは儲かる。
もう一つは成功報酬。これは契約ごとに異なるが、運用した儲けの一部を得られる。たとえば、20%で契約した場合は年間10億円儲かれば、2億円が成功報酬として得られるわけだ。一方、運用損失した場合には、成功報酬は得られないが、信託報酬は得られる。損失を肩代わりすることもない。
小田切氏は「日本でも証券会社などに勤めるファンドマネジャーは運用成績によってボーナスをもらうことはありますが、あくまでボーナス。欧米では投資ファンドの手法が定着していて、実績を上げたファンドマネジャーが信託報酬から成功報酬まで得られます。運用実績のある、凄腕のファンドマネジャーに投資家がついていることもあります」と説明する。
おそらく、霜見誠さんもこれまでの証券会社時代や、投資ファンドで相当高い運用成績を収めていたであろうことがうかがえる。ただ、いまは「金融緩和で金利が付かない時代なので、ファンドマネジャーにとって運用益を上げることはかなり難しくなっています」とも、小田切氏は指摘する。
失踪から遺体発見へ
遺棄容疑で職業不詳男逮捕。多額の預金奪う目的か
スイス在住の日本人資産家夫婦が2012年12月から行方不明になっている事件で、埼玉県久喜市で男女の遺体が見つかり、警視庁捜査1課は2013年1月29日、失踪した投資会社役員の霜見誠さんと確認した。もう一体は妻の美重さんとみられる。
いずれも首に絞められた痕があり、捜査1課は殺人・死体遺棄事件と断定して築地署に捜査本部を設置。死体遺棄容疑で、職業不詳の桑原隆明を潜伏先の沖縄・宮古島で逮捕した。
夫婦は「栃木県日光市で有名男性歌手が参加するパーティーに知人から誘われた」と言い残して失踪。捜査本部は同容疑で、嘘のパーティー話で2人を誘い出した主犯格の40代の会社役員ら男数人の逮捕状を取り、行方を追っている。
失踪前に霜見さんのスイスにある金融機関の口座から、日本の口座に多額の預金が移されており、捜査本部は会社役員の男がこの預金を狙って犯行を計画した可能性もあるとみている。桑原は「全く身に覚えがない」と容疑を否認している。
霜見さん夫婦は2012年12月7日午後5時ごろ、東京・銀座の自宅マンションを出た後、行方不明となった。
捜査1課はマンション近くで夫婦を乗せた車を割り出し、久喜市の空き地で男女の遺体が埋められているのを発見。同じ敷地内にあった車の中から霜見さんとみられる血痕が見つかった。車と空き地は会社役員の知人男性名義だった。
遺体は死後1カ月以上が経過し、失踪直後に殺害、遺棄されたとみられる。空き地は2012年11月10日ごろ、この知人男性が購入。その後、男数人が出入りし、高さ約2メートルの銀色のフェンスで取り囲み、重機で穴を掘って立ち去った。
失踪後、マスク姿の男が霜見さんのクレジットカードを使い、東京駅で新幹線の回数券約300万円分を購入しようとしたほか、夫婦の財布が都内の質店に持ち込まれた。
また、逮捕状が出た別の男の運転するレンタカーが、銀座のマンション近くから栃木県日光市に立ち寄り、北上した後、都内に戻っており、捜査本部で関連を調べている。
すし店で「偶然隣りに」車好きで意気投合。被害者に接近
「趣味の車を通じて意気投合した」。
滞在先のスイスから一時帰国中に行方不明となり、遺体で見つかった金融会社役員・霜見誠さんは生前、死体遺棄の疑いで2013年1月30日に逮捕された会社役員・渡辺剛について、仕事仲間にそう話していた。
2012年春ごろ、立ち寄ったすし店で、渡辺とたまたま出会ったという霜見さん。「偶然隣に座り、お互い車が好きという共通点があって盛り上がった。それから飲み友達になった」といい、一緒にゴルフに行くこともあったという。霜見さんは高級外車2台を所有していた。
渡辺が経営する会社はインターネットを活用した海産物の販売事業を展開。霜見さんは仕事仲間に対し、渡辺の仕事について「オマーンに会社をつくり、売却したらしい」と関心を寄せている様子だったという。
資産家遺棄事件、失踪1か月前に計画か
死体遺棄容疑で警視庁に逮捕された水産加工物販売会社社長、渡辺剛が夫婦失踪の約1か月前から、同容疑で逮捕された住所不定、職業不詳・桑原隆明と頻繁に携帯電話で通話していた。
ほかにも両容疑者と連絡を取り合っていた人物がおり、同庁は事件に関与した可能性があるとみて調べている。
両容疑者が頻繁に連絡を取り始めたのは2012年11月上旬。同月10日、渡辺は埼玉県の男性に依頼して、遺体が埋められた同県久喜市の更地を購入しており、この頃から計画が具体的に動き出したとみられる。
同月下旬には遺体で見つかった金融業の霜見誠さんと、妻の美重さんが滞在先のスイスから帰国。同月23日頃には更地に複数の男が集まり、重機を入れて穴を掘ったり、外から内部が見えないように鋼材で囲いを作ったりしていた。
資産家夫婦帰国前にさら地購入指示か
資産運用会社の役員の男性と妻とみられる遺体が埼玉県のさら地に埋められているのが見つかった事件で、逮捕された男が夫婦が一時帰国する2か月ほど前に、現場のさら地の購入を知り合いに指示していた。
資産運用会社の役員、霜見誠さんの遺体と妻の美重さんの遺体が埼玉県久喜市のさら地に埋められているのが見つかった事件で、警視庁は、東京の食品関連会社の役員、渡邉剛を死体遺棄で逮捕した。
渡邉は、2013年1月29日、逃亡先の沖縄県宮古島市でトイレの洗剤とみられる液体を飲んで自殺を図り、警察官が見つけたとき、「東京で人を殺してきた。遺体が発見されたのを知って死のうと思った」と話した。
渡邉は1年ほど前から投資の相談などで霜見さんと連絡を取り合っていた。霜見さん夫婦は、2012年11月に滞在先のスイスから一時帰国したが、この2か月ほど前に渡邉が現場のさら地の購入を知り合いに指示していた。
夫婦が帰国する直前には購入の契約が結ばれ、まもなくして数人が穴を掘り始めた。警視庁は計画的に準備を進めていたとみて調べるとともに投資などを巡ってトラブルがなかったかどうか捜査している。
資産家事件、逮捕の社長「投資で損させられた」
東京・銀座の資産家男性と、妻とみられる遺体が埼玉県内で見つかった事件で、警視庁は2013年1月30日、住所不詳、水産加工物販売会社社長、渡辺剛(43)を死体遺棄容疑で逮捕した。
29日に潜伏先の沖縄・宮古島で自殺を図って入院していた。渡辺は殺害された男性の知人で、同庁は事件を主導したとみて、殺人容疑でも事情を聞く。
渡辺は12月7日頃、経営していた会社の社員だった桑原隆明(41)(死体遺棄容疑で逮捕)らと共謀し、金融業の霜見 誠さんと妻、美重さんとみられる女性の遺体を、埼玉県久喜市の更地に埋めて遺棄した。
調べに対し、「間違いありません」と容疑を認めている。自殺を図って発見された際、警察官に「人を殺した。遺体が発見され死のうと思った」と話した。
渡辺は約1年前に霜見さんと知り合い、事件前には周囲に「投資で損をさせられた」と漏らしていた。同庁は、投資を巡って霜見さんに恨みを抱いていた可能性があるとみて調べている。
投資で数億の損、資金繰り悪化、会社傾いた
東京・銀座のファンドマネジャー霜見誠さん夫婦の遺体が埼玉県内で見つかった事件で、死体遺棄容疑で逮捕された水産加工物販売会社社長、渡辺剛が、2008年、霜見さんに持ちかけられた投資事業で数億円の損失を出していた。
中東を舞台にビジネスを展開していた渡辺はその後、生活を一変させており、警視庁は5年前の恨みが事件の動機になった可能性があるとみて調べている。
「霜見さんを恨んでいた。投資を勧められ、数億円の損をさせられた」
渡辺は取調官に対し、霜見さんと妻の美重を絞殺したと供述した上で、淡々と説明した。
渡辺は20年ほど前から、神奈川・逗子のリゾートレストランで調理を担当したり、山口県下関市のふぐ仲卸業者の下でふぐの取り扱いを学んだりするなど、飲食関係の職を転々としていた。
1990年代後半には、東京都江東区の水産加工物販売会社で働くようになり、2001年に社長に就任。当初は鯨肉をスーパーなどに卸す業務が中心だったが、2007年頃からは海外に進出、オマーンの複数の大手水産会社から魚介類を輸入するようになった。社員に「いつかは、中東での日本向け水産加工物を独占的に扱い、自社の漁船も持ちたい」と夢を語っていた。
同社元社員の男性(50)は「押しが強く、中東の企業を相手に一歩も引かないやり手の実業家という印象だった」と振り返る。高級外車を乗り回し、「年収は3億円以上」と豪語する姿も記憶している。
ところが、同社の資金繰りは2008年後半から2009年春頃にかけて急速に悪化。2009年夏以降は会社は休眠状態に陥った。業績悪化のきっかけとみられるのが、霜見さんが2008年頃に手がけた食品企業の買収に絡む投資への参加だった。霜見さんの元上司などによると、この企業買収は失敗に終わり、その頃から渡辺は周囲に「大きな損をさせられ、会社が傾いた」などと霜見さんへの不満を漏らすようになった。
殺害されたセレブ夫妻。その背景の「闇」
誠さんは、ある投資家から民事訴訟を起こされていた。
訴状などによると、この投資家は2008年ごろ、ドバイで不動産・株式投資を行っていたM社に湾岸協力会議(GCC)諸国の上場企業などへの株式投資のためとして5千万円を預託した。M社社長は誠さんの指示で、このうち3千万円を、別の会社名義でスイスのプライベートバンクに預金。結局、この3千万円は無関係の女性の手に渡り、投資家に返金されなかったという。
投資家の代理人は「一連の資金の流れにはYという人物がかかわっていたとみられ、金を手にした女性はYの愛人でした。Yはすでに病気で亡くなっていますが、誠さんはYの指示で動いていたようです」と話す。
また、誠さんがマネジャーを務めるジャパン・オポチュニティ・ファンドは2007年にジャスダック上場の「クロニクル」(旧社名・エフアール)の新株予約権付社債を13億5千万円引き受けている。クロニクルは宝飾事業などを手がけており、1998年の親和銀行不正融資事件、タレントの山口もえさんの元夫、尾関茂雄氏が役員を務めていたことでも知られる。ジャパン社は2011 年にも再び、クロニクルの新株予約権を引き受けた。
このクロニクル社は2012年12月に開示検査を受け、1月25日、「一部の会計処理の訂正を要する可能性のある事象が判明」し、「金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)の疑義に関する事実関係の調査分析をする」とするIR情報を発表。第三者委員会の設置を決めた。
その後クロニクルは業績悪化など会社機能を無くし2013年7月に上場廃止となっている。
誠さんは、闇の世界が見え隠れする仕事をしていた。現在、主犯として逮捕されている渡辺は闇世界の差し金で犯行に及んだのか。
「事件後、元従業員の共犯者に、誠さんのクレジットカードで新幹線の回数券300万円分を買わせようとし、不審がられ通報されています。防犯カメラやNシステムにも形跡を残しており、逃げた場所も宮古島と中途半端。素人の手口です」
殺害された霜見氏を取り巻く「ドバイ闇人脈」
1月30日、潜伏先の沖縄県宮古島市で渡辺剛(43)が、死体遺棄容疑で逮捕された。渡辺は2012年12月7日、スイス在住で11月末に一時帰国していたファンドマネジャー・霜見誠氏(51)と妻の美重さん(48)を、架空の「福山雅治のパーティー」をうたって誘い出し、首を絞めて殺害。前もって知人に購入させていた埼玉県久喜市内の空き地に遺体を埋めた。
しかし、殺害された霜見氏は中東のドバイを舞台にした投資トラブルでも、東京地裁に民事訴訟を起こされている。裁判資料によると、この話に登場するのは闇社会にも太い人脈を持つといわれる実業家のY氏(2009年1月に死去)と、その「愛人」S。
Y氏は自らが実質的なオーナーとなり、ドバイで不動産投資や株式投資を行うB社を経営していた。ところがY氏の死去と前後して、和歌山県に住む資産家男性からの5千万円の投資をめぐってトラブルとなり、S氏と霜見氏が被告となって損害賠償請求を起こされているのである。訴状で霜見氏は、「Yオーナーのマネーロンダリングに加担していた者である」と指摘されている。原告側関係者の男性が説明する。
「霜見氏はY氏の指示で、5千万円の一部を出資者の資産家男性に無断で別の会社の口座に移すなどの操作を行っていた。顧客の資産家男性とトラブルになった後も、『自分は顧客であるY氏の指示に従っただけ』と、悪びれる様子もなかった。その一方で、Y氏にも株をすすめて、損をさせていたこともあったようです」。この裁判で、霜見氏は1月下旬に出廷する予定だったという。
Y氏をめぐる人間関係では、こんな証言も出てきた。「08年ごろ、Y氏がドバイに進出してくる日本人として『日鯨の渡辺』という名前を何度か口にしていた」(Y氏に近かった人物)。
資産家殺害事件。被害者は「曰くつき」銘柄で稼いでた?
「そもそも渡辺剛(43)は、2011年7月ごろから宮古島で地元女性と一緒に暮らし、東京と行き来しながら釣り三昧の生活をしていた。それが、なぜ2012年9月に急に殺人の準備を始めたのか。捜査員も困惑している」(警視庁関係者)
疑念が広がる原因の一つには、被害者である霜見誠(51)氏が持つ“人脈”の特殊さがある。霜見氏の知人が証言する。「霜見氏にとって大きな分岐点となったのは1990年代末、仕手筋によく狙われることで有名な宝石販売会社のエフアール(店頭公開企業・現クロニクル)の株で大きく稼いだことでした。『あれが人生を大きく変えた』と、本人も話していた。大物仕手筋の故・西田晴夫が絡んだともいわれ、以来、業界の“大物”たちと交流が生まれ、曰くつきの銘柄で稼いできたのです」。
なかでも指摘されるのが、宝飾品や高級時計などの販売会社で暴力団のフロント企業・エフアール(現クロニクル)社との関係だ。エフアール社は1998年に発覚した、親和銀行による巨額不正融資事件の舞台として知られる。
暴力団関係者にも多額の資金が流れたとされるこの事件で、エフアール社の社長・鈴木道彦氏は特別背任罪で逮捕された。そんなエフアール社に、霜見氏が管理するリヒテンシュタインのファンド「ジャパン・オポチュニティー・ファンド」が、2007年と2011年に出資している。
今回、霜見氏の事件が発覚する直前の2013年1月中旬、それまで10円台前半で横ばいだったクロニクル社の株価が突如、40円近くまで急騰した。これには、当のA社関係者も首をかしげる。「経営陣の誰もなぜ上がったのかわからず、社内は騒然としていました。当時、社内で意見が一致したのは、霜見氏が鈴木氏のカネを持って来日し、株価を釣り上げたのではないかということでした。もともと霜見氏と鈴木道彦氏は近い関係だという見方がありましたから」。