王シュレット事件

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王シュレット事件(おうシュレットじけん)は、2003年フジテレビ系列水10!』の1コーナーとして放送されていたバラエティー番組の『ワンナイR&R』(渡辺琢演出)で、当時福岡ダイエーホークス(現:福岡ソフトバンクホークス)の監督だった王貞治を侮辱する内容のコントがダイエー球団の本拠地である福岡県テレビ西日本を含めて放送され、フジテレビやテレビ西日本に批判や苦情が寄せられた一部の騒動である。

経緯[編集]

2003年8月13日、ワンナイR&Rで放送された通販番組を題材にしたコーナー「ジャパネットはかた」で、山口智充宮迫博之が王の顔の模型を便器内に仕掛けたウォシュレット「王シュレット」を売り込む内容のコントを放送した[1]

放送後の反応[編集]

このコントで、王を侮辱したとしてダイエー球団側がフジテレビに抗議した[2]。その後、フジテレビ側が王監督本人と球団関係者に謝罪するも[3]、8月19日にはダイエー球団の高塚猛オーナー代行が「同年の日本シリーズ中継に(テレビ西日本を含めて)フジテレビ系列のフルネット局を推薦しない」方針を表明し[2]、最終戦の放送権はテレビ東京が獲得し [4]、第7戦までもつれたため実際に放送された。

一方、星野仙一もスポーツ紙からの取材[5]に際し、フジテレビおよび山口と宮迫と、両者の所属する吉本興業に対する不快感を激しい口調で表明し、これを受けて阪神球団も関西テレビ放送を含めフジテレビ系列局を推薦しなかった。

番組の制作局であるフジテレビも、テレビ西日本・関西テレビ放送を含む番組の制作に一切関与していないフジテレビ系列FNNFNS)のフルネット局も巻き込む形で責任を取ることとなり、2003年の日本シリーズについて、日本テレビ系列とのクロスネット局であるテレビ大分NNNNNSともに加盟) [6]テレビ宮崎(NNNのみ加盟、さらにテレビ朝日系列〈ANN〉にも実質的にニュース系列部門のみ加盟) [7]以外のFNS系列局では試合中継の放送が全く行われない事態となった(第7戦のダイジェスト中継も前述のクロスネット2局を含むフジテレビ系列局では実施されず、大分県宮崎県ではTBS系列局である大分放送宮崎放送でそれぞれ放送された)。

クロスネット局での『水10!』の通常の編成は、テレビ大分では遅れネットでテレビ宮崎は同時ネットであった。この年の日本シリーズについてはテレビ大分では第2戦のみ、テレビ宮崎では第2戦と第5戦をいずれも日本テレビ系列ネットで放送した。

そのウォシュレットのコントでは、ビデを捩った「シゲ」という器具も紹介され、スイッチを押すと山口が長嶋茂雄の口調で、器具の作動アナウンス音を再現する場面があり、長嶋を連想させるもの[8]ではあったが、これに関して長嶋の親族や読売グループからの抗議は特に無かった。

事件への対応とその影響[編集]

事件の翌週(2003年8月20日)の放送では、冒頭で須田哲夫が謝罪した[2]が謝罪の放送時間が15秒ほどしかなかったため、視聴者からは「この程度では謝罪にならない」という多くの苦情や批判がフジテレビに寄せられた[9]

この事件を受け、8月20日から9月末まで『水10!』自体は後半枠の『ココリコミラクルタイプ』も含め、前後の提供クレジットはすべて自粛した。この事件の影響から、番組名も『水10!・ワンナイ』から『水10!』となり、新聞の番組表にも『ワンナイ』のみ番組タイトルの表記は無くなった。この他にも、「企業イメージを損ねた」としてウォシュレットの製造元かつ商標権者でもある東陶機器(現・TOTO [10]、本社所在地・福岡県北九州市小倉北区)や、コーナーのネタ元になったジャパネットたかた [11](本社所在地・長崎県佐世保市)が『FNNスーパーニュース』などのスポンサーを降板し(ジャパネットは後に復帰)、CMは公共広告機構(現・ACジャパン)のものに差し替えられる事態になった。

この事件について、王は、「野球界と芸能界を一緒にするからこういうことになる」との見解を示し、加えて「僕自身は実際に(同番組の映像を)見ていませんが、かなりえげつないものだったと聞いています。対応ですか?それは球団に任せているから」と冷静にコメントした[12] [13]

その一方で、この事件に激怒していた星野とも親密である明石家さんまは、朝日新聞のインタビュー記事にてこの件に触れ、同コントの出演者に関してはフォローするコメントを述べている。

その後、ホークスの日本シリーズのFNS系列での中継放送は次に日本シリーズに進出する後身の福岡ソフトバンクホークスにて、2011年 [14]まで地元局のテレビ西日本を含め行われなかった [15] [16]

須田が謝罪したこの日の放送でも、番組は妊婦に扮した小池栄子粉ミルクをかけるというコントを放送、視聴者からは「育児に不可欠な粉ミルクを軽率に扱うとは何事か!」などの苦情が寄せられた。さらには製造元である和光堂より、「企業イメージを損ねた」とフジテレビに抗議する事態に発展した。

宮迫は2021年、自身のyoutubeチャンネルで山口と対談した際、リハーサルの時からクレームが来ないか心配していたが、スタッフや出演者も麻痺していたと語っている。また、王監督がTOTOの名誉顧問であることも知らなかったという[17]

背景[編集]

このような番組が作られた背景には鹿内春雄がかつてフジテレビの機構改革の一環として掲げた「楽しくなければテレビじゃない」というスローガンの下に生み出された「軽チャー路線」の弊害がある。結果としてこの路線は功を奏しフジテレビは急成長を遂げていったのだが、これがテレビ番組全体の低俗化やひいてはいじめなどの社会問題を招く結果となり、日本全体のモラルを低下させた一因ともなってしまった。にもかかわらず、「鹿内チルドレン」と呼ばれ後に社長になった日枝久や村上光一はこの方針を転換せず、バラエティー中心の編成を推し進めた結果更にバラエティー番組の低俗化を招き、この路線の歪みがこのような番組、ひいてはコーナーを生み出してしまったとも言える。しかし、未だにフジテレビは「軽チャー路線」の方針を変えておらず、今後も同じような大問題を引き起こす可能性は十分にある。元フジテレビアナウンサーの露木茂もインタビューでフジテレビのこの路線を「もう時代遅れ」と批判しており、「もっと大人が楽しめる番組を作らなければいけない」と警鐘を鳴らしている。

また2001年に発生したアメリカ同時多発テロ事件及びその後の混乱で、フジテレビが精神的に孤立を深めたとの説もある。これが2000年代中盤~2010年代のフジテレビのバラエティ番組の低俗化そして不祥事の頻発につながったのではないかとの疑惑が取り沙汰されている。

脚注[編集]

  1. (2003-08-22) チェック機能の甘さ浮き彫り フジの王監督侮辱問題 ja 47NEWS 共同通信社 arch. 2014年8月19日 2013-09-01
  2. 2.0 2.1 2.2 (2003-08-20) 「深くおわび」と番組で謝罪 フジテレビ、王監督侮辱コント ja 47NEWS 共同通信社 arch. 2014年8月19日 2013-09-01
  3. (2003-08-20) 「ワンナイR&R」8月13日放送について ja フジテレビジョン 2003-08-20 arch. 2003-08-22 2003-08-22
  4. テレビ東京は系列局のない地域が大半のため、これ以降テレビ東京系列が地上波中継する際には子会社のBSジャパン→BSテレ東ではなくNHKの衛星放送2波(NHK BS1NHKハイビジョン)との並列での獲得となっているが、2021年の中継はBSテレ東との並列での獲得となった。当時は衛星放送の普及率が完全デジタル化後より低く、インターネットなどでの動画配信環境も整っていなかったため、独立局のうち普段テレビ東京の番組を多数放送している局はもちろん、テレビ大阪開局以来関係が疎遠になっていたサンテレビKBS京都にまで中継がスポンサードで同時放送された。
  5. スポーツニッポン2005年8月18日、第1面、スポーツニッポン新聞社
  6. テレビ大分は、日本テレビ系列・フジテレビ系列ともニュース系列組織には完全加盟しているが、番組供給組織についてはネットワーク業務協定に参加していない準加盟に近い扱いである。
  7. 番組供給部門についてはテレビ朝日ネットワーク業務協定には参加している一方、スポーツニュース制作協定には参加していない。
  8. コント中、長嶋の名前そのものは登場していない。
  9. スポーツニッポン』2003年8月22日付
  10. スポーツ支援顧問に王監督を起用していた。
  11. 同年3月までホークスのスポンサー。
  12. 西日本新聞』2003年8月19日付。
  13. 巨人での現役および監督時代も、野球を扱ったギャグ漫画などの創作物でかなり下品にいじられる表現が行われた例があったが、この時は特に抗議するなど本人および読売グループ側から言及したことがなかった。
  14. 2010年にもホークスはリーグ優勝したが、同年はクライマックスシリーズにて千葉ロッテマリーンズに敗れ、日本シリーズへの出場権を逃したため。
  15. 対戦相手は中日ドラゴンズ
  16. フジテレビ系列では第1戦と3戦を放送。
  17. (2021-01-06) 国会議事堂で大暴走?ヤバすぎる芸人、ぐっさんの逸話【くず】 2021-01-06 [ arch. ] 2024-11-06

関連項目[編集]

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