定年
定年(ていねん)とは、仕事などで、ある一定の年齢に達したら引退する年齢のことである。停年の表記も見られるが(大相撲の親方(年寄)の引退年齢である65歳の際に、この表記を使う)、“年が停まる”わけではなく“規定の年になる”事から、現在では「定年」の表記が一般的である。
目次
概要[編集]
労働者が一定の年齢(定年年齢)に達すると自動的に雇用関係が終了する制度を定年制という。定年により退職する(雇用関係を終了する)ことを「定年退職」という。会社が定年制を導入するには、定年に関する事項を就業規則に明記し、かつその定年制が慣行的に行われている必要がある。日本の企業の正社員と公務員は、その大部分が定年制を導入している。一方で適用している会社は少ないが、定年を定めないことも可能である(例・日本マクドナルド)。
なお、定年退職者を継続雇用することも多くの企業で行われているが、これについても就業規則に定めることが必要である。継続雇用とは、現に雇用している高年齢者が希望するときは、当該高年齢者を定年後も引き続いて雇用する制度のことである。
継続雇用の基準を定めるということは、逆に言えば継続希望者全員を雇わなくてよいということでもある。このことから「2007年問題」は言われているような大きな問題にはならないという見方もある。
定年日[編集]
定年年齢のいつの時点で定年退職とするのかは、会社により異なる。主な方法は下記の通り。
誕生日とする場合[編集]
定年年齢に達した誕生日に定年退職とする方法。誕生日の月末付けなどの場合もある。入社(採用)を4月(新卒時)に一括して行っている(中途採用を一切実施していないと想定)企業でこの方法を取ると、同期・同年齢の入社でも人によって就業期間に最大で1年近く差が出てしまう(3月が誕生日の人は、4月が誕生日の人に比べ1年近く長く就業できる)。また4月時点で欠員をゼロにするように採用した場合、次の4月までは採用しないので、定年を迎えた人が少しずつ辞めていき、3月の時点では一番欠員が多くなる。
この方式では、就業期間が最大1年近く差があるので、同期入社・同年齢で、役職、待遇が全く同じであったとしても生涯賃金、退職金の額が異なってくることになる(4月誕生者に比べ、3月誕生者は1年近く長く勤めるので、その分金額も増えることになる)。
大相撲の親方の停年はこの方式を採るため、場所中に部屋持ち親方の誕生日が来ると即座に後継者を決定し部屋の継承届を出す必要がある(師匠が居ない力士は土俵に上がれないので本場所に穴が空くため)。部屋事情によっては、現役力士が師匠の誕生日をもって引退して継承することもある。
年度ごとにそろえる場合[編集]
その年度に定年退職する人の退職日を揃える方式。例えば、「退職日は60歳を過ぎて最初の4月15日」というように決めてしまう。こうすることにより、次の一括採用日までに欠員がだんだん増えていく状態を回避できる。この方式は、公務員や採用日が1年に1回というように固定していて、中途採用を実施しておらず、勤務人員が固定されている企業(例えば、一部の鉄道会社など)でよく採用されている。例えば、鉄道会社の場合、職場の定員が決まっており、欠員がでた場合、非番者が時間外労働(休日出勤)で対応する。
前項のような、採用が4月のみで定年日が通年(誕生日)であった場合、徐々に欠員が増えていき、3月の時点ではかなりの欠員となる。そのため時間外労働が増え、労働基準監督署に指摘を受けることもよくある。そのため、中途採用(キャリア採用、第二新卒=新卒後2~3年位までの人を指す=など)で対応する会社も多いが、定年日を揃えることで欠員をできるだけ回避している社もある。
65歳定年への移行[編集]
一般企業の正社員においては、60歳を定年にしているところが圧倒的に多かったが、年金(厚生年金)の受給年齢が65歳に引き上げられることもあって、会社(使用者)は対応を迫られている。
改正高年齢者雇用安定法(下記については、2006年4月1日施行)によると、事業主は65歳までの安定した雇用を確保するために、下記のいずれかの措置を講じなくてはならない。
- 定年の
- 65歳への引上げ
- 継続雇用制度の導入(労使協定により、継続雇用制度の対象となる基準を定めることができる)
- 廃止
※経過措置がある。
なお、それ以前は、65歳までの継続した雇用を促す努力義務規定であった。(2000年改正による)
基本的には(2)の継続雇用制度の導入で対応する場合が多く、(1)の定年年齢の65歳への引上げや、(3)の定年制度自体の廃止まで踏み込む企業は、一部の中小企業や零細企業を除き、非常に少ない。
定年者の意向[編集]
電通が2006年に行った調査では、男性の77%が定年後も組織で働くことを望み(75%は定年前に働いていた企業を希望)、働くことを希望した者のうち、フルタイム希望者が47%、パート・アルバイト希望者が40%となっている。
- ※調査対象は1947年、1948年生まれ。出典は『2007年団塊世代退職市場攻略に向けた調査レポート「退職後のリアル・ライフ Ⅱ」』
役職定年[編集]
役職定年とは、通常の定年とは別に一定の年齢に達すると役職がつかなくなり、平社員等になる制度のこと。制度として明記しているのは民間会社の一部にとどまるが、配置転換などを含めた実質的な役職定年は公務員も含めて広く採用されていると考えられる。たとえば地方公務員であれば公社社員等に、中央省庁勤務なら財務省課長などの重要省庁幹部から外郭団体へ天下るなどがある。一般的に50代前半~半ばに設定されており、50代後半の平均年収が50代前半の平均年収より低くなっている原因のひとつであると考えられる。また、公社が一般企業に比べて幹部の割合が多いのも、表面上の階級を下げずに部下のいない仕事に配置転換するために理事・参事格で入社させることが多いことも影響していると考えられる。なお、理事・参事格といっても、実質的な権限が上位機関(市区町村であれば都道府県、都道府県であれば中央省庁、中央省庁であれば高官など)にあり部下がほとんどいないために実質的な平社員となる。
なお、役職定年を迎えたとしても、これまで長年の実績・経験があるため、定年後の継続雇用と同様に、通常の平社員等とは職務内容や待遇が違うことも多い。2004年の労務行政研究所の調査では約4割の企業が導入している事が判明した。
なお、社長や取締役について定年制を設ける企業も存在する。この場合、一般社員の定年より高くなるのが普通である。
諸外国における事情[編集]
諸外国、特に欧米諸国では定年を廃止、または法律で禁止する動きとなっている。これは、雇用における年齢差別の廃止という目的のためである。ちなみに、入口となる求人募集についても、日本と異なり、年齢制限が(法規上は)禁止されている。
アメリカ合衆国 40歳もしくはこれより年長の労働者に対する雇用の可否、雇用の形態、賃金などいかなる事項においても年齢を理由とした就職差別をすることは連邦法により禁止されている。
さまざまな業種における定年[編集]
- プロスポーツ選手
- プロスポーツ(プロ野球、プロサッカーなど)選手のように体力の関係上、俗に「40歳定年」などといわれている職種もある。実際に定年が定められているわけではないものの、(現役選手としては)新世代の選手に体力的に敵わず、体力的に現役続行が可能でもチームとして世代交代を推進するなどのために辞めざるを得ないということになる。近年では、プロ野球の工藤公康、山本昌など40歳を過ぎても活躍し続ける選手も多い。アメリカではサチェル・ペイジのように推定年齢59歳で登板した例もある。
- プログラマー
- 1980年代までは、35歳を過ぎたプログラマーは過酷な労働条件や次々登場する新しい技術に対応できなくなるという認識があり、「35歳定年説」がよく取り沙汰されていた。現在では中高年のプログラマーも増え、コンピュータエンジニアとしての資質は年齢とはかかわりがないという認識が広がり、死語となっている。
- 政界における定年
- 自由民主党は2000年以降、野中広務自民党幹事長によって衆議院比例区候補について73歳定年制を設けている。当時終身比例名簿1位であった中曽根康弘と宮澤喜一は80歳を超えているものの例外とされたが、2003年に小泉純一郎総裁が定年制を厳格に適応させる意向によって引退となった。2005年の衆院選では74歳の仲村正治を沖縄選挙区における公明党との選挙区調整のために特例として、比例名簿に登載させたことがある。公明党にも独自の定年制がある。
関連項目[編集]
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