湯河原町
湯河原町(ゆがわらまち)は、神奈川県南西部にある町。湯河原温泉で有名な温泉町としてよく知られている。東海道本線が通る。古くから文豪、画家など多くの作家が逗留し創作の筆を執った。
目次
地理[編集]
箱根火山の外輪山南麓と相模灘に挟まれた低地に町の中心域がある。厳密に述べれば、第四紀の火山である湯河原火山が、著しく浸食されて形成された地形の多くを町域としている[1]。真鶴町と接する東北域には、緩やかな山麓部があり住宅地とミカン畑が混在して広がる。南部は千歳川の北沿いに温泉街や住宅地が集まる。海岸線には長さ700mほどの砂浜海岸があり、夏には海水浴客でにぎわう。
歴史[編集]
- 鎌倉時代:相模国土肥郷と呼ばれていた。
- 江戸時代:宮上村・宮下村・門川村・城堀村・鍛冶屋村・(旧)吉浜村・を土肥6ケ村とした。
- 1884年(明治17年):土肥6ケ村が連合して(旧)吉浜村に戸長役場を置き、吉浜村外5ケ村とした。
- 1889年4月(明治22年):町村制の施行により、吉浜村外5ヶ村の内、宮上村・宮下村・門川村・城堀村が合併し土肥村とした。
- 同上:吉浜外5ヶ村の内、(旧)吉浜村・鍛冶屋村を合併し吉浜村とした。
- 1926年7月1日(大正15年):土肥村が町制をしき(旧)湯河原町になる。
- 1940年4月1日(昭和15年):吉浜村が町制をしき吉浜町になる。
- 1946年7月27日(昭和21年):福浦村が所属した真鶴町外2ヶ村組合が解散。
- 1955年4月1日(昭和30年):(旧)湯河原町・吉浜町・福浦村が合併し湯河原町が発足、現在に至る。
字・地名[編集]
土肥次郎実平が統治していた時代より受け継がれているものが多く、小字名などで昔どのような地域だったのかが容易に想像できる。
地区[編集]
- 城堀(しろほり) - 土肥城があった城山を中心に広がる地区。
- 鍛冶屋(かじや) - 新崎川の川砂に多く混ざる砂鉄を利用して鉄器や刀鍛冶などが盛んだったといわれる地区。
- 門川(もんがわ) - 千歳川の下流部に広がり静岡県熱海市(伊豆国)との境にある地区(年配者は"もがわ"と発音する場合が多い)。
- 吉浜(よしはま) - 砂浜(吉浜)から箱根町・小田原市の境にまで伸びる地区。
- 福浦(ふくうら) - 真鶴町と海側の境にあり、湯河原町で唯一港のある地区。
- 川堀(かわほり) - 真鶴町との山側の境にあり、"うさぎ沢"などの小字名がある地区。
- 宮下(みやした) - 五所神社を境に下(海側)に位置する地区。
- 宮上(みやかみ) - 五所神社を境に上(山側)に位置する地区(温泉が沸いているのはほぼこの地区に属する)。
- 温泉場(おんせんば) - 宮上地区中部の温泉旅館が集まる地域
- 奥湯河原(おくゆがわら) - 湯河原の奥座敷と呼ばれ最も箱根寄りの地域
- 土肥(どい) - 区画整理によって生まれた地区で元の城堀・宮下・門川の一部からなる。
- 中央(ちゅうおう) - 区画整理によって生まれた地区で元の吉浜・城堀・門川・鍛冶屋の一部からなる。
小字[編集]
- 蔵町(くらまち) - 土肥地区元の門川だったあたり。現在は蔵町公園(通称タコ公園)の名称としてのみ残る。
- 弁当場(べんとうば) - 鍛冶屋地区の幕山中腹あたり。
- 陣馬の沢(じんばのさわ) - 城山から鍛冶屋側へ下った所。石橋山の戦いで敗戦し逃れてきた頼朝らの陣馬を野に放ったことに因む。
- 黒石(くろいし) - 南郷山のすそ野、黒い石が多い。現在も野面(のづら)積みの石垣が残る。
- 白石(しろいし) - 城山のすそ野、白い石が多い。現在も野面積みの石垣が残る。
- うさぎ沢(うさぎさわ) - 星ヶ山のすそ野。山深く現在になって開発がされてきている。
- 真砂(まさご) - 新崎川の下流部で流れが弱くなり砂が溜まりやすい所。
- 湯河原(ゆがわら) - 千歳川の河原に温泉が沸いていた地域。
- その他多数
人口[編集]
600px | |
湯河原町と全国の年齢別人口分布(2005年) | 湯河原町の年齢・男女別人口分布(2005年) |
■紫色 ― 湯河原町
■緑色 ― 日本全国 |
■青色 ― 男性
■赤色 ― 女性 }} |
湯河原町(に相当する地域)の人口の推移 テンプレート:人口統計/14 | |
総務省統計局 国勢調査より |
- 神奈川県内の市町村で最も60歳以上の比率が高く、老人ホームの数も多い。
行政[編集]
町の行政機関[編集]
県の行政機関[編集]
- 神奈川県警察小田原警察署
- 西湘地域県政総合センター(湯河原町・小田原市・箱根町・真鶴町)
- 小田原児童相談所(小田原市・南足柄市・足柄上郡(中井町、大井町、松田町、山北町、開成町)・足柄下郡(湯河原町、箱根町、真鶴町))
- 小田原県税事務所(湯河原町・小田原市・箱根町・真鶴町)
立法[編集]
町政[編集]
町議会
- 議長 室伏 重孝
湯河原町町議会の議席定数は、14議席である。なお湯河原町議会議員の現任期満了日は平成28年3月31日である。
県政[編集]
湯河原町(足柄下郡)から選出される神奈川県議会議員の定数は1議席である。現任期の満了日は、平成28年4月29日である。
- 向笠茂幸(神奈川県議会議長)
国政[編集]
- 衆議院
湯河原町は、小田原市等から構成される神奈川17区が選挙区となる。下記は、2014年12月14日に実施された第47回衆議院議員総選挙の選挙結果である。
- 参議院
湯河原町は、参議院 南関東ブロック・神奈川選挙区に属する。
なお、当選挙区の参議院選挙比例代表区選出議員についての詳細は、神奈川県選挙区を参照のこと。
財政[編集]
平成18年度[編集]
- 財政力指数 0.82 神奈川県市町村平均 1.05
- 経常収支比率 95.7% 財政が硬直化している
- 標準財政規模 50億5400万円
- 人口一人当たり人件費物件費等決算額 12万7426円 神奈川県市町村平均 10万3215円
- 人口一人当たり地方債現在高 29万3102円 普通会計分のみ 神奈川県市町村平均 47万6542円
- 実質公債費比率 18.1% 神奈川県市町村平均 19.5% 18%を超えているので起債には協議が必要
- 人口1000人当たり職員数 10.97人 神奈川県市町村平均 6.59人
- 内訳 一般職員226人(うち技能労務職 42人) 教育公務員3人 消防職員 76人 合計 305人
- 町職員一人当たり平均給料月額 32万9300円 すべての職員手当等を含まない数字
- 町職員一人当たり人件費概算値(年額) 841万3620円 (人件費/職員数)
- ラスパイレス指数 96.5 全国町村平均 93.9
- 普通会計歳出に占める人件費比率 32.0%
地方債等の残高
- 1普通会計分の地方債 81億5000万円
- 2特別会計分の地方債 95億5700万円
- 3関係する一部事務組合分の債務 9億6700万円 (債務x負担割合 湯河原町真鶴町衛生組合分)
- 湯河原町真鶴町衛生組合、神奈川県市町村職員退職手当組合、神奈川県後期高齢者医療広域連合
- 4第三セクター等の債務保証等に係る債務 11億9200万円(湯河原土地開発公社分)
- 湯河原土地開発公社、(有)コミュニティサービス、(財)かながわ海岸美化財団
地方債等の残高合計 198億6600万円 (連結会計)
- 湯河原町民一人当たりの地方債等残高 71万4424円 (連結会計)
経済[編集]
産業[編集]
- 観光業
- 温泉施設
- 浜湯河原温泉(駅下)
- 湯河原温泉(温泉場)
- 奥湯河原温泉
- 伊豆湯河原温泉(熱海市泉地区ではあるが利便性の関係で湯河原観光協会にも加盟)
- 日帰り温泉(町内各所)
- 海の家
- 湯河原海水浴場
- ミュージアム
- 美術館・記念館
- 観光農業
- みかん狩り・オレンジ狩り
- みかんオーナー
- 農業
- 漁業
姉妹都市(親善都市)[編集]
地域[編集]
教育[編集]
- 高等学校
- 神奈川県立湯河原高等学校(2008年3月で廃止)
- 中学校
- 小学校
- 湯河原町立湯河原小学校
- 湯河原町立吉浜小学校
- 湯河原町立東台福浦小学校
- 湯河原町では、「湯河原町育英奨学金条例」に基づく奨学金制度があり主に高校進学者を対象としている。
交通[編集]
鉄道路線[編集]
また、東海道新幹線が小田原駅 - 熱海駅間で約 4.2km にわたって湯河原町を通過しているが、ほとんどがトンネル区間となっている。
東海道本線の開通以前は、人車鉄道・軽便鉄道の豆相人車鉄道→熱海鉄道も1895年~1923年にかけて存在していた。
路線バス[編集]
道路[編集]
名所・旧跡・観光スポット・祭事・催事[編集]
温泉施設[編集]
- 湯河原温泉
- 万葉公園足湯施設独歩の湯、こごめの湯、ままねの湯、ゆとろ嵯峨沢の湯、湯河原ラドンセンター
名所[編集]
- 城願寺、保善院、福泉寺、しとどの窟、不動滝、五所神社、天照山神社、椿寺
- 土肥城址
公園施設[編集]
- 万葉公園(独歩の湯・熊野神社・狸福神社・観光会館)
- 湯河原海浜公園(町営プール・テニスコート)
- 城山公園(ピクニックグラウンド・あじさいの郷)
- 幕山公園(湯河原梅林)
- 星ヶ山公園(さつきの郷)
- 夢公園(総合運動公園・国体アーチェリー会場)
- 泉公園(花火大会会場)
観光スポット及び祭事・催事[編集]
- 梅の宴(1月下旬~3月中旬)
- 湯河原梅林(幕山公園)
- マスつり解禁(3月1日)
- 藤木川(千歳川上流部)
- 土肥祭(4月第1日曜日)
- 土肥一族の墓(城願寺)
- 源頼朝旗揚げ武者行列(4月第1日曜日)
- 五所神社~JR湯河原駅
- 湯かけ祭り(5月第4土曜日)
- 温泉場
- さつきまつり(5月下旬~6月上旬)
- さつきの郷(星ヶ山公園)
- ほたるの宴(6月上旬~中旬)
- 万葉公園・藤木川・新崎川
- 海水浴(7月上旬~8月31日)
- 湯河原海水浴場(吉浜海岸)
- 吉浜の鹿島踊り(8月1日) - 1976年10月19日に神奈川県の無形民俗文化財に指定された。
- 素鵞神社
- 湯河原やっさ祭り(8月2~3日)
- 町内各所
- 海上花火大会(8月3日)
- 湯河原海水浴場(吉浜海岸)
- ちびっこ広場(8月上旬~下旬)
- 観光会館前
- みかん狩り(温州みかん10月上旬~12月中旬・オレンジ類、甘夏3~5月)
- 町内各みかん畑
- もみじ祭り(11月中旬~12月上旬)
- 紅葉の郷(池峯)・奥湯河原
- 冬ほたるin万葉(12月中旬~下旬)
- 独歩の湯
- どんど焼き(1月14・15日)
- 町内各所
- 観光朝市(毎週日曜日AM6:00~AM9:00頃)
- 観光会館前
出身有名人[編集]
- 西河原義秋 - 漫画家(ペンネームは本名と湯河原から)
- 船越英一郎 - 俳優
- 黛まどか - 俳人、湯河原文学賞俳句部門の選者を務める
- 山田太一 - 脚本家(幼少時、湯河原に疎開)
- 河野淳吾 - 元Jリーガー・現競輪選手
- 河野直人 - 元Jリーガー・現サッカー指導者
- 笹みどり - 歌手
- 力石平三 - 小説家(芥川龍之介への作品題材提供者)
- 大津祐男 - みかんの篤農家("大津四号"と"師恩の恵"を育成した。高接ぎの方法である大津式一挙更新腹接ぎ法を考案し全国に広めた。接ぎ木の名手で国の試験場から依頼が来るほどであった。)
- 天野之弥 - 外交官、国際原子力機関(IAEA)事務局長
著名な住民[編集]
- 細川護熙 - 陶芸家・元総理大臣
- ツルネン・マルテイ - 国会議員,元湯河原町議
- 種村季弘 - 評論家
- 西村京太郎 - ミステリー作家、湯河原文学賞小説部門の選者を務める
- 五月みどり - タレント
- 田口ランディ - エッセイスト
- 益田由美 - フジテレビアナウンサー
- 桂邦彦 - テレビ番組プロデューサー
- 船越英二 - 俳優
- 泉アキ - タレント(注:熱海市泉地区在住であるが生活圏がほぼ湯河原の為)
- 桂菊丸 - テレビリポーター(注:同上)
- 谷崎潤一郎 - 小説家
- 山本有三 - 小説家
- 巻上公一 - ミュージシャン
- 布施英利 - 学者、東京藝術大学准教授
別荘[編集]
- 舛添要一 - 東京都知事
- 柳沢慎吾 - 俳優
- 浜田雅功 - 芸人
- 小川菜摘 - タレント
- 木村拓哉 - アイドルタレント
- 大山倍達 - 格闘家(注:別荘ではなく合宿道場)
- 重光葵 - 元外務大臣
- 伊丹十三 - 映画監督・俳優
- 宮本信子 - 女優
- さくまあきら - ゲームライター・作家
- 佐藤真理子 (歌手) - ロック歌手
ゆかりの人物と作品・逗留先[編集]
- 三遊亭円朝 - 落語家・伊藤屋旅館
- 国木田独歩 - 小説家「湯河原より」・中西旅館
- 夏目漱石 - 小説家「明暗」「真鶴行」・天野屋旅館
- 芥川龍之介 - 小説家「トロッコ」「一塊の土」「百合」・中西旅館
- 島崎藤村 - 小説家「夜明け前」・伊藤屋旅館
- 与謝野晶子 - 小説家「白桜集」・真珠荘
- 与謝野鉄幹 - 小説家・真珠荘
- 宇野浩二 - 小説家「湯河原三界」・中西旅館、天野屋旅館
- 吉野秀雄 - 歌人 第2歌集「苔径集」・青巒荘
- 獅子文六 - 小説家「娘と私」・現在保養所碧翠のある地に疎開
- 小林秀雄 - 文芸評論家「ゴッホの手紙」・加満田旅館
- 竹内栖鳳 - 日本画家「東本願寺大寝殿障壁画」・天野屋旅館内の山桃庵
- 水上勉 - 推理小説家「越前竹人形」「銀の庭」・加満田旅館
- 清水崑 - 漫画家「かっぱ」・加満田旅館
- 櫻井欽一 - 理学博士でアマチュア鉱物研究科の第一人者・不動滝にて「湯河原沸石」を発見
ゆかりの歴史上の人物[編集]
- 源頼朝 - 征夷大将軍
- 土肥次郎実平 - 相模国土肥郷(現在の湯河原)を治めていた豪族。石橋山の合戦時、頼朝に仕えた。
- 小早川遠平 - 土肥次郎実平の子。父と共に頼朝に仕え安芸国沼田荘等の地頭に任命される。小早川秀秋(小早川氏)の祖
その他[編集]
- 近年「都会田舎(とかいなか)」として注目され、団塊の世代の移住の地としても人気が高い。
- 湯河原町は真鶴町と、2005年1月を目処に合併を目指していたが、真鶴町で行われた合併の賛否を問う住民投票で僅差で反対が上回り、合併は中止になった。詳細は湯河原市を参照。
- 市外局番は0465で、小田原MAに属する。なお、1970年代初頭までは04606で、市内局番はなかった。
- 静岡県熱海市の泉地区が千歳川を隔てて湯河原と一体化している。実際、同地区は電話の市外局番が0557(伊東MA)ではなく湯河原町と同じ0465(小田原MA)で、それゆえNTT西日本の管内ではなくNTT東日本の管内である。
- 東京以外で唯一二・二六事件が起こったのが湯河原である。昭和11年2月26日早朝、伊藤屋旅館別荘光風荘に宿泊中の牧野伸顕元内大臣他6名が襲撃される。光風荘はその際に焼失したが、現在では復元され、資料館として日曜及び祭日のみ一般開放されている。
- 2000年代前半頃から観光客数が伸び悩んでいることから、町おこしの観光資源としてB級グルメ「焼きそば」を新名物とする取り組みを2007年11月から始め、湯河原町商工会と横浜市内の大手たれメーカーが共同開発したピリ辛味のソースを使い、湯河原温泉の伝説を生かした名前の新メニュー『たんたんたぬきの担々やきそば』が考案され、2008年2月より町内の飲食店・旅館等で提供が開始された[2]。
脚注[編集]
- ↑ [産業技術総合研究所 地質調査総合センター 日本の第四紀火山 湯河原 ("地学事典の項目"を参照)]
- ↑ 担々やきそばでまちおこし/湯河原 カナロコ(神奈川新聞)2008年3月7日掲載