グーグルアース
Google Earth(グーグルアース)は、Google 社が無料で配布しているバーチャル地球儀ソフト。2005年6月28日から頒布が開始された。
目次
動作[編集]
世界中の衛星写真を、まるで地球儀を回しているかのように閲覧することができる。同様のソフトで、先行していたアメリカ航空宇宙局の NASA World Wind とほぼ同様の動作をする。当初は、Windows 2000 と Windows XP のみで動作したが、2006年1月10日に Mac OS X に対応したバージョンが公開された。Google Earth 4 ベータ版 (Ver.4.0.2080) より正式に日本語に対応している。
2008年10月27日、iPhone や iPod touch などの iOS に対応した Google Earth for iPhone を公開した。2010年2月22日には同社が提供する Android OS のバージョン2.1以上に対応したバージョンを公開した。
特徴[編集]
- 設定や地域によるが、大抵の山がポリゴンになっており、画面を傾けると立体的な表示となる。Google Earth 5 からは、海中を立体的に表示することも可能になっている。
- カーソル地点の標高がすぐに表示される。
- Google Earth 4 ベータ版になり、世界の主要都市に加え、日本国内の主要都市も3Dビルディングにより再現できる。また、Google SketchUp により自分で作成した3Dを表示することもできる。
- 星座などが表示できるSky機能。
- ゲームパッドまたはキーボード・マウスで操作できるフライトシミュレータモードを内蔵(F-16 と SR-22 の2機種を操縦できる)。
- 「テンプレート:keypress+テンプレート:keypress+テンプレート:keypress」または「ツール→フライトシミュレータ」で起動。
- フライトシミュレータはイースター・エッグではなく、仕様として実装されている(#外部リンク参照)。
概要[編集]
Google Earth は、地域により異なるが基本的には地球全域はEarthsat社の衛星写真を用いている。北米の一部では、パブリック・ドメインな衛星写真(例:NIMA (National Imagery and Mapping Agency)、ニュージャージー州など)を用い、その他の領域においては衛星写真販売各社(DigitalGlobe、Bluesky など)の衛星写真を用いている。ごく一部の地域ではチャーター機による航空写真を用いている。
先行してベータ版として公開されていた Google マップ自体は、Keyhole社を買収して開始されたサービスである。このため、Google Earth から直接アクセスできる Google Earth BBS も、Keyhole.comドメインとなっている。当初は Google マップと同じだった地点の画像も、Google Earth では細かく見えるよう、画像が差し替えられている部分がある。
2005年にニューオリンズ近辺で発生したハリケーン・カトリーナ被害のため、該当地域を閲覧するためのサーバが特別に用意され、起動時にどのサーバを閲覧するかを選択できるようになっている。
地球全土の解像度や色彩は、一様ではなく、画像が撮影された時期もまちまちである。
標準的な解像度は 15m であるが、大都市や興味深い施設などでは、解像度 1m の高解像度画像が使われている。極めて限られた地域では、解像度 60cm, 30cm, 15cm の画像が使われており(例:マサチューセッツ州ケンブリッジ "Cambridge, Ma.")、この場合は車の車種や、木々が落とす枝の影さえ判別できるほどである。アメリカの治安機密に触れる場所については、モザイクが掛けられている(例:副大統領公邸)。
アメリカでは、Google Earth と連携したカーナビがフォルクスワーゲンより2006年2月に発表された。
日本近辺では当初東京都や横浜市などの大都市部が高解像度であった。台湾・台北、北朝鮮・寧辺の核施設近辺も高解像度であった。
2005年8月16日に、世界的に高解像度地域が増え、日本近辺では大阪市、名古屋市、札幌市、神戸市、広島市などの主要都市が次第に高解像度となった。
台湾の各都市、韓国のソウルその他の都市、北朝鮮の平壌、中国の上海が高解像度となった。世界の主要都市や核施設なども見ることが可能である。カトリーナやパキスタン地震、日本では東日本大震災による津波の被害状況の衛星写真も確認することができる。
前述の Version 4 ベータ版のアップデートにより日本のスポット情報が提供されるようになったほか、簡単な3Dポリゴン表示も利用できるようになった。
最新版の Google Earth 5 では、海中を表示したり、航空写真を時代をさかのぼって表示したり、ツアーを録画することが可能である。火星を表示するモードも利用できる。
2010年4月27日に、Google マップ上で Google Earth の 3DCG を表示できるプラグインが公開された(Google Earth 単体に比べ、機能面が制限されている)。
Google Earth 6 からは、検索機能の強化、Google+との統合、樹木の3D表示、航空画像のシームレスな表示などの機能が追加された。
またストリートビューがレイヤから廃止され、Googleマップのようにペグマンをドラッグして、シームレスにストリートビューに切り替わるように変更された。
テレビ番組での使用例[編集]
Google Earth の知名度と解像度の高さ、画像データの豊富さからニュース映像で衛星写真として取り上げたり、バラエティ番組で目的地を紹介する際の映像として取り上げるケースもある[1]。
操作と表示[編集]
基本的なインターフェースは、マウスのドラッグで移動し、画面下のコンソールパネルで拡大縮小、回転、ティルト(傾き)を調整するが、ダブルクリックや右ボタンドラッグ、ホイール操作にも動作が割り付けられており、慣れればマウスだけでもかなりの操作が可能となる。Altキーを押しながらの操作は、たいていの場合「緩やかに」という指定になる。
基本的には、画像データは PC 上に置かず、すべてインターネット経由で Google 社のサーバから転送する。回線速度が遅いユーザーは、高解像度領域を表示した時に特に表示が遅くなってしまう。転送された画像データは、メモリとハードディスクにそれぞれキャッシュするようになっている。
描画エンジンには OpenGL と DirectX を選択することができる。
多彩なオプションが用意されており、カスタマイズができる。国境線(北米などでは州境)を線で表示できるほか、多様なオプション表示(ホテルなどの商業施設、空港などの公共交通施設など)が選択可能である。
標準での標高・視点距離表示はマイル・フィートが使われているが、オプション画面でメートル (SI) にすることができる。
3DCADベンダーとして有名な Bentley Systems (USA) の主力製品である3次元CAD:MicroStation により Google Earth へ 3D Model を export できるようになった。それらの Model に word, excel, pdf などのファイルや Model に関するCADデータなどのリンクを設定し、Google Earth 上で情報共有できるようである。
Fly to機能[編集]
地名や座標を入力するための Fly to というテキストボックスがある。
地名などを検索する機能があるが、予想通りの動作をしないことがある(例えば "Fuji, Japan" と入力すると、北海道・斜里岳付近に移動する)ため、日本人にとっては使いにくいものとなってしまっている。綴りのミスも散見される。(例:香川県丸亀市→Maragume)(最新バージョンでは、ほとんど入力通りの動作をする)
地図が手元にあり、座標が分かっていれば、
- 22.311344,114.204941(10進法表現)
- 18d20'39.05N,66d45'10.51W(60進法、度・分・秒表現)
- 69 00 22 S 39 35 24 E(同じく60進法表現)
のような指定法も可能である。
Google マップの座標を Google Earth で閲覧するためには、URLの一部をコピーして、Google Earth の「Fly to」に貼り付ける方法が手っ取り早い。具体的には、URL 中の"ll="に続く数字(例:"34.914551,-117.882271")をコピーし、Fly to に貼り付ける。
現在、日本語による住所検索に対応している。指定された住所を入力すればその付近へ移動する。
地点の保存と公開[編集]
Google Earth では、Placemark を置いてその上でセーブ操作を行うと、KMLファイルまたはKMZファイル(KMLファイルをZIP形式で圧縮したもの)をローカルに保存できる。
これをWebページにアップロードして、ユーザーにダウンロードさせるという手法が取れる。Google Earth がインストールされていれば、拡張子 .kml と .kmz ファイルは Google Earth に関連づけがなされるため、非常に便利である。
地点を連続して移動する「ツアー」機能がある。
必要なスペック[編集]
Windows版[編集]
- 最低限の環境
- OS:Windows 2000, Windows XP,Vista,7
- CPU:インテル PentiumIII 500MHz 相当
- システムメモリー:256Mバイト
- ハードディスク:空き容量400Mバイト
- 3Dグラフィックカード:3Dが十分に描画でき、16MバイトのVRAMを搭載しているもの
- ディスプレイ:1024×768ピクセル、16ビットカラー
- 回線速度:128kbps
- 推奨環境
- OS:Windows XP, Windows Vista 32ビット版
- CPU:インテル Pentium 4 2.4GHz以上、またはAMD Athlon XP 2400+以上
- システムメモリー:512Mバイト
- ハードディスク:空き容量2Gバイト
- 3Dグラフィックカード:3Dが十分に描画でき、32Mバイト以上の VRAM を搭載しているもの
- ディスプレイ:1280×1024ピクセル、32ビットカラー
- 回線速度:768kbps
また、グラフィックカードについては、次のメーカーのものが動作確認されている。
- nVIDIA
- ATI(ただし ATI Rage Mobility, ATI Xpert, ATI 3D Rage は不可)
- 3D Labs
- Intel(DirectX での使用を推奨)
- Matrox
- S3
Macintosh版[編集]
- 最低限の環境
- OS:Mac OS X バージョン10.4.0
- 500MHzのPowerPC G3
- システムメモリー:256MB のメモリ
- ハードディスク: 空き容量 400MB
- 回線速度:128kbps
- 3Dグラフィックカード:32MB以上の VRAM
- ディスプレイ: 1024x768、16ビットカラー
- 推奨環境
- OS:Mac OS X バージョン10.5.2
- 1.2GHzのPowerPC G4
- システムメモリー:512MBのメモリ
- ハードディスク: 空き容量 2GB
- 回線速度:768kbps
- 3Dグラフィックカード:32MB以上のVRAM
- ディスプレイ: 1280x1024、32ビットカラー
Linux版[編集]
- 最低限の環境
- OS:カーネル: 2.4 以降
- glibc: 2.3.2 w/ NPTL 以降
- XFree86-4.0 または x.org R6.7 以降
- CPU: Pentium III、500MHz
- システムメモリー (RAM): 256MB
- ハードディスク: 空き容量 500MB
- 回線速度: 128 kbps
- 3Dグラフィックカード:16MB以上のVRAM
- ディスプレイ: 1024x768、16ビットカラー
- 以下のディストリビューションで動作確認:
- Ubuntu 5.10
- Suse 10.1
- Fedora Core 5
- Linspire 5.1
- Gentoo 2006.0
- Debian 3.1
- Red Hat 9
- 推奨環境
- カーネル 2.6 以降
- glibc 2.3.5 w/ NPTL 以降
- x.org R6.7 以降
- システムメモリー (RAM): 512MB
- ハードディスク: 空き容量 2GB
- 回線速度: 768 kbps
- グラフィックカード: 3D が十分に描画でき、32MB 以上の VRAM を搭載しているもの
- ディスプレイ: 1280x1024、32ビットカラー
iPhone版[編集]
- iPhone,iPodtouch互換
- iPhone OS 2.0以上
Android版[編集]
- Android バージョン2.1以上
Google Earth Plus[編集]
有料版の「Plus」では、次のような機能が付加されている。
- GPSアダプタを持っている場合、モバイルPCで自分の位置をGoogle Earthで確認できる
- より高精度な印刷が可能となる(無料版の印刷解像度は、ディスプレイの標準的な解像度である72dpiのみ)
- 電子メールによるカスタマーサポートが得られる(英語)
- annotation(注釈機能):写真やスケッチをkml(kmz)で共有できる
- CSVファイルからのインポート・エクスポート機能が利用できる
料金は年間20米ドルで、クレジットカード決済のみ。
バイナリは無料版と共通であり、インストール先のディレクトリ名がplusになっているため、混乱するユーザーも散見されるが、課金の手続きを踏まなければPlus版にはならない。閲覧にとどめ、付加機能を利用しないのであれば、無料のまま使い続けることができる。
Google Earth Pro[編集]
研究機関・教育機関向けのプロスペック版で、次のような特徴がある。
- より高速なデータ転送を保証
- 無料版・プラス版より高解像度領域が広い
- 高度な検索機能。ホテルやレストランなどを直接検索可能
- より詳細なレイヤー情報
- スケッチや都市計画の青写真を取り込み可能な、より高度なオーバーレイ機能
- 2,500データまでのCSVインポート機能
- サードパーティーによるアドオンデータをサポート
年間400米ドルで、クレジットカード決済のみ。
問題点[編集]
- 日本語版 Windows 2000 や Windows XP での問題(だけでなく、2バイト文字圏全てで発生する可能性がある)として、ログインユーザー名に2バイト文字が含まれていると、インストールしてもサーバに接続できないなど、問題が発生する。
- 2005年8月18日に韓国のとある掲示板からの抗議により、日本海の英語名が「Sea of Japan (East Sea)」から「East Sea (Sea of Japan)」と変更され、日本側から抗議が Google に殺到した。結局、朝鮮半島側の海を「East Sea」とし、日本側の海を「Sea of Japan」と表示することで決着した。
- 各国の秘密事項である軍施設・政府施設(議事堂・大統領府など)・原子力発電所など、本来秘匿すべき重要施設の衛星写真も容易に見ることができるため、テロリストがこれらの重要施設を攻撃し、またはそれらを準備する際の資料として転用される可能性があるとして、インド・タイ・オランダ・韓国などが非難を行った。アメリカ合衆国副大統領公邸など一部の重要施設にはモザイク処理やぼかしなどをかけて隠蔽されている。イスラエルの高解像度画像については法的に公表が差し控えられている。
- 2008年3月6日には、アメリカ合衆国国防総省の依頼に応じ、米軍基地の一部の画像を削除した。
- Google Earth 並びに Google マップに組み込まれている Google ストリートビューでは、撮影チームが景色の撮影を行うことで、車のナンバープレートさえ読み取れるほどの解像度の映像を提供しているが、撮影が許可無く私道で行われたりする場合もあり、個人のプライバシーを侵し、犯罪にも利用されかねないとして問題視する声もあり、アメリカペンシルベニア州の住民がストリートビューで自宅内部を勝手に公開されたとして、Google を相手に裁判を行っている。その中で Google が答弁として「現代では完全なプライバシーなどは存在しない」と反論、非難を浴びた。プライバシー保護団体が Google Earth を使って、Google 社幹部の車のナンバーや自宅、さらには通勤ルートを特定することに成功している。
参考文献[編集]
- 阿久津 良和 /大崎誠(著)『地球を新体感!Google Earth入門』(2006年09月)
- 郡司裕之(著)『Google Earth で地球を旅するガイドブック』(2006年11月)
- 今野寿信(編)『こんなことも出来るGoogle Earth-裏活用マニュアル2007年最新版対応!-』(2007年3月25日)
関連項目[編集]
外部リンク[編集]
テンプレート:地球- ↑ 例:ニッポン旅×旅ショーで、旅先を紹介する際に Google Earth の画像を用いている