警察不祥事
警察不祥事(けいさつふしょうじ)は、警察として好ましくない事件・よくない事件を起こすことを謂う。
警察の不祥事
警察の不祥事には、
等がある。
主な不祥事
日本
これらのうちで、最も問題となるのは警察組織すべてが関わっているとみられている捜査報償費の私的流用等に代表される裏金・不正経理問題がある。なお、過酷な検挙ノルマに原因する検挙報告捏造や裏金作りの問題は1980年代から指摘され続け、退職警察官による告発本も著されていた(松本均、幕田敏夫など 第三書館による)。
- 1968年11月 - 群馬県警の巡査が飲酒運転でひき逃げ。主婦2人死亡。1人けが。
- 1970年10月 - 大阪府警東署署長が飲酒運転車に同乗。事故を起こすも事実隠蔽。
- 1974年7月 - 大阪府警南署高津派出所の巡査2人が仮眠中に拳銃を盗まれる。朴正煕大統領狙撃事件に使用され、夫人・陸英修が死亡。
- 1978年1月 - 経堂駅前派出所で勤務中の警視庁北沢警察署の制服警察官が、世田谷区で巡回連絡先の女子大生を強姦し殺害。(時の警視総監・土田國保が引責辞任)
- 1979年4月 - 警視庁の巡査部長が研修先のアメリカから実弾14発入りの拳銃を密輸。
- 1982年11月 - 大阪府警賭博ゲーム台汚職事件 処分者124名(本部長が引責自殺)
- 1986年10月 - 警視庁千住署の巡査が上司の拳銃を盗み、実家に持ち帰る。
- 1986年11月 - 日本共産党幹部宅盗聴事件
- 1988年2月 - 大阪府警察警察官ネコババ事件[1]
- 1988年5月 - 福岡県警の警部補が勤務中に信用金庫に押し入り強盗。
- 1990年10月 - 大阪府警西成警察署で暴力団事案担当捜査員と暴力団の癒着が発覚。西成暴動の契機となる。
- 1996年3月 - 長野県警察警備課係長が窃盗容疑で逮捕される。この係長は公安警察で、標的は日本共産党の県会議員宅や共産党関連団体の施設。しかも侵入技術はスパイ教育で身に着けたものを活用していた事が、関係者によるその後の調査で判明。
- 1997年5月 - 城東警察署の警察官3名が無実の男性に対し大麻所持をしていたという罪をでっち上げて逮捕したことが発覚し、この罪をでっち上げた警察官らは特別公務員職権濫用罪および覚せい剤取締法違反(所持)の疑いで逮捕された。事件の重大性から国家公安委員会は前田健治警視総監に戒告処分とした。
- 1999年9月 - 神奈川県警察の一連の不祥事揉み消し(警ら隊内で行われたリンチや押収品を利用した女子大生に対する恐喝や警察官の覚醒剤常用他多数) 新潟県警察で自動車ナンバー自動読取装置(通称「Nシステム」)が警察官の素行調査に用いられていた事が新潟日報のスクープで発覚
- 1999年10月 - 桶川ストーカー殺人事件で捜査怠慢
- 1999年12月 - 栃木リンチ殺人事件で捜査怠慢
- 2000年1月 - 新潟少女監禁事件で事案へ対応せず
- 2001年 - 奈良県警察の奈良佐川急便事件
- 2002年3月 - 兵庫県警神戸西警察署の警官らが神戸・大学院生リンチ殺人事件発生時に職務放棄
- 2003年11月 - 北海道警裏金事件
- 2004年 - 一連の不正経理、いわゆる裏金事件
- 2005年2月 - お台場で薬物中毒で暴れている男に対して警官3名が身の危険を感じ逃亡している所をテレビカメラに撮られ、小泉純一郎総理大臣(当時)がそれを聞き激怒し、警察庁長官が陳謝
- 2006年6月 - 警視庁、世田谷区内でのひき逃げ事件で、神奈川県の男性を誤認逮捕、10か月も不当に勾留していた事が発覚。
- 2006年10月 - 佐賀県警察の巡査部長が2004年11月、夜道で警察手帳を携帯せず、帰宅途中の女子中学生に“職務質問”、非番であり私服姿であったため女子中学生が不審者と勘違いし逃げ出すと、これを追い回していた事が判明。中学生はPTSDで夜道を歩けなくなり、この巡査部長を提訴。
- 2006年11月 - 警視庁公安部、「節約生活のススメ」で知られる山崎えり子を公正証書等原本不実記載及び行使(別人の戸籍を使った婚姻届提出)で2005年11月に逮捕するも、当人をオウム真理教の菊地直子と誤認していた事が判明。
- 2007年1月 - 富山県警察、富山連続婦女暴行事件で服役した男性について、証拠がないにも拘らず真犯人であるとの先入観に基づき捜査・逮捕し、無実を訴える親族にまで物証がある旨虚偽の回答をしていた事が発覚(冤罪)。法務大臣が謝罪。
- 2007年2月 - 志布志事件[2]は、功を焦る鹿児島県警察による捏造であった事が公判により指摘される。被告全員に無罪判決が下され、確定。
- 2007年3月 - 山梨県上野原警察署で捜査情報の記録されたUSBメモリが紛失、情報が外部に流出。署員が同僚の使用品を盗んだ内部犯行であった事が判明。
- 2007年3月18日、北海道警釧路署の30代警察官が、釧路市内の携帯電話販売店でクレームをつけ「誠意をみせろ、100万円要求したらくれるのか」とどう喝を繰り返した。同店は警察に通報するも、駆けつけた3人の警官達も一緒に談笑をしていた。
- 2007年6月13日、警視庁北沢署地域課の巡査長(26)の個人パソコンからウィニーを通じ、警察情報を含む約1万件分のデータがインターネットに流出したことが分かった。芸能人と暴力団との関連を示す捜査資料も含まれていた。
- 2007年8月13日、埼玉県警察警備部の警部補が警察手帳提示で改札を通過する不正乗車を繰り返し、7月に戒告処分となっていた事が情報公開請求で発覚。
- 2007年8月21日、警視庁立川警察署地域課の巡査長(40)が、国分寺市(小金井警察署管内である)に住むキャバレー従業員の女性に交際続行を求めてストーキング。巡回中に職務放棄して自宅に上がり込み、携行していた拳銃で女性を射殺した後自分もその拳銃で自殺。国家公安委員会は矢代隆義警視総監に戒告、立川署署長に減給など10人を処分。署長は処分内示日付で辞職。
- 2007年10月15日、時津風部屋力士急死で事件の可能性がありながら、当初愛知県警察犬山警察署は部屋の説明を鵜呑みにした検視を独自に行ない、犬山署署員が作成した報告書では虚血性心疾患と断定されていた事が発覚。捜査怠慢として内部調査を行う。遺族が遺体の状況を不審に思い行政解剖に付した後に、10月5日に外傷性ショック死と断定された。また、搬送先病院の医師が診断書に記載した急性心不全の病名(原因不明の意味)とも異なっていた。
- 2007年12月、神奈川県警の警備課長が宗教団体「神世界」の霊感商法に協力、捜査情報まで教えていたことが発覚。08年2月7日に懲戒免職、県警幹部6人が戒告処分を受けた。
- 2008年6月、福岡県警察の捜査員2人が筑紫野市で内偵捜査活動中、暴力団道仁会傘下の組員4人に襲撃され、1人が警察手帳を奪われる。捜査員達は拳銃も特殊警棒も持っていなかった。
- 2008年8月7日、千葉県警察学校の主任教官が女性寮で下着泥棒。
- 2009年1月15日、警察庁人事課長補佐の警視が、成田空港で搭乗前保安検査を受けた際に、規制量を超える液体物を機内に持ち込もうとし、規制しようとした女性検査員に手荷物を入れるトレイを投げつけ「私は警察庁の警察官だ、本部に連絡してもいいんだぞ」と暴言。女性を伴い、旅行は無届。千葉県警察が暴行容疑で捜査開始、警察庁も懲戒を検討。
米国
- 1991年3月3日、ロドニー・キング暴行事件。のちのロス暴動の原因となる。
- 2006年12月4日、ノースカロライナ州ウィルミントンで大学生からプレイステーション3を強奪し逮捕状が出た大学生(18)が警官に自宅で射殺される事件が発生。死亡した青年の手にはコントローラーが握られていた。
中国
明確にはなっていないが公安のトップが密輸に関わり、一般警察が暴力団や窃盗団と提携することが明らかになっており、国民には信用が失われ『警察は暴力団と盗賊と同じである』と非難されている。詳細は中華人民共和国公安部にて。
対処
不祥事事件の際は、各都道府県警察本部の警務部にある監察官室が速やかに事態収拾を図る。当該警察官に懲戒処分の可能性がある場合、監察官と部下にあたる監察席付調査官で構成された班員で事実関係を調査する。この時点で監察事案となり、調査中は機密扱いとなる。
処分については調査内容を元に、内部の幹部で行う懲戒審査委員会と、公安委員が呼ばれる会議が行われ、その上で警察庁に上げ、処分にばらつきが出ない様に全国の警察での懲戒処分との調整を行い処罰を決定する。この警察官の懲戒処分については「懲戒処分の指針」である程度決まっている。
しかし、警察官の不正を調査する立場である監察官自らが不祥事を起こす事件も発生している。また、監察自体が警察の内部機構であり、監察官自体も内部の警察官であるために絶対に不祥事を起こさないとは言えない上に、不祥事を起こした当該警察官と知り合いである可能性も少なくはない。監察官も通常の事件捜査と同様3人一組等の班員と共に行動をするが、これも通常の警察業務と同じで、監察官が最も高い階級であり、次いで監察調査官である班員は警部・警部補と階級が下であるが故に監察官に最も裁量権が与えられており、監察官自身が不祥事や不正を犯した場合、それを関知する事は難しい。
発砲事件
警察官の武器使用は警察官職務執行法に規定があり、武器使用自体が不祥事というわけではない。
ただし、警察官職務執行法に定められた要件を守らずに発砲を行うという不適正な武器の使用については当然不祥事と扱われることとなる。
処分の不透明性と監視体制の問題
残念ながら、今現在確認されている不祥事において、通常なら逮捕される事件でも逮捕されなかったり不祥事を起こした警察官の氏名や年齢、所属先や処分内容など、通常の刑事事件などで公表されるべき情報が公表されないケースが多く「身内に甘いのではないのか」という批判が高まっている。2000年前後の不祥事発覚後に国家公安委員会が設置した警察刷新会議も、国家公安委員会と共に形骸化していることは、その後の不祥事の発生状況を見ても明らかである。
報道関係者の間で警察不祥事などを報道することは桜タブーとも呼ばれ、大々的に批判すると、事件取材の際や別の事件の取材などで取材拒否・記者クラブ出入り差し止めを受けることもある。ただし、2007年は冤罪事件が連続して2件発覚するという事態が起こったため、報道も比較的行われている。
脚注
- ↑ 槙塚台派出所で勤務中の堺南警察署(現・西堺警察署)の巡査が、拾得物として届けられた多額の現金を、遺失物法に基づく受付処理をせず横領、“紛失”が騒ぎになったために届出者に罪を着せようとしたもの。署長以下警察署ぐるみで届出者の罪を捏造しようとしていた事が判明している。
- ↑ 2003年の鹿児島県議会議員選挙における公職選挙法違反事件
書籍
- 『日本警察 裏のウラと深い闇』 ISBN 978-4479300618
- 『警察裏物語』 ISBN 978-4862380074
- 『警察幹部を逮捕せよ!―泥沼の裏金作り』ISBN 978-4845108879
- 『警察VS.警察官』 ISBN 978-4062133203
- 『警察内部告発者・ホイッスルブロワー』ISBN 978-4062127417
- 『北海道警察の冷たい夏』 ISBN 978-4062749992
- 『警察官ネコババ事件―おなかの赤ちゃんが助けてくれた』ISBN 978-4062042843
関連項目
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