不倫

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不倫

不倫(ふりん)は本来は、倫理から外れたこと、の道から外れたことを意味するが、近年では特に、結婚制度から逸脱した男女関係の意味で使用される。

不倫は配偶者のあるが、配偶者以外の異性と恋愛し、性交を行うことをいう(配偶者のいない男や女が、配偶者がいる異性と恋愛し、性交を行う場合も含む)。古くは姦通、不義密通といった。(くだけた表現では浮気と呼ばれる。この言葉は未婚の恋人同士でも使われる。)

TBSのテレビドラマ「金曜日の妻たちへ」(1983年)が、「不倫」という言葉を「男女間の不義密通」という意味に変化(固定)させたきっかけと言われている[誰?]。それ以前のテレビドラマでは「よろめき」(主として、夫のある女性が、他人の男性に心を寄せる)という言葉が一般的に使われていたが、「金妻」以降はほぼ死語になっている(なお“よろめき”は三島由紀夫1957年に発表したベストセラー小説『美徳のよろめき』に由来する)。

語誌的には、(名詞以外の用法としては)形容動詞の語幹として「不倫な/不倫だ」といった使い方をするのが本来の用法であり、サ変動詞の語幹として「不倫する」という形では使われることはなかった。つまり、従来「不倫」とは様子・状態を表す言葉であり、行為・動作を表す言葉ではなかったといえる。しかし、上記の金曜日の妻たちへ辺りをきっかけとして「不倫する」という言葉が世間で広く使われるようになり、現在では一部の辞典に載るまでになっている。

代償[編集]

単に妻のいる男性が女性(既婚・未婚は不問)とデートするなどの浮気自体は犯罪行為とされていないため、すぐ刑事罰に問われることはないが、その不倫の代償は非常に大きい。たとえ犯罪でないとはいえ、家庭友人関係を一気に崩壊させる危険をはらみ、経済的・精神的に深刻な打撃を受け、社会的信用はもとより、自身の社会的な基盤すらをも失う可能性がある(旧刑法だと姦通罪で罰せられることもあった)。不倫は民法第770条の離婚事由に相当し、家庭崩壊の場合は配偶者訴訟を起こされる事もあり[1]、実子がいる場合は、年齢に関係なく心を激しく傷付けトラウマを植え付けてしまう。子供が心身を激しく傷つけられた場合には不倫をした本人の配偶者からだけでなく、子からも訴訟を起こされることがある。 重婚内縁関係に於いては、実子を邪魔な存在と感じて児童虐待に及ぶケースも後を絶たない。

関係の解消の際には、今までの関係を暴露すると脅されたり、口止め料や手切れ金を要求される場合もあるため、これらのトラブルも代償とされる。

他方、芸能人などはスキャンダルとしてバッシングを受け、政治家などにいたってはイメージ悪化に繋がり、潔癖な人間からの支持を大幅に失う。ただしお国柄によってはスキャンダルとはならないこともある(フランスは寛容だといわれる)。

政治家、芸能人、著名人やスポーツ選手などの不倫は、これを種にして発行部数や視聴率を伸ばそうとするマスコミ写真週刊誌ワイドショーなどの絶好の取材・報道対象となり、カメラや取材陣が該当人物を連日連夜追いかけ回す事になる(セックス・スキャンダル)。

歴史的背景[編集]

古代日本においては、一夫多妻制の上に招婿婚(妻問婚)という社会制度のため、夫が妻(正室)の家へといつもいる訳ではないこともあり、夫が他の女性の家へと行っている時には別の男性が来る事も普通にあったらしく、また男性が恋人の女性の家へと行くと、すでに他の男性が来ていたということもあった(『古今和歌集』に収録されている歌にも、多くその時に歌われたと思われるものがある)。ただし、その夫や恋人がそのことに対して声高に訴えたり、ましてや公にする事は、面子もあって滅多に無かったようだ。

平安時代では、やはり男は多くの女の元へ通うのが常識であり、一人の女性しか愛さない男は真面目人間として軽く見られた。しかし人の妻を奪うことは非常識とされ、世間の非難を浴びた。

鎌倉時代には、御成敗式目に不倫密懐に関する処罰が規定され(第34条)[2]、不倫は所領半分没収の上職務罷免とされ、武家文化の中で厳しく処罰される端緒となった。御成敗式目は戦国・江戸時代を通じて各家法に強い影響を与え、武家法の基礎となった。

これに対し、庶民の性風俗に関わる明確な取り決めは見られず、近世(江戸時代)以前には配偶者以外との性交渉は珍しいことではなく、近代に入っても戦前では特に農村などではその風潮が一部に残っていた。その一方では寛保2年の公事方御定書47条[3] には不義密通を死罪とする重罰規定が見られるなど、かならずしも当時の真相を覗わせる研究に一貫性はみられない[4]

近代に入ってからも近年まで、「浮気は男の甲斐性」などと既婚男性が未婚女性と不倫にいたる限り、容認する風潮が長く続いていた。当時既婚男性が未婚女性を愛人に持つことは容認されても[5]既婚女性が浮気をすることは容認されないとされており、既婚女性が不倫に及んだ場合1947年までは男女とも姦通罪という罪に問われた(現在の法律では刑事的責任を問われることはない)。

近年になってからは、恋愛感情と結婚生活を一体のものと考えるロマンチック・ラブの思想が男女双方に受け入れられ、不倫を罪悪であると考える者は男女問わず多い。しかし、現在の日本では、年長の富裕な既婚者とそれより年下の未婚者による不倫の存在がよく語られる。また、明確な統計こそ存在しないものの既婚者同士の不倫についてもよく語られる。

法律上の不倫[編集]

法律上、不倫は「不貞行為」(貞操義務の不履行)という。

  • 夫婦がお互いに他の異性と性的交渉を持たない義務に反する行為である。
  • 一度きりの性的交渉も不貞行為とされるが、離婚理由になるには反復的に不貞行為を行っていることが必要とされる。
  • 男女間の密会が性的交渉を伴わない場合は「不貞行為」にはならない。

元妻にFBで社内不倫を密告された男性が退職に追いやられる[編集]

不倫のリスクはかなり大きい。離婚に追いやられるだけでなく、社会的信用を失うことも──。

一部上場企業に勤める40代の夫と30代の妻。結婚8年目を迎えたある日、夫の怪しい行動に気づいた妻が、夫の携帯をチェック。メールから夫の浮気の事実とそれが社内不倫であることを突き止めた。その後、半年間の泥沼離婚訴訟の末、多額の慰謝料をぶんどり、離婚が成立。しかし、元妻の怒りは収まらなかった。

実はここからが、元妻の復讐劇の始まりだった。

元夫の勤務先は大手電機メーカー。フェイスブックに企業ページを掲載している。そこに元妻が、匿名で元夫が不倫していたことを書き込み会社に密告したのだ。もちろん、元夫と不倫相手の実名を出すことを忘れずに…。

書き込まれた情報は会社で大問題に。すぐさま会社は調査をして事実関係を確認した。 元夫は厳重注意で済むとタカをくくっていたが、子会社への出向を命じられ、契約社員だった不倫相手は契約の解除が言い渡された。

元夫の出向先は、事実上の左遷で間もなく自主退職。会社に密告した犯人が元妻であることを元夫は確信していたが、確たる証拠がないため文句を言うことすらできなかったという。

既婚者の同性愛[編集]

既婚者でありながら同性の恋人セックスフレンドをもつ者もあるが、これについては「不倫」ととらえる人と「不倫とは別物」ととらえる人がいる。

男性同性愛者には妻を持ちながら同性との性交渉を求める者も少なくない。妻が夫がゲイであることを納得済したうえで結婚したのであればあまり問題にはならないが、男性が自らがゲイであることを隠して結婚していた場合、重大なトラブルに発展することもある(同性愛も不貞行為として、離婚の原因になりえる)。夫がありながら女性の交際相手を求める女性も多いが、「主婦レズ」などと呼ばれ、女性同性愛者のコミュニティでは排除されがちである。

同性愛者なのに結婚している事については「偽装結婚」「結婚相手がかわいそう」と非難する声もあれば、結婚せざるをえない事情を慮って、同情する意見もみられる。

不倫にまつわる有名な発言[編集]

不倫がテーマとなった小説、漫画、TVドラマ等[編集]

文学・映画・テレビドラマの中には、不倫をテーマにする作品が少なくない。こうした作品の中では、配偶者の疑惑、不安や嫉妬がよく描かれるが、中には互いに浮気をしていることをうすうす気づいていたり、相手の浮気を知りながら黙認したり、公認したりする夫婦が描かれることもある。

古典的なものとしては、『源氏物語』(この場合の不倫とは人の妻を寝取ること)や、中世ヨーロッパの『トリスタンとイゾルデ』物語が挙げられる。近代以降の作品には次のようなものがある。

関連項目[編集]

注釈[編集]

  1. 不倫を行った者の配偶者は、不倫の相手に対し「夫(妻)の立場を不当に侵したもの」として訴訟を起こすことが可能であり、訴えが認められた場合は損害賠償責任を負う。
  2. 他人の妻を密懐する罪科の事 右、強奸、和奸を論ぜず、人の妻を懐抱するの輩、所領・半分を召せ被れ、出仕を罷め被る可し。所帯・無んば、遠流に処す可き也。女の所領・同じく之を召せ被る可し。所領・無んば、又、之を配流せ被る可き也。」「次に、道路の辻に女を捕う事、御家人に於ては、百箇日の間、出仕を止む可し。郎従・巳下に至りては、右大将家の御時の例に任せて、片方の鬢髪を剃除す可き也。但し、法師の罪科に於ては、其の時に当たりて、斟酌せ被る可し。
  3. 一、密通致し候妻 死罪 一、密通之男死罪 但、實之夫を殺し様ニ勸候歟、又ハ手傳殺候におゐてハ、獄門 一、密夫いたし實之夫を殺し候もの 引廻し之上 磔 一、密夫いたし實之夫ニ疵付候もの 引廻し之上 獄門 一、主人之妻江密通之手引いたし候もの 死罪
  4. 御成敗式目、公事方御定書とも既婚男性が未婚女性と交情に及ぶ件に関しては規定がない。
  5. 既婚男性が既婚女性と不倫関係にある場合は、女性の夫から姦通罪で告発され罪に問われる可能性がある