九州新幹線

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JR九州.jpg
九州新幹線

九州新幹線(きゅうしゅうしんかんせん)は、整備新幹線計画の一つで、九州旅客鉄道(JR九州)の高速鉄道路線(新幹線)およびその列車である。鹿児島ルート博多 - 鹿児島中央間)と長崎ルート(西九州ルート、博多 - 新鳥栖 - 長崎間)がある。鹿児島ルートは全線が開業しており、営業路線としては単に「九州新幹線」と呼ばれる。

鹿児島ルートは、全区間を独立行政法人 鉄道建設・運輸施設整備支援機構(旧日本鉄道建設公団)が建設し、JR九州がこれを借り受けて運営している。長崎ルートについても今のところ同方式が予定されている。

鹿児島ルート

九州新幹線鹿児島ルートは、博多鹿児島中央間を結ぶ整備新幹線計画であり、2004年3月13日に新八代~鹿児島中央間が部分開業している。新幹線区間の新八代~鹿児島中央間を最速34分で結び、在来線特急時代に3時間50分かかっていた博多~西鹿児島(現在の鹿児島中央)間を最速2時間10分で結んでいる。部分開業であるため、新八代駅新幹線ホームで在来線エル特急リレーつばめ」号と接続し、同一ホームでの対面接続が行われている。車両は部分開業時点で800系のみが運行されている。

部分開業した区間のうち、約7割がトンネル区間であり、山陽新幹線と同様にトンネルの多い新幹線である。また、高低差の激しい地区を走る為に新幹線としては急勾配区間が多く、その勾配に対応出来る車両として800系が開発・製造された。

開業後、新幹線が地下を走る鹿児島市武岡地区等では、予想外の振動騒音が発生して住民から苦情が続出した。これに対処するため、JR九州では該当区間で減速運転を行いながら薩摩田上トンネル内の路盤改良などの工事に着手し、解決を図っている。これらの問題は、マスコミ等で報道された。

ちなみに当初の計画では、1975年に開業をする予定であった[1]

全線開通へ向けての動向

博多~新八代間は既に建設着工されており、2011年春の開業が予定されている。全線開通すれば、博多~鹿児島中央間が最速約1時間20分で結ばれることになり、博多で東海道山陽新幹線と線路がつながることになる。 全線開業時の東海道・山陽新幹線との相互乗り入れについては具体的に、

  • 山陽新幹線の既存車両では、急傾斜の多い九州内を走ることができない。また九州新幹線の既存車両では、速度面や車両数が劣る為山陽内での運行が不利である。
  • 自動列車制御装置(ATC)の信号方式が山陽新幹線はアナログ、九州新幹線はデジタルと異なる。
  • 故障時の修理体制の整備

等技術面やサービス面などで様々な課題があり、JR九州とJR東海JR西日本との間で交渉が続いていたが、2007年10月にJR西日本とJR九州の間で、2011年春の全線開業に合わせ、新大阪~鹿児島中央間で直通運転をすることで合意した。新大阪-鹿児島中央を約4時間、新大阪-熊本を約3時間で結ぶ予定で、今後具体的な協議を本格化させることになっている。

全線開業時の運行車両については、2007年5月にJR九州が、N700系をベースにし、上記課題に対応した相互乗り入れ可能な車両をJR西日本と共同で開発すると発表した[2]。これは、現行の既存車両の性能では上記に挙げた理由により、相互乗り入れ自体が困難なためである要出典

なお、東京(東海道新幹線)-鹿児島中央(九州新幹線)間の直通乗り入れについては、

  • 所要時間面で航空機と対抗する事が困難
  • 収益の向上が見込めない
  • JR東海が、東海道新幹線の利用者逼迫のため16両編成以外の列車の乗り入れを受け付けない

ことなどを理由に見送られた。

新八代~鹿児島中央間開業時に並行在来線である鹿児島本線のうち八代~川内間が肥薩おれんじ鉄道線として経営分離されたが、博多~新八代~八代間については並行在来線の経営分離はされず、これまで通りJR九州が運営することになっている。

路線データ

  • 路線距離(営業キロ):
    • 新八代~鹿児島中央間137.6km(実キロ:126.8km)
  • 軌間:1435mm
  • 複線区間:全線複線
  • 電化区間:全線電化(交流25,000V・60Hz)
  • 最高速度:260km/h
  • 保安装置:デジタルATC(KS-ATC)
    東北新幹線で採用されているデジタルATC(DS-ATC)とは若干異なり、東海道新幹線で採用されている(ATC-NS)と同規格。
  • 車両基地川内新幹線車両センター(暫定車庫と一部に車両の定期検修も行う)
  • 保線基地:出水
  • 運転指令所:博多総合指令センター

運行形態

新八代~鹿児島中央間で毎時2本運転されており、内訳は通過駅のある速達タイプが毎時1本、各駅停車タイプが毎時1本である(朝夕は各駅停車タイプのみで毎時2本運転)。速達タイプは川内のみの停車が基本だが、1往復は新八代~鹿児島中央間ノンストップ運転である。2007年2月現在は部分開業のため、新八代駅新幹線ホームでエル特急「リレーつばめ」号と接続し、同一ホームでの対面乗り換えとなる。区間運転として川内~鹿児島中央間の列車が下り2本、上り3本、新水俣~鹿児島中央間は下り1本、上り1本が運転されている(2006年3月18日のダイヤ改正時点)。

JR九州では、全線開業後は博多~熊本間で毎時4本[3]、熊本~鹿児島中央間で毎時2本のダイヤ設定との計画を発表しており、それに合わせて博多駅の新幹線ホームの増設工事が進められている。1面2線の島式ホームで、うち1線は九州新幹線内折り返し列車専用とし、もう1線側を利用する同駅始終着の山陽新幹線列車との対面接続を考慮するとされる要出典。山陽との直通列車の本数について、JR九州の石原進社長は「1時間に1本程度は走らせたい」としている。

列車名

つばめ
さくら

車両

800系電車
ベースは700系新幹線だが、マイナーチェンジされている。内装やデザインがジャパネスク調であり全車両が動力車であるのも特徴。現在は6両固定編成となっている(全線開業後は8両編成に増結も検討されているが、現在の同系は博多~鹿児島中央間折り返し列車限定運用とJR九州が表明している事から、利用状況に合わせて現状のままとされる可能性もある)。

車内放送

九州新幹線で運行されるつばめ号の始発駅と終着駅で流される車内自動アナウンスは、新幹線初の四ヶ国語放送(日本語英語朝鮮語中国語の順に放送)となっている。

全駅で使用されている発車メロディと、車内で使用されている車内メロディは、株式会社音楽館向谷実が作曲している。これとは別に開業時のセレモニーにてイメージソングが作られ、それはTHE ALFEE坂崎幸之助が担当し、一度だけ披露された(後に坂崎自身のラジオ番組でもオンエアされた)要出典

なお2004年の開業時より、駅の電光掲示板や車内放送では、リレーつばめ号新八代行きを「鹿児島中央行」、新幹線つばめ号新八代行きを「博多行」とアナウンスする。これは、博多~鹿児島中央間を一体的に運用し、スムーズに行けることをアピールするためと考えられる。なお、新八代駅入線時においては誤乗防止のため「新八代」、あるいは折り返しの行き先表示である「鹿児島中央(つばめ)」・「博多(あるいは小倉 リレーつばめ)」を表示して入線する。

利用状況

開業1年目で開業前予測(約250万人)[4]を上回る約322万8884人を輸送した。これは新幹線開業前の鹿児島本線(八代~西鹿児島)の利用者約140万人の2.3倍である。開業ブーム後の2年目も1年目を上回る約336万人を輸送[5]し好調である。特に鹿児島県内(薩摩地方)から博多までの利用者が多い。また、川内、出水から鹿児島中央までの短距離利用が目立つ。これは在来線との比較もさる事ながら、高速道路南九州西回り自動車道の建設が無料区間を含め順次進んでいるが、山地に囲まれた沿線の道路事情が芳しくない事もあって、新幹線利用による速達効果が大きい事が最大の要因と見られる。朝夕は通勤通学客も多くあり新幹線定期券の利用も順調な伸びを示している。

逆に熊本県側の新水俣駅の利用者は伸び悩んでいるが、これは同駅から熊本方面への新幹線の利用区間がすぐ隣接の新八代駅までとなっており、県都・熊本市や九州の中心地・福岡市に出るには現状では乗り換えを必要とする事や、同駅の立地が水俣市の中心地から外れている事など、新幹線の速達効果が出にくい事が大きな要因とされ、周辺住民にとっては全線開業で初めてその効果が出るものとされている。

駅一覧

駅名 つばめ 接続路線 所在地
東海道山陽新幹線 新大阪東京方面
建設中の区間
博多駅 西日本旅客鉄道:山陽新幹線
九州旅客鉄道鹿児島本線福北ゆたか線博多南線
福岡市交通局空港線
福岡県 福岡市
博多区
新鳥栖駅(仮称・新設) 九州旅客鉄道:長崎本線 佐賀県 鳥栖市
久留米駅 九州旅客鉄道:鹿児島本線・久大本線 福岡県 久留米市
大牟田駅   大牟田市
玉名駅   熊本県 玉名市
熊本駅 九州旅客鉄道:鹿児島本線・豊肥本線
熊本市交通局:2系統-幹線田崎線熊本駅前駅
熊本市
営業中の区間
新八代駅 九州旅客鉄道:鹿児島本線 熊本県 八代市
新水俣駅 肥薩おれんじ鉄道肥薩おれんじ鉄道線 水俣市
出水駅 肥薩おれんじ鉄道:肥薩おれんじ鉄道線 鹿児島県 出水市
川内駅 九州旅客鉄道:鹿児島本線
肥薩おれんじ鉄道:肥薩おれんじ鉄道線
薩摩川内市
鹿児島中央駅 九州旅客鉄道:鹿児島本線・指宿枕崎線
鹿児島市交通局:2系統-第二期線唐湊線鹿児島中央駅前駅
鹿児島市
●:全列車が停車。
◎:一部の列車が通過。
△:一部の列車が停車。

キャッチフレーズ

  • つばめ、翔ぶ 2004年3月2005年2月
    季節ごとに、「つばめ、」「翔ぶ」の間に、春・夏・秋・冬の言葉が入っていた。
  • つばめで、それッ! 2005年3月~2006年2月
  • あした、つばめと 2006年3月~2006年12月
  • 鹿児島スイッチ福岡スイッチ 2007年1月

部分開業の理由

博多(山陽新幹線)からの延長ではなく、新八代~鹿児島中央間が先にフル規格新幹線で建設・部分開業した理由として以下のことが挙げられる。

  • 建設する土地の確保が容易だった。反面、博多~熊本間では市街地に新線を引き込むための土地を確保することが未だに困難な箇所が多かったため。
  • 鹿児島本線の新八代~鹿児島間は大半が単線であったり、線路が海岸線に沿って作られており複線化も困難なほどに線形が劣悪で、高速運転化には抜本的な改良が必要であった。一方、博多~八代間は線形が良く、787系による最大130km/h運転を十分に発揮出来るため、速度向上の緊急度が低かった(全区間在来線特急だった頃の特急「つばめ」は、八代~鹿児島中央間とほぼ同距離区間の走破時間は30分以上速かった)
  • 新八代以南をスーパー特急規格で建設しても、大した建設コスト削減にはならない上に(特にトンネル区間の多い新幹線では顕著となる)、新幹線車両による直通運転の効果を出せなくなる。
  • 鹿児島本線で需要の高い博多~熊本間に先に新幹線を作れば、採算性に疑問のある熊本以南の建設が行なわれるかどうか分からないと判断された[6]。これについて元JR九州社長の石井幸孝は著書「九州特急物語」(JTBパブリッシング)で「そして何よりも鹿児島地区の新幹線建設への情熱は絶大で、もし博多側から着工になれば八代で建設が足踏みしてしまうのではないかという危機感が大きく、南側からの建設に対する働きかけが強かったのである」と述べている。

長崎ルート(西九州ルート)

九州新幹線長崎ルート(西九州ルート)は、博多から鹿児島ルートの新鳥栖で分岐して長崎へ至る整備新幹線計画である。「九州新幹線」と呼ばれている鹿児島ルートと区別するために単に「長崎新幹線」とも呼ばれる。

計画時から「長崎ルート」と呼ばれてきたが、2005年10月に佐賀県・長崎県は独自に「西九州ルート」へと名称を変更した。これは「長崎ルート」表記だと長崎県がことさら強調されるため、同じく影響を受ける佐賀県民に配慮する形で名付けられたものである。JR九州も自主的にこれに対応し、「長崎ルート」の名称は併記される形となった。政府・与党・法令上の名称は引き続き「長崎ルート」の呼称を用いている。

計画についての曲折

第一期工事として武雄温泉駅諫早駅間の認可申請が行われ予算が下りているものの、実際の着工に必要となる並行在来線沿線の自治体の一部(江北町鹿島市)の建設同意が得られていないために工事実施計画の認可が下りておらず、2007年9月現在で着工の目処は立っていない。かつては佐賀県側で経営分離の対象となる全ての自治体(4自治体)が反対姿勢を示していたが白石町が2005年12月、太良町が2006年2月に同意し、現在は上記の2自治体のみになっている。同意していない2自治体は「JR長崎本線存続期成会」を結成している。存続期成会は並行在来線の第三セクター鉄道化に反対すると同時に、第一期工事の時間短縮効果が余り見込めない・費用対効果が悪い、といった主張を行っている[7](ただし江北町の場合は町長は反対姿勢を貫いているが町議会は2006年3月に経営分離に同意する旨の決議を行っており、「ねじれ」の状態にある)また新線建設予定ルートと指定並行在来線とが別ルートである事に原因があると考える者もいる。

また、第二期工事として考えられているのは諫早駅~長崎駅間であり、長崎県では第一期工事の着工の目途がつき次第、国に対して早期着工を要望していく、としている。
ただし、佐賀県は新鳥栖駅~佐賀駅~武雄温泉駅間の着工は求めない、としている。これは佐賀平野が軟弱地盤であり難工事が予想され、佐賀県の負担額が約750億円と非常に大きいため、と説明されている。また建設費が高いためJR九州が毎年支払う線路使用料も高くなり、採算が取れない、というのも理由の一つである(これが江北町議会の同意決議につながった、と見る向きが多い。当初の計画では新線は江北町内は肥前山口駅の北方を通過するだけで駅は設置されない予定だったためである。JR九州では、新幹線開業後は長崎方面の列車のうち2本に1本は引き続き肥前山口駅に停車し、佐世保方面の列車はこれまで通り全列車が停車する、としている)。

ちなみに長崎県内にある佐世保線の沿線住民は、直接佐世保市内に新幹線が通らないことや(以前の計画では、佐世保市の早岐駅を経由するルートも検討されていたが、時間短縮のために現在のルートに変更された)、もし長崎ルートが開業しても佐世保への特急の運行本数は以前と変わらないことからあまり関心がない。この状況に対し、フリーゲージトレインを博多から直通させる(標準軌:博多~新鳥栖)ことで佐世保線沿線にもメリットを与える案があるが、新線建設と直接関連がある訳ではないこともあり本格的議論には至っていない。

毎日新聞社西部本社が2005年12月5日の朝刊紙面で公表した毎日新聞社世論フォーラム九州・山口8県男女1000人電話アンケート調査の結果によれば、九州新幹線長崎ルートの建設を不必要と考える県民の割合は、佐賀県で59%、長崎県で53%、福岡県で48%にのぼる。また長崎市長選当日である2007年4月22日に、長崎市内の投票所近辺で毎日新聞社によりアンケートが実施された。この結果、建設が必要と考える人が39%、不要と考える人が44%であった引用エラー: 無効な <ref> タグです。 名前 (name 属性) に単なる整数は使用できません。説明的なものにしてください

運行計画

ここでは、2007年4月の時点でJR九州が発表している運行計画を掲載する。[8][9]

  • 博多駅~新鳥栖駅~武雄温泉駅~(長崎ルート経由)~長崎駅:32往復(フリーゲージトレインでの運転)
  • 博多駅~新鳥栖駅~武雄温泉駅~(佐世保線経由)~佐世保駅:16往復(在来線特急列車での運転)
    • 新鳥栖駅~武雄温泉駅間・諫早駅~長崎駅間は現在の長崎本線・佐世保線の線路を一部改良・複線化(肥前山口駅~武雄温泉駅間)の上使用する。
    • 博多駅~新鳥栖駅間(鹿児島ルート)、武雄温泉駅~諫早駅間(軌間1067mm、但し施設は将来のフル規格に対応できるように建設)は新線を使用。
    • 長崎駅、佐世保駅発着列車は別々に運行され、現在特急「かもめ」・「みどり」が行っている併結運転は行われない。
    • 以上の列車とは別に、肥前鹿島駅発着の在来線特急列車を5往復程度運行する。なお、佐賀県の発表によると肥前鹿島から博多までの直通となり、現在の電車ではなく気動車による運行となる、とされている。また、設定時間帯は肥前鹿島駅の特急利用客の多い朝夕中心となる。

設置予定駅

駅名 距離(km) 接続路線 所在地
新鳥栖駅(仮称) 0.0 九州旅客鉄道:九州新幹線(鹿児島ルート)・長崎本線 佐賀県 鳥栖市
佐賀駅   九州旅客鉄道:長崎本線・佐世保線 佐賀市
武雄駅   九州旅客鉄道:佐世保線 武雄市
嬉野温泉駅(仮称)     嬉野市
新大村駅(仮称)     長崎県 大村市
諫早駅   九州旅客鉄道:長崎本線・大村線
島原鉄道:島原鉄道線
諫早市
長崎駅   九州旅客鉄道:長崎本線
長崎電気軌道
長崎市

関連項目

参考資料

外部リンク

日本の新幹線
現行路線
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