子ども手当法

提供: Yourpedia
2010年10月10日 (日) 15:59時点におけるFromm (トーク | 投稿記録)による版 (受給対象外問題)

移動: 案内検索

子ども手当法(こどもてあてほう)は、15歳以下の子どもの保護者に対し手当(金銭)を支給することを主な内容とする法律第45回衆議院議員総選挙民主党マニフェストとして提示された。2010年3月31日に成立、4月1日より施行となった。巨額の財源確保など未解決の問題が残っており、国内外に批判的な意見もみられる(後述)。

概要

法律の正式名称は「平成二十二年度における子ども手当の支給に関する法律」。法律は2010年3月16日に衆院、同26日に参院可決され同4月1日より施行された。2010年度のみの時限立法である。

15歳の4月1日の前日までの子どもの保護者に対し、子ども手当を支給する制度である。なお、政府や民主党、マスメディアの発表では、よく「中学3年生まで支給」と表現されているが、これは正しくない(後述)。中学生であれば全員が対象となるわけではない。

支給額は、初年度のみ毎月1万3千円、次年度以降は毎月2万6千円を支給する予定であった。しかし、2010年6月、財源問題により満額支給を断念するとの政府発表があり、支給額は今後も月1万3千円(またはこれ以上)となる見込みである。なお、実務上は毎月支給されるわけではなく、複数月をまとめて支給している。

支給に際し、所得制限や国籍制限はなく、保護者が日本に住民登録または外国人登録をしていれば、受給権がある。子が、海外にいても構わない。

児童養護施設の入居児童の場合には、この制度の直接の対象にならない場合もあるが、公平性のため、政府は同等の措置を実施している。

類似制度には子ども手当施行以前に行なわれていた児童手当児童手当法による)がある。児童手当には所得制限があるが、子ども手当にはない。子ども手当施行に伴い、従前の児童手当は廃止となる。ただし初年度のみ、行政内部的には児童手当制度を部分的に継続しており、条文にもそれに関する部分がある。

この法律は、高校無償化法とセットで提出され、実施されている。

目的・背景

日本では少子高齢化が進行し、2010年現在は、3人の現役世代で1人の高齢者を支える形になっているが、2055年には1人の現役世代で1人の高齢者を支える状況となることが見込まれている。一方、日本における子どもの貧困率は14.2%と、OECD諸国平均の12.4%より悪くなっており、片親の子どもの貧困率は54.3%とOECD諸国(平均30.8%)中最低となっている。日本政府が子育ての支援にかけている予算は、GDP比でスウェーデン3.21%、フランス3.00%、ドイツ2.22%に対し、日本は0.81%と先進国中最も少ない国の一つとなっている。特に6歳以下の子どもへの支援額がOECD諸国平均と比べ非常に低いとOECDに指摘されている。また子育て世代は等価可処分所得中央値が1998年から2007年の10年で10%以上落ちるなど収入に余裕がなく、子どもが学校に通うようになると教育費も大きく増加して経済的負担が大きくなる面もあるため、民主党は子どもの幼少から就学までのトータルでの支援が必要だとしている。

こうした状況を踏まえ、子ども手当法は、「次代の社会を担う子ども1人ひとりの育ちを社会全体で応援する」こと及び「子育ての経済的負担を軽減し、安心して出産し、子どもが育てられる社会をつくる」ことを政策目的としている。なお、子ども手当法第2条にて、「子ども手当の支給を受けた者は、前条の支給の趣旨にかんがみ、これをその趣旨に従って用いなければならない。」と記述されており、給付金を子どもの成長及び発達のために使用する責務がある。


問題点

成立以前より、財源の確保が問題視されており、対応に苦慮した国と地方との間で負担割合についての対立もみられた。現在、財源には扶養控除配偶者控除などを廃止、景気、雇用対策費などが削減され充てられる方針となっているが批判もあり、国際経済機関にも見直しを求める意見がある。また法制度も整備されているとはいえず、枝野行政刷新相は「対応を間違った。まずは運用で悪用をはじくと同時に、来年度からは制度を変える準備作業に入っている」と見直しを急ぐと表明した。不審な申請と疑われる事案なども発生している。

財源の問題

民主党が野党時代から主張してきた政策であるが、財源の確保が明示されていないことが問題点として指摘されている。財源は初年度で2兆2500億円、翌年からは倍の4兆5000億円ほど必要になる予定。財源不足に対し、民主党は扶養控除配偶者控除の廃止を充てるとされる。これによって得られる税収増は扶養控除8000億円、配偶者控除6000億円であり、子ども手当の必要経費には及ばない。他にも、補正予算の子育て応援特別手当を停止することで1100億円積み増すなど財源の確保に努めている。子ども手当の負担について国側で負担するのか、地方公共団体に負担をさせるのかで意見が割れるなど。全国市長会では子ども手当を全額国費負担を求める決議を採択した。 また、松沢成文神奈川県知事は地方負担なら子ども手当をボイコットすると宣言、群馬県静岡県大阪府和歌山県岡山県宮崎県の7人の知事連名の要望書を国に提出した。

自民党政権時において作られた2009年度補正予算の削減を行い、それを子ども手当の財源に回すとしているが、補正予算の中には、緊急の景気・雇用対策、新型インフルエンザ対策などが削られることになり、竹中平蔵総務大臣は、「小さな無駄を減らし、大きな無駄を作ることになる」と批判している。

子ども手当の財源が不足しているという指摘に関し、『産経新聞』がおこなった世論調査によれば、回答者の6割以上が「所得制限を行うべき」とし、小沢一郎元民主党幹事長も「所得制限をすべき」という陳情書を政府に要請した。これに対し、菅直人総理は所得制限について所得の把握を知るための費用のほうが所得制限以上の負担になるとして否定し、所得制限は行わないことが決定した。

国際通貨基金経済協力開発機構などの国際経済機関からも見直しを求められている。国際通貨基金(IMF)は日本の財政赤字が国内総生産(GDP)に対して10.5%に達する見通しであると発表し、子ども手当など国債増発によりイギリスアイルランドのように大規模な財政調整が必要になると指摘した。経済協力開発機構(OECD)は、子ども手当を実行するよりも、OECD加盟国中最低の母親の就労率を上げるために保育施設の充実などといった少子化対策を行うべきだと指摘。また、税制改革として「給付付き税額控除」を導入し、所得格差を是正することを提言した。

2010年度予算の暫定措置として、地方自治体や企業などが反発するなか、支給額2兆2554億円から国の予算から差し引いた5089億円分を児童手当と同じく地方自治体や企業に負担させることを、菅直人副総理、原口一博総務相藤井裕久財務相長妻昭厚生労働相が同意した。

扶養控除・配偶者控除廃止による負担増

財源確保のため、民主党が扶養控除配偶者控除廃止を示唆している。扶養控除・配偶者控除廃止でも子ども手当により15歳以下の子供が1人いる家庭では年収500万円の場合、23万900円増になると試算され、また、15歳以上でも公立高校に通う子供がいる家庭の場合は、高校無償化法制定の恩恵があるが、15歳以下や公立高校に通う子供が居ない家庭では増税となり、子供が居ない専業主婦の世帯、大学生以上の子供を持つ世帯、子供が成人し親の介護のために働けない世帯にとっては、大きな負担になる。日本共産党は、扶養控除と配偶者控除廃止により、民主党の説明の倍以上の増税や、全世帯の18%(約920万世帯)が平均年4万円の負担増に繋がるとして批判している。

第一生命経済研究所によると現行の月額1万3000円に据え置かれた場合、2013年度までに年少扶養控除(16歳未満)が廃止されるため3歳未満の子ども1人の場合には年収700万円以下の世帯すべてで負担増となるとしている。また、配偶者控除の廃止が実施に移されれば子供のいない専業主婦世帯では年収に関係なく負担増となる。

受給対象外問題

厚生労働省児童手当管理室によると、乳児院や児童養護施設などで暮らす子どものなかで両親の生死に関わらず不詳の場合は子ども手当が受給されない。その対象になる子どもは約2400~5000人いると言う。これに対して西日本にある養護施設長は「施設で暮らす子どもたちについて根本から考えるべきだ」と指摘、民主党内からも「子ども手当の理念に沿ってない」という声が上がっている。

海外に子供を残してきた外国人労働者にも子供の人数に応じて支給

厚生労働省児童手当管理室によると、保護者が日本に居住していれば子供の物理的位置に関係無く支給対象となる。これは児童手当の受給資格を踏襲しているためであり、元々は日本国籍で日本に居住する親のみが対象であり、子供が海外留学等で海外にいても受給資格を与えることが相当であるとの考えでそのようになっていたのだが、国際化の流れで1982年に国籍条件が撤廃されたことによる。

自民党衆議院議員大村秀章棚橋泰文らは、この点を「日本人の子が借金を背負い、国内だけでなく海外に居る外国籍の子まで養育するのが友愛精神か」と批判、参議院議員丸川珠代は2010年3月25日参議院厚生労働委員会にて「欠陥法案をそのまま実施するのか」「この愚か者めが!」と絶叫し批判したが、法案の議論・修正は行なわれず、民主党の強行採決により法案は成立した。

その後、民主党政権は支給要件の確認を下記に示す通り厳格化。枝野幸男行政刷新相は「対応を間違った(中略)来年度からは制度を変える準備作業に入っている」と発表、平成23年度以降は子どもにも日本国内居住要件を課すことを検討することとなった。

  1. 少なくとも年2回以上子どもと面会が行われていること。
  2. 親と子どもの間で生活費、学資金等の送金が概ね4ヶ月に1度は継続的に行われていること。
  3. 来日前は親と子どもが同居していたことを居住証明書等により確認すること。
  4. これらの支給要件への適合性を判断するために、提出を求める証明書類について統一化。
  5. 日本国内に居住している翻訳者による日本語の翻訳書の添付を求め、その者の署名、押印及び連絡先の記載を求めること。

国外の外国人に約10億円が支給される

自民党の調査により、2010年度、日本在住の外国人が母国に残した子供7,746人に、子ども手当てが支給されたことが分かった。その総額は10億円に上る。調査に未回答の市町村もあり、人数や金額はさらに増える可能性がある。

日本に居住する日本国籍の子供でも、両親が海外に居住している場合は不支給

一方で、日本人であり、子ども本人が日本に居住していても、保護者が(単身赴任などにより)海外に居住しており、生計を維持する者が日本国内にいない場合は支給対象にはならない。

野党側は上記の問題を指摘していたが、法案の議論・修正は行なわれず、民主党の強行採決により通過した。

人数制限

厚生労働省は児童手当の場合と同様に、父又は母が子どもを監護し、かつ生計を同じくすること等が支給要件としており、支給に対して人数制限がないことが野党から問題視されていた。

インターネット上でも「100人を養子縁組しても手当はもらえる」という批判が起こり、厚生労働省は4月6日、同省のホームページで「母国で50人の孤児と養子縁組を行った外国人」については支給されないとした。その根拠は子ども手当の支給要件は「監護」と「生計を共にする」であるが、支給要件の確認は自治体で厳格に行うとされており、50人もの監護は事実上不可能であるから、としている。これに対し各メディアは、50人なら不支給だという根拠が曖昧だとして批判している。ネット上では「49人ならOK!」という主張がなされた。

実例として、2010年4月22日に兵庫県尼崎市市役所窓口で、韓国人男性の母国であるタイ養子縁組した子供が554人居るとして、554人分の子ども手当(年間換算で 8642万4000円)の支給を申請しに来ている。この韓国人男性はタイ政府が発行したという証明書を持参しており、市窓口の担当者が「養子はどの子ですか」と聞くと「全員です」と答えた。男性は「タイに定期的に渡航し、現地で子どもたちと寝起きしている」と主張した。このケースは、「書類上は条件を満たしている」が、判断を仰がれた厚生労働省は「554人の子供と生計を同じくしているとは判断できず、社会通念上も認められない」として支給対象にならないと判断した為、尼崎市側は申請を受理しなかった。