男
男性という言葉で、生物学的な性差に関して言う場合、文化・社会的な性別(ジェンダー)に関して言う場合、それらを総合した広範な人間の諸性質に関して言う場合などがある。現在ではより厳密に言えば、男性であるということは、性染色体の性、外性器の性、内性器の性、社会的な性(ジェンダー)、法律上の性、性自認、性的指向の7つで形成される、と考えられている。
生物学的な男性性[編集]
男性は動物のオスに相当する。解剖学的には、男性 性の根拠はまず男性外性器に求められる。出生時に男性外性器(陰茎)の存在が確認された人間は、男性であるものと認められる。
現代医学の立場から言えば、外性器だけでなく内性器もまた重要である。男性は精子を生産し種々のホルモンを分泌する精巣や、前立腺といった器官を持っている。
また思春期になると、視床下部による性ホルモン分泌の抑制機能が低下し、ホルモン分泌が増大する。これによって男性は次の様な身体的発達を生じる。
- 精巣容量が増大し、精巣が成熟する。精母細胞は活発に分裂して精子を生産し、最終的に精通が起こる
- 陰茎が発達する
- 陰毛の発毛。髭の発毛
- 変声により、声が1オクターヴほど低くなる
- 男性的な骨格の発達が起こり、女性に比べて肩幅が広くなるなどする。
- 平均的に女性よりも体格、体力が上回るようになる。
このような生物学的性差は根本的には染色体の型に由来する。上記のような解剖学的な意味での男性は、多くの場合(性染色体)としてX性染色体とY染色体を1つずつ持つ(XY型)。Y染色体上にはいわゆる男性ホルモン(テストステロン)の分泌をコードする遺伝子があり、発生の段階で、積極的にミューラー管のアポトーシスを起こし、ウォルフ管の発達をもたらす。
様々な遺伝的または外的要因により、上記に厳密には当てはまらない例も存在する(半陰陽の記事も参照のこと)。しかしながら、概ね上記に当てはまれば通常その人は男性と見なされる。そのボーダーライン上の判定は非常に難しく多分に個別的であるが、染色体型はその判定に大きな役割を果たす。
性染色体がXXY型などで発現が男性である例はあるが、その多くは本人も周囲も男性として受けとめられている。
また、まれにこうした生物学的な性別を受容することを困難とする人もあり、性同一性障害と診断されるケースもある。ホルモン剤の投与や外科手術などで、性的な特徴を外見的に変更することも行われる。
男性と疾患[編集]
男性特有の疾患として前立腺疾患、痛風がある。また、十二指腸潰瘍、尿路結石、急性膵炎、大腸ポリープが女性に比べて多く、心臓病、脳溢血(およびそれによる脳血管痴呆)など循環器系の病気が多いのが特徴である。
貧困国を除けば、男性は平均寿命が女性に比べ短い。これは男性ホルモンが代謝を上げる作用を持ち、細胞の損傷が多くなること、免疫力を上げ血圧を下げるエストロゲンの分泌が少ないこと、体質の差により男性は女性と比べて内臓に脂肪のつく健康リスクの高い太り方をする傾向があることが生得的な原因として考えられている。ただしそれ以上に喫煙率が高いこと要出典、過労死や自殺者が男性に多いこと要出典、生命の危険を伴う仕事に従事する割合が女性と比べて多いことなどの環境的・社会的な理由も見逃せない。
男性と生殖能力[編集]
男性の自然生殖能力は、閉経に伴い排卵しなくなるため自然生殖能力を失う女性(なお、日本人女性の平均閉経年齢は50歳)と比べて長い。ただし、ヒトの男性の精子も中高年になると劣化する。中高年男性の精子は、若い男性の精子に比較してDNAの損傷が激しく、女性を孕ませる能力等が低下することが近年の研究で明らかになっている。欧州での報告によると、被験者2,100人を対象とした研究で、45歳を超える男性の精子DNAの損傷は、それ以下の年齢グループに比較して有意に高く、30歳未満の男性との比較では2倍であった[1]。さらに、米国の研究においても、DNAの損傷と染色体異常は男性の年齢と共に増加し、遺伝子の突然変異による小人症(軟骨形成不全症)の発症率は、男性が1年歳をとるごとに2%ずつ増加することが報告されている[2]。
文化・社会的な男性性[編集]
男性は身体的にだけではなく、持っている精神的性質や文化、社会的立場に関しても女性とは異なった統計集団であるといえる。ただし、これはあくまでも統計集団としての一般的傾向の話であって、ある男性Aと女性Bを連れてきてその2人を比較した場合に常に成り立つとは限らない。これに当てはまらない人物や、特定の局面というものは無数に存在する。
精神的な性質について極めて大雑把に言うならば、男性は女性よりも積極的・自立的・能動的であることを要請されることが多い。事実上記のような性質が強い傾向が見られるが、それはそのような要請下で教育される事の影響も大きい。
社会の仕組みの中でも、男性は女性に比べてより多くの権利・選択肢・責任・義務を与えられる傾向がある。例えば現在の日本では、企業活動における意志決定権とそれに伴う責任、あるいは職業を選択し労働する権利と家族を扶養する義務に関しては、事実上は男性により多くが与えられる傾向がある。
このような仕組みは、産業革命以降確立してきたが、世界的にはそれ以前より男性中心的な社会構造をもつ文化が多い。これは、古代より男性がその体力を活かして狩猟を行い、一族の食料を確保してきた歴史的経緯に由来すると言う説もある。
比喩[編集]
動物ならば、日本では、狸(女性は、狐)、西洋では狼(女性は、羊)に例えられることがある。
脚注・出典[編集]
関連項目[編集]
このページはウィキペディア日本語版のコンテンツ・男を利用して作成されています。変更履歴はこちらです。 |