「荻野友花里さん殺害事件」の版間の差分

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「裁判員制度の弊害ですね。制度導入に伴い、新聞・テレビは裁判員に先入観を持たせないようにとガイドラインをつくり、前科前歴をはじめとする事件情報をまともに流さず、自己規制しているんです」(全国紙社会部デスク)
 
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2014年12月31日 (水) 11:46時点における版

殺害された荻野 友花里さん

荻野友花里さん殺害事件とは、2009年10月22日千葉県松戸市松戸のマンション2階で発生した殺人放火事件。

事件

殺害された荻野 友花里さん

2009年10月、千葉県松戸市のマンション2階で火災が発生し、焼け跡からこの部屋に住む千葉大学園芸学部4年の荻野友花里さん(当時21歳)が全裸のまま遺体で見つかった。

遺体を調べた結果、刃物による傷があったため、殺人事件として警察捜査。その結果、事件後に現金自動預け払い機防犯カメラから荻野友花里さんのカードで現金2万円を引き出す竪山辰美の姿が映っていた。警察はこの男の洗い出しを進め、すでに別の強盗強姦事件で逮捕されていた住所不定・無職の竪山辰美(当時48歳)が強盗殺人並びに現住建造物放火などの容疑で逮捕された。竪山辰美は1984年と2002年にそれぞれ強盗や強姦事件により懲役7年の判決を受けて、2009年9月に刑務所を出所してからわずか1か月半だった。強盗傷害などと合わせて起訴された。

その後、2011年6月の千葉地裁裁判員裁判において、千葉県松戸市で被告が荻野友花里さんのマンション宅に侵入して包丁を突き付けて現金約5000円とキャッシュカードを脅し取り、胸を刺すなどして刺殺した後に証拠隠滅のため22日に火を放ったと認定。

争点となった殺意についても強い力で殺意をもって胸を刺したとした。検察側の求刑通り死刑判決が下された。波床昌則裁判長は判決理由について、「犯行態様は執拗で冷酷非情、結果も重大である。出所後も数多くの犯罪を重ねており、被告の更生の可能性は著しく低い。また、(弁護側の死刑回避の主張に対して)死亡した被害者が1人であっても、極刑を回避する決定的な理由にならない」とした。また、竪山辰美が「命を持って償いたい」と話していたにも関わらず、証言証拠と食い違い真実が述べられておらず反省が認められないとも述べた。裁判員裁判において、「殺人の前科のない被告に、1人の殺人で死刑判決が出た」のは初めて。

村井宏彰主任弁護人などの弁護側は死刑判決を不服として即日控訴した。2013年10月8日、東京高等裁判所において一審が破棄され、無期懲役の判決が下された。これについて村瀬均裁判長は「計画性が無く、1人殺害の強盗殺人事件で死刑となった例が無い」との判断を示した。裁判員裁判の死刑判決が控訴審で破棄されたのは2例目となる。

識者・マスコミの偏見

荻野友花里さんは水商売のアルバイトをしていた。これが影響してか、「夢は農家・夜はキャバ嬢・千葉大生2つの顔」(週刊文春)や「彼と別れたばかりで殺された美人女子大生。キャバクラ勤めの稼ぎ方」(週刊新潮)など、週刊誌で荻野友花里さんはあまりいいように扱われなかった。また、元警察幹部は週刊誌の取材で「荻野友花里さんが全裸で抵抗した形跡も無く、遺体には布団がかけられていた。さらに放火などという作業もしており、男女のもつれによる顔見知りの犯行」などと答えて、捜査を混乱させた。これらは逆に一部の有識者やマスコミの権威を失墜させる一因となる(実際には荻野友花里さんと犯人の間に面識は無く、犯人による流しの犯行だった)。

被害者・荻野友花里さん

殺害された荻野 友花里さん

荻野友花里さんは東京台東区上野「FINE」のナンバーワンだった。整形美人であったと言われる。

そして、このキャバクラは、店外デートがウリだった。指名して3回通うと店外デードで何処にでもついて来ることが可能だった。それとは別に、複数の男性に部屋の鍵を渡していたことを警察当局は把握していた。

殺害され上、自宅マンションを放火された千葉大学園芸学部4年の女子学生荻野友花里さんは、消息筋によれば、多額の借金をかかえ、東京都台東区にあるキャバクラでアルバイトのキャバクラ嬢をしていた。また、韓国に何度も渡航し、カジノで遊んでいたという。借金は、カジノでの遊興によるものである可能性が出てきた。

このキャバクラは、東京都台東区上野にある「ファイン」という店。荻野さんは8月まで千葉県松戸市にある居酒屋でアルバイトをしていたが、それをやめ、その後、このキャバクラで週2回程度の割合で働くようになった。荻野さんは、このキャバクラに2年前にも勤めていたが、その時は数ヶ月でやめたと同店では話している。荻野友花里さんは、このキャバクラでは、「美咲ゆかり」と名乗っていた。

荻野さんは、殺害される1か月ほど前に恋人と別れており、また、殺害時、複数の男性に合い鍵を渡していたことがわかっている。

荻野友花里さんは兵庫県出身で高校時代も陸上部の主将、3年の運動会で応援団長を務めるなど、明るく活発な人物だったという。また、大学卒業後は教員になるべく、試験に向けて勉強を重ねていた最中だった。

凶悪犯・竪山辰美

殺人犯・竪山 辰美

竪山辰美は鹿児島県出身で、中学卒業後に大阪府など各地を転々とした。職業も宅配・長距離トラック運転手、建築作業員、パン屋住み込み従業員などを転々としている。妻子もいるとされ、犯人を知る人たちは、「自治会の役員になったまじめな人」と語っている。

初犯は2002年4月、神奈川県海老名市のアパートで20歳前後の女性宅に侵入し、女性に怪我をさせて現金などを奪って逮捕された事件であるとされる。これが原因で妻子から縁を切られて網走刑務所に7年間服役した。松戸事件の1ヶ月前に出所したが、定職も金も無く、生活に困窮していた竪山辰美は千葉県内で盗みを繰り返していたという。ところが警察の調べで、生活費に困っていたはずなのに上野などで豪遊する竪山辰美の姿も目撃されており、窃盗で得た金で豪遊していたのではないかとされる。松戸事件ではベランダを伝って2階の荻野友花里さん宅に侵入。犯行に及んだ。

竪山辰美には出所後に起こした窃盗及び女性を狙った強盗強姦の余罪が合計で11件もあり、裁判ではこれら(特に強盗強姦の5件)も一括で審理された。また、松戸事件で被害者の手足をストッキングで縛ったり、遺体に布団をかけて放火するなどの手口は1996年柴又女子大生放火殺人事件と手口が酷似しており、この件も警察の追及を受けている。

供述(2010年1月)

殺人犯・竪山 辰美
殺人犯・竪山 辰美の行動

「あの子が自分から服を脱ぎ始めたんですよ」

あまりに卑劣な供述に捜査員は思わず吐き気を催した。こんな男がなぜ野放しにされ、鬼畜の凶行を重ねることができたのか。

成人式の祝賀ムードに日本中が沸いていた一月の三連休中のこと。千葉大学園芸学部四年の荻野友花里さん(21)殺害放火事件の捜査本部が置かれた千葉県警松戸署は、重苦しい雰囲気に包まれていた。取調室で、住所不定・無職の竪山辰美(48)が、取調官の耳を疑うような供述を始めていた。

「目の前で、あの子が自分から服を脱ぎ始めたんですよ」
「では、なぜ刺したんだ」
「『わたしも死にたい』と言われたんでね。『わたしを刺して、あんたも死ねばいい』と」

竪山は悪びれるそぶりもみせず、荻野さんが自ら性交渉を求め、揚げ句の果てに自殺願望者だったなどと口にした。松戸署に駆けつけた千葉県警捜査一課の中村修一課長は、その報告を聞くと殺気立つほどに顔を上気させた。ほかの捜査幹部たちも一様に顔をしかめ、吐き捨てるように言った。

「まるで鬼畜じゃないか」

荻野さんの事件は一月に入り、急展開を見せた。6日には、千葉県佐倉市の民家で30代の女性と60代の母親に暴行を働いた上、奪ったカードでコンビニのATMから現金55万円を引き出した強盗致傷容疑などで逮捕された。逮捕はこれで3度目。

「これで竪山も、ようやく捜査本部が本気だと悟ったんです」

そう地元記者も語るように、その直後から、竪山は「包丁で刺して、火を付けました」と自供を始め、上申書も提出。供述通り、荻野さん宅に近い園芸学部の寮が建つ敷地斜面から、血のついたTシャツにくるまれた包丁や、荻野さん宅のドアの鍵も発見されている。

2009年11月の最初の逮捕当初こそ、荻野さんのキャッシュカードを使ってJR松戸駅近くのATMで現金2万円を引き出した男の画像を「自分です」と認め、「部屋に侵入してカードを盗んだ」と供述していた。

しかし、あくまで荻野さんは不在だったと言い張り、やがて、殺人容疑を視野に本格的な弁護活動に乗り出すため弁護士が複数付くようになると、竪山はすっかり荻野さん事件について口を閉ざすようになる。

しかも、2009年9月に刑務所を出たあとの惨めな境遇を自ら持ち出し、「冷たい世間に放り出されてしまった。仕事もないし、カネもない」と取調官の同情を誘うかのような話に終始する始末。

「放火された荻野さんの部屋は、消防車の放水で指紋や足跡は押し流され物証の乏しい事件でした。強姦された可能性がありますが、肝心の下半身が焼けてしまい、タンパク質でできた体液も燃えてしまって検出できなかったんです。ちょうど、英会話講師リンゼイさん殺害事件の市橋達也容疑者も完全黙秘を続けていたときで、県警首脳は頭を悩ませていました」

そんな折り、竪山から突然の自供が飛び出したのは、ある計算が働いたためだ。捜査関係者が語る。

「三度目の逮捕でさすがに逃げ切れないと踏み、死刑だけは免れようと、竪山は殺意を否認した上で、ほかは認めようという捨て身の作戦に出たんだ。でも、反省の色なんてこれっぽっちもないよ。死者にむち打つようなひどい供述は、やむことはなかったんだ」

「なぜ刺したんだ」と迫られた竪山は、やがて、奪ったキャッシュカードの暗証番号を聞き出すために刃物をちらつかせ、荻野さんを脅したと認める。そしてこう供述した。

「ちょっと切りつけたらあの子が騒ぎ出して……。もみ合っているうちに、つい刺しちゃったんですよ」

これも作り話ではないかと捜査関係者はみる。これまでの捜査で、荻野さんの遺体に激しく抵抗したあとは見つかっていない。そもそも、手足をグルグル巻きにされ、口にストッキングで猿ぐつわをはめられた荻野さんがもみ合ったり、抵抗できるはずもないからだ。

しかし、冒頭のように、抵抗できなかったことを逆手にとり、荻野さんが自殺願望を唱えたかのように言い出す竪山。荻野さんが自ら誘うように服を脱いだと話したあと、笑みを浮かべながら付け加えている。

「あの子は『わたしはキャバクラ嬢。いつも片手の指いっぱいの男と同時に付き合ってるの』と言い出したんですよ」

過去三度の逮捕容疑からみて、荻野さん宅に押し入ったのも強姦目的だったことは容易に類推できる。なのに、殺害容疑から逃れようと腐心する男。

2010年に入ったころから、竪山は留置場の中でしきりとノートに書き込みをするようになっているという。荻野さんの遺体の状況とつじつまが合うようにと供述を練っているのか。それとも自省の念をつづっているのか。

少なくともいえるのは、自供後も、竪山の口から謝罪の言葉を聞くことは一切ないということだ。

報道されない前科

殺害された荻野 友花里さん

「裁判員制度の弊害ですね。制度導入に伴い、新聞・テレビは裁判員に先入観を持たせないようにとガイドラインをつくり、前科前歴をはじめとする事件情報をまともに流さず、自己規制しているんです」(全国紙社会部デスク)

例えば、竪山は過去7回にわたり女性を襲う事件を起こし、最後の2002年には、神奈川県海老名市の女性看護師を襲った強盗傷害事件で実刑判決を受け、北海道月形刑務所に服役しているが、こうした事実も報道すればガイドライン違反になる。

2009年9月1日に出所したことすら、前科を想起させるからと、デスクの手を通らない新聞社もある。これで果たして、まともな報道などできるのだろうか。

流れ流れて都内のサウナに宿泊し、土地勘のある千葉に出向いては次々と女性を襲っていたわけで、元をただせば、行政側の不行き届きが指弾されるべき事実。それを、前科報道自粛が邪魔をして、メディアに検証する術がないというのでは、本末転倒ではないか。

しかも竪山は、出所後わずか2カ月ほどの間に、判明しているだけでも5人の女性を襲っており、その尋常ならざる手口をみれば「どれもこれも重大犯罪」(前出・捜査関係者)。

なのに、荻野さん事件に関与したと判明するまで匿名扱いにされ、容疑者の人権ばかり保護されたのだ。

「例えば、最初の逮捕容疑について、新聞・テレビは「11月2日朝、千葉県内の民家に侵入した48歳の男が30歳の女性を包丁で脅し、現金18万円を奪ったうえ暴行しようとした」と報じただけ。事件の核心はもうひとつの容疑名である『強姦未遂容疑』だったのにその点は軽視され、真相は何も伝わっていない。この容疑の適用にこそ、竪山の残虐ぶりを示すウラがある」(同前)

竪山はこの日、家の主が出勤するのを見届けた午前8時40分ごろ、民家に侵入。二人の幼い子どもたちがいる前で女性を緊縛し、右手で頭を殴打して「騒げば、殺す」と脅迫。おびえて身動きを止めた女性を強姦しようとしたところ生理中と知るや、なんと、女性の肛門で射精していたのだ。

「刑法では、これは性交とみなさないため、『強姦未遂』。しかし、生理中の女性に陵辱の限りを尽くした竪山のやり口は、むしろ法律の定める強姦なるものよりも下劣な行為じゃないか。なのに、荻野さんの別件報道になると恐れた新聞・テレビは、匿名にした上、この陵辱事件の事実関係をほとんど報じなかった」(同前)

報道のあり方ばかりを批判するのも不公平かもしれない。竪山が月形刑務所を出所後に犯した「別件事件」を明らかにすることは、すなわち、千葉県警の捜査の失態そのものを暴露することにほかならないからだ。

竪山の逮捕容疑だけ追ってみても、①2009年10月3日に松戸市の荻野さん宅近くにある76歳の女性宅で強盗致傷を起こし、②4日後、同県佐倉市で30代女性を強姦、一緒にいた60代の母親も暴行、③2週間後に松戸市に戻って荻野さん宅に侵入して殺人放火事件に手を染め、④11日後、2人の子供の目の前で30歳の女性を陵辱――このわずか1カ月の間に、5人の女性が性的暴行を含めた被害を受け、命すら落とす重大事件に巻き込まれていたのだ。

「許せないのは、荻野さんの他殺体が見つかっても、千葉県警はまともな緊急配備を敷かず、竪山を事実上野放しにしていたことなんです。最後に、30歳女性が襲われたときも、現場では、駆けつけた佐倉署員が10人ほどオロオロするばかりの光景が目撃されています。素人目にみても、荻野さん事件の犯人ではないかと真っ先に疑うべきなのに、このときも、県警はまともな配備を怠りました」(前出・地元記者)

ちなみに、千葉県警はこれらの「別件事件」の発生について一切報道発表していない。「性的被害の流布を恐れた」という理由だが、全国的にも凶悪犯罪として報じられた荻野さん事件の起きた後、逃亡する殺人犯につながるかもしれない情報を提供せず、いったいどうして住民は自己防衛をしたらいいのか。

市橋達也のときも、千葉県警は緊急配備をせず、捕まえる手立てを講じなかった。市橋事件の教訓を忘れ、おぞましい再犯事件を繰り返す男を再び野放しにした千葉県警。そして、その体たらくを「人権報道」や「裁判員ガイドライン」を持ち出して検証しない報道のあり方こそが問われている。

裁判

「女性は常に強姦されたい」竪山、犯行時の認識語る(第3回公判)

強盗殺人などの罪に問われた無職、竪山辰美(50)の裁判員裁判の第3回公判が10日、千葉地裁(波床昌則裁判長)で開かれた。

この日は荻野さんの事件以降に、竪山が酒々井町で起こした強盗強姦未遂など3事件について審理された。竪山は弁護側の被告人質問で、犯行時の認識について「女性は常に『強姦されたい』という思いがありながら、殺されるのが嫌だから拒むのだと思っていた」と話した。

一方で「かよわい女性を襲うことは、男として人として情けなく思う」と述べ、現在は反省していることを強調した。

また、冒頭に検察側は強盗強姦未遂事件の被害女性の供述調書を朗読。それによると、犯行時、竪山は包丁を突きつけながら、「以前に同じように脅したとき、『殺せるものなら殺せ』といわれ、本当に刺したことがある」と女性を脅迫した。

1審(裁判員裁判)死刑、2審無期。 検察・弁護双方が上告(2013年10月)

裁判員の下した死刑という結論は、なぜ覆されたのか-。

千葉県松戸市で平成21年、千葉大4年の荻野友花里さん=当時21歳=を殺害したなどとして強盗殺人罪などに問われた無職、竪山辰美(52)への死刑判決が控訴審で破棄された。

検察側と弁護側双方が、判決を不服として上告。裁判員の死刑判断の適否を問う舞台は、最高裁に移された。「娘より犯人の命の方が重いのか」。荻野さんの両親は、極刑を求めて上告審の行方を見守る。

「今日は4年前、友花里が竪山に殺されて燃やされた日です。昨日、高検から上告という知らせを受けて、友花里の日に上告していただいて、大変うれしく思っております。今回の裁判については全然、納得がいきませんでした」

上告を受けて22日に会見した荻野さんの父、卓(たかし)さん(64)は、報道陣を前に、苦しい胸の内を語った。東京高検が上告した21日は荻野さんが亡くなったとされる日。弁護側が上告した22日は、竪山が現場に戻って室内に放火した日だ。

今月8日、東京高裁が言い渡した判決は、卓さんと妻、美奈子さん(61)にとっては信じられないものだった。

「主文、原判決を破棄する。被告人を無期懲役に処する」

高裁の村瀬均裁判長が読み上げた主文の意味するところは「被告に科すべき刑は、死刑ではなく無期懲役」。1審千葉地裁の裁判員裁判が出した判決を覆すというものだった。

「私も主人も、頭が真っ白になりました」と美奈子さん。卓さんも「え?!あんだけ何日もかかって死刑(判決)をもらったのに、と思った」と振り返る。

1、2審判決によると、竪山は平成21年10月20日夜ごろから21日未明にかけて、松戸市のマンションの荻野さん宅に侵入。包丁で脅して現金などを奪った上、胸を刺して殺害。翌22日には、証拠隠滅のため現場に戻り、室内に放火するなどした。

竪山は、強盗致傷などの罪で懲役7年の判決を受けて服役。平成21年9月1日に満期出所し、わずか約1カ月半後の犯行だった。

裁判員裁判によって行われた1審では、荻野さんが殺害された、いわゆる「松戸事件」の前後に、竪山が強盗致傷や強盗強姦を繰り返していたことなどを重視。「松戸事件」以外の犯行でも刃物を使用しており、場合によっては他の事件でも被害者の生命身体に重篤な危害が及ぶ危険性があった、として「死刑をもって臨むのが相当」と結論づけた。

これに対して、2審が死刑回避の理由として挙げたのが「先例」だ。

「殺害された被害者が1人で、殺害行為に計画性がない場合には死刑は選択されないという先例の傾向がある」と指摘。先例とは異なる結論を採るにあたって「合理的かつ説得力のある理由を示したものとは言い難い」と判断した。「死刑以上の判決をずっと訴えてきたので、死刑は当たり前だと思っていた」という卓さん。無期懲役と結論づけた2審判決に、憤りをぶつけた。

「友花里の無念さを晴らすために頑張ってきたつもりです。選ばれた裁判員さんが、何日もかかって決めたことを無視するかのように、覆すというのは、どうしても納得がいかない」

平成21年10月23日、千葉県警松戸署からの連絡で、平穏な生活は大きく変わった。兵庫県の実家を離れて千葉県で暮らす友花里さんの死を伝える内容だった。あれから4年。ようやく得た死刑判決も、高裁でのわずか1度の審理で覆されてしまった。

「被害者の命と犯人の命、どちらが重たいんでしょうか」と訴える美奈子さんもまた「死刑以上の重い罪があれば、そのような罪にしてほしい」と求める。美奈子さんは、「友花里は『お母さん、私の命、こんなもんとは違うでしょ。お父さんとお母さん、頑張ってよ』って言っていると思います」と話す。卓さんと美奈子さんは、最高裁でも審理に立ち会えるよう、被害者参加を求めている。「私らの無念を晴らしてくれるのは、裁判だと思っています」と卓さん。美奈子さんも「最高裁で、死刑の判決がきっちりと出されることを願っています」と話した。

犯罪被害者支援弁護士フォーラムの事務局長、高橋正人弁護士は「裁判員裁判が、先例と違う判断をするのは当然。高裁の裁判官が『先例と異なる』として1審判決を破棄するのは、裁判員裁判の制度を否定することになる」としている。

「先例主義ならロボットが判断すればいい」(全国犯罪被害者の会の松村恒夫代表幹事)との批判の声が上がる。機械的な尺度で死刑を破棄すれば、国民の健全な社会常識や生活感覚を反映させるのが狙いの裁判員裁判の意義を損ないかねないのだ。

ただ、裁判員裁判で言い渡された求刑超えの量刑が上級審で見直される可能性も出てきた。大阪・寝屋川女児虐待死事件(平成22年)では、1審大阪地裁は検察側の求刑の1.5倍となる懲役15年を言い渡した。2審も支持したが、最高裁は6月に結論の見直しに必要な弁論を開く。

すでに上告審に舞台を移した1審死刑破棄のケースとともに、最高裁の判断が注目される。