ビッグイシュー
ビッグイシュー(The Big Issue)は、ホームレスの社会復帰に貢献することを目指すとする企業であり、またイギリスを発祥に世界で販売されるストリート新聞のことである。
概要[編集]
1991年、イギリスの化粧品製造会社主宰・ゴードン・ロディックがアメリカでホームレスのみが販売できる新聞(street newspaper)を見かけたことをきっかけに、知人のジョン・バードに依頼・調査してもらった。すると、「ビジネスとしてロンドンで成功するだろう」という結論を導き出した。
1991年、ホームレスの社会福祉情報だけでなく、エンターテインメント情報なども重視してロンドンで「ビッグイシュー」の第1号を発行。見事大成功を収め、イギリス各地はもとより全世界各地で続々と各言語に翻訳・独自編集し、発行されている。
イギリス女王エリザベス2世が1度購入したことがある。
「若年層ホームレス」という新現象[編集]
雑誌販売をホームレスに任せて自立を支援する「ビッグイシュー日本」(大阪市北区)が新たな問題に直面している。
平成15年に創刊した当初は中高年がほとんどだったホームレスの様相が変容し、平成20年のリーマンショック前後から、30代以下の若者が増えているのだ。こうした若者たちは毎日立ち続ける雑誌販売の仕事を続けられないことが多く、若者を支援する他の市民グループとの連携が不可欠となっている。
「ビッグイシューが好きで続けている。若い人が買ってくれるとうれしい」
奈良県出身の入島輝夫さん(51)は、30代で親元を離れ、建築関係の仕事に就いていたが、そこでの人間関係に疲れてホームレスに。2年ほど神戸市内で段ボールや空き缶を集める仕事をしていたが、将来に不安を感じて平成22年11月からビッグイシューの販売員になった。
毎日午前10時から午後9時までJR高槻駅近くで販売を続けるが、食費や販売場所までの交通費、雑誌の仕入れなどを除くと、たまにネットカフェに宿泊するのがやっと。住居を構えるようになるのは容易ではないが、いつか悩める大人が集う「大人の駄菓子店」を開きたいとの夢を描く。
阪急塚口駅南口で販売する大阪府出身の吉田茂さん(53)は以前、仕事で右手に大けがをして生活保護を受給していた。保護を自ら絶ってホームレスになり、2014年4月からビッグイシュー販売員に。現在は販売員仲間2~3人と野外で寝泊まりする。
「これで良かったと思う。屋根のある家に住みたいとは思うが、今は仲間もいるから楽しい」と日焼けした顔をほころばせた。
販売員の多くは中高年だが、比較的若い人もいる。そのうちの1人、40代前半の男性は勤務していた会社の合併に伴う人員整理で解雇され、家を失った。2013年秋から販売の仕事を始めて約1年、最近アパートを借りることができたという。
「天気が悪いと仕事ができないのが悩み。今はとにかく、ビッグイシューの販売者として頑張りたい」
雑誌「ビッグイシュー日本版」は平成15年9月に大阪で創刊。毎月1日と15日に発売し、販売をホームレスに独占させて仕事を提供する。最初の10冊は販売員に無料で提供、この売上金をもとに1冊170円で仕入れてもらう。定価350円で、1冊売れるごとに180円が収入となり、アパートを借りて自立を目指すための資金にできる。
2014年4月末までの販売登録者はのべ1,543人、170人が自立して“卒業”した。仕事の提供以外にも支援を広げようとNPO法人「ビッグイシュー基金」を設立し、路上生活をしている人たちが活用できるサービスを紹介する「路上脱出ガイド」の配布も続けている。
ビッグイシュー日本の佐野章二代表(72)が異変に気づいたのは、リーマンショック前年の平成19年3月。仕事を求めて事務所を訪れた13人のうち、7人が30代以下だった。それまでに関わった人たちの大半はかつて建設などの現場で働いていた中高年だったが、その類型に当てはまらない人ばかりだった。
「びっくりした。きちんと調べなければと2年半がかりで、若者50人からヒアリング調査をしました」。
そして浮かび上がったのが、路上で寝るのを避け、24時間営業のファストフード店やコンビニをはしごしながら夜を明かす若者たちの姿だった。
ビッグイシュー日本が30代以下のホームレス50人に聞き取り調査した結果によると、路上のみで過ごす人は24%。大半の人が終夜営業店舗と路上を行き来していた。貧困家庭に育った人が多く、7割を超える人が家族と連絡が取れない。抑鬱傾向にある人が42%、アルコールやギャンブルなどへの依存傾向がある人も36%にのぼった。
これまで多かった中高年のホームレスの多くは製造や建設、土木の元現場作業員。自分のしてきた仕事に誇りを持ち、路上に毎日立ち続ける雑誌販売の仕事にも耐えられる人が多いという。対して若者は労働経験自体が少なく、ビッグイシューの販売を続けられる人は少数だ。虐待を受けた経験や障害、依存症などさまざまな問題を複合的に抱えた若者も多く、ひとくくりにできない。
「だからといって見過ごすわけにはいかない。他の支援策を考えなければ」。
他の民間団体との連携を深め、今年3月に「若者応援プログラム集」を作成。雑誌販売の仕事だけでは自立に向かえない若者たちに、個別の事情に合わせた支援の場を紹介している。
佐野さんは「失業して収入をなくし、家賃を払えなくなり住居をなくすだけでは人はホームレスにはならない。友人や家族などの身近な絆を失い、独りぼっちになり希望をなくしてホームレスになる」と訴える。社会的に孤立する人を減らし、「ホームレス予備軍」を路上に出させないために何ができるか、次の支援策も模索しているという。
発売している地域、国[編集]
地域版[編集]
- The Big Issue - ロンドン - 編集長: Charles Howgego
- The Big Issue in the North - マンチェスター地域 - 副編集長: Matt Baker
- The Big Issue Scotland - グラスゴー地域 - 編集者: Clare Harris
- The Big Issue South West - 事務所:ブリストル, 編集拠点:カーディフ - 編集者: Rachel Howells
- The Big Issue Cymru - カーディフ - 編集者: Rachel Howells
各国版[編集]
- The Big Issue Australia
- The Big Issue South Africa
- The Big Issue Namibia
- The Big Issue Japan(2003年9月より創刊、詳細は次項)
- The Big Issue Korea(2010年7月より創刊)
- The Big Issue Taiwan(2010年4月より創刊)
日本語版[編集]
日本では、2003年9月より大阪市にて、民間シンクタンクの代表であった佐野章二が中心となって日本語版を発行するようになった。体裁はA4判カラーページで32ページ前後。当初は月刊であったが、2007年10月現在では月2刊となっている(毎月1日・15日)。発行部数は、約3万5千部。発売都市は、順次拡大している。
発行元である「有限会社ビッグイシュー日本」に登録し、顔写真とナンバー入りの身分証を交付された「ベンダー」と呼ばれる販売者のホームレスから購入する。ベンダーは活動中、身分証を胸元に提示している。定価は300円で、1冊につき160円がベンダーの収入となる。2007年9月までは、定価は200円で、売り上げの55%(1冊当たり110円)がベンダーの収入となっていた。
2011年12月現在までに、販売員約1280人のうち、およそ150人が就職口を得ている。また、道路の使用許可を得て販売しているのかという疑問を持つ者もあるが、実際には道路の使用許可は必要はない。
2006年10月15日発行の59号では、2ページ強にわたってWikipediaについての記事が掲載された。
発売都市[編集]
括弧内の組織名は活動を支援している団体。なお、発行元である有限会社ビッグイシュー日本の事務所がある大阪および東京周辺は、各事務所が活動を支援している。
- 大阪市、高槻市(NPO法人釜ヶ崎支援機構)
- 京都市(ビッグイシュー京都)
- 神戸市
- 東京都
- 横浜市(NPO法人さなぎ達)
- 川崎市
- 青森市※現在販売休止中
- 仙台市(NPO法人仙台夜まわりグループ、仙台ビッグイシューソサイエティ)
- 広島市(ビッグイシュー広島販売支援)
- 名古屋市(ビッグイシュー名古屋ネット)
- 福岡市(ビッグイシュー福岡サポーターズ)
- 札幌市(ビッグイシューさっぽろ)
- 熊本市(ビッグイシューくまもとチーム)
- 鹿児島市(ビッグイシューかごしまサポーターズ)
- さいたま市(ビッグイシュー埼玉)