新幹線通勤
新幹線通勤(しんかんせんつうきん)とは、毎日の通勤手段として新幹線を利用することをいう。
歴史
東海道新幹線開業の1964年の時刻表に既に「熱海からでも東京へ通勤通学が可能」といった文章が見受けられる。ただ、一般化するのはイメージの通り、やや時代を下ってから(1980年代以降)である。新幹線を運営するJR各社では1983年2月にフレックス(下記)を導入し、新幹線利用の通勤が容易になった。
さらに1980年代後半のバブル景気と地価高騰はフレックスやフレックスパルの利用者増加に寄与し、新幹線通勤は徐々に定着していった。しかし、バブル崩壊後の不況などにより、その拡大にはかげりも見られる(下記参照)。
定期券の種類
規則上は特別企画乗車券の扱いとなっている。(定期乗車券記事を参照)
- 通勤(フレックス)
- 通学(フレックスパル)
- 幼稚園児用の設定もある。実際の発売実績については不明。
九州新幹線については通勤・通学の別に依らず「新幹線エクセルパス」の名称である[1]。
利用状況
主たる利用地は首都圏、近畿圏であるが[2]、新幹線の走っている場所ではどこでも、多かれ少なかれ利用されている。なお、首都圏・近畿圏以外では山陽新幹線の小倉 - 博多間での利用が多く、日本で最初に定期券での新幹線乗車が可能となった区間である。ただ、首都圏では片道100kmを超える利用も多いのに対し、その他の地域では1駅あるいは2駅間(距離にして30km - 60km)程度の利用が多い。
地価高騰により、特にバブル期には在来線による通勤圏での持ち家購入が困難となった。このため、従業員の福利厚生の一環としての意味も含め、「新幹線通勤制度」を設け、定期券代を支給または補助する企業が現れ、利用に拍車がかかった。
また、企業が定期代を負担しない場合でも、新幹線通勤を選択する向きもあった。これは総負担額の問題で、「新幹線通勤費の自己負担額 + 住宅ローン < 在来線通勤圏に家を購入した場合のローン」、となるほどの状況であったからである。その上、通勤時間の短縮といわゆる「痛勤」の回避もメリットとして挙げられる。
また、フレックスパルが導入されると、出身地の実家で家族と同居した方が大学周辺での一人暮らしより安全で経済的負担にも見合うと判断する大学生(特に女子学生)やその家族も増え、新幹線通学も拡大していった。
この動きに呼応する形で、東日本旅客鉄道(JR東日本)では、群馬県安中市の山間部に長野新幹線(北陸新幹線)の新駅として1997年に開業した安中榛名駅の駅前の土地を購入して宅地(ニュータウン)を造成し、「びゅうヴェルジェ安中榛名」として2003年から販売を開始した。これは新幹線による東京都内への通勤を考慮したものである。
なお、新幹線通勤制度では、東京駅を基準とする場合、以下の制限を設けることが一般的であった。
要は、新横浜や大宮から東京、といった電車特定区間圏内での利用は認めない、ということである[3]。
しかし、バブル崩壊後の地価下落による都心回帰傾向から、新幹線通勤は下火に向かっており、利用者がいない/少ないことから、新幹線通勤制度を廃止する企業も出てきている。
全車指定席区間について
東北新幹線盛岡駅 - 新青森駅間は原則として全席指定席となっている。在来線を含め、全席指定席の列車には原則として定期券での乗車ができないが、仙台駅 - 新青森駅間では、特例として全車指定席列車については定期券利用者は普通車の空いている席に着席できるという扱いを行っている。もしその席の指定券を所持する乗客が来たら別の席に移動することになる。満席の場合は立席となる。同様に全席指定席となる秋田新幹線も扱いは同じである。
2003年9月まで全席指定席だった東海道・山陽新幹線「のぞみ」には乗車できなかった。市販時刻表の東海道・山陽新幹線のページの欄外にも「フレックス・フレックスパル及び在来線の定期乗車券では全車指定席の列車には乗車できません。ご乗車の場合は、乗車区間の運賃・料金を別途いただきます」と明記されていた。また、上越・長野新幹線では臨時列車の一部に全席指定席の列車が設定されることがあるが、この場合も乗車できない(時刻表の営業案内に記載)。
脚注
- ↑ JR九州/割引きっぷのご案内(2011年4月26日閲覧)
- ↑ 現在、フレックス・フレックスパルが設定されているのは、東京駅との間では東北新幹線の福島駅以南、上越新幹線の燕三条駅以南(=新潟駅を除く全駅)、長野新幹線の全駅ないし東海道新幹線の浜松駅以東の各駅である。また、新大阪との間では東海道新幹線の名古屋駅以西ないし山陽新幹線の岡山駅以東の各駅との間で設定されている。
- ↑ これらの区間では特急料金が不要の通勤形電車が頻繁に運行され、かつ新幹線利用時との所要時間差が少ない。