円天
円天(えんてん)とは、東京都新宿区に本社を置いていた健康食品販売会社、株式会社エル・アンド・ジーが詐欺で用いた擬似通貨のことである。
目次
エル・アンド・ジー概要
商号の由来は「Ladies & Gentlemen」を略したもの。
バイオ・遠赤外線関連商品・DVDシステム及び関連周辺機器などの研究・開発・製造・販売などのほか、Web円天市場と称するショッピングサイトの運営を行っているとしていた。
エル・アンド・ジー沿革
- 1987年8月 - 波和二会長により設立される。
- 1989年頃 - 健康寝具や、健康食品の販売を開始。
- 1993年5月 - 東京都渋谷区から新宿区に本社移転。
- 1996年7月 - デジタル・ウェーブ株式会社を設立。
- 2001年11月 - 株式会社L&Gあかりを設立。「協力金」の名目で出資の募集を開始。
- 2005年4月 - 株主・社員研修会「実践 あかり天国」をスタートさせる。
- 2005年6月 - 特定非営利活動法人あかり研究所を設立。
- 2006年2月 - 「円天市場GINZA」をオープン。
- 2006年6月 - 全国各地で有名演歌歌手やタレントを招いて無料コンサートを開き、会員を募る。
- 2007年1月 - 会員に「現金配当を円天に切り替える」「2008年2月まで解約に応じない」と通知。
- 2007年2月 - 現金配当を停止。
- 2007年4月 - 静岡県の会員が返金を求めて静岡地裁に提訴。
- 2007年9月20日 - 役員らを除くほとんどの従業員を解雇。
- 2007年10月1日 - 東京都が立ち入り調査を実施。
- 2007年10月3日 - 出資法違反容疑で、被害届の出ている都県警察の合同捜査本部による強制捜索を受ける。
- 2007年10月10日 - 波和二のブログによれば、新たに「元金円天市場」なる新たな市場を設立し、さらに資金集めを行っている事実が判明。
- 2007年10月31日 - 会員11人がエル・アンド・ジーと波和二に対して破産の申し立てをする。
- 2007年11月26日 - 東京地方裁判所によりエル・アンド・ジーの破産手続開始決定。負債総額は約880億円。
- 2008年1月10日 - 東京地方裁判所により波和二個人の破産手続開始決定。
- 2009年2月3日 - 警視庁が詐欺の容疑で波和二ら22名の逮捕状を請求。
- 2009年2月5日 - 詐欺の容疑で波和二が警視庁に逮捕される。
- 2009年2月26日 - 波他22人、組織犯罪処罰法違反(組織的詐欺)で再逮捕される。
- 2010年3月18日 - 波和二に対し東京地裁は組織犯罪処罰法違反(組織的詐欺)で求刑通り懲役18年の実刑判決を言い渡した。なお弁護側は「無罪でなければ控訴する」との理由から東京高裁に即日控訴した。
- 2011年2月23日 - 波和二に対し東京高裁は一審の懲役18年の実刑判決を支持し、弁護側の控訴を棄却した。弁護側は判決を不服として最高裁に上告する方針。
疑似通貨「円天」による詐欺疑惑
円天の仕組み
エル・アンド・ジー社のホームページにおいて公開されていた映像によると、擬似通貨「円天」は電子マネーとして使用可能と公開されていた。10万円以上を預け、あかり会員になると「1年ごとに預けた金額と同額の円天を受け取ることができる」「年利100%の金利が払われる」とされ、受け取った円天は、円天市場で利用することが可能とされていた。
L&G会長の波和二は、自身のブログにおいて、円天には強制捜査を受けた円天市場と、もうひとつの元金円天市場という2種類の利用法があると解説していた。後者は日本円、ドル、ユーロ、元、ウォンなど現行の通貨を稼ぐ目的で運用される円天と称していた。だが、波は自らが発行した通貨にもかかわらず、インタビュー時以外は全く使用したことがないことを、日本テレビ「真相報道 バンキシャ!」(2007年5月13日放送)にて明らかにしている。
円天の実態は、購入単位が非常に大きかったにもかかわらず、一般的な電子マネーのBitCashやWebMoneyなどとは比較できないほど対応店舗が少なく、ビックカメラやソフマップ等のポイント程度の機能と使用方法しか無かった。偽造通貨にほぼ等しい扱いであった。
経緯
布団、健康食品などの販売を主な事業としていたが、2001年により円天と呼ばれる電子マネー形式の疑似通貨を発行し、元本を保証した上「100万円を預ければ3カ月ごとに9万円を支払う」との説明で日本国内の不特定多数から協力金と称して多額の出資金を集めた。2007年1月頃から資金繰りが悪化、従業員の大半を解雇し、配当を現金から円天に切り替えたものの、円天による配当の支払いも止まるなど企業活動は事実上停止していた。
2007年5月13日放送の「真相報道 バンキシャ!」にて、出資した保証金が戻ってこないどころか、逆に更なる出資を強要するような書類を突きつけられていた会員がいたことが報道された。同番組のインタビューに応じた波の発言によれば、2008年2月まで保証金の返還が停止されていたという。これを受けて番組コメンテーター全員が、「マルチまがいでかつ詐欺的な商法であり、取り付け騒ぎに発展する危険がある」といった警鐘を鳴らすコメントを述べた。自転車操業や無限連鎖講(所謂ネズミ講)を指摘する声もあった。
さらに、同年9月23日の読売新聞の報道によると、同年2月から会員5万人への配当が停止されており、9月20日には多くの社員を解雇していたことが判明した。
2007年10月3日、警視庁および宮城・福島県警察の合同捜査本部は、エル・アンド・ジーに対し、出資法違反(預かり金の禁止)容疑で一斉捜索し、会社や会長自宅など全国60ヶ所の家宅捜索に着手、10時間に及ぶ捜査により段ボール箱1,000個以上の資料を押収した。全国約5万人から1000億円を超える資金を集め、詐欺容疑での立件を視野にいれ捜査を進め、過去最大規模のマルチ商法事件に発展するおそれがあると報じられた。
会長である波和二は、1960年代よりマルチ商法の会社「APOジャパン」を設立し、25万人に対し販売したが、高校生が自殺する騒動に発展、1978年に詐欺で実刑判決を受けた。日本で初めて法的処分を受けたマルチ企業の会社であった。
有名人を広告塔に利用
会員の募集や会社の信用を高めるため、以下の有名演歌歌手・タレントを広告塔として招き、関連団体を介しホテルや国技館などで無料コンサートを月10回にわたり行った。L&G被害対策弁護団では、これら有名演歌歌手・タレントに対しても損害賠償を請求する可能性を示している。関わった芸能人は以下の通り(50音順)。(L&G被害対策弁護団では積極的に関与してる大学教授や准教授について被害責務照会書を発送している)
- 北原ミレイ
- キム・ヨンジャ
- 桂銀淑
- 研ナオコ
- 伍代夏子
- 小林旭
- 香西かおり
- 坂本冬美
- 島倉千代子
- 瀬川瑛子
- 千昌夫
- 平浩二
- 中村美律子
- 長山洋子
- 錦野旦
- 日野美歌
- 藤あや子
- 細川たかし
- 松方弘樹
- 松崎しげる
- 美川憲一
- 三田明
- 八代亜紀
細川たかしのギャラは1回1200万円であり、50回以上出演した。さらには他の歌手を紹介することで彼らの出演料の一部を紹介料としてピンハネした。これを理由に、細川は2007年のNHK紅白歌合戦の出場を辞退した。
また、森山雅美(慶應義塾大学医学部元准教授)がL&Gの講演に出席した。2009年7月2日朝日新聞によれば、1日に原告側は森山雅美への訴えを取り下げたとのこと。波の結婚式では金田正一が仲人を務めた。
「コスモガール」
2003年7月、関連会社「ロイヤリティ・コスモ」を設立。幹部によると、この会社の社員は「コスモガール」と呼ばれる女性だけで、大半は営業部の社員が行きつけの六本木の店で勧誘したキャバクラ嬢だった。07年ごろには20〜26歳の約25人が所属していたという。
コスモガールは一律月給30万円で、仕事は会員向けイベントで受付をするほかは、男性社員らが酒を飲む時に同席するだけだったという。同社は渋谷区代官山や港区西麻布などにあるマンションを社宅として無料で使わせていた。
コスモガールの中にはタレントの卵なども居た模様。
関連会社等
- デジタル・ウェーブ株式会社
- 株式会社L&Gあかり
- 株式会社SROエリート
- 株式会社SRユニオン
- NPO法人あかり研究所
- 日本アーク協会
- バイオ・ライフ
- グッド・フォーチュン
- L&G出版
- L&G KOREA(韓国・ソウル)