神社

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神社(じんじゃ)とは、神道信仰に基づいて作られた宗教施設。戦前にはいわゆる「国家神道」のことを単に「神社」と称した。

教会モスクなどの礼拝するための礼拝堂や教えを広めるための布教所とは性格が異なる。現在では参拝用の施設や結婚式の設備などが造られることも多いが元来はその神社の場所に宿る神を祀る祭祀施設である。また場所によっては、社殿を海上・山頂・ビルの屋上などに祀ることもある。

起源[編集]

神社の起源は、磐座(いわくら)やの住む場所である禁足地(俗に神体山)などで行われた祭事の際に臨時に建てた神籬(ひもろぎ)などの祭壇であり、元々は常設のものではなかった。元来は沖縄御嶽(ウタキ)のようなものだったと考えられる。古代から続く神社では現在も本殿を持たない神社があり、磐座や禁足地の山や島などの手前に拝殿のみを建てているところもある(参考:大神神社石上神宮宗像大社)。神社に社殿が設置されるようになる過程には仏教寺院の影響もあるとされる。神社には常に神がいるとされるようになったのは、社殿が建てられるようになってからと言われている。

施設、設備[編集]

神社の周りには鎮守の杜と呼ばれる森林があるのが一般的である(都市部などでないこともある)。御神木といわれる名木には、注連縄を結ばれているものもある。神社の入口には、境内と俗界の境界を示す鳥居があり、社殿まで参道が通じる。参道のそばには身を清めるための手水舎(手洗所)、神社を管理する社務所などがある。大きな神社では神池神橋がある場合もある。

社殿は一般に本殿(神殿)・拝殿からなる。人々がふだん参拝するときに目にするのは拝殿で、御神体が安置される本殿は拝殿の奥にある。本殿と拝殿の間に参詣者が幣帛を供えるための幣殿が設置されていることもある。

神社の敷地(境内)には、その神社の祭神に関係のある神や元々その土地に祀られていた神を祀る摂社や、それ以外の神を祀る末社があり、両者をあわせて摂末社と総称する。境内の外に摂末社がある場合もあり、それは境外社と呼ばれる。

また、神仏習合が始まる奈良時代には神社の境内に神を供養する神宮寺(別当寺、宮寺)が建てられるようになり、それ以後、神社内に寺院が建てられることもあったが、明治初期の明治政府による神仏判然令(神仏分離令)により、神社と寺院は分離され、神社境内にあった五重塔や仏堂などは撤去され、僧侶と神官も区別された。鳴き竜で有名な日光の東照宮本地堂(輪王寺薬師堂)は、東照宮輪王寺の間で帰属が争われているという。

建物[編集]

概ね木造の日本式建築であるが、鉄筋コンクリート造が増えている。前述のようにビルの中にある神社もあるので、かならず建物が日本風というわけではない。ただし、御神体が安置される本殿の形は日本式建築である。

神社は夜間は警備の目が行き届かないところもあり、放火事件も発生している。そのため、一部の神社では警備会社と契約して機械警備を行っている。防火や盗賊除けの神様が鎮座する神社に警備会社のステッカーが貼ってあるのを見かけることも多くなった。

神職[編集]

現在は包括的な法整備によって神道は宗教法人に属しているが、本来の姿は宗教ではなく、自然や環境の保護や感謝、生に対する敬意を奉るものである。 そのため、神職は他の宗教と違って宗教者ではなく、あくまでも神に対する奉仕者である。 神社祭祀の担い手は神職(神主とも。宮司禰宜、権禰宜など)と呼ばれる奉仕者だが、仏教キリスト教などの宗教者と違って布教的性格をもたないのが一般的である。 従来、小規模な神社では専属の神職がいることは少なく、氏子が神社を建て、交替で管理し、神職を呼んで祭祀を行っていた。また、神宮寺があった場合は神宮寺の僧侶が管理、祭祀を行なっていた。現在、神職になるには、一般大学において神道を専攻して資格を取得した後、卒業しなければならない。 卒業後に全国の神社において研修(インターン制度)があるため、資格を取得していても、卒業をしていなければ神職にはなれない。

祭祀対象[編集]

祭祀対象は主に神道であり、日本古来の神に属さない民俗神、実在の人物や伝説昔話の人物、仏教の神仏や道教の神などの外来の神も含まれている。

日本の神の一覧 を参照

神社の名称[編集]

神社の名称の名付けられ方にはいくつか種類がある。もっとも一般的なのは地名である。鹿島神宮・八坂神社・春日神社・宗像神社・日枝神社などはいずれもそうである。「~坐神社」というのもある。また祭神名を冠するものも多い。稲荷神社・住吉神社・八幡神社・天満宮・丹生都比売神社などが挙げられる。ほかに奉斎する氏族の名前を冠するもの(倭文神社)や祭神に関連する語句を冠するもの(平安神宮・八重垣神社)、神社の種別を表すもの(招魂社・祖霊社)・祭神の座数によるもの(六所宮・四柱神社)などがある。また由来のよく分からない神社名も少なく無い(浅間神社)。稲荷神社や八幡宮など全国に広く分布するものは、それらの社名にさらに地名を冠することが多い(伏見稲荷大社・函館八幡宮)。

天満宮は音読みで、八幡宮や浅間神社は音読みと訓読みの場合があるが、音読みで社号を読むのは仏教の影響である。天満宮はそのもととなった天満天神の祭神名自体が仏教の影響を受けているため、漢語の社名となっている。八幡宮と浅間神社はいずれも元来は「やわた」「あさま」と訓読みしたものであったが、神仏習合のもと仏教の影響で、音読みが定着することとなった。

神社名において注意すべき点として、次のことがある。原則として全ての神社を「~神社」(宮号・神宮号を除く)と称するようになったのは近代になってから、ということである。「~明神」や「~権現」などと神名をもって社号としていたところや、もしくは「~稲荷」「~八幡」と「神社」の部分が省略されていたところ、「~社」としていたところなどがあったが、全て原則として「~神社」と称することになったのである。これを権現号の使用禁止と関連させて、排仏政策によるものだという指摘もあるが、それよりはむしろ国家管理の施設としての合理化によるものといえるだろう。終戦まで近代においては神社はいわば国家の施設であり、当然法令上の規則があって、神社と認められるには備えるべき設備や財産などの条件があり、それ以外は「神社」とは認められなかったのである。

社号[編集]

神社の中でも、規模の大きい神社は神宮や大社と呼ばれ、有名な神を祭神とする場合が多い。

なお、天皇や皇室祖先神を祭神とする神社を神宮と呼ぶことが多く、天皇家につながる人物(皇族)を祭神とする神社をと呼ぶことが多い。大社は前近代には杵築大社(現出雲大社)・熊野大社(いずれも島根県)しか名乗っていないが、戦前は出雲大社のみが大社を名乗っていた。戦後は旧官幣大社・国幣大社・官幣中社の神社の一部が大社を名乗っている。

1945年以前は神宮などを名乗るためには勅許などが必要だったが、現在では政教分離により国家、皇室が神社に直接関与しなくなったため、特に許可を受けなくても、大社、神宮を名乗ることができる。現在、大社を名乗っている神社は上記の二社のほか、気多大社(石川県)、諏訪大社(長野県)、南宮大社(岐阜県)、三嶋大社富士山本宮浅間大社(静岡県)、多度大社(三重県)、日吉大社多賀大社建部大社(滋賀県)、松尾大社伏見稲荷大社(京都府)、住吉大社(大阪府)、春日大社龍田大社広瀬大社(奈良県)、熊野本宮大社熊野速玉大社熊野那智大社(和歌山県)、宗像大社高良大社(福岡県)などがある。

また、梅宮大社(京都府)や大鳥大社(大阪府)のように表記が定まっていないものもある。また平野神社(京都府)もかつては扁額に「平野大社」と書かれていた。

戦後になって新たに神宮を名乗るようになった神社には北海道神宮(旧札幌神社・北海道)、伊弉諾神宮兵庫県)、英彦山神宮(福岡県)がある(京都府亀岡市の元官幣中社出雲大神宮等の「大神宮」は「神宮」号とは異なるものの解されている)。福岡県福岡市東区香椎宮はいわゆる神宮ではないが、最寄り駅が香椎神宮駅香椎線)というため、誤解される例もある。

主な信仰[編集]

多くの神社では、有名な神社から祭神を勧請(かんじょう)している。勧請とは、祭神の分霊を他の神社に招いて祀ることである。ロウソクからロウソクへ灯をうつすように、神道の神は無限に分霊することができ、分霊しても本来の神威が損なわれることがないとされている。勧請した神社は、その祭神に応じた名称がつけられ、同一の祭神を祀る(同一の名称の)神社同士は系列神社と呼ばれる。以下に主な系列神社の名称とその祭神を挙げる。

系列神社名 本社 祭神 神使
神明神社・皇大神社(お伊勢さん) 伊勢神宮内宮 天照大御神
八幡神社 宇佐神宮 八幡神応神天皇
天満宮・天神神社・北野神社・菅原神社 太宰府天満宮
北野天満宮
菅原道真
宗像神社 宗像大社 宗像三女神
厳島神社 厳島神社 宗像三女神
八坂神社・祇園社 八坂神社 素盞嗚尊
津島神社・天王社・須賀神社 津島神社 素盞嗚尊
氷川神社 氷川神社 素盞嗚尊
諏訪神社 諏訪大社 建御名方神
日吉神社・日枝神社(山王さん) 日吉大社東本宮 大山咋神
松尾神社 松尾大社 大山咋神
熊野神社 熊野三山 熊野神 八咫烏
白山神社 白山比咩神社 菊理媛神
熱田神社 熱田神宮 熱田大神(草薙剣
浅間神社 富士山本宮浅間大社 木花咲耶姫命
鹿島神社 鹿島神宮 武甕槌命 鹿
香取神社 香取神宮 経津主命 鹿
春日神社 春日大社 武甕槌命経津主命 鹿
愛宕神社 愛宕神社 迦具土神
秋葉神社 秋葉山本宮秋葉神社 迦具土神
金毘羅神社・琴平神社(こんぴらさん) 金刀比羅宮 金毘羅神(現在は大物主神
住吉神社 住吉大社 住吉大神
多賀神社 (お多賀さん) 多賀大社 伊邪那岐命伊邪那美命
貴船神社・貴布祢神社 貴船神社 闇淤加美神・高淤加美神
出雲神社 出雲大社 大国主命
塩竈神社 鹽竈神社 塩土老翁神
賀茂神社 賀茂別雷神社(上賀茂神社)
賀茂御祖神社(下鴨神社)
賀茂別雷神
大鳥(鷲・鳳)神社 大鳥大社 日本武尊
花園神社鳥越神社杉山神社 日本武尊
大神神社・三輪神社(三輪明神) 大神神社 大物主命
稲荷神社 伏見稲荷大社 宇迦之御魂神保食神ほか穀物神
淡嶋神社 淡嶋神社 少彦名命淡島神
猿田彦神社・佐田神社・大田神社・白髭神社
賽神社・道祖神
椿大神社 猿田彦神
恵比寿(恵比須・戎)神社 西宮神社 蛭子命(ひるこ・えびす
美保神社 事代主命
大三島神社・山祗神社(三島明神) 大山祇神社 大山祇神
三島神社(三島明神) 三嶋大社 事代主命
御嶽神社・御岳神社 御嶽神社 造化三神

中にはまれながら神社名と一般的な祭神が一致しない神社もある。また近代になって新造された靖国神社招魂社護国神社)のようなものもある。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]

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