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2017年9月13日 (水) 17:29時点における最新版
鉄道(てつどう)とは、狭義では平行して設置された二本の鉄製のレール(軌条)が案内路となり、鉄製の車輪が鉄製レール上を回転するものである。
最も広い意味では、車両がその内部または外部の動力により、ルート上に設置された固定式案内路(レール、案内軌条など)に誘導されてルートを踏み外さずに走行し、旅客や貨物を輸送するシステムまたは輸送を行う交通機関をいう。広義の鉄道には、懸垂式・跨座式のモノレール、案内軌条式の新交通システム、鋼索鉄道(ケーブルカー)、浮上式鉄道を含み、日本ではいずれも鉄道事業法の許可または軌道法の特許を得て敷設される。トロリーバス(無軌条電車)は、架線が張られたルートを集電装置(トロリー)により集電した電気を動力として走行するバスであるが、鉄道事業法に基づく鉄道又は、軌道法上の「軌道に準ずる」軌道として扱われる。またロープウェイも鉄道事業法又は軌道法の対象であるが、索道という扱いで、狭義の鉄道又は軌道と区別される。なお、本項では狭義の鉄道について解説する。
目次
概要[編集]
英語ではrailroadまたはrailwayといい、案内路の材質を問わないが、ドイツ語・フランス語・中国語などをはじめ数多くの言語で「鉄の道(路)」という表現をするように、狭義の鉄道が鉄道の原初形態である。この形態は、鉄道事業法に基く国土交通省令である鉄道事業法施行規則において 普通鉄道と分類され、 新幹線、地下鉄等を含む多くの鉄道がこの形態である。また、英語でtramwayと呼ばれる路面電車も同じ形態であるが、日本の法律では軌道法 により管轄され、鉄道ではなく軌道と区分されるはずであるが例外が多く、その境界は曖昧である。
特徴[編集]
長所[編集]
鉄道は、自然環境への負荷が少なく、大量輸送に向き、定時性や安全性に優れるという特徴を有する。また専用の鉄軌道上で案内されて運転される特性上、多数の車両を連結して一括運転できる。このため連結する車両が多いほど一度に大量の旅客や貨物を運送できる。
軌道や車輪に鉄を使用しているため、走行時に鉄同士が触れ合うことになるが、この際の摩擦力による走行時の抵抗は、地上に接触して移動する交通機関としてはかなり少ない部類に入る。例えば平坦な線路を20km/hで走行した場合の走行抵抗は1~2kgf/tと、ゴムタイヤを使用した自動車の10kgf/t(舗装道路)に比べるとおよそ10分の1程度である。そのため鉄道は船と並んで、エネルギー効率のよい大量輸送システムといえる。しかし鉄軌道の走行抵抗が少ない利点の反面、摩擦力に依存するブレーキ力も低いため、ブレーキをかけ始めてから停止するまでの距離(制動距離)を長く必要とする。
電車や電気機関車においては、電動機のエネルギー変換効率が高く、また自動車で使われる内燃機関に比べ発電所の効率ははるかに良いので、鉄道システム全体としてもエネルギー効率は非常に高い。また、たとえ自動車と同様に燃料の軽油をタンクに抱えて走る気動車・ディーゼル機関車であっても、単位輸送量当たりのエネルギー消費は、自動車よりはるかに少なく、したがって地球温暖化の原因となる二酸化炭素は単位輸送量当たりの排出量が少ない[1]。
統計的なデータから見ると、同一の人員を輸送するために発生する事故の発生率や、被害者数とも自動車事故にくらべ少ない。これは専用軌道を走行するためハンドル操作が自動車に比べ容易な点や、輸送人員における運転手の割合が極めて低いことが関係している。それに自動車事故の多くが道路の交差点で発生しているが、鉄道には他の交通との交差部分が少ないこともある。鉄道事故の多くは道路交通と平面交差する踏切や、利用客と鉄道との接点である駅のホームや、急カーブで発生している。そしてこれらの事故は、立体交差化、ホームドアの設置や新型ATSの装備といった改良によって減少させることが可能である。
短所[編集]
鉄軌道の走行抵抗が少ないという理由により、自動車ほどの急勾配を上り下りすることができない(普通鉄道の場合、条件次第では80‰勾配のクリアも可能であるが、始動時には33‰程度が限界である)。そのため、山岳などの障害物を迂回したり、トンネル掘削による障害物回避、あるいはループ線やスイッチバックを設置するなどを行う必要がある。また、これらの対策でもどうにもならない急勾配は、ラックレール等を用いることで対処する場合もある。ただし最近では、ICE3など、一部の高性能車両は連続40‰勾配路線を300km/hにて走行可能であり、高性能車両を用いることで、トンネル掘削などの投資を抑えることが可能となりつつある。
走行ルートが限られているため、自然災害や事故に対して脆弱であり、踏切事故や人身事故が発生すると長時間運行が停止される。また土砂災害や地震など自然災害を受けると復旧までにかなりの時間を要し、迂回路がない場合、バスなどの代替輸送に頼らざるを得ない。走行抵抗が少ないため強風にも弱く、強風のため長時間運行が停止されることもしばしば発生する。逆に積雪の際に自動車よりも安全に運行できる鉄道は、地域によっては冬場に市民の貴重な足となる。但し積雪に慣れていない地域ではこの限りではない。
施設の建設や維持に莫大な経費がかかるため、採算ラインが高く、ある程度以上の旅客や貨物の輸送量がないと経営が成り立たない。それでも鉄道の維持を選択する場合は、公的資金の投入が必要となることがある。こうした事情から、どうしても競争相手が生まれにくく、競合相手がいない路線ではサービスの低下を招く恐れもある。
歴史[編集]
20世紀の初めには未来派によって先端技術、力、速度の象徴のように扱われたが、20世紀後半には一部の蒸気機関車が懐古趣味の対象となるなど、鉄道は先進国では社会に浸透し、人々の生活の一部にもなった。
19世紀から20世紀にかけては産業だけでなく軍事上の観点からも各国が積極的に鉄道を敷設した(たとえばドイツのモルトケがそうである)。現在の鉄道の状況については、交通の鉄道の項目を参照のこと。
構造[編集]
鉄道の構造としては、大まかに線路と駅から成っている。線路の上を列車が走行し、定められた駅に停車するというものである。線路は地上に敷設されていることが多いが、都市部や地形に制約のある場所、また高速走行を行うための路線では地下や高架に路線を敷設している。特に地下に敷設される路線は地下鉄と呼ぶ。
路線[編集]
路線は鋼鉄製の軌道によるものである。軌道は列車走行部は基本的に2本の平行したレールであり、システムによっては本数が増えることがある。路線を支持するものは、バラストと呼ばれる砂利やコンクリート製の基礎となっている。砂利のものはバラスト軌道、コンクリート製の基礎の場合はスラブ軌道と呼ばれる。これらの基礎の上に、枕木を挟んでレールを設置する。
駅[編集]
鉄道駅は、人が列車に乗り込んだり、貨物を列車に積み込む場所である。プラットホームと駅舎から構成され、貨物駅であればさらに貨物ターミナルから構成される。プラットホーム(線路)の位置から地上駅、高架駅、地下駅に分類できる。
踏切[編集]
鉄道と道路が平面的に交差する場所には踏切が設置される。
踏切は、鉄道側に通行優先権があるので、踏切においては道路交通を一方的に遮断することとなる。制動時間が長いので、踏切の遮断は列車通行時よりかなり前から行わなければならない。列車運行本数が多い場合、遮断の時間が長くなり、甚だしい場合には「開かずの踏切」が生まれる。そこまでいかずとも、交通渋滞を引き起こしたり、鉄道路線で分断された地域が疎遠になることはある。待ち時間を解消するためには、鉄道を高架化したり、地下化したりして立体交差に切り替える方法(連続立体交差化事業)がある。
車両[編集]
鉄道の車両は、動力源によって分類できる。蒸気機関で走行する列車を蒸気機関車、その他の内燃機関で走行する列車を気動車、電気によって走行する列車を電車と呼ぶ。鉄道の車両の特徴として、多数の列車を連結して走ることができる。これにより人員の大量輸送が可能である。
電車や電気機関車では外部から電気エネルギーを供給されるため、排出される二酸化炭素や窒素酸化物などの有害物質が少ない。蒸気機関車のばい煙がかつては大きな問題であったが、すでにほとんど淘汰されている。気動車・ディーゼル機関車の排気ガス対策は遅れていたが、2006年ごろからは自動車用エンジンの技術を用いた低公害型エンジンを搭載した気動車も登場するようになってきている。また、根本的に輸送量当たりの汚染物質排出量・絶対的な排出量の両方が少ないため、気動車・ディーゼル機関車の排気ガスが沿線に深刻な問題を与えることは通常ない。
電化鉄道では発電の材料を問わないため、新エネルギー(クリーンエネルギー)の切り替えも可能である。さらに、騒音対策にかかる費用も、自動車に必要なそれよりはるかに安い。非電化鉄道であっても、汚染されうる空間が軌道の周辺域に抑制される為、対策は比較的容易である。
鉄道車両は、基本的に異なる軌間の区間に乗り入れることは、困難である。軌間を切り替える手法としては、スペインの「タルゴ」「Alvia」で特殊な設備を用いて乗客を乗せたまま自国の1668mmと周辺他国の1435mmを切り替える方法が実用化されているほか、貨物列車では境界駅で台車を交換する方法もヨーロッパの一部で行われているが、いずれも多くの設備と手間を要し、一度に多数の列車を直通させることができない。また日本では乗客を乗せたまま軌間切り替え可能なフリーゲージトレインの実用化試験が行われている。それに建築限界や車両限界が路線によって異なれば、乗り入れの障害となる。例としては車両限界の大きい新幹線と、車両限界の小さい在来線を改軌した区間を直通するミニ新幹線のように、在来線の車両サイズで作らざるを得なくなる。直流、交流といった電気方式が区間によって異なる場合には、直通するためには製作コストの高い双方の電気方式に対応した車両を使用するか、機関車を付け替えるなどの必要が生じるが、電気方式が同じでも、電圧が区間によって異なる場合は、複電圧方式の車両が必要となる。
周辺設備[編集]
近代化された鉄道は、単に線路と列車と駅により構成されているだけに留まらず、電源設備や指令センターなどを備える。電車は電力で走ることから、線路と平行して電線路が敷設され、それに伴い鉄道変電所や電源の管理する施設が備えられている。また複雑化した鉄道ネットワークにおいては過密なダイヤや突発的な事故に対応するため、一箇所で集中的に列車の管理を行うこともある。
運営[編集]
鉄道の運営を行う鉄道事業者は、民間企業によるものと、国が行うものがある。
鉄道は、線路・駅などのインフラに対する投資コストが大きく固定費率が大きいことから損益分岐点が高く、黒字となるには一定以上の輸送量、利用客数が必要となる。このため、欧米では「鉄道は公共財であり、また一度無くなると元に戻すことは難しいことから赤字は基本である」(日本政策投資銀行 浅井康次)[2]という認識であるとの紹介がある。また、相当な利益を上げないと既存路線の高速化や駅のバリアフリー化、パークアンドライド用駐車場設置などの鉄道サービス向上も困難である。
日本では、1990年代頃から鉄道の利用者数は減少している。減少の背景には、日本の人口構成が関わっている。電車利用者の中心は通学利用者と、通勤利用者であるが、人口構成上、学生は卒業する年代の人口よりも入学する年代の人口が少なく、社会人も退職する年代の人口よりも新規に就職する世代の人口が少ない状況にあるため、両者は今後長期間にわたり減少する仕組みになっている[3]。余談だが、こういった状況にJR東日本は気づき、Suicaにクレジットカードやポイントカード機能を付加することにより、団塊の世代などが退職しても引き続きSuicaを使うよう顧客の囲い込みを計った、という指摘もある(日本政策投資銀行 藻谷浩介)。減少の要因として他には、鉄道事業者の経営努力不足、モータリゼーション(列車から自動車へのシフト)[2]や、変わったところでは、地球温暖化(冬の気温が上がることで降雪が少なくなり、車が使用しやすくなる)[2]といったものもある。
上述した内容は日本全体の話であるが、ローカル線の利用者数を巡る環境は特に厳しい。採算がとれない場合、路線や駅の存続問題が発生する。対応策として、赤字が続く鉄道を廃止したり、第三セクター鉄道に転換することがある。しかし、第三セクター鉄道にしても赤字が解消されるとは限らず、赤字の第三セクター鉄道は、地方自治体の不良債権として問題になっている。
乗車[編集]
鉄道の乗車には切符などの乗車券、または乗車カードを必要とする。運賃を支払うことでこれらを入手することができ、乗車権を得られるが、車内で精算する仕組みを取っている鉄道もある。
定時性[編集]
鉄道は専用の軌道を有しているため、定時性に優れる。路面電車のように道路上を走行する併用軌道を除けば、基本的に専用の走行路を使用するので、定時運行を確保しやすい。厳密な時間管理を要求する文化圏(日本など)においては定時運行の需要は大きい。厳密な時間管理を要求しない文化圏であっても、道路交通での定時性の確保が困難な都市部では、専用軌道を有する鉄道は大きな価値を持っている。
ただし故障や災害等で事故が発生すると事故現場の回避や追い越しができないため、長時間に渡って不通になる場合がある。台風・地震など自然災害により不通になるとその影響が広範囲に渡るなど、脆弱な面もある。自動車が事故車線や現場を回避できたり、途中経路の天候が悪くても離陸・着陸地点の天候に問題がなければ航行が可能な飛行機とは対照的である。また踏切事故や人身事故、強風などの影響で長時間運行が停止することも多い。
鉄道の安全性[編集]
鉄道事故の発生する確率は他の交通機関よりも低い要出典ため、鉄道の安全性は相対的に高いといえる。しかし一度に大量の人員を輸送できる故に一度事故になると大惨事になり得る。
技術[編集]
新たな技術としてデュアル・モード・ビークル(DMV)などがある。
趣味[編集]
趣味としての鉄道。
鉄道を趣味とする人のことを鉄道ファンと呼ぶ。鉄道ファンには様々な分類ができ、鉄道旅行を楽しむ者、鉄道撮影を楽しむ者、鉄道模型を作る者などがある。鉄道車両の部品の収集や駅弁を食べること、鉄道擬人化を楽しむ者などもいる。
関連項目[編集]
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脚注[編集]
参考文献[編集]
- 「鉄道工学ハンドブック」,久保田 博著,グランプリ出版(1995-96)
外部リンク[編集]
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