旋風の橘

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旋風の橘』(かぜのたちばな)は、2002年2号より2003年1号まで、週刊少年サンデーで連載されていた猪熊しのぶ作の剣道漫画。全47話、単行本は全5巻。

努力型のライバル達を主人公が才能のみで倒していくという基本設定、あまりに荒唐無稽な特訓やリアリティの欠片もない試合シーンから、「剣道を馬鹿にしている」「剣道漫画ではない」という批判が多い。多くの剣道経験者が「本格を名乗る価値など皆無」と断じ、作者猪熊のファンですら本作に関してはタブー視している。

当時から猪熊のファンサイトでも、話題にされたのは前作SALAD DAYSであり、本作に関しては全くスルー。次作『都立水商』まで猪熊の名誉は地の底へと落ちてしまった。

最初はサンデー誌上でも本格剣道漫画と銘打ってスタートしたものの、上記のような事から苦情が多数発生、新・熱血剣道ストーリーという表記に変わる。

なお作者である猪熊しのぶは、単行本やサンデーの巻末コメントで「実際に玉竜旗に取材に行った」と語っている。非常に嘘くさい。

『才能だけの主人公が努力をするほかの人間を踏み台にする』という、少年漫画にあるまじき描写ばかりであり、基本的には主人公で常識外れで礼儀知らず名橘がマンセーされ、常識人である柳田が噛ませにされている。


注意以降に核心部分が記述されています。

あらすじ[編集]

みかんで天下を目指すに憧れる高校生立花橘は、ルールも知らない剣道で天下を目指すことを決意する。橘は剣道の名門校である椿ヶ丘高校に転入するが、男子剣道部は弱小で、強いのは女子剣道部だけ。それもそのはず、椿ヶ丘高校は前年まで女子高だったのだ。剣道のルールすら知らない橘は、たちまち部内で問題を惹き起こすのだが…。

登場人物[編集]

立花橘(たちばな たちばな)
本作の主人公。剣道で天下を目指すために、愛媛から千葉の椿ヶ丘高校にやってきた少年。運動神経抜群で健康優良児だが、その自由奔放な発言や剣道を冒涜したような練習姿勢は、監督の滝田や柳田を始めとした部員及び読者の反発を呼ぶ。天下の事をバカにされると洋平太も恐がるほど怒る。愛媛出身なだけにみかん好き。
竹刀を床に叩きつけ防具ごと飛び上がり面を打つ、負傷した仲間を一切気に掛けない、相手の事情を知った上で全く気に掛けずに容赦なく打ち負かして台無しにする等、従来の主人公像とはあまりにもかけ離れた奇行が多い。なお作中では試合場でみかんを食べているが、当然ながら現実では試合場での飲食は違反である。
東大の入試問題を軽く解く、モテモテであるなど、かなり作者の保護を受けている。
柳田邦彦(やなぎだ くにひこ)
剣道エリートで、剣道名門校の椿ヶ丘高校の顧問滝田にスカウトされて入学。橘の剣道の基本やマナーを無視した態度に激怒するが、次第にその実力を認めるようになる。なぜか滝田と対立し、橘らとともに剣道部のない定時制に転校。剣道部作りに奔走する。
本作有数の常識人。得意技は突きを高速で連射する「マシンガン突き」。時の「伸びる竹刀」で喉元を突かれ、さらに首から落下し「グシャッ」という嫌な音をさせながらも、次の話では何故か平然としていた(但しまるで死亡したかのような扉絵(ひまわり畑をバックに柳田が微笑む絵)が描かれた)。
大西洋平太(おおにし ようへいた)
橘の幼馴染。剣道素人だが、日本人離れした運動神経を有している。柳田と素手剣道で互角に渡り合った。愛媛県民は朝は叩きつけて起こす、愛媛県民は狩猟をして御飯を作るなど、誤解を招く言動が多く、後述の月島監督および黒田運州と並んで読者から嫌われているキャラクターである。いつの間にか消えたことから、自殺したものと思われる。
守山薫(もりやま かおる)
椿ヶ丘高校定時制に在学で、柳田が尊敬する剣道の先輩。優秀な剣道部員だったが、実家の工場の経営が厳しく、家庭を支えるために夜間の定時制に入学した。剣道に復帰することを頑なに拒んでいたが、橘たちの剣道への情熱(?)に打たれ、入部を決意する。橘のせいで父が過労死しかけた。
力の過剰な描写が大きいが、それでも本作で貴重な正統派の剣道部員である。
羽根木勇人(はねぎ ゆうと)
通称ネギ。定時制在学。ひ弱ないじめられっ子で剣道には全く興味がなかったが、強くなりたいと思い入部を決意。が、試合シーンはレゲエと一まとめに一コマで終わらせられるなど、全くドラマが無い。
山口歳三(やまぐち としぞう)
通称レゲエ。定時制在学。ヒップホップ好きで根性なし。福岡にタダでいけることが入部の動機。しかし、橘らの熱心な練習の姿を見て、率先して練習を始めるようになる。ネギと同じく、全くドラマが無い。
琴村(ことむら)
東京・駿河台高校の相撲部員であると同時に剣道部員。椿ヶ丘との練習試合では剣道素人である洋平太のパワーにあっさりと敗れてしまう。「すごい一年」を洋平太と勘違いしたが、すぐにただの素人だったとわかると無念の涙を流している。仲間想いで、橘との試合で脳震盪を起こした時の体を気遣い棄権させた。
時善次郎(とき ぜんじろう)
東京・駿河台高校の剣道部員で大将をしている美少年。目の錯覚を利用した下段からの突き「伸びる竹刀」を操る。橘の才能を高く買っている。彼の「伸びる竹刀」は、作中では一応「目の錯覚」と書かれているが、どこからどう見ても1m以上伸びて相手の喉下に突き刺さり、高く持ち上げて落下させるという殺人的な技である。
阿久根文太(あくね ぶんた)
九州から遠征に来た男。会話の語尾に「~~タイ。」とつけるエセ鹿児島人。時の残忍な一面などを知っている。椿ヶ丘と駿河台の練習試合を見学していた。玉竜旗編では一切姿を表さなかった。
月島(つきしま)
滝田不在中の剣道部の代理監督。この漫画随一の剣道冒涜者である。サングラスをかけている。常識外れの指導を実践するため、滝田とは対立している。剣道初心者の橘を高く評価しており、橘がどんな行動をしても褒めたり持ち上げたりする。
橘が柳田を気遣いもしないで見捨てた際は「小躍りしたい気分だ」と評価する一方で、橘が柳田と同じような目にあうとすぐに救急車を呼ぼうとするなど。また審判としても橘を贔屓しているような描写が多く、琴村が橘にモロに喉に突きを食らわされたときは嬉々として橘の勝利を告げ(琴村はこのとき防具をつけておらず、下手すれば殺傷沙汰である)、琴村が時の体を気遣って時の棄権を申し出た際は時の返事を聞かずに即橘の勝利とした。
結局、良い所を部員や読者に見せる前にあっさりと転勤した。銭湯で剣道の練習をさせるなど、全く意味の無さげな奇行が多い。
滝田(たきた)
椿ヶ丘高校剣道部顧問。柳田をスカウトした人物。剣道の名指導者で、柳田も尊敬している。月島や橘の存在を疎ましく思い、男子剣道部全員の全日制退学を画策する。正確に面や小手のスキマを精密に狙うほどの凄腕の剣道家でもある(なおこれらももしわざとであることが発覚した場合明確な反則である)。
しかし自己中心な性格であり、目をかけたのに自分の期待にこたえなかった柳田を橘ごと退学に追い込んだ(もっとも、柳田自身が橘の腰巾着になったのもあるが)。のちに理事長を追い出し、父親が後任となる。父親の威光を笠にきて好き勝手するが、父親自身は常識人であり、息子の行動を苦々しく思っている。
堂本暮人(どうもと くれと)
滝田がスカウトした、椿ヶ丘高校全日制剣道部の一員。NBAからも認められているバスケ選手でもある。しかし性格は腐りきっており、渡米前に「気に入らないから」という理由で居候だった少女のピアノを破壊するような男である。
なお堂本以外の全日制剣道部のメンバーも全員他のスポーツで有名だったと、似たような経歴の持ち主である。
千場法斗(せんば のりと)
守山の幼馴染。あることが原因で、守山を深く憎んでおり、また自分以外を信じない人間不信でもある。
「スパイラル」という、竹刀に回転を加えることで突きの破壊力を増すという技を使う(なお高校剣道では突きはあまり使われない)。しかしその破壊力は凄まじく、柳田、守山を瀕死に追い込んだ(その前に喰らった時は喉にアザが残っているほど)
橘の「突きを突きで止める」という恐ろしく短絡にもほどがある戦法に敗れる。その後、守山から過去の謝罪、そして高校の先輩から涙の激励を受け、自分が1人ではない事を知り、救われる。
立花常世(たちばな じょうせい)
橘の父。みかん作りの名人として知られている。「天下とはみかんのようなものだと思っている」というのが持論である。
黒田運州(くろだ うんしゅう)
伝説の剣豪と呼ばれる老人。橘に天下とは何か、という事を教える。
「あんまんをおごった橘に1万円を要求する」、「橘を騙して自宅の掃除などの家事を半年間無償でやらせる」などの行動が読者の反感を大いに買った。
黒田天州(くろだ てんしゅう)
運州の息子。老齢だがそれを感じさせないほどの筋骨隆々とした体をしている。
父親のせいで凍死し掛けた。天下というものは、という橘の問いには明確に答えを残している。多くの読者には日本刀で橘や運州を斬れと期待されていた。

関連商品[編集]

コミックス[編集]

  1. 2002年04月18日 ISBN 4-0912-6381-X
  2. 2002年06月18日 ISBN 4-0912-6382-8
  3. 2002年09月18日 ISBN 4-0912-6383-6
  4. 2002年11月18日 ISBN 4-0912-6384-4
  5. 2003年02月18日 ISBN 4-0912-6385-2