ヒトラー 〜最期の12日間〜

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ヒトラー 〜最期の12日間〜』(ひとらー さいごのじゅうににちかん、原題:Der Untergang、英題:Downfall)は、2004年公開のドイツオーストリアイタリア共同制作による戦争映画。原題はドイツ語で「失脚」「没落」の意。

概要[編集]

アドルフ・ヒトラーの秘書を3年間務めた女性トラウドゥル・ユンゲの証言と映画と同名の研究書を下敷きに、1945年4月のベルリン陥落直前の総統官邸の人々、独裁者アドルフ・ヒトラーを、総統地下壕を舞台に生々しく描写したドキュメンタリータッチの作品である。内容は敗戦間際のヒトラーとその部下の動向、市内の混乱、そしてヒトラー自決後に総統官邸を脱出した人々が自決や逃げ惑うさまを描いている。

ドイツ圏の俳優が、本格的にヒトラーを演じるのはこの作品が初めてである。イギリスの大衆紙デイリー・テレグラフは、「ドイツはついに戦後のタブーを壊した」と伝え、世界中に賛否両論を巻き起こしヒット作となった。主演のブルーノ・ガンツはスイス人なので、国籍的には“ドイツ人がヒトラーを演じた”というのは正確ではないが、そもそもヒトラー自身がオーストリア人であり、はからずもドイツ人とはどこまでを指すのかという問題に触れることにもなった。

映画の終わりに、最晩年のユンゲ本人が登場して「ヒトラーが怪物だった」ことを後で知ったと語っている[1]。そして彼女は、2002年に彼女へのインタビュー映画『Im toten Winkel - Hitlers Sekretärin』が初公開された翌日に死去した。

スタッフ[編集]

原作文献[編集]

キャスト[編集]

エピソード[編集]

  • エルンスト・ギュンター・シェンク教授は本作にて人道的な人物として描かれているが、実際には強制収容所のハーブ農園建設のため100人以上の囚人を死に追いやったとされる。また親衛隊のために栄養食を開発しているが、300人の人間を人体実験で殺したともいわれている[2]。 
  • ハインリヒ・ヒムラーの副官であるフェーゲラインがヒトラーの菜食主義を鼻で笑いヒムラーを扇動するシーンがあるが、史実では上司のヒムラーも菜食主義者だったばかりか、彼は農学に造詣の深い人物であった。
  • ヒトラーが並んで立つ少年達に勲章を授け、報道カメラマン1名がヒトラーの正面から撮影するシーンがあり、映画のカメラはヒトラーの背後も映して、腰の後ろに回した左手が震えて自由がきかなくなっている様子を映している。この報道カメラ映像は生前最後のヒトラーを撮影したとされる実在の無声映像であり、映画では正面からのみ撮影したように見えるが、実際には本物のヒトラーの震える左手も録画されていた。
  • 市街戦などのロケ地はドイツ国内では協力を得られなかったことから、当時のベルリンに近い雰囲気を持つサンクトペテルブルクが選択された。サンクトペテルブルクはソ連時代レニングラードと呼ばれ、第二次世界大戦中に激戦が繰り広げられた場所である(レニングラード包囲戦)。
  • サンクトペテルブルクでのロケーションに出演したドイツ人役エキストラは現地のロシア人で占められている。
  • 地下壕最後の生存者で映画にも登場しているローフス・ミシュはこの映画について自伝の中で「大袈裟に誇張されている」と批判的である。ミシュは最近、「ゲッベルスの6人の子供たちもナチズムの犠牲者」と主張して、子供らのための慰霊碑を建設すべきと述べ、ドイツ国内で論議を呼んだ。

参考文献[編集]

  • エレーナ・ルジェフスカヤ『ヒトラーの最期』小林一郎(訳)、合同出版、1965年
  • コーネリアス・ライアン『ヒトラー最期の戦闘』木村忠雄(訳)、朝日新聞社、1967年
  • 福島克之『ヒトラーのいちばん長かった日』光人社、1972年
  • 衣奈多喜男『敗北のヨーロッパ特電』朝日ソノラマ、1973年
  • ゲハルト・ボルト『ヒトラーの最期の十日間』松谷健二(訳)、TBS出版会、1974年
  • 新関欽哉『ベルリン最期の日』日本放送出版教会、1988年
  • 藤山楢一『一青年外交官の太平洋戦争』新潮社、1989年
  • 邦正美『ベルリン戦争』朝日新聞社、1993年
  • 20世紀の人物シリーズ編集委員会(編)『ヒトラー最期の真実』光文社、2001年

関連作品[編集]

関連項目[編集]

脚注[編集]

  1. 後に発売されたDVD版ではこの「怪物」発言のシーンが終わりではなく最初に挿入されている。また、特典映像として収録されている予告編やTVCMには、ユダヤ人から批判された作品であることもテロップで表される。
  2. 出典はDVD ヒトラー ~最期の12日間~ スペシャル・エディション付属のブックレットより。

外部リンク[編集]

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