S-VHS
S-VHS(エス・ヴィエイチエス/スーパー・ヴィエイチエス)とは家庭用ビデオ方式のVHSをより高画質にするために開発された規格である(正式名称は「Super-VHS」)。
目次
概要[編集]
1987年に日本ビクターが発表し、同年4月にはその第1号機として「HR-S7000」が発売された。
従来のVHS(ここでいうVHSとは「ノーマルVHS」の事である)では画質の指標となる水平解像度が240TV本であった。VHS第1号機が発表された1976年当時の一般的な家庭用テレビの水平解像度は200TV本程度しかなく、また放送局で使われていた機材もさほど性能が良くなかったため、当時としては十分なビデオ規格と言えた。
しかしその後、NHK-BSなどの衛星放送がスタートし、高画質の放送が行なわれるようになった。また、従来の地上波においても、この頃になるとベータカムなどの高性能な映像機器がより多くの番組制作で活用されるようになり、ノーマルVHSの解像度を超える高画質録画に対応した規格が要求されるようになった。そこでVHSの輝度信号のFM信号帯域がVHSの3.4MHzから5.4MHzと広帯域化され、標準、3倍モード共に400TV本以上を達成し、民生用では初めて映像信号の鮮明な記録を実現させた。なお、色信号に関しては帯域こそノーマルVHSと変わらないが、視覚的により美しい色に見えるように信号処理などが改善されている。また、S-VHSで録画した実解像度についてはその録画した放送の解像度でしか再生されないので、S-VHSが真価を発揮するのは衛星放送の録画やCGを使ったアニメーションビデオの制作など、高解像度・高画質が要求される映像素材の場合である。
S-VHSとほぼ同時期にベータマックス方式でもED-Betaという高画質規格が登場し競争となったが、S-VHSが下位互換機であるVHSの普及率の高さの助けもあり、ED-Betaを抑えてシェアを確保した。
登場間もない頃はすべてのVHSビデオがS-VHS対応機に切り替わるという見方が多く、バブル経済による好景気もあって映像編集などを趣味とする消費者を中心に販売が好調だったが、価格が高い点や一般消費者の多くがVHS方式の画質でさほど不満を持っていない点、専用テープが必要な事もあり、加えて1991年のバブル経済の崩壊による個人消費の落ち込みの影響もあって、その後しばらくの間、企業や学校などの業務用途、前述の映像編集などを趣味とする消費者、衛星放送のヘビーユーザーなどの一部を除き、S-VHS対応機の販売はさほど好調ではなかった。それ以外の一般消費者へのS-VHSの普及の流れが再び始まったのは1998年のS-VHS ET規格の登場以降である。S-VHS ET規格登場の背景には、長年に渡るテープの研究開発の結果、普通のVHSテープの性能が向上し、登場初期のS-VHSテープと比べても性能的にほとんど差が無くなった事がある。
対応製品[編集]
ビデオデッキ[編集]
規格立ち上げ当初に出た製品は高画質を実現するために高価な部品が必要であり、必然的にデッキは高価格、巨大で重いものとなった(バブル時代と重ね合わせ、そのようなビデオデッキを指して俗にバブルデッキと呼ぶ向きもあった)。
S-VHS記録がされたテープは元々はノーマルVHSデッキでは再生出来なかったのだが、後にノーマルVHSデッキにSQPB(S-VHS Quasi Playback=S-VHS簡易再生機能)が搭載され、VHS方式よりやや高い水平解像度280TV本程度の画質ながら再生が可能になった。1990年以降に日本国内で販売されているノーマルVHSデッキなら、一部を除き、殆どの製品にSQPBが搭載されている。そのSQPBの仕組みだが、ノーマルVHSデッキにS-VHS用のヘッドを搭載させ、まずテープに記録されている映像信号を読み取る。そして、内部の回路でVHS方式とS-VHS方式の記録特性の違いを合わせるというものである。
1990年代後半になると、デジタルTBCや3次元処理など高画質化のためのICチップによるデジタル化が進み、画質を向上させつつ価格も下がり、本体も軽量化し、衛星放送の多チャンネル化と相まって普及を後押しした。また、ICチップによるデジタル化に伴い高度な演算処理による色滲みの低減や輪郭補正による細部の再現性の向上などが可能になり、著しく記録状態の悪いテープの場合を除き、ノーマルVHSデッキで記録されたテープであってもS-VHS記録に迫る解像感で再生できるようになった。
近年、ランダムアクセス・高画質記録を実現したDVDレコーダーの普及やS-VHS方式の3倍モードを超える24時間以上の長時間録画が1枚のメディアで可能(SDTVの場合)な次世代DVD機の登場などの理由により日本ビクター以外のメーカー各社はすでにデッキの生産を終了しており、最後まで生産していた日本ビクターも2008年1月15日をもってS-VHS対応機器をすべて生産終了し、21年の歴史に幕を下ろした(最終機種は民生用が「HR-VT700」・「HR-ST700」・「HR-V700」・「HR-S700」の4機種、ただし業務用の「SR-MV50」1機種については当面製造 ・販売を継続するとされている[1])。
長年、S-VHSデッキの利用者は大量のS-VHSで録画したテープを所有しているため、デッキ故障時の買い換え需要はまだ若干見られる。また、地上デジタルテレビジョン放送などのデジタル放送を録画する際にDVDレコーダーなどのデジタル機器で録画した場合、コピーワンス信号の影響が避けられないが、S-VHSならそうした影響は基本的には受けない利点はある。
S-VHSデッキにはオーディオ規格のHi-Fi音声が殆どすべての機種(業務用とビデオカメラの一部を除く)に搭載されており、鮮明なステレオ音声が楽しめる。なお、この技術ついては1983年に開発されたため、既に特許が消滅しており、VHSデッキを生産する海外のメーカーにも広く採用されている。また、S-VHS規格についても発表から既に20年が経過しているので、基本特許は消滅している。
カムコーダ[編集]
1987年にはカムコーダ向けにS-VHS-C規格も開発され、日本ビクターから同規格を採用した第1号機として「GR-S55」が発売された。アナログテレビ放送の全盛の時代には、放送局へS-VHSを利用するように業務用のカメラやデッキなどが開発された。S-VHS-Cは当時、高画質を求めるアマチュアビデオカメラマンなどから広く支持されデッキと共に普及したが、Hi8規格ほどではなかった。その後、DV・DVDなどのメディアやハードディスクや半導体メモリ(SDメモリーカードなど)などデジタル方式で撮影する規格が登場し、VHS-Cや8ミリビデオと共に家庭用カムコーダとしての主役の座を譲っている。
ビデオテープ[編集]
S-VHS規格の記録には通常のVHSテープより高品質な専用のS-VHSテープを使用する。S-VHS ET規格のデッキであれば、通常のVHSテープにも録画可能であるが、この場合ハイグレード以上のテープを使用することが推奨されている。
S-VHSテープには下位互換性があり、S-VHS方式非対応のデッキであっても通常のVHS方式での記録が可能である。当初は高価だったS-VHSテープも後に価格が低下した(またVHSテープ自体の性能も向上し、少し細工を施せばS-VHS録画に耐えられる物も増えた)。2008年2月現在、業務用デッキ同様に録画用テープの製造に関しても、日本ビクターでは今後も生産を続けるとしている。
その他[編集]
S-VHS規格では、映像入出力端子として「S端子」が採用された。今ではポピュラーな端子ではあるが、このS端子はS-VHS規格の誕生で初めて実用化されたものである。
詳しくは「S端子」の項目を参照されればよいが、S端子で接続した場合、テレビや他のデッキと接続した際の信号劣化の少ない鮮明な映像が楽しめる。この形状の端子はS-VHS規格の登場以降、S-VHS以外にもベータマックスの一部機種をはじめ各種映像機器に搭載され始めた。また家庭用テレビゲーム機では、任天堂が1990年に発売した「スーパーファミコン」で初めて採用された。現在では、高画質で映像を伝送できる端子として各メーカーがあらゆる映像機器に採用し、ポピュラーになった。
この「S端子」の名前の由来だが、輝度信号(Y)と色信号(C)を混合せず分離したまま伝送出来る事から、分離を意味する英語の「Separate」(セパレート)の頭文字をとってこの名前がついた。S-VHSの「S」は前述のとおり「Super」(スーパー)の頭文字なので、S端子の「S」は決してS-VHSの略ではないわけだが、世間ではそうではないかと誤解されがちである。
また過去には、シャープからコンポーネント映像入出力端子(D端子でいえば、「D1映像信号」にあたる)を搭載した製品も発売されていた(アナログBSチューナーを搭載した「VC-ES20B」と地上アナログチューナーのみの「VC-ES2」の2機種)。またシャープからはD1映像出力端子を搭載した製品も発売されていた(地上アナログチューナーのみの「VC-VS1」の1機種のみ)。
S-VHS ETの注意点[編集]
S-VHS ETで録画する際はハイグレード(HG)タイプのテープを使用し、再生(特にEP)は録画したデッキで行うことが原則である。
S-VHS ETが策定される以前のS-VHSデッキでは一部再生できない機種があるので注意が必要。
再生できない機種[編集]
いずれもメーカー公表分。
- 日本ビクター
- HR-20000・S6600・S3500・SC1000
- 松下電器産業
- NV-FS1・BS1
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注釈[編集]
関連項目[編集]
外部リンク[編集]
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