十代の出産

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十代の出産(10代の出産、じゅうだいのしゅっさん)とは、10歳以上20歳未満の女性が妊娠出産することである。

妊娠したティーンエージャーは、20代30代の女性と同様に産科問題に直面している。なお1997年の日本産婦人科学会の報告では、平均初潮年齢は12.3歳とされている。統計上の日本における十代の出産率は大韓民国とともに世界最低レベルである[1]

医学的見地[編集]

10代という低年齢母による出産は、早産や早産に伴う出産時低体重などのリスクが高い発生率を示す。10代の少女の多くは、ホルモンバランスが整っておらず、母体としての発育が不十分な場合が多い。十分な産前管理がなされない場合も多く、ますます子供への健康へのリスクを高める要因となっている。また発展途上国などにおいて妊娠したティーンズに体重が落ちるケースが多く見られるが、貧しい生活環境から栄養不足に陥るからといわれる。日本においても間食およびファーストフードジャンクフードの食事に支配されるケースも多くみられる。妊娠中の栄養摂取は、ティーンエージャーの間の著しい問題である。

10代の母の発達不十分の骨盤が出産時に母体、子供ともに危険を及ぼす医学的に示唆されている。そのため出産は帝王切開によって行われる場合が多い。発展途上国などにおいて十分な医療を受けられない場合、それは乳児の死亡、または母体死亡へ繋がりえる。10代後半の母の場合は、年齢それ自体は危険要因であることは少ないが、社会経済的ファクターによって貧困等をもたらすなど、なお問題は多い。

社会的問題[編集]

若い母であることは、教育に影響を及ぼすことがある。10代の母は公立・私立を問わず、学校を中退する、もしくは学校側の圧力によって強制的に自主退学を迫られるなどの対応を要されることが多い。早い時期に母になることは、幼児の心理社会的な開発に影響を及ぼすことがありうる。発育障害および行動に関することの問題の発生は、10代の母の子として生まれた子供において増加する。また、学校側としても大きな問題であり、生徒側に広まってしまうことによるいじめの誘発や、学校そのものの管理体制への懸念などが指摘されることになる。仮に発達障害も無く、学校側に同意を得られ、友人や家族間の関係も保たれたとしても、『子供が年を重ねると育つ』という確実にやって来る『子供の成長』に伴う自我の表れや進学などを考えれば親の負担は子供が成長するたびに増えていくばかりである。多くのドラマや映画などではこの『子が成長するものである』という部分を描かず、産む産まないの部分ばかりを描いている傾向が強く、「一度の過ちならやり直すことだって出来る」と安易に描いてしまい、主人公たちが今後経験するであろう出産後の負担についてはほとんど言及されていないことが多い。

10代の父親の大多数は、ティーンエージャーとしては子供を扶養することができないこともあり、捨てたことは悪いと感じつつも、自分の子供と、母親の両方を捨ててしまうことがある。10代の父親に関しての記述は統計的な裏付けが必要だと思われる。 その後は別の女性と違う人生を歩むことも少なくない。ただし、仮に子供を捨てた(子供との面会等を放棄した)としても、民法上の扶養義務から逃れることは当然できず、資力に応じて養育費を支払わなければならない。養育費の支払を正当な理由なく怠れば、裁判所の命令によって銀行口座の差し押さえや、給料の差し押さえなどをうけ、強制的に支払わされる可能性もある。余程資力に余裕がある場合でもなければ、子供を捨てたとしても、法的な扶養義務が人生設計や、別の女性との恋愛・交際・結婚に大きく影響する場合がある。また、世間体などの関係上、父親であっても母親であっても、住んでいる場所を逃げるように出て行くことや、逆に近所付き合いなどの関係からその場に留まる事を許されずに引越しせざるを得ない事も少なくないとされる。場合によれば、世間に顔向けできなくなった、家柄に泥を塗ったとして、家族との絶縁状態になることも少なくないとされる。 なお養育費の請求は子供の権利であるので、子供を引き取った親が、子供を引き取らなかった親に対して権利を放棄したとしても、完全に扶養義務がなくなるわけではないので注意が必要である。

また、10代の母の子として生まれた子供が壮年期(30~40代)になった頃、不祥事を起こす例は少なからず見られる。

世界的な状況[編集]

先進国において社会問題としての10代の妊娠に関するデータは、多くの妊娠した者が教育的なレベルが低く、貧困層に含まれることを示している。先進国における10代の妊娠は、通常婚外交渉が原因であり、そして多くのコミュニティおよび文化によって社会的不名誉のスティグマを持つ。これらの理由のために、10代の妊娠の数を制限しようとする多くの研究およびキャンペーンがあった。

アジア・アフリカ[編集]

発展途上国では10代の妊娠の発生率が明確に高い。北アメリカおよび西欧のような先進諸国の地域においては10代の親は未婚である傾向があり、少女の妊娠は社会問題と見なされるが、それとは対照的に、発展途上国における10代の親は結婚しているケースがあり(地域によっては10歳未満で結婚する人もいる)、そして彼女たちの妊娠は家族および社会に受け入れられている。しかし早期の妊娠は栄養失調および健康管理の貧弱さと結びついて出産時の母体の問題という、医学上の問題を引き起こす。

サハラ以南のアフリカでは10代の発生率妊娠が最も高い。概してアフリカの女性は、他の地域の女性よりも低年齢で結婚し、その結果初期の妊娠につながる。

南太平洋の島国では10代の妊娠という問題は頻繁に起きており、ピトケアン諸島では住民のほとんどが12歳から15歳で最初の出産を経験していたことが問題になり、ピトケアン諸島少女性的暴行事件として住民の成人男性全員が性犯罪者となった。ポリネシア文化圏では十代の出産は珍しくないが、イギリス領などが多く住民には欧米法が適用されるため事態が発覚すると住民の大半が性犯罪者という状況が発生している。

インドにおいて婚前性交渉は普通でないが、早婚によって十代で妊娠する女性がいる。早婚の発生率は都市化の進んでいない地域で更に高い傾向にある。日本を含むアジアの他の地域では、双方の性のために結婚年齢を上昇させる傾向を示しているが、韓国およびシンガポールにおいては20歳未満での結婚がほとんど消滅した代わりに、婚前性交の発生率が上昇するという事態が起こり、各方面で懸念の声が挙がっている。

ヨーロッパ[編集]

ヨーロッパの全体の傾向としては、1970年以来十代の妊娠は減少している。しかしながら過去のヨーロッパにおける10代の母は結婚後に出産した者であることが多く、社会的に問題視されてはいなかったという一面もある。現代でもギリシアおよびポーランドのように10代後半に結婚した母が子供を生む場合もある。妊娠中絶の問題もある。イギリス(10代の出生率がヨーロッパで最も高い[1])は、大部分のヨーロッパの国より妊娠中絶率が高い。ポルトガルのようなカトリック国は、高い割合で10代女性が妊娠しているのに、堕胎は違法であり続けている。

一方、オランダはティーンエージャーの間の出産および堕胎に関して低率を保っている。10代の妊娠率がより高い諸国と比べると、オランダ人は最初の性交渉の平均年齢が高く、避妊用具の使用が増加している。デンマークおよびスウェーデンのような北欧諸国では、10代の出産率は同様に低く保たれている。しかし、それらの諸国の流産率は、オランダより高い。イタリアおよびスペインのようないくつかの国における十代の妊娠率が低いのは、伝統的価値および社会非難に起因する可能性を持つ。

性教育との関連[編集]

2004年秋の社団法人全国高等学校PTA連合会と京都大学大学院の木原雅子の調査によれば、対象となった約一万人の高校生の内小学校時代に性体験をした人間は39人いた。日本では、キリスト教イスラームなどに代表されるいかなる場合においても婚前交渉は罪であるとする宗教上の背景は存在しないが、性にまつわる話をタブー視する傾向もあり、性教育は非常に論争の原因になる討論の主題である。いくらかの学校は「開放的」教育を行い、処女性を尊ぶ考えは前近代的な物として排除される。一方アメリカではこれは逆転しており処女性を守る考えは非常に一般的である[2]。なお、アメリカはユニセフの1995年から1998年のデータでは15歳から19歳の女性の出産率は日本の約12倍となっている[1]。開発途上諸国においてはティーンエージャーに向けられた性のプログラムはしばしば小規模である。ただし、インドネシアおよびスリランカのようないくつかの国は組織的な方針枠組を持っている。ヨーロッパでは就学前から性教育を行う国があり、それらの国では低年齢での妊娠や性病、性犯罪の発生率が低い。 ドラッグおよびアルコールは、望まぬ性活動を引き起こす可能性がある。強姦は、10代の妊娠の重要なファクターである。多くの国において、10代の少女との性交は承諾に関係なく性的同意年齢の問題から法定強姦犯罪として扱われる。ただしこれは国ごとに異なり、例えば英国においては、16歳未満の少女と性的交渉を持つことは違法であるが、イタリアにおいては女性が14歳未満でない限り違法とならない。日本の承諾年齢は13歳と低い年齢に設定しており、13歳未満なら強姦となるが、それ以外は両性の合意がある限り違法ではない。ただし同意や金銭の授受に関わらず、18歳未満との性行為は児童福祉法やいわゆる淫行条例に違反するとされる判例(特に、自己の性的欲求を満たすことだけを目的とした性行為)も出ており、違法となることもありうる。ただし、上位法である民法に定められる女性の婚姻成立可能年齢が今のところ満16歳以上なので、仮に女性が16~17歳でも法に基づく婚姻が成立している状態であれば、この判例に影響されることはなく合法である。

いくらかの社会においては、早婚および伝統的な性役割は10代の妊娠の発生率における重要な要素である。青春期の結婚が普通でない社会において若い頃の最初の性交においては、避妊具・避妊薬が使われないことがままある。先進国における大部分の10代の妊娠はそれらの理由から計画されない妊娠である事がある。経験が乏しい青年はコンドームの使い方に慣れていない。また、経口避妊薬を飲むのを忘れることもある。十代の妊娠という問題を持つ諸国がティーンエージャーの間での性的関係を受け入れ、そして性に関する包括的でバランスのとれた情報を提供することが重要である。

さらに低年齢での出産[編集]

最も若く出産した例としては、リナ・メディナが知られている。メディナは、1939年に5歳で男の子を生んでいる。このことは、以前はギネスブックに記録されていたが、現在は項目そのものがない。なお、女性が10歳以下で十分に出産ができる状態になることはほとんどない。

関連項目[編集]

出典[編集]

  1. 1.0 1.1 "Teenage birth rate (most recent) by country" NationMaster, 2010年6月10日閲覧

外部リンク[編集]