中型自動車
中型自動車(ちゅうがたじどうしゃ)とは、日本の道路交通法令における自動車の区分のひとつで、車両総重量5,000kg以上11,000kg未満、最大積載量3,000kg以上6,500kg未満、乗車定員11人以上29人以下の四輪車を指す。
2004年6月9日に公布。2006年11月7日の閣議決定により道路交通法(及び下位命令)の一部改定により2007年6月2日施行された。中型自動車は道路交通法(及び下位命令)で規定される新しい区分となる。
中型自動車を公道で運転する場合には、中型自動車免許、中型自動車第二種免許(以下それぞれ「中型免許」「中型第二種免許」と略記、免許証表面の略称には「中型」・「中二」と記載される。)、もしくは大型自動車免許、大型自動車第二種免許(以下それぞれ「大型免許」「大型第二種免許」と略記)の運転免許が必要となる。
道交法改正以前の『普通自動車』としていた者の免許は道交法改正で中型自動車の8t限定(免許証の条件欄に『中型車は中型車 (8t) に限る』と表記される)となった。
目次
新区分制定の背景
道路交通法はその制定が1960年(昭和35年)であり、以降、貨物自動車の大型化が進展している。
- 車両総重量11トン以上の貨物自動車が大型自動車の主流となった
- 普通免許で運転できる貨物自動車が制定時の大型自動車並みに大きくなった
交通死亡事故において貨物自動車の運転手が第一当事者[1]となっており、普通免許、大型免許の許可されている上限の車両の事故率が高く、また、他の種類の自動車と比べて死亡事故が減っていない[2]。
また、日本以外では普通免許で運転できる車両の大きさの上限は総重量3 - 5トン程度である国が多く、総重量8トンまで運転できる日本の旧普通免許の上限は世界的にも突出して大きかったため、世界的な免許区分の趨勢との乖離も問題視されていた。
そのため、貨物自動車の大型化に対応し、ドライバーの技能不足、知識不足による貨物自動車の事故を抑制し、また世界的な免許区分の趨勢との差違を縮小するために、免許制度を改正し、それに対応する車両区分が設けられることとなった[3]。
中型自動車の特徴
日本における法令上の自動車の区分で、大型自動車と普通自動車の中間に位置づけられる。道路交通法とその下位命令で規定される。従来の大型自動車と普通自動車の境目は、車両総重量8トン、最大積載量5トン、および乗車定員11人であった。改定(改正)後は、中型自動車は、車両総重量が5トン以上11トン未満、最大積載量は3トン以上6.5トン未満、乗車定員は大型車の範囲からマイクロバスの定員範囲にあたる11人以上29人以下、の範囲と決定された。なお法律施行前の普通自動車運転免許保持者は中型免許を保持しているとされるが、運転免許証には「中型車は中型車 (8t) に限る」と表記され、車両総重量8トン、乗車定員10名までの中型自動車を運転できる。よって施行前の普通自動車運転免許保持者が中型免許を取得しようとした場合、新規取得ではなく限定解除になる。
特定中型自動車
中型自動車を特定中型自動車と特定以外の中型自動車に分ける場合、その区分は車両総重量8トン、最大積載量は5トン、乗車定員は11人以上であり、かつての大型自動車と普通自動車の区分と同じである。したがって、2ナンバー及びナンバープレートが大板の中型自動車が特定中型自動車となり、2ナンバー以外の中板の中型自動車が特定以外の中型自動車になる。
また、それぞれに貨物・乗用の区分があるので、特定中型貨物、特定中型乗用、特定以外の中型貨物、特定以外の中型乗用という4つの区分があることになる。いわゆる4トン車は「特定以外の中型貨物自動車」である。
これらの組み合わせで道路規制がなされるので、従来の大型貨物の規制は「大型貨物及び特定中型貨物」という規制と同等である。これを機会に規制が見直された場合を除いて補助標識には中型自動車をどうするかの規制が加えられた。
中型自動車 | 特定以外の中型自動車 | 特定中型自動車 |
---|---|---|
乗用 | --- | 定員11人以上29人以下 |
貨物 | (下記どちらかが該当) | |
車両総重量 | 5t以上8t未満 | 8t以上11t未満 |
最大積載量 | 3t以上5t未満 | 5t以上6.5t未満 |
高速自動車国道における法定速度 | 100km/h | 80km/h(乗用は100km/h) |
従って、中型乗用自動車は特定中型自動車に該当するが、仮に定員10人以下であっても、車両総重量が5t以上となれば特定以外の中型乗用車となる。現実的に中型乗用自動車はほぼ特定中型自動車となる。
有料路料金区分における中型車
有料道路、特にNEXCO(旧道路公団)管理の高速自動車国道の料金区分における「中型車」は、道路交通法における中型自動車という意味ではなく、当該有料道路独自の区分によるものである。NEXCO管理であっても自動車専用道路や一般有料道路、その他の有料道路においては別の料金体系が適用される場合が多い。
1ナンバーのうち普通貨物自動車(車両総重量8トン未満かつ最大積載量5トン未満で3車軸以下のもの、および被けん引車を連結していない2車軸のセミトレーラー用トラクタ[4])、2ナンバーのうちマイクロバス(乗用定員11人以上29人以下で全長7メートル未満かつ車両総重量8トン未満のもの)、トレーラー(けん引軽自動車[5]と2車軸以上の被けん引車との連結車両、およびけん引普通車と1車軸の被けん引車との連結車両)、およびこれらに準ずる8ナンバーの特種用途自動車がNEXCO管理高速道路において中型車として料金区分される[6]。つまり、コースターなどのマイクロバス(改正前は普通免許で運転不可能)やコンドルなどの4トントラック(改正前の普通免許で運転可能)は道交法でも高速道路の料金区分でも中型車の扱いになるということである。
免許制度
特殊自動車以外の四輪の自動車免許は大型免許と普通免許に分かれていたが、いわゆる4トントラック規模の交通事故の多発等を改善するため、2004年に道路交通法が改正され、中型免許を新設することになり、2007年6月2日から施行された。
受験資格は、20歳以上で普通免許、大型特殊免許のいずれかの免許を取得後、2年以上経過した者とされる。ただし、特例として自衛官は19歳以上であればこの期間要件は課されない。この中型免許を持つ者が運転できるのは、中型自動車のほか、普通自動車、小型特殊自動車及び原動機付自転車がある。
中型免許で運転できる車両は多岐に渡り、旅客用のマイクロバスをはじめ、様々な四輪車を運転することができる。ただし現状は、旧普通免許の区分から新たに中型の区分に組み入れられた車両(いわゆる4トントラックなど)は多いものの、旧大型免許の区分から新たに中型の区分に組み入れられた車両としては、かつてのマイクロ限定運転免許や小型限定貸切事業免許の名残で「マイクロバス」は多いが、貨物車では、開発段階から中型免許の区分を考慮して製造された車両はまだ多くはない。しかし、いわゆる4トントラックをベースにブレーキやサスペンションに改造を施し総重量と最大積載量を増した中型対応車は、数十万円程度で改造できることもあり比較的多い。
8t限定免許
2007年の改正法施行前に普通自動車免許を受けた者は、改正後は「中型車 (8t) 限定」又は「AT中型車 (8t) 限定」の条件を付された中型免許を所持しているとみなされる。その後免許更新の際に、免許の種類は「中型」に変更され、条件欄に「中型車は中型車 (8t) に限る」と表示され、施行後も施行前の普通車の範囲内と同様(車両総重量5,000kg以上8,000kg未満、最大積載量3,000kg以上5,000kg未満、乗車定員10人以下)の中型自動車(AT車限定の条件が課されている者はAT車のみ)を引き続き運転することができる。
改正法による限定なしの中型自動車免許、8t限定免許(=改正前の普通自動車免許)、普通自動車免許を比較すると、以下の表のようになる。
項目 | 中型自動車免許 | 8t限定免許 | 普通自動車免許 |
---|---|---|---|
年齢要件 | 20歳以上 (普通免許などを取得して2年以上) |
18歳以上 | |
車両総重量 | 11t未満 | 8t未満 | 5t未満 |
最大積載量 | 6.5t未満 | 5t未満 | 3t未満 |
乗車定員 | 29人以下 | 10人以下 | |
深視力検査 | あり | なし | |
AT限定免許 | なし | あり |
なお、経過措置は施行日時点ですでに免許を保持している者、あるいは申請済みで免許の交付を受けていない者に限られ、それ以降に免許を完全失効・取り消し、あるいは8t限定の解除や上位免許を取得した場合には適用されなくなる。また、施行日時点で仮運転免許や卒業証明書を所持していた場合、それらは改正施行に伴い新法上の普通免許に関してのものとされるため、それらで8t限定免許を取得することはできない。
また、旧法における大型免許と普通免許を両方受けていた場合、新法の大型免許で中型車も運転可能であるが、旧普通免許から切り替わった中型免許について「中型車 (8t) 限定」などの条件が付される。この場合、深視力などの事情で大型免許を喪失すると、新法の中型8t免許となる。
中型免許の8t限定解除を行う際は深視力の検査は課されないが[7]、限定解除した時点で経過措置から外れ、次回の更新時から限定なし中型免許の更新となり、深視力検査を含む適性検査が必要となる。
また、8t限定免許の有効期限を過ぎて失効させた場合、6ヶ月以内(いわゆる「うっかり失効」)であれば再度8t限定の免許を受けることができるが、それ以降に再取得しようとした場合には新法の規定による免許しか取得できない。
なお、「AT中型車 (8t) 限定」からAT限定のみを解除して「中型車 (8t) 限定」に変更する場合は、普通乗用車で教習・試験が行われる[8]。
また、改正直前に普通自動車免許を取得した場合、改正後に中型8tとなっても初心運転者期間が適用された。
尚、中型二種8トン限定を審査解除する時および中型二種免許の取得を前提に中型仮免許の試験を受ける場合は、運転免許試験場にて9mバス(旧制度における大型二種試験車であった車両)を使用する為、「隘路」の課題にあっては車体後方が後端より1m程度「Aライン」内に収まらない計算となる。これは、試験課題設定が全長7m弱の中型一種免許試験車の想定でライン引きされている為であり、中型二種免許試験および中型二種8トン限定を審査解除の場合は、その左右に引かれたラインを仮想延長し、仮想ライン上にタイヤ・車体が重ならないことが前提となる。
自動車重量税を基準とした中型自動車
自動車重量税は、一般的に、自動車購入時や車検の時に同時に納付する。また、自動車重量税は、同じ乗用車(ナンバープレートの分類番号の上1ケタ目が3・5・7)でも、500kg毎に納付額が異なるため、車検の料金表などでは、車両重量が1,000kgを超え、かつ、1,500kg以下の乗用車のことを、中型自動車、または、中型乗用車と表記されていることが多い。なお、貨物車については車検の料金表などで中型貨物車と表記されることはなく、道路運送車両法に基づき小型貨物車(4ナンバー車 : 分類番号の上1ケタ目が4・6)と普通貨物車(1ナンバー車 : 分類番号の上1ケタ目が1)で分類し、さらに重量で細分化されている。
注記・参考
- ↑ 第一当事者とは、交通事故を起した人のうち違反(過失)が重い方のこと。違反(過失)の程度が同じの場合は被害が軽い方。
- ↑ 車両総重量別では、車両総重量5トンから8トンという普通免許の上限、および、車両総重量11トン以上という大型免許の中でも大型の部類が高い事故率で、この9割以上が貨物自動車だった。
- ↑ 道路交通法改正試案(警察庁)
- ↑ ナンバープレートは大板
- ↑ ただし、ナンバープレートは登録車扱いとなる
- ↑ 基本的な料金車種区分表 ドラぷら(東日本高速道路が運営)
- ↑ 中型自動車・中型免許の新設(8トン限定免許Q&A A1)2013年1月7日閲覧
- ↑ 免許証ならなんでもとれる洲本自動車教習所【中型AT8t限定 ATのみ限定解除のご案内】(教習車紹介)2013年1月7日閲覧