ガンダムタイプ
ガンダムタイプ(GUNDAM Type)は、アニメ作品群「ガンダムシリーズ」に登場する、架空の兵器の分類の一つ。モビルスーツ(あるいはモビルアーマー)のうち、シリーズ第1作『機動戦士ガンダム』に登場したRX-78-2ガンダムをモチーフとした機種を指す。
注:本項では解説の都合のため、一部のモビルスーツの名称と型式番号を併記する。
目次
概要
「ガンダムシリーズ」には、RX-78-2ガンダムをモチーフとした主役モビルスーツがほとんどの作品に登場する。これらは「ガンダムタイプ」と総称されることがある。
「ガンダム」の名を冠するモビルスーツは主に以下の特徴を持つ。
- その時代で最先端あるいは最高レベルの性能を持つ。
- 試作機・先行量産機・エースパイロット専用機など、希少性が高い。
- 特有の頭部デザインを持つ。主なところでは双眼式サブカメラ・額のV字型ブレードアンテナや顎部分の四角いデザインなどが挙げられるが、機体によってはこれが変わる事もある。最も極端な例はブレードアンテナの代わりに「ひげ」を付けた∀ガンダムであるが、それ以外にも俗に「ゼータ顔」と呼ばれる独特のデザインの頭部を持つΖガンダム、アンテナ基部にビーム兵器を搭載したΖΖガンダムや、応急修理でジムの頭部を付けた陸戦型ガンダム、現地改修でブレードアンテナを廃したガンダムEz8のような例もある。
- 物語の終わり(戦争の終わり)には、ほとんどの機体が撃破もしくは主人公自身の手で破壊される。
ただしガンダムタイプの流れをくむ機体の中でも、「ガンダム」の名を含まないものもある。ガンダム開発計画の中で開発されながら素性を隠すためにデザインまでも変更されたガーベラ・テトラ(ガンダム試作4号機)や、Ζガンダム開発の過程で制作された百式(δガンダム)などの例がある。リック・ディアスは当初「ガンダリウムγ」をモビルスーツで初めて主素材として使用したことから「γガンダム」と呼ばれる予定だったが、この素材を使用した以外にガンダムとの共通点は希薄であることから、クワトロ・バジーナの発案で改名されている。
ガンダムのデザイン
『機動戦士ガンダム』の企画が確立するまでには、主役メカのためにさまざまなデザインが検討されており、例えばパワードスーツとしてデザインされた最初期の案は後にガンキャノンとして採用されている。ガンダムのデザインが確定する前の段階では、ガンダムに人間のものに似た「口」がデザインされていたこともある。[1]ちなみにこの後に作られた『戦国魔神ゴーショーグン』、『宇宙戦士バルディオス』の口はガンダムに良く似た形をしている。
RX-78-2ガンダムのデザインは、ヒーロー然としたスーパーロボットのものから兵器然としたリアルロボットへの橋渡し役にあたるものであるといえる。例えば人間の目に似たデュアルセンサーあるいはサブカメラは、鉄人28号以来の主役ロボットの影響を受けている。ザンボット3、ダイターン3の流れを汲む鎧兜の前立物(鍬形)をモティーフとした角状のアンテナもスーパーロボットには必須のものである。一方で白を基調に青・赤・黄の色の三原色をアクセントとして配したカラーデザインは、より兵器らしさを求め白一色のカラーデザインを検討していた『機動戦士ガンダム』のスタッフと、ロボットアニメらしいカラーデザイン(ガンダム以前のロボットの色は赤・青・黄主体で構成されたことから「ロボット三原色」とも呼ばれた)を求めたスポンサー(おもちゃ会社など)の要求とのせめぎ合いの中で生み出されたものである。結果として、このカラーリングは後のロボットアニメに大きな影響を与え、とりわけ主人公ロボットの定番カラーとなる。
『機動戦士ガンダム』は映画版やプラモデル(ガンプラ)で結果的に大成功を収めた。しかしそれは、「リアル」ロボットの先鋭化へとつながり、一時期「二つ目・角付き」のヒロイックなデザインは「リアルでないもの」とされ、リアルロボットアニメ、そして特撮作品「戦隊」シリーズからすらも姿を消してしまう。「二つ眼」が復活したのは1984年の『重戦機エルガイム』後半の主役エルガイムMK-IIからである[2]。
「ガンダムシリーズ」にあって、後に述べるような宇宙世紀を舞台とした作品群における「ガンダム」の名を冠した機体は、「伝説の名機ガンダムをモチーフにした」ということに特に不自然さはない。しかしそれ以降に作られた、宇宙世紀以外の世界観を舞台とする作品群にあっても全く同様に「ガンダム」という呼称を持つ「二つ目・角付き・白基調で三原色はアクセント」の「モビルスーツ」が登場するのは不自然といえば不自然ではある。これ自体はメインスポンサーとして「ガンダム」という人気キャラクターを展開したいバンダイの意向によるところが大きいのだが、当然のようにファンの間で「それらも正当なガンダムか否か」という物議を醸すことになった。これについては初期のガンダムシリーズを手がけた富野由悠季自ら『∀ガンダム』でこれらを全て「黒歴史」という形で収斂させ、肯定している。
富野は原作者として関わった漫画『機動戦士クロスボーン・ガンダム』の登場人物に「目が二つ付いててアンテナが生えていればマスコミがガンダムにしてしまう」と言わせている。
各世界観におけるガンダム
作品によっては「ガンダム」を称するモビルスーツに特別な意味づけがなされている場合がある。また、 "GUNDAM" という語をなんらかの頭字語(アクロニム)として設定する場合もある。
宇宙世紀におけるガンダム
『機動戦士ガンダム』以降の宇宙世紀世界を描いた作品においては、ガンダムは特に優れた試作モビルスーツの象徴として扱われた。特に地球連邦軍の技術の象徴、さらには連邦軍そのものの象徴でもあったこともあり、例えばティターンズはガンダムMk-IIを自らを正当化するための手段としても用いた。以降もΖガンダムやガンダムF91などのエポックメーキングなモビルスーツが、RX-78-2ガンダムに似た外見と名称を受け継いでいる。
なお、宇宙世紀における地球連邦製のガンダムは、"General purpose Utility Non-Discontinuity Augmentation Maneuvering weapon system" (全領域汎用連続増強機動兵器)の略であり、GUNDAM systemというマーキングが記されているとされる。ただし、この頭字語は一年戦争期からあるものではなく、後から作られたものであるとされているが、いつ頃から使われるようになったかは諸説ある。
- 元々、この設定はあさのまさひこによって作られ、大日本絵画発行の書籍『GUNDAM WARS I PROJECT Ζ』から『ガンダム・センチネル』に至る過程で発展したものであるが、この時点ではガンダムというモビルスーツが複数作られるようになってから作られたという設定であり、具体的にはガンダムMk-IIあたりからとされていた。しかし、プラモデル『パーフェクトグレード RX-78-2 ガンダム』にもこのマーキングが含まれているため、既にRX-78-2ガンダムの開発時には作られていたのではないかという説もある。
- 代表的な機体
- RX-78-2 ガンダム
- RX-78NT-1 ガンダムNT-1(アレックス)
- RX-79[G] 陸戦型ガンダム
- ガンダム開発計画
- RX-78GP01 ガンダム試作1号機 "ゼフィランサス"
- RX-78GP02A ガンダム試作2号機 "サイサリス"
- RX-78GP03 ガンダム試作3号機 "デンドロビウム"
- RX-178 ガンダムMk-II
- MRX-009 サイコガンダム
- Ζ計画
- RX-93 νガンダム
- フォーミュラ計画
- F91 ガンダムF91
- Vプロジェクト(V計画)
- LM312V04 ヴィクトリーガンダム
- LM314V21 V2ガンダム
未来世紀におけるガンダム
『機動武闘伝Gガンダム』においては、各コロニーの威信をかけた代表選手としてのモビルファイターを指す。これらは頭部デザインこそある程度の共通性はあるが、ボディはまさしく「なんでもあり」である。
ただし、本来は「ガンダリウム合金を使用したモビルスーツ」("Gamma UNificational Dimalium Amalgam Mobile-suit")のことを指し、高性能なモビルスーツの代名詞であった。すなわち、全てのモビルファイターはガンダムであるが、全てのガンダムがモビルファイターというわけではない。ただしこれは設定上の問題であり、作中に登場したガンダムはほぼ全てがモビルファイターである。
ガンダムファイトに使用されるガンダムは上記の他に "Govern of Universe Nation Decide Advanced Mobile-suit" (宇宙を支配する国を決める新たなモビルスーツ)の略という意味も付加されている(原典には Unverse とあるが Universe の誤りであろう)。こちらの意味についてはGガンダムも参照のこと。
- 代表的な機体
- GF13-017NJ シャイニングガンダム、GF13-017NJII ゴッドガンダム
- GF13-001NHII マスターガンダム
- JDG-00X デビルガンダム
アフターコロニーにおけるガンダム
『新機動戦記ガンダムW』では、「ガンダニュウム合金を使用したモビルスーツ」("Genetic on Universal Neutraly Different Alloy-nium Mobile suit")のことを指す。中でもウイングガンダムゼロを基礎として開発された、コロニー側が「オペレーション・メテオ」のために建造した5機のモビルスーツおよびこの系統に属する機体を指し、同じガンダニュウム合金を使用しているヴァイエイトやメリクリウス、ビルゴシリーズはガンダムとは呼ばれていない。小説版では本来「ガンダム」はトールギスの開発中のコードネームという設定であった。
- 代表的な機体
- XXXG-00W0 ウイングガンダムゼロ
- XXXG-01W ウイングガンダム
- XXXG-01D ガンダムデスサイズ
- XXXG-01H ガンダムヘビーアームズ
- XXXG-01SR ガンダムサンドロック
- XXXG-01S シェンロンガンダム
- OZ-13MS ガンダムエピオン
- XXXG-00W0 ウイングガンダムゼロ
アフターウォーにおけるガンダム
『機動新世紀ガンダムX』では、ニュータイプ能力に反応するフラッシュシステムを搭載し、サテライトキャノンの初期起動やビットモビルスーツの遠隔操作が可能なモビルスーツを指す。これらの総称として「ガンダムタイプ」という言葉が用いられている。これらは第7次宇宙戦争に旧地球連邦軍の決戦兵器として投入されほとんどが失われたが、アフターウォーの時代にあってはガンダムを手に入れられれば天下無敵のモビルスーツ乗りになれると噂され、モビルスーツ乗りやバルチャーにとって垂涎の的であった。又、旧連邦の残存勢力が新連邦を結成する過程でも幾つかのガンダムタイプを試作している。
- 代表的な機体
- GT-9600 ガンダムレオパルド
- GW-9800 ガンダムエアマスター
- GX-9900 ガンダムX
- GX-9901-DX ガンダムダブルエックス
- NRX-0013 ガンダムヴァサーゴ
- NRX-0015 ガンダムアシュタロン
正歴におけるガンダム
『∀ガンダム』の正暦世界においては、ガンダムという存在はムーンレィスの伝説で「宇宙移民の大いなる迫害者」として語り継がれている。地球上においてはガンダムという名前は忘れられているが、アデスカの伝説に「白い悪魔」という巨人(白い悪魔はガンダムの異名の一つである)が語られているなど、断片的に記憶されている。
劇中において、地球人が「ホワイトドール」と呼んでいた機械人形のことを最初に「ガンダム」と呼んだのはコレン・ナンダーで(これに対しては、頭部デザインの違いから「ガンダム」であることを否定する発言も作中でなされている)、彼は後に月光蝶が発動する様子を見てウイングガンダムゼロらしき機体を連想している(これはあくまで演出上のことであり、実際にコレンがその機体を見たわけではない。そのためコレンが目撃した機体は不明である)。テテス・ハレはガンダムの伝説と∀の記号からこの機体を「∀ガンダム」と呼んだ。ある程度この機体を知る人物は「ターンエー」と、その他の登場人物は「ホワイトドール」あるいは「ヒゲ」と呼んでいた。アニメではこれ以外に「ガンダム」は登場しなかったが、小説版や漫画版では黒歴史の遺産として他のガンダムらしき機械人形が登場した。
コズミック・イラにおけるガンダム
『機動戦士ガンダムSEED』、『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』 においては他の世界観の作品群と異なり、「ガンダムタイプの機体」は「ガンダム」の名称を機体名として採用しておらず、ストライクガンダムであれば正式名称は「ストライク」となる。
「ガンダム」の名称は、OSあるいは機体全体のシステムの呼称から採られた頭字語の扱いとなっていて、一部の登場人物のみが「ガンダム」の呼称を使用している。『機動戦士ガンダムSEED DESTINEY ASTRAY』では、劇中の登場人物による「俗にガンダムタイプと呼ばれる」という表現がある。
ただ、これらの定義に当てはまらない、あるいは当てはまるための要件がストーリー中や設定上で語られていない機体もある。MBF-P01〜03ガンダムアストレイ、ハイペリオンガンダム、東アジアガンダム、ドレッドノートガンダム等がそれにあたる。
- 代表的な機体
- 初期GAT-Xシリーズ及びアカツキの起動画面
- General:Unilateral:Neuro - link:Dispersive:Autonomic: Maneuver
- ___Synthesis System: 「単方向の分散型神経接続によって自律機動をおこなう汎用統合性システム」の意であり、モビルスーツの操縦を神経接続によって補佐する。マニピュレーター等の操作にはフィードバック機能が備わり、発揮するトルクに比して精密な動作をこなす事ができ、パイロットはまるで自分の体を動かすような錯覚さえ覚える。このシステムは後に開発されたモビルスーツにも受け継がれ、当初(未完成だった時点)はコーディネーターにしか扱えないほどプログラムに問題が多かったが、後にモルゲンレーテ社により改良されナチュラルの神経接続にも適合可能となっている。
- ザフト軍ZGMF-Xシリーズの起動画面
- GENERATION: UNSUBDUED: NUCLEAR: DRIVE: ASSAULT: MODULE: ___COMPLEX: 「核駆動を使った世代の強襲モジュール兵装複合体」の意。『SEED』の小説版では、フリーダムに搭乗したキラ・ヤマトが、このOSを開発者が趣味で頭字語が初期GATシリーズのG.U.N.D.A.M.と同一となる様にしたと推測している。
- セカンドステージシリーズの起動画面
- Generation: Unrestricted: Network: Drive: Assault: Module: 「無制限のネットワーク駆動世代の強襲モジュール」の意。デュートリオンビーム送電システムを搭載している機体のOS。
- デスティニー及びレジェンドの起動画面
- Gunnery: United: Nuclear-: Dueterion: Advanced: Maneuver: ___System:「核・デュートリオン統合先進機動砲撃システム」の意。
- デストロイの起動画面
- Gigantic: Unilateral: Numerous: Dominating: AMmunition: 「巨大制圧火器集約要塞」の意。
- スターゲイザーの起動画面
- Guider: UNmanned: Deployment: Autonomic: Manipulation: 「無人・自律運用展開教導機」の意。
西暦(機動戦士ガンダム00)におけるガンダム
『機動戦士ガンダム00』では、武力による全世界の戦争行動の根絶を目指す私設武装組織「ソレスタルビーイング」(CB)の主力兵器として登場。この世界のガンダムは、全機が「GNドライヴ」と呼ばれる半永久機関を搭載し、他勢力の兵器と比較して、あらゆる面において世代を飛び越えた高性能機として扱われている。そのため、起動時にパイロットの生命情報・網膜・声紋確認を行うため、ガンダムもパイロットも超極秘情報となっている。CBの主戦力は基本的に僅か4機のガンダムに占められ、これらだけで大国に匹敵する戦力を持つとされる。また、ガンダムは「ソレスタルビーイングの理念(戦争根絶)を体現する機体」と説明されており、ガンダムエクシアのパイロットである刹那・F・セイエイはしばしば「自分がガンダム(戦争根絶を体現する者)である」という趣旨の発言を行っている。
- 代表的な機体
- GN-001 ガンダムエクシア
- GN-002 ガンダムデュナメス
- GN-003 ガンダムキュリオス
- GN-004 ガンダムナドレ
- GN-005 ガンダムヴァーチェ
- GNW-001 ガンダムスローネアイン
- GNW-002 ガンダムスローネツヴァイ
- GNW-003 ガンダムスローネドライ
脚注
- ↑ 『機動戦士ガンダム 記録全集1』日本サンライズ、1980年、164頁。「口」はそれまでにサンライズが参加していたロボットアニメにおいても、例えば『勇者ライディーン』や『無敵鋼人ダイターン3』の主役ロボットに見られるものである。
- ↑ ただし、ファンタジーをモチーフとする『聖戦士ダンバイン』、『機甲界ガリアン』においては「二つ眼」を主役ロボットに採用していた。
関連項目
モビルスーツ関連項目
特定の種別のモビルスーツに関する項目。
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