廿日市女子高生殺人事件
廿日市女子高生殺人事件は2004年10月5日に広島県廿日市市に住む高2女子生徒の北口聡美さん(当時17歳)が自宅で刺殺された事件。捜査特別報奨金制度対象の事件で、2018年まで未解決事件となっていたが、2018年4月13日に容疑者と見られる男が任意同行された。
目次
事件当日の状況、特徴
- 2004年10月5日
- 午後3時ごろ、広島県廿日市市上平良の自宅にて、北口聡美さんが若い男に刃物で刺された。
- 北口聡美さんは高校から帰宅後、自室で仮眠を取っていた。
- 北口聡美さんの叫び声を聞き、祖母と妹(次女)が駆けつけた。男は祖母にも襲いかかり、背中や腹を10ヵ所ほど刺して逃走した。
- 妹は裸足のまま、30m離れた近所の園芸店に助けを求めた。
- 北口聡美さんと祖母は重体に陥って病院に運ばれた。北口聡美さんはまもなく出血多量で死亡、祖母はその後回復した。
- 北口聡美さんは学校内でのトラブルなどもなく、犯人の動機は不明。
- 北口聡美さんを1階の玄関まで追って刺すという、凶悪性の高い犯行。
- 2008年
- 北口聡美さんの家族らは300万円の懸賞金を用意し、犯行当日の目撃者や、犯人に心当たりがある者に呼びかけた。以降、懸賞金は10回にわたって延長された。
- 2018年4月
- 現場の指紋やDNA型が、別の暴行事件で山口県警に書類送検された男と一致したため、容疑者と見られる山口県宇部市の35歳の男性会社員(当時21歳)が任意同行された。
犯人像の謎
北口聡美さんの遺品は、警察が捜査のために一時的に預かっていた。後にそのほとんどが返却されているが、携帯電話は返却されていない。
- 携帯電話には、北口聡美さんと何らかの関係があると思われる男性2人組の名前が登録されている。
- しかし、北口聡美さんの行動範囲は塾・学校・自宅周辺と非常に狭いものであり、友人や家族でさえも心当たりのない人物である。
- この人物は「○くん」と言う敬称から、同世代の男性であると思われているが、身元は分かっていない。
これらの情報は、奇跡の扉 TVのチカラにて報道された。
犯人像
- 年齢:20歳位
- 身長:165センチ位
- 体格:がっちり型
- 特徴:目が細い、頬にニキビ様の跡
- 髪型:当時は髪を立たせており、若干茶髪
- 靴:DUNLOP製運動靴(約26~27センチ)※アッパーはこれ以外の種類有
「ニキビ痕の若い男」はどこへ逃げた
定期試験の緊張感から解放され、夕方のアルバイトへ行くまでの時間を、ベッドで音楽を聴きながら一休み-。
自宅でくつろいだ時間を過ごしていた女子高校生が突然侵入してきた男に刃物で襲われ、命を奪われた。男はマスクなどで顔を隠さず、素顔のままで凶行に及び、ツンと立った短髪にニキビ痕という特徴的な外見が判明した。「早期解決」と多くの捜査員が抱いた見込みはもろくも崩れ、有力な手がかりが得られないまま事件から9年余が過ぎた。遺族は風化を防ぐためにブログを開設し、情報を求め続けている。
細い目とツンと立った短髪…特徴的な容貌
平成16年10月5日。広島県立廿日市高校2年、北口聡美さんは廿日市市上平良の自宅離れ2階に1人でいたところを、部屋に入ってきた若い男に襲われた。1階に逃げたが、追ってきた男に刃物で首や胸などを刺されて死亡した。
部屋の枕元のミニコンポに接続されていたイヤホンが外れ、あわててベッドを離れたことがうかがえる。母屋で聡美さんの小学6年の妹と一緒にいた祖母のミチヨさん(82)は、離れから悲鳴とともに階段を駆け下りる音を聞いた。
すぐに駆けつけたミチヨさんらは離れ1階で男と鉢合わせになった。男の刃物はミチヨさんにも向けられ、一時は意識不明の重体となったが、幸いにも回復。妹は逃げ出して無事だった。
「知らない人」という妹の目撃証言から、男はがっちりした体格で身長約165センチ。細い目と立たせた短髪、頬のニキビ痕といった特徴的な容貌が判明した。現場にはダンロップ社製の26~27センチの靴跡も残されていた。
聡美さんの交友範囲は高校と、小学校時代から通う学習塾、それに夏に始めたアルバイトのクリーニング店ぐらいだ。
「事件は早期に解決できるだろうという期待感があった」
発生当初から現場に入った捜査員たちの見込みは、もろくも瓦解することになる。
被害者を知る者の犯行?
廿日市署捜査本部はこれまでに延べ20万4385人の捜査員を投入(2013年11月末現在)し、聡美さんと接点のあった人物や不審者などを捜査。情報提供も約4400件あったが、今のところ、犯人に結びつく有力な情報は得られていない。
犯人像も不明だ。ただ、定期試験は2年生だけ日程が前倒しで行われ、聡美さんは普段とは違う時間帯に自宅にいた。しかも同じ敷地内に母屋と別棟、離れが建つ古い民家の一室を狙って侵入していることに捜査本部は着目する。
現場は市中心部から北西に約1キロ。主要幹線道路の国道2号に接続する国道433号沿いにあり、交通量は多い。近年は宅地化が進んでいるが、事件当時は田畑も多く、住民以外が目的もなく立ち寄るような場所はなかった。
ある捜査員は「全く土地勘がなく、通りがかりで犯行に及んだ感じはしない。ある程度、聡美さんのことを知っていた可能性もある」と語る。
情報を…ブログ「娘への思い」開設
家庭では妹と弟の面倒をよくみるしっかり者だったが、学校では「天然ぼけ」のキャラクターで愛されていた聡美さん。数学が得意で、4年制大学の理系学部への進学を希望していた。
「家から通える範囲にある大学ならいいよ」という家族に、「そろそろ志望校を決めないとね」と話していた。
事件が起きなければ、翌週から企業訪問が日程に組み込まれた東京への研修旅行に参加することになっていた。研修旅行では初めて東京ディズニーランドに行く予定で、仲良しの友人グループで「何を見ようか」「どのルートで園内を回ろうか」と想像を膨らませていた。自宅でもインターネットで情報を集め、楽しみにしている様子だったという。
事件から9年余が経過した今も、聡美さんの墓には多くの友人らが訪れる。
今夏、父の忠さん(56)は、聡美さんの好物だったミルクティーが供えられた墓前で「ご両親へ」と書かれた手紙が置いてあるのを見つけた。親友の女性からの結婚報告だった。
「娘が生きていれば26歳。仕事にもようやく慣れて、そろそろ結婚を考える時期だったかもしれない」。忠さんは大人になった友人にまな娘の姿を重ねようとするが、その笑顔はあどけない17歳のままだ。
事件を風化させず、犯人に関する情報を得るきっかけになればと、忠さんは事件から約1年後、インターネット上にブログ「SA・TO・MI~娘への想い~」を開設。毎日のように内容を更新、聡美さんの思い出や日々の出来事などをつづる。
ブログに記載しているメールアドレスには1年に10~15件の情報が届き、捜査本部にも伝えている。
「事件解決のため、とにかく情報がほしい。今まで話していないことがあれば、どんなに小さなことでも構わないので教えてもらいたい」。悲しみを胸に秘めた忠さんの訴えが重く響いた。
情報提供は廿日市署捜査本部へ。(電)0829・31・0110