村おこし
村おこしとは、地域(地方)が、衰えた経済力や人々の意欲を向上させたり、人口を維持したり増やしたりするために行う諸活動のことである。
目次
背景
日本では1960年代以降の重化学工業を主軸とした工業化に成功した一部の地域を除き、地方では人口流出が起き、労働力を必要とした大都市圏(特に東京23区・政令指定都市・県庁所在地および近接する市・郡)に産業や人口が集中し、地方の町・村や離島では、以下のような過疎化の悪循環が深刻になった。
- 雇用が少ない。
- 近代的な産業と娯楽が県庁所在地などの都市部にのみ集中し、若者の人口流入が発生する。
- 逆に、需要が見込めないなどの理由で、娯楽施設が地方へ進出しない。
- 都市部へ労働力人口が流出する。
- 郡部での地元産業(の働き手)が高齢化したことで衰退する。
- さらに人口流出が加速し、町・村・離島がいっそう過疎化する、悪循環に陥る。
農村・山村・漁村では、戦後の過剰人口の状態が原因で、都市部へ労働力人口が流出した。山村では燃料革命とも呼ばれる薪需要の激減、品質が悪いが安い外国産材の流入により急速に衰退した。
日本の経済において「地方の過疎」が語られる事がある
中心部の都市機能の衰退、郊外化、ドーナツ化に加え、「大規模小売店」やショッピングモールの郊外への進出によって、周辺地域の小売店が経営の危機を迎えてしまい、寂れてしまった商店街が増えたりして、店じまいした店舗がかつての駅前商店街に軒を連ねて、いわゆる「シャッター通り」となり、その寂れた雰囲気が余計に客足を遠ざける一因となっている。
工業化に成功した地方においても、二度にわたる石油危機や急速な円高、目先の製造原価を下げて目先の利益を得ようとした愚かな経営者が国内工場を海外に移転させ、その結果、肝心の製造ノウハウが現地の外国人の職人や技術者などに知られ、流出してしまったことや、(その結果起きる)安さを武器にしたアジア諸国の追い上げなどにより、自滅し、結果として日本の地域では空洞化現象がみられ、雇用の喪失や低賃金化に見舞われている。
こうした人口減少により、産業や地域活動の担い手が不足した。さらには、地元に伝わる伝統工芸や伝統芸能、祭や歌、踊りといった伝統的な文化活動の担い手や後継者不足も顕著になり、中には後継者不足から、文献すら満足に保存継承されず消失してしまう地方文化もある。
- 問題のまとめと対策の目的
つまり次のような問題が複合的に起きている。
よって次のようなことのいずれか、あるいは複数、全部を目的としているのが地域おこしである。
- 産業の創出や立てなおし。経済的な建て直し。雇用の創出や維持。
- 若者の人口流出の歯止め・回復。新規住民の呼び込み。子供のいる家族の呼び込み。
- 地域文化の担い手の確保と継承。
地方移住に失敗した人たちが語る田舎暮らし
ここ最近、都会での暮らしに見切りをつけて、田舎で第二の人生を始める人が増えているらしい――。とはいえ、誰もが地方へ行けば平穏が約束されるわけではない。“田舎の掟”を知らなかったために地元になじむことができず、逆にストレスを抱えて出戻り…なんていう例も少なくないのだ。
まずは、東京都X区から福島県Y町へ移住したAさん(24歳・男性・フリーター)。「行けば仕事ぐらいあるはず」という甘い認識が招いた“悲劇”の日々とは…。
都内の大学を卒業後、2年間で3社ほど離転職を繰り返し、会社員という生き方が窮屈に思えてフリーターになりました。当時は実家で悶々とした生活を送ってましたね。
そんなある日、福島のある村を舞台にしたドキュメント番組を見たんです。都会から村に移住した大勢の若者が地元の人と一緒に村おこしに携わる姿は楽しそうで、「これだ!」と思いましたね。放射線量が低かったことも移住の決め手となりました。翌週、村に入ると、NPOの人に安いシェアハウスを紹介してもらえました。ただ、仕事はない。村にはハローワークもありません。ネットで求人検索しても「農作業」しかヒットせず…。
先輩移住者は皆、有名大卒でそれぞれNPOを運営したり、農産品のネット通販をやったりと賢い仕事をされていたのですが、学歴コンプレックスからか、うまく絡めませんでした。
移住して1ヵ月、貯金が底を突きかけていたある日、村役場が地域おこし協力隊を募集していることを知り、その募集要項には「地域活性化補助事業・月収15万円」とある。役場に速攻で連絡、後日面接を受けて内定をもらいました。
村おこし頑張るぞ、と勇んで役場に向かった勤務初日、上司に「とりあえず田畑の草刈りを」と指示されました。午後は村外の芸術家向けに貸し出している小学校の廃校舎の清掃業務。それが終わると子供向けのグリーンツーリズムに駆り出され、森で遊んで汚れた玩具の水洗いを延々と…。思い描いていた村おこしのイメージとはかけ離れた、雑用とも呼べない仕事が毎日続き、正直ウンザリしていたんです。
腐りかけていた頃、「新しい仕事をやる」と、今度は村のゆるキャラの着ぐるみを渡されて。それから1ヵ月後の真夏の炎天下、その日もゆるキャラに扮してスーパーの入り口横にポツンと立っていました。ゆるキャラの正体が私だということはすでに知れ渡っていて、買い物帰りのじいさんにこう言われたんです。
「地域おこしというけど、ソレ、意味あんの?あんた、税金で食べてるんだよね」もう、心をへし折られましたね。3日後、東京の実家に帰りました。
次に、京都府P市から長野県Q村へ移住したBさん(29歳・男性・営業マン)のケース。“癒やし”を求めて移住するも田舎特有の閉塞感から人間不信になってしまったという…。
僕が移住したのは長野県の山村。観光で一度訪れたことがあって、雄大な山岳風景や美しい棚田など日本の原風景を残すこの村にひと目ぼれし、移住を決断しました。冬はスキー場、それ以外は土建業や林業で食いぶちを得ていたんですが、田舎暮らしの理想と現実のギャップは受け入れ難いものでした…。
まず田舎は出費が多い。例えば、冬場の光熱費は月数万円。零下の環境では家の水道管の中にたまった水が凍るので留守中も常時、ストーブをつけっぱなしにしなきゃいけないんです。加えて、ムダに回数が多い集金。月4000円の集会費に青少年育成会費、体育協会費、交通安全協会費…と何かと持っていかれ、低収入な僕には地味ながらきつい負担でした。
村じゃ60代までは若者扱いで、80過ぎのじいさんも現役バリバリの農家。年寄りがみんな元気すぎるんです。毎晩誘われる酒盛りは身体的にきつかったですね。また、家の鍵は基本、開けっ放しだからプライバシーがなく、仕事後に帰宅したら勝手に洗濯物が取り込まれていたり、掃除されていたり、エロ本の置き場所が変わっていたり…。
正直、これもストレスに感じてたんですが、田舎暮らしを断念する決定的なきっかけになったのが、2年目の春に実施された村役場の職員採用試験に合格してしまったことですね。
役場といえば、最も安定的な収入が得られる村一番の大企業であり、村を出た若者がUターンできる唯一の仕事。何年かに1名という、その採用枠をよそ者の私が奪ってしまったことで、役場の同僚や一部の村民から拒絶されるようになったんです。あいさつをしても返事がなかったり、「あのコ、京都で借金をつくって村に逃げてきた」とか「女癖が悪い」とか根も葉もない噂まで広められて…。
私の悩みを優しく聞いてくれていた人も、地区の役員が集まる集会の場では「コイツ、この村から出ていきたいらしい」なんて平気で裏切るし、もう人間不信に陥りましたよ。
そのうち酒盛りにも誘われなくなって村で孤立し、役場も退職。京都に戻らざるを得ない状況となりました。二度と田舎暮らしをしようなんて思いません。
主体
地域おこしの主体(企画者、実行者)は次のようなものがある。
なお、2011年7月9日に大分県佐伯市で開催された「国道326号・10号沿線活性化シンポジウム」において、「観光カリスマ」の山田桂一郎は「行政に頼ってはダメ」としたうえで、観光客には新たに開発し売り出した「商品」などではなく、地域のライフスタイル(地域の人々の暮らし)からえり抜いたものに価値を認めてもらう必要性があることを述べている。
地域おこし活動の手法
以下のようなさまざまな試みが地方自治体や各種団体・組織で行われているが、どこにでも有効な決定的な策というものがあるわけではない。その地域ごとの特色や立地、人口や産業の状況を判断し、独自性のある地域おこし施策の計画・実施が望まれる。他の地域の「もの真似」(サル真似)をすればするほど地域ごとの独自の特色がなくなり、同じようなものが増えた分、相対的に魅力が減ってゆく。したがって、他の地域と比較した場合の、自地域の特色、本当の強みを見抜く必要がある。
- 産業の創出・立てなおし
- (農業地域)地域の農作物の品質向上・基準策定・地域ブランド化とその広報。新たな有望な農作物品種への挑戦と、成功した品種の地域内の農家への普及。
- 企業の誘致(「企業が地方へ進出する際に発生する、何らかのメリット(用地確保、減税など)の提示」と「地元の人の雇用割合、地元枠のノルマの要求・確保・契約書のとりかわし」をワンセットで行う。ただ来てもらうだけでは、必ずしも地元の人の雇用につながらない)。
- 観光資源の発掘・創出・再検討 →「#観光」の節で詳説。
- 人口流出の歯止め。新規住民の呼び込み。
- 都会の人の呼び込み
- 子供を伴って転居してくる家族のための、家賃免除や家賃補助(およびそれの都会の人に対する広報活動※)
- 子供を伴って転居してくる家族のために、引っ越し費用の補助を(一家族あたり、一定額 / 一定比率)行う。
- 移住してくる人の住民税などの(一定年数の)免除。
- 格安での貸し出しを予定している家屋を行政によってリスト化し、それとともに移住希望者への斡旋(およびそれの都会の人に対する広報活動※)
- 都会から移住してくる人々専用の集合住宅(例えば2階建て程度で、8~20部屋(軒)程度の小規模公営集合住宅など)の用意。(特に都会からの移住者は、いきなり田舎住民の「古いしきたり」の中に、ポツンと一家族だけ放り出されること、それで「のけもの」にされたり「意地悪」をされたりする可能性についてはかなり警戒しており、そうした(もっともな)警戒心を充分に理解して差し上げて、転入してくる人の周囲に同様に都会から来た人がいて相互に情報交換したり相談できる環境を用意してあげたほうが、安心して引っ越してくる。)
- 子育てのための施設(保育園・幼稚園など)の確保・整備。(および、それらの都会の人に対する広報活動※)
- 子供の教育場所 (小学校・中学校・高校など)の確保・整備(および、それらの都会の人に対する広報活動※)
- 地元の農業・漁業・林業などの仕事の募集のとりまとめ(および、それの都会の人に対する広報活動※)
- 仕事(職)・金銭的メリット・育児施設・子供の教育場所・都会からの移住者の集合住宅 をパッケージ化(ワンセット化)して用意することも非常に効果がある。逆に、地元の人がそれらをパッケージ化しようとしても、もしも「アレが足りない」というものがひとつでもあったら、実は、都会から来ることを検討している家族の目線で見れば、それが障害になって来れない、という事態になっている。なので、本当に都会の人に来て欲しいなら、地域の側は、その足りない「何か」を用意するべく実際に行動を起こす必要がある。
- (※ 何をするにしても、形式を用意するだけでは効果が無く、最後にしっかりと広報活動をし、ターゲットとする相手に知ってもらい、その人に実際に行動を起こしてもらえるか、というところに成否がかかっている。自分中心の目線ではなく、相手の目線に立ってどう見えるか熟慮した活動が必要。「Iターン」募集会場、「Uターン・Iターン」特集webサイトなどでの宣伝・告知、役所ホームページでの告知、メディアに対するプレスリリース など々を複数行う。ひとつの宣伝手法だけを頼って、その上にあぐらをかくようではうまくゆかなくなる。)
- 地元の若者の流出の歯止め。
- 若者の就職場所の用意とそれの若者への紹介。積極的、かつ適切な「マッチング」(地元の“職場”と“若者”の見合いの推進)。
- 若者による新規の起業に対する積極的な応援・援助(事業計画書作成の支援、起業に関する無料相談会(中小企業診断士などが相談相手になるもの)の開催、創業資金の援助、創業後の様々な補助金の支など)
- 農業・漁業・職人的な仕事などを営んでいながらも後継者がいないままに高齢化してしまった人と、地元のやる気のある若者との間の「縁結び」「とりもち」。老人にとっても若者にとってもメリットがあるような解決策・モデルケースの提示。場合によっては養子縁組の手助け。
- 学業・就職などで一旦地元を離れた若者の最新の連絡先のリスト化、データベース化。および最新連絡先へ向けての、網羅的・複合的・何度にもわたる、Uターン勧誘。
- Uターンしてきてくださる若者に対する、引っ越し費用補助、住民税免除(一定期間) などの経済的メリットの提供。
- その他、「箱もの行政」など
- 都市開発、再開発
- “目玉施設の整備” - 美術館や博物館、総合(運動)公園・スポーツ公園などの整備・「箱物」の整備(ただし、「箱物」は、各地域の役人が安易に似たようなものばかりを乱立させてきた歴史があり、相対的に魅力が感じられないため、人を引き寄せる力がなく、おまけに建造後の毎年の維持費(管理者の人件費、建築物の補修費、その他 諸々の関連費用)がかなり大きく、大抵は事前の利用者予測数が詐欺的なまでに誇大に見積もられていて、結果として長年に渡り大赤字になるのが一般的で、恒久的に財政の重荷になり、かえって地域衰退の要因のひとつにもなってきた。しばしば土建業者が裏で市長・町長・村長や役人と癒着してセ整備を強行するおそれもあるため、本当に地域おこしをしたい住民にとっては「いかにしてこうした安易な箱物を造らせない」よう監視するか、いかにして差し止めるか、ということが、しばしば地域おこしが成功するかしないかの分かれ道となる。)
- 姉妹都市、同名地域との交流
- 情報インフラの整備(情報格差の減少)
- 交通インフラの整備
- 利用が減少し、廃止の危機にある鉄道・バス路線への運行経費や車両購入費用補助、コミュニティバスの運行、タクシー利用補助券の配布。
- バスマップ(路線図・時刻表・乗り方・バスを利用して行ける施設を記載)の全戸配布や、自治体広報紙への折り込み。乗り方教室・無料運行日の実施や、体験乗車券の配布。鉄道との乗り継ぎ時間を極力短くしたダイヤ編成。バスロケーションシステム(走行位置情報)の提供。学生・高齢者・障がい者・運転免許返納者向けに大幅割引した定期券の発行。環境定期券制度(定期券保有者の同伴者は100円で乗車できる、定期券保有者本人は券面区間外も100円で乗車できるなど)の導入。観光施設入場料とセットになった割引乗車券の発売といった利用促進策。
- 鉄道駅への公共施設の移転集約や、待合室・パークアンドライド用駐車場の整備。
かつての「新産業都市」、「リゾート開発」、「ニューメディア」など、中央省庁の推進策に乗って特定の分野・領域に飛びつくとほとんどが失敗する。成功したケースにおいては、立地、時代背景、推進したリーダー、関係団体の協力、組織化などに恵まれたケースが多く、そうした要因を考慮せず成功事例をそのまま真似しただけでは地域色が出しきれず失敗に終わることもある。
観光
地域おこしには様々な方法があるが、ひとつは観光で、日本全国の人や世界各国の人に来てもらう、ということである。
「観光」というと、田舎の人は、田舎の発想で、ついつい「仰々しいものでないとダメだろう」とか 「(田舎の人が思う)街風でないと人が来ないだろう」などと考えてしまう人が多いが、そうしたその発想を根本的に捨てる必要がある。
地元の人にとっては「当たり前」で「何でもないこと」、例えば山々がある、渓谷がある、おいしい水がある、星空がきれい、畑がそこらじゅうにあって野菜がたくさんとれる、田があって春には田植えが行われ、夏の夜には蛍が舞い、秋には米の収穫が行われている、(海ぎわの村なら)漁師が漁をしている、魚が多い、(山ぎわの地域なら)山で林業を営んでいる人がいる、樹木がうっそうとしている、などといったことが、実は都会の人にとってはとても魅力的に見えている。
たとえば、畑が多いなら、そこで「農業体験コース」を設定し、週末ごとに来てもらったり、夏休みに来てもらったり、秋の収穫期に来てもらう。夜は地元の民家に泊ってもらい、地元の家庭料理も食べてもらって、日中は畑作業を体験する、という盛沢山のコースを設ける、というのも都会の人には魅力的なものとなる。各農家が、インターネット上(独自サイトや、あるいは楽天などのネットショップ)で告知して、希望者に細かく選んでもらって、直接的に予約をとるという方法で運営することもできる。あるいは、地元の農協に、広告・受付窓口・調整役をしてもらうシステムにして、予約客たちを何らかの方法で複数の農家に振り分けてもらう、という方法で運営することもできる。
たとえば、海ぎわで漁師が漁をしているのが当たり前の地域なら、漁協のメンバーで協力し合って、「漁業体験コース」を設ける。(上記と同様に)民家に泊め、地元の魚料理を出し、夜明け前から体験希望者たちを漁船に乗せて出港し、ちょっとした漁を体験させてあげる。それが、一般の人々にとっては、一生忘れられないような鮮やかな想い出になる。都会の人は、そうした体験・想い出のためだったら、それ相応の料金を払う。(漁法や運や漁師の腕にもよるが、あまりもうからない漁をしているくらいなら)むしろ体験希望者のグループを乗せて海に出たほうが実入りが良くなる。少なくとも、燃料代分まるまる損してしまうようなことは起きない。また、漁船のオーナーも、眼の前で人々が喜ぶのを見ていると、「はりあい」が生まれる。
地元の人が子供のころからなにげに食べている料理(地元の日常食、地元の家庭料理、郷土料理)が、都会の人にとってはそれがとても珍しい、ということに気づく必要がある。地元の人がしばしば食べていて、ただの“素朴で質素な食べ物”のつもりでいて、「値段なんてつけられないから売り物になるはずがない」などと思っているものが、都会の人にとっては珍しいもので、一度口にしてみたい、ということになる。
実は地元の人が売り物になるはずがない、と思っているものが、それを お盆などにのせ「ごはん」と(また、他の一品を足して)「定食」の形などにして、地元の料理屋や、あるいは民家を少し改装した部屋などで出すと、立派に売れる。しかも地元の人が(地元の金銭感覚で)「せいぜい500円くらいしかもらえないでしょう?」などと感じていても、都会の人は都会の金銭感覚で払うので「1200円」や「1500円」などの値をつけても立派に売れるということが起き、(原価が安く、「地元のおばちゃん」の安い人件費でもマンパワーが確保できるので)立派に利益が生まれる。それをインターネットで広告したり、地元の観光局などから情報発信してもらうなどをすれば、やがてちゃんと商売が成り立つくらい客が集まってくる。
村おこしを目的として「B級グルメ」などの名物を作り、イベントを行う手法もある。手法と結果も様々である。うまくすればメディアに情報が乗り、話題の影響を受けて人がやって来るが、あまりに作為的なこと、「とってつけたようなこと」をしても、そのような「とってつけたようなこと」は他地域も簡単にできるので、すぐに同類の中に埋もれてしまい、長く人々をひきつける本当の力には、なかなかならない。 ご当地キャラクター(マスコット)づくりと、それの広報への活用もあるが、最初のころは話題になった地域がいくつかあったが、それに便乗しようと多くの地域がもの真似(サル真似)をしはじめた段階で、ひとつひとつの地域にとっては、効果は小さくなった。
つまり、「とってつけたようなこと」ではなく、その地域の本当の強みを見出すことが必要なのである。例えば、北海道のニセコは上質の雪が大量に降る、という特徴があり、地元の人にとってはそんなことは当たり前で、雪なんて元々はどうでもよいもの、ありすぎて迷惑なものであっただろうが、他地域の人々にとってはその雪が魅力で、オーストラリアのスキーヤーなどまで、わざわざ飛行機に乗ってニセコにやってくるようになった。(なにもニセコの真似をする必要はないが)、要は、地元の人にとっては、ふんだんにある(ありすぎて困る)くらいのものが、他の地域・他の国の人にとっては、大きな魅力となる。
たとえば、普段から野生のイノシシやシカなどが多すぎて困っている地域ならば、逆にそれを活用して、イノシシやシカの肉を「野生動物のおいしい肉である」「フランスでジビエと呼ばれる高級な食材である」などということを前面に押し出して、料理を用意し、広報・広告し人々に堪能してもらうという方法がある。例えば和歌山県などでそうしたことが行われている。(フランスでは野生の鳥獣を狩りで捕えて肉にしたものは「ジビエ」と呼んで、独特の美味しさがあるもの、一種の高級食材、などとして高く評価されているので、それに倣ったもの)。
また、例えば、「オレの地域は、本当に何もない。畑にもならないような荒れ地ばかりが広がっていて、ただ激しく風の吹き抜ける音だけがしている」という場所ならば、逆にそれを活用して、風力発電機を何本か建ててみたり、あるいは大規模な風力発電所(ウィンドファーム)を造り、売電を行うという方法もある。例えば、北海道のオロロン街道(稚内から留萌あたりまで、日本海側に面した数百kmの街道)、えりも町(襟裳岬)、千葉県の銚子市の海岸の丘の上 など (挙げてゆくときりがないが)全国のそうした、荒れがちな土地で風ばかりが吹きぬけているような場所に風力発電機が美しく立ち並んでいて、電力を生みだし、経済的に貢献している。また、風力発電機を美しく立ち並べると、それを見にその地を訪れる人もいる。また、これは地域が活性化するだけでなく、さらに危険な原子力発電所を減らすことができるという効果があり、日本全体のため、人類のためにもなる。
《高速道路の料金》が安くなると、週末ごとに全国の人々がそれぞれ 全国の他地域に向かって走ってゆく、ということが、様々なデータで明らかになっている。無料にまでしなくても、週末ごとに格安料金や格安の定額料金システムにするだけで、かなりの効果があることが判っている。
また、《ガソリン代》が安くなると、全国の人々の週末ごとの移動が活発化し、各地域へと訪れる人の数が増える、という事実が統計的に明らかになっている。 逆に言うと、《ガソリン代》が高いことは地域活性化の敵となる。
誤った固定観念
以下は、村おこしを語る際によく言われる言葉であり、条件に恵まれて成功したケースもあるが、成功事例を表面上真似しただけで、実情を把握せずにこうした固定観念にとらわれて地域おこしを行うと、政策を誤りかえって地域が衰退する場合もある。
- 「県庁所在地や政令指定都市に名店が集中すれば、他の市町村もそれに刺激され、活性化する。」×
- 「リゾート地に観光客を呼び込めば地域が活性化する。」×
- 「観光客が泊まれるホテルを増やす。」×
- 「道路や鉄道、空港ができて交通が便利になれば、地域は豊かになる」×(ストロー効果)。
- 「パチンコ店やゲームセンターなどの娯楽施設を作れば若者が集まる」×(反面、治安が悪化し、それを嫌悪する人々が逃げ出し、人口流出が加速する場合も。治安面に配慮し出店に否定的な自治体も少なくない)。
- 「工場を誘致すれば、人(作業員)が集まり、商店街も活性化する。」×(昼食などは工場内の食堂で済ませたり弁当で済ませ、また、品ぞろえが悪い地元商店街では買い物もしないので、結局、地元商店街にはほとんどお金が落ちない)
- 「マンションやアパートを増やせば人口が増える。」×
- 「地域の製造業が活性化すれば、雇用も増える。」× (もともと製造業が強くない地域が他の成功事例をマネしようとして、とってつけたように製造業に力を注いでも、うまくゆかない場合のほうが多い。また、日本の製造業・輸出産業 全体が沈みこんでいる時に、その分野に向かってもあまり効果が出ない、という面もある。また、自然が魅力の地域が、うっかり製造業の工場を誘致して自然破壊を行ったり公害を引き起こしてしまったりすると、観光的魅力は激減し、もともとあった観光産業の雇用が減ってしまい、総雇用数はむしろ減ってしまうことも起きうる。高度成長期の固定観念は捨てて、各地域の本当の強みを見出して、選択肢ごとの効果を、(行政にありがちな誇大な効果見積もりをするのではなく)冷静に試算する必要がある。)
新しい手法
- 特区
- 2002年には行政改革により、従来の法規制の一部を緩和できる構造改革特別区域が制定できるようになったことから、全国各地で様々な「特区」が生まれつつあり、これらの特区内における様々な活動に、地域振興の期待が寄せられている。
- 詳細は構造改革特別区域を参照のこと。
- 地域ブランド化
- 一般に「地域ブランド」とも呼ばれる「地域団体商標」が2006年4月の改正商標法によって要件が緩和されたことで、「地域ブランド」による「地域おこし」が注目されている。これらでは従来地場産品の一般名称として利用されていた呼称を「商標」とすることで、他の地域で製造された類似品に同名称を用いられないですむ排他性もあり、類似品を廃することで地域的な産業の育成にも期待がもたれている。
- 詳細は 地域ブランド を参照
村おこしを扱った作品
- 限界集落の村おこし
- (小説作品)『限界集落株式会社』黒野伸一著、小学館(2011年、4万部)、小学館文庫(2013年、3ヶ月で10万部)
- (テレビ番組) NHK総合テレビ(NHK土曜ドラマ)『限界集落株式会社』、2015年1月31日~。毎週土曜日21:00 放送。[1]
関連項目
- 田舎
- 買い物難民
- コミュニティ
- 地方自治体
- 歴史文化基本構想
- 二地域居住
- 地域振興情報ライブラリー
- ミニ独立国
- コミュニティ・ビジネス
- 巡礼 (通俗)
- 地域社会
- 社会運動
- 地域おこし協力隊
- コミュニティアート
- アキナイ☆ダマシイ - 胡桃ちのによる、地域おこしをテーマとした漫画作品。
- 日本餃子協会
- 地方創生担当大臣