シングル
シングルは、一般に音楽の1曲や2曲程度の小さな販売単位を指す。これは、販売用の媒体として多数の楽曲をまとめたアルバムとの対比的な表現であり、1曲や2曲に切り分けた状態がシングルと呼ばれる。時代や目的に応じて様々な手法で販売されたが、特に近年までは主に歌唱つきの音楽において、代表曲を1曲から数曲ほどを収録し、歌手や楽曲の注目・ヒットを主目的として販売されるメディアのことを言う。代表的なものは、レコード盤におけるシングル・レコードやCDにおけるCDシングルであり、これらはシングル盤とも呼ばれる。近年はインターネットで配信されるダウンロード・シングルも急増している。
目次
シングルの種類[編集]
シングル・レコード[編集]
シングル・レコードはアナログ式の録音盤(アナログ盤)であり、直径7インチ (17cm) 45回転のレコードを指すことが多いが、1950年代まではSP盤と呼ばれる形式のレコードも存在した。シングルに対し、一枚に数曲から十数曲録音したLPレコードは「レコード・アルバム」と呼ばれる。1980年代より、LPレコードサイズ(12インチ=30cm)で45r.p.m.(回転/分)として、1曲の長さや収録曲数の多さを特徴とする「12インチシングル」と呼ばれるものも登場した。アナログ盤は、その後登場したデジタル式録音のCDに移行していった。
SP盤[編集]
78r.p.m.のSP盤は、その性能から片面に3分30秒しか録音することができず、すべてシングルであった。
- 日本
- この国で本格的にレコードや蓄音機が生産されたのは、1920年代である。33r.p.m.のLP盤が発売されたのは、1951年であるが、流行歌や和製ポップスのレコードは、ほぼ1950年代いっぱいSP盤で発売されていた。
シングル盤[編集]
直径30cmの盤に、片面30分の楽曲が録音できるLP盤が登場し、さらに1958年ステレオ録音のレコードが登場すると、SP盤は急速に衰退し、シングルは直径17cmで45r.p.m.のシングル盤に移行する。シングル盤は、ジュークボックスを初めとするオートチェンジャー機器で再生されることを想定して、回転用の中心の穴を大きく開けたものが主流であったため、見た目のイメージからドーナツ盤とも呼ばれた。ドーナツ盤を通常のプレイヤーで再生する際には、アダプターを介してプレイヤーに装填した。
表裏に1曲ずつ収録して「A面」「B面」とし、A面曲をメインとしてヒットを狙うのが通常である。「両A面」などと設定し、ダブルヒットを狙うものもあった。
EP盤[編集]
盤のサイズはシングルと同じ7インチで回転数は45回転であるが、中心の穴はLPと同じである。シングルと同じ大きさながら収録時間が延びたことから
CDシングル[編集]
CDシングルには、8cm盤の「CD SINGLE規格」(ジャケットにマークが記載されている)と、12cm盤の「CD Audio Maxi-single規格」(マキシシングルと呼ばれる)の2種類がある。又、「シングル・レコード」の後継とも言える。
初期のCDシングル[編集]
1982年にCDが登場した後、1980年代半ば頃からシングルレコードと並行して12cm盤のCDシングルが一部で発売されていたが、
- 最高74分(後に80分)収録できる12cm盤への2~3曲程度の収録はディスクの未使用部分(無駄)が多い
- 当時は、「シングル=レコード」「アルバム=CD」の認識が根強かった
- 価格面で、1枚700~1,000円程度だったシングルレコードに比べ、12cmのCDシングルは曲が3曲入っていたりレコードと比すると製造コストがかかるなどの問題から1,500円程度と割高だった
といった点が不利となり、ほとんど普及していなかった。
8cmCDシングルの発売[編集]
この結果、シングルとして適当なサイズのCDが希求され、1988年2月21日に収録時間が20分程度と手頃な8cmサイズのCDシングルが初めて発売され、その年の6月には早くもCDシングルがアナログ・シングルの販売を上回った。
8cmというサイズは、CDV規格で音楽トラックを収録する部分の直径を踏襲している。8cmのCDシングルのジャケットが縦長になっているのは、当時、レコード店のシングル盤陳列棚に2列ずつ入って、なおかつ、手に取り易い大きさにするためであった(レコードのシングル盤の直径は17cm)。また、正方形サイズでは手の平に収まるサイズとなり小さすぎて万引きされやすい、という懸念もあった(個人経営のレコード店では商品管理タグなどをつけていないところが多かったため)。
この縦長のシングルジャケットは日本独特のものである。基本的にはデジパックの様にプラスチック製のトレイに紙ジャケットを貼り付ける構造だった。 登場初期には「さらにコンパクトに」と題して、持ち運びに便利なように、また、半分に折り畳んで収納しやすいよう、折り目がジャケットの真ん中に入れられていた。レコード会社によっては切り取りやすいようにミシン線入りのジャケットもあり、その場合は切り離される側は曲名とアーティスト名のみ表記されていた。この形式になってしまう理由はEPレコード盤と同時発売していたためともいえた。ジャケットの裏側に歌詞が記載され、中面は折り畳み方を図解入りで説明していた(ちなみにこの縦長ケースは「山田」という文字を縦にしたところから発案されている)。更にCBSソニー/ソニー・ミュージックエンタテインメント発売のシングルだと折り畳み仕様の場合トレイに歌詞カードを差し込む構造を取っていた。 1991年頃までのものは大方折り目が入っていたが、実際に半分に折り畳むと中古CD店では買い取り価格が大きく下がってしまう・歌詞カードを紛失したり印刷部を切り取ると買い取り不可能となること、折り畳む人がほとんどいなかったこと、そしてEP盤の完全なる生産終了によりジャケットのデザインを縦長・横長にするという問題もあり、後年は折り目がなくなった。この頃から表裏ともジャケット、中面に歌詞が記載されるようになった。演歌ではシングルカセットと共通の楽譜付き歌詞カードが封入される事も多かった。
また、本来ならば別売り品である8cm専用のプラスチックケース(アーティスト名入り、もしくは塗装されたケース。)をあえて最初から組み込んで販売したり、12cmCDシングルと同じプラスチックケースに入れて販売した例もごくわずかに見られた。
「8cmのCDシングルは日本にしかない」と言われることがあるが、これは正しくない。世界初の8cmCDシングルはフランク・ザッパの「Peaches en Regalia」のアメリカ盤とされており、少なくとも1989年頃には、アメリカでも8cmのCDシングルが一般に売られていた。また、ビートルズのシングルも最初のCD化は8cmサイズだった。ただ、欧米では日本ほど8cmのCDシングルが普及しなかったのは事実であり、1990年代以降はほとんどのシングルが12cmとなった。
シングルレコードでいうA面、B面だけの収録だけではまだ余裕があるため、カラオケブームを反映して、1990年頃からボーカル(声)なしのオリジナルカラオケも収録されることが多くなった(ただカラオケを付けないアーティストも一部にいた)。実際にこの頃は、「カラオケの練習用に」と購入するケースが非常に多かった。
8cmCDシングルについては当初からCDプレーヤーの性能及び適応性が問題視されていた。8cmCDシングルが登場した当時は8cmサイズのCDに完全対応しているプレーヤーはまだ少なかった。このため、8cmCD非対応のプレーヤーではそのままでは8cmCDを演奏させることが出来ず、故障の原因になることも少なくなかった。 特にカーオーディオなどに多いスロットイン方式(吸い込み方式)のプレーヤーでは、8cmCDシングルがプレーヤーに吸い込まれたまま取り出せなくなるなどのトラブルが多発した。このためオーディオ家電業界は、CDプレーヤーを12cmと8cmの両対応にする必要に迫られた。 なお、2000年以降からスロットイン方式のホーム/カーオーディオともに安価なグレードの機種になると8cmCDシングル非対応のものも再び出てきているため、取扱い説明書などで確認する必要がある。
トレー式のプレーヤーでは、トレーに段差を設け8cmCDを載置する凹部を設けることで対応した。そのためスロットインと比するとコストが掛かるほどの技術では無いため8cm対応トレイはスタンダードな機構として定着している。さらに80年代のCDラジカセに非常に多かった縦型のトレーの場合だと8cmCDセンタリングメカ(日立のCDラジオカセットでの呼称)と言われるトレーを手で閉めていくとCDを支えるレバーが調整され正常に装着される機構も存在したが後に8cmCD用の段差を設ける機構(ただしこの機構の場合乱暴に取り扱うと12cmCDの印刷面を傷つける恐れもある)も登場。また、8cmCD非対応のCDプレーヤーに対しては、専用アダプターを8cmCDの外周に取り付けて12cmCDと同じ大きさに調整することで、演奏を可能にした。プレーヤーの中には、アナログレコードのプレーヤーのように、真ん中にスピンドルを設けて、そこにCDを取り付けて回転させるようにし、トレーを省いた物も主にCDラジカセやゲーム機を中心に出回った。この方式では、CDの大きさに関係なく、CDを取り付けるだけで演奏が可能となる。だが、それでも、少しズレていただけでも中の8cmCDシングルが動いてプレーヤーが故障(光学ピックアップレンズにCDの側面が触れてレンズに傷が付くなど)したり(同時に演奏中の8cmCDシングルが破損することも多かった)、専用アダプターを8cmCDシングルに取り付け・取り外したりする際に誤って8cmCDを破損してしまう事も多かった。
最近のデスクトップ型PCで使われる、トレーが縦になった(装着時には12cmCD・DVDをトレイ下部の小さなフックに引っ掛けるタイプの)ドライブでは8cmCDの使用が出来ない。
また、ソニーから8cmCD専用のポータブルCDプレーヤー(Discman、CD WALKMAN 品番:D-82・D-88)も発売されたが、当時は8cmCDシングルの楽曲をまとめてカセットテープに録音して聴くのが主流でありプレーヤーもやや高価であったためあまり普及しなかった。
12cmCDシングル(マキシシングル)への移行[編集]
その後、音楽ソフトの主流がレコードからCDへと移ったが、8cmCDシングルはCDプレーヤーの性能及び適応性から来る取り扱いの難しさも抱えていた。そのため、日本においては2000年以降8cmCDシングルから12cmCDシングルへの移行が進んだ[1]。
8cmCDシングルでリリースされるタイトルの激減とともに、8cmCDシングルは消滅するかのように思われたが、食玩業界からお菓子のおまけ(食玩CD)としての需要が発生した。8cmCDシングルの最大収録時間が約22分程度であることと、12cmCDでは大きさやコストに問題があることから、曲を1曲だけ収録した8cmCDシングルを同梱したガムやチョコレートが発売されるようになっている。ジャンルもアニメの主題歌(アニメソング)、1970 - 80年代のJ-POP、演歌等多岐にわたっている。日本レコード協会の生産実績統計によると、2009年の8cmCDシングル生産枚数は15万5000枚、生産金額は5800万円であり、CD全体における構成比は1%未満である。
A面/B面[編集]
CDでは「B面」の代わりに「カップリング・ウィズ」(Coupling with) や「カップルド・ウィズ」(Coupled with) と呼び"C/W"と表記するが、後述の「両A面」と同じく「B-Side」や「B面」といった旧来の呼び方も根強く残っている。
「両A面シングル」とは両面をA面扱いとするシングル盤(レコード・CD)であり、特にCDにおいてはディスク自体の記録面がそもそも片面しかないということで「ダブルフェイスシングル」という呼び方をすることもある。また、アーティストによって様々な呼称を用いることがある[2]。
VHSシングル[編集]
VHSシングルはVHSをメディアに用いたパッケージである。大きく注目されるようになったのはマドンナ「ジャスティファイ・マイ・ラヴ」(1990年)の世界的ヒットからとされている。
- 日本
- この国での VHS シングルは主にシングル曲と同一のミュージック・ビデオ (プロモーション・ビデオ=PV) を収録する形態であった。1980年代には存在していたが、一曲ではなく複数曲のPVを収録した「ビデオクリップ集」形態が主流であった。しかしながら、1999年のGLAYの新曲「サバイバル」はCDではなくビデオシングルとして発売され約90.2万本を売り上げたり[3]、ハロー!プロジェクト系アーティストが「シングルV」の名称でCDシングルと同時にビデオシングルを発売し、売上げに貢献する形態もあった。2001年に入るとメディア媒体がDVDビデオへほぼ移行し、「DVDシングル」かシングルCDにDVDを同梱する形態に取って代わられた。
DVD[編集]
主にDVDを使用したシングル。
DVDビデオシングル[編集]
DVDビデオを媒体に用いたメディアで、ミュージック・ビデオを内容とするVHSシングルの後継である。
- 日本
- この国ではビデオシングルという正式な規格は存在せず便宜上の名称のみとなっている。オリコンチャートにおいては映像ソフトとしてカウントされる。最初期の作品としてスライ&ロビー「Superthruster」(1999年2月9日)が挙げられる。単独で発売されるタイトルも存在するが、2003年以降はシングルCDにミュージック・ビデオを収録したDVDを同梱する「CD+DVD」形態がエイベックスをはじめとする日本国内レコード会社で急速に普及している。この場合、音楽チャートの売上にカウントされる。
DVDオーディオシングル[編集]
高音質・マルチチャンネル・映像表示対応のDVDオーディオを媒体に用いたメディアである。現在は、ほぼ扱われていない。
- 日本
- この国では1999年に登場し、2000年代初頭に洋楽やクラシック音楽系統で発売された。DVDオーディオは強固なコピーガードが使えることに加え、複数メディアを同時並行して販売することにより、特にマニア層向けに売上の増加が見込まれた。DVDオーディオの普及率が高くないことにより2003年頃を峠にリリースが下火となっており、過去の作品も多くが廃盤になっている。
ダウンロード・シングル[編集]
近年、パーソナルコンピュータ(PC)ではiTunes StoreやAmazon.com(Amazon MP3 )から、携帯電話では着うたフル等の楽曲関連のサイトから音楽ファイルを購入することが出来る「ダウンロード販売」が多い。
リミックス収録[編集]
既存のオリジナル曲をリミックスした楽曲を収録した作品のこと。単にリミックス曲等と呼ばれる。近年ではアルバムだけでなく、様々なシングルに取れ入れられている。
ライブ音源[編集]
シングルは基本的に録音スタジオで収録された音源を使用する。しかし、スタジオ・ライブで演奏された楽曲の音源をそのまま収録した場合、その楽曲はライブ音源となる。こちらも、リミックス収録と同様にアルバムだけでなく、様々なシングルに取り入れられてきた。
スプリット盤[編集]
2組以上のアーティストによる楽曲の音源を一つに収録した作品のことを指す。これは単にスプリット・シングルと呼ばれる。また、音源の名称に特に決まりは無い。
シングル販売[編集]
アメリカ[編集]
1950年代から1960年代の米国のポピュラー音楽ではシングルの売上が重視されており、アーティストがシングルを発売するたびにスタジオでの録音を行い、何曲かヒット曲が生まれた時点で過去に発売されたシングル曲(B面曲を含む)と未発表曲を集めて1枚のアルバムを発売するという形式が主流であった[4]。
しかし1990年代後半から2000年代現在では、アルバムに先駆けて発売する先行シングルは1・2枚程度で、アルバムの直前に発売する場合が多い。その後数か月おきにアルバムの中の楽曲にリミックスなどを加えて(あるいは表題曲そのものにシングル用のアレンジを加えて)シングルカットという手法を採る。主にアルバムを長い時間をかけてプロモーションするのが目的で、シングル自体の売上は重視されていない(米国ではシングルの価格が安いため、売れてもレコード会社の利益に繋がらないのが大きな理由である)。大ヒットしたアルバムでは、収録曲の3 - 4曲程度がシングルカットされて更に売上を伸ばす場合がある。アルバムが販売不振の場合はテコ入れとしてシングルカットすることもあるが、これ以上の売り上げが見込めないとされる場合はシングルカットを放棄することも多いため、“いかに多くの曲がカットされ、ヒットしたか”は母体アルバム自体のヒット規模を示す指標にもなり得る。
1997年頃からシングルCDの売上は減少を続け、2001年以降の米国においてはCD売上全体の数パーセントに過ぎず、かつてのシングルCDに代わって音楽配信が楽曲単位での購入のメインとなっている。一般発売せずラジオ局などに向けたプロモ・シングルの形をとることも多い。
ちなみにビルボードでは長らく、フィジカルシングル(物理媒体のシングル、CDだけでなくアナログシングルも含む)として発売されていない楽曲はHot 100(一般的にメインのシングルチャートとみなされている)にチャートインさせないというルールを貫いていた。そのため世間的には大ヒットした、つまりラジオで非常によくかかっている楽曲であってもHot 100には全く入らないことも多くなっていたが、1998年12月にHot 100のルール改正が行われ、シングルカットのない楽曲でもHot 100にチャートインできることになった。このような、形としてのシングル盤が存在しないままHot 100に入る曲は当初“アルバムカット”と呼ばれていたが、現在のアメリカにおいてシングル曲をCDとしてリリースするケースは非常に少なく、多くの曲が“アルバムカットとしてチャートインしてくる”ようになったため敢えてこの呼称を使うケースは少ない。また2005年にダウンロードによるセールスを加算するようになった際、当初は“DIGITAL PAID DOWNLOAD”の表記がチャート上で見られたがこれもほどなくして廃止された(アルバムカットと同様の理由)。
イギリス[編集]
イギリスにおいても米国を始めとした世界同様シングルカットの手法が主に取られ、その売り上げから来る利益が重視されていないのもアメリカと同様であるが、現在でも形としてのシングルCDがリリースされ続けている。ミュージック・ビデオが"CD-Extra" (Enhanced CD) として収録されていることも多い。しかしB面曲やリミックスの内容が違う複数種の販売は常套化しており、多くの場合CD-1がトラック数の少ない廉価版になっている。また全く別の形態としてUSBメモリスティックに音源データを収録したUSBシングル(これはUSBアルバムも存在する)や、表面がCDで裏面がアナログレコードという特殊なシングルも発売されるようになってきている。
ダウンロード販売の普及に伴ってイギリスのシングルチャートでもダウンロード販売によるセールス数が段階的に算入され始め、現在ではCDとしてのシングル盤がリリースされなくてもダウンロードセールスのみでのチャートインも可能になっている。アメリカと違いダウンロードのみのシングルというのは一般的ではないが、シングル曲のリミックスがダウンロードでのみ販売されそのCDシングル盤には未収録というケースは非常に多い(その逆、シングル盤収録のトラックがダウンロードでは買えないというケースももちろんある)。このような場合、その未CD化リミックスは12インチなどのアナログシングルに収録されているケースがよくある。
日本[編集]
日本においてはシングルの価格が高いこともあり、伝統的にシングル販売からの収益が重視されてきた。また、業界にとって重要な収益源であるベスト・アルバムを販売していく上でも、「シングルが何曲入っているか」がその販売訴求力を大きく左右する要素であるため、間接的にも、シングル発売の果たす役割は大きいと言える。
発売方法も米国とは異なり、アルバム発売後にシングルカットされるケースは少なく、アルバム発売前に1年ほどの期間をかけて先行シングルを数曲発売し、アルバムへの期待感を盛り上げる場合が多い。極端な場合は、非ベストのアルバムであっても、発売済みのシングル曲が大半を占め、新曲が少なくベスト・アルバムのような内容になることもある。
なお、かつてTBSの番組『ザ・ベストテン』や雑誌「オリコン」が流行したこともあって、日本では売上枚数以上にシングルの「週間順位」への関心が高く、例えば同じ順位であっても週により数倍から数十倍の数量格差がある点には、あまり関心が払われない傾向にある。
日本でもシングルCDの売上は減少しており、CD不況の影響がアルバムよりも顕著に表れている。シングルの年間販売数(日本レコード協会集計対象シングル、8cm+12cm)は、1997年の167,827,000枚をピークに減少し、2005年には64,688,000枚、2009年には44,897,000枚、2013年60,600,000枚となっている[5]。アルバムに比べて割高感があることや音楽配信の普及、YouTube等の無料ソースの発達、トレンディドラマやカラオケブームの終息が要因として挙げられる。要出典
また、2007年2月23日に日本レコード協会が、2006年の日本国内の有料音楽配信の売上(パソコンと携帯電話の合計)が、シングルCDのそれ(8cmと12cmの合計)を上回ったことを発表した。2009年の売上(日本レコード協会集計対象)は、8cmCDと12cmシングルCDは計44,897,000枚に対し、インターネットダウンロード・シングルトラックとモバイル・シングルトラックの合計は185,407,000本に及んでいる[5][6]。
また1980年代以降シングル発売に合わせてミュージック・ビデオ(プロモーションビデオ=PV)を制作するのが一般的となった。近年ではシングルCDにプロモーションビデオを収録したCD EXTRAとしたりDVD-Videoを付ける商品が多くなっている。CDが付属しないDVDシングルも存在するが、作品数や売上規模はCDシングルやCD+DVDシングルに比べればごくわずかである。DVDが付属するCD商品は、再販売価格維持制度の対象外となるため、発売後短期間のうちに大幅に値引き販売される事がある。
シングルの両面がアルバムに収録されてしまうとそのシングルは無価値になり、売り上げが落ちてしまうとか、アーティストの意向やアルバムの構成上の理由でシングル曲のA面・B面のどちらか、あるいは両方ともアルバムに収録されない場合もある。
脚注[編集]
- ↑ マキシシングルの中には、CD自体は12cmだがアルミ部分が8cmの「ニューマキシ」というディスクも存在する。
- ↑ 例えば、GLAYは「ダブルエーサイドシングル」を、サザンオールスターズは「ツートップシングル」をそれぞれ発表したことがある。
- ↑ 2011年時点でのVHSでの映像ソフトにおいて最大とされている
- ↑ ウェイン・ジャンシック(著)、加藤秀樹(訳)『Billboardただ1曲のスーパーヒット1』、音楽之友社、1991年。ISBN 4276236118
- ↑ 5.0 5.1 音楽ソフト種類別生産数量の推移(日本レコード協会)
- ↑ http://www.riaj.or.jp/data/download/2009.html