ワイシャツ
ワイシャツは、主に男性の背広の下に着用する、前開きで、ボタンと襟とカフスがついている白や淡色のシャツ。
一般的な着用スタイルとしては、ネクタイを着用するのが一般的だが、クールビスの浸透などに伴い、ビジネスの現場においてオープンカラーでの着こなしも一般的になってきている。
用語
ホワイト(白い)シャツ(White shirt)に由来するため、本来は形状を差すものではなく、色だけを言及したものであるため「青いワイシャツ」といった表記は間違いであり、英語圏の人間には通用しない。現ミズノの商標である「カッターシャツ」とほぼ同義。英語に倣い「ドレスシャツ」(dress shirt) とも呼ばれる。 また、英語圏の人間と話す時に濃色のシャツをワイシャツと呼ぶと「それはカラーシャツだ。」と言われることがあるが、このカラーは色を差すcolorであり、「ラウンドカラーのワイシャツ」と言った場合のカラーは襟/衿を指すcollarである。→ブルーカラーとホワイトカラーも参照。
この記事では便宜上、先述の形状であれば、色付きシャツやアウターウェアとして使われる物についても述べる。
歴史
元々は、男女共用の下着(フランス語:chemise ラテン語:camisiaの変化 シュミーズ 麻シャツの意)であった。16世紀~17世紀頃に服の切れ目で下着を見せることが流行し、白色の麻のシャツになった。第二次世界大戦前には、イタリアでアウターとしても着られるようになっており、イタリア戦線から帰還した兵士により、イギリスへも伝わった[1]。そして、現在の日本でもワイシャツは中衣に分類されている[2][3][4] 。
ヨーロッパの男性は1930年代にブリーフ、トランクスができるまで下着はcombination(裾の長いワイシャツ)やユニオンスーツ[:en]のみであり、その当時は長い裾で股間を覆っていたという。ワイシャツの両脇が短く、前と後ろだけが長く垂れていて、一番下のボタンが余っているのはこの名残である(一番下のボタンは、後の裾のボタン穴に填めるための物だった。現在はボタンを紛失したときの予備として使うことが多い)。
一方、胸にパッチポケットが付いているのは、アウターとして着られるようになったためである[5]。
かつては襟とカフスはスタッドボタンによって付け外しすることが出来、洗濯や外見を変えることが出来た。ウィングカラーやクレリックカラー、セパレートカラー、スタンドカラーなどは関連が深い。現在でも伝統的に作っているところがある。
袖のボタンは「剣ボロ」と言って腕捲りをした時に袖をボタンで止めておくための物である。
種類
ドレスシャツは、部位のスタイル毎にいくつかの種類に分類することができる。ボタンダウンシャツやクレリックシャツなどがその一例である。
素材
通常、ドレスシャツには織布を用いる。最も一般的なのは、綿、麻、ポリエステル、ポリエステルブレンドなどで、絹が用いられたりもする。フォーマルなシャツの生地としては、ブロード織り、オックスフォード織りやポプリンといった綿織物が用いられる(他には、ローン、シャンブレー、ツイル、エンドオンエンド、オックスフォード、ドビー、ジャガード等)。フォーマルでないラフなシャツの生地には、綿織物や毛織物で平織り・綾織りのコーデュロイやフランネル、綿織物で綾織りのデニムやダンガリーが用いられる。
綿は一年中使える素材で水に強く通気性や放熱性が高いが皺になりやすい、麻は通気性が良いが皺になりやすい、ポリエステルは皺になりにくいが通気性や放熱性が悪い、という特徴がある。皺のなりやすさは形状安定・形状記憶・イージーケア等と呼ばれる加工で変わってくる。
形状安定
形状記憶繊維は綿やポリエステル混紡のワイシャツに使われ、皺になりにくいように加工されている。主にホルムアルデヒド等の薬品を吹き付けてある。綿100%より、ポリエステルの割合が多い方が皺になりにくいが伸縮や通気性が悪くなる欠点もある。昔は形状安定は綿100%でも伸縮や通気性が悪いと言われてきたが、近年は改良により形状安定でも通気性が良い製品が出てきた。通気性に拘り形状安定を使用しない人も少なくない。
ボタンの大きさ
- ボタンダウンの衿先には9mm。
- 前身頃及び手口には10mm。
- カフス、カフリンクス、スタッドボタンには11.5mm。
- 開衿シャツ(オープンシャツ)やイタリアンカラーシャツの前身頃には11.5mm。
- 既製品には同じサイズで統一されることもある。
- ボタンの厚さは2mm~4mm程。
ワイシャツの色と柄
ワイシャツは通常、衿とボタンが付いた白いシャツを差すが、これを基調にしたチェック・縞柄や、生成色、オフホワイト、クリーム色(薄い色に限る)、アイボリー(薄い色に限る)、水色、サックスブルーの薄い色も含めて使われることが多い。それ以外の色はクール・ビズやビジネスカジュアルとして使われることがある濃い色のクリーム色やアイボリーの二色やベージュ、黒、灰色、茶色、ピンク、赤、青、緑などはドレスシャツやカッターシャツの定義に含まれるがワイシャツとは呼ばない。
色の割合については背広、ブラウス、ネクタイ、ポケットチーフも参考にされたい。
- 無地 - 無難で最も正装に相応しい。
- チェック - タータンやギンガム[:en]、市松模様、千鳥格子[:en]がある。
- ドット
- ストライプ
- 縦縞や横縞が多く使われており、斜めの縞はあまり使われない。
- ジャカード
- ストライプが多く使われる。
- プリント
- ストライプ、チェック、ドットが多く使われている。
- ペイズリー
礼装として用いる襟
- ウイングカラー(バタフライカラー)
- 襟の先が前に折れた立衿。「並衿」ともよばれる。タキシードやモーニングなどとともに正装用として用いられる。比翼仕立て(隠しボタン)で無い物はスタッドボタンを着用する(その場合はカフリンクスに合わせること)。ネクタイがずれないように衿の後ろ、肩布の真ん中に「背テープ」というテープが付いている。慶事にのみ用いる。
- ラウンドウイングカラー
- 襟の先が丸くなった物。同じく正装として用いる。
- フロックコートとモーニングコート
- 無地の立襟シャツを着用する。
- 燕尾服
- 烏賊胸(スターチド・ブザム)のイブニングシャツを用いる。タキシードに用いることも可能。
- タキシード
- 襞胸(プリーテッド・ブザム)のタキシードシャツを用いる。ヒダ巾約1cm、片側6本、前立分を加えて全部で14本、等間隔で縦に平行になっているものが基本。烏賊胸の略式である。
- フリルプザム
- 胸にフリルが付いたワイシャツ、襞胸の略式。タキシードに用いることが出来る。
立襟シャツの襞について
- 烏賊胸(スターチドブザム)
- U字や角形の切り替えがあり、共地が重ねられ胸当て(ディッキー)のように見せ、通常は二重またはそれ以上の厚みがある。日本語では烏賊胸(いかむね)と呼ばれ、燕尾服やタキシードに用いられる正礼装用のシャツ。烏賊胸の下にはワイシャツとスラックスを固定するための紐が付いている(燕尾服は前を閉じないのでワイシャツとスラックスを固定しないとウェストコートの下からワイシャツがはみ出てしまうため)。左胸にスリットが付いているタイプが存在するが、ワイシャツが引っ張られないため。
- 襞胸(プリーテッド・ブザム)
- 胸の部分にプリーツをあしらったデザイン。日本語では襞胸(ひだむね)と呼ばれ、タキーシードに用いられる準礼装用のシャツ。
- フリルブザム
- 胸元に波状のひだ飾りが付いたもの。タキシードに用いられる略礼装用のシャツ。
- ディッキー
- 礼装用のシャツの胸部分(ブザム)にあしらう胸当てで着脱可能になっており、襟(えり)や前胸の部分だけしかないが、上着の下に着ると、あたかもブラウスを着ているように見えるもの。