タマゴテングタケ
タマゴテングタケ(卵天狗茸、Amanita phalloides)はハラタケ目テングタケ科テングタケ属マツカサモドキ亜属タマゴテングタケ節のキノコで、猛毒菌として知られている。
夏から秋、主にブナやミズナラ林に生える。傘はオリーブ色、柄は白色でつばがある。ひだに濃硫酸をたらすと淡紅紫色に変色するという、他のキノコには見られない特徴があり、このキノコの判別に用いられる。
毒性
ヨーロッパには多く自生しており、よく知られた毒キノコの一つである。日本においては北海道で発見されることがあるが、本州以南の地域では見つかることは稀である。
中毒症状はドクツルタケやシロタマゴテングタケ同様、2段階に分けて起こる。まず食後24時間程度でコレラの様な激しい嘔吐・下痢・腹痛が起こる。その後、小康状態となり、回復したかに見えるが、その数日後、肝臓と腎臓等内臓の細胞が破壊されて最悪の場合死に至る。
古くから知られている毒キノコであるため、その毒素成分(キノコ毒)の研究も進んでおり、アマトキシン類、ファロトキシン類、ビロトキシン類などがその毒素であることが明らかにされている。これらは8つのアミノ酸が環状になった環状ペプチドであり、タマゴテングタケの毒性はこのうち主にアマトキシン ( amanitatoxin ) 類によると考えられている。毒性はα-amanitinw で、マウス (LD50) 0.3mg/kg。[1]
アマニチン ( amanitin ) は消化管からの吸収が早く、1時間程度で肝細胞に取り込まれる。[1] アマトキシン類はこれらのキノコ毒の中では遅効性で(15時間くらいから作用が現れる)あるが毒性は強く、タマゴテングタケの幼菌1つにヒトの致死量に相当するアマトキシン類が含有されている。アマトキシンはヒトの細胞においてDNAからmRNAの転写を阻害する作用を持ち、これによってタンパク質の合成を妨げ、体組織、特に肝臓や腎臓などを形成する個々の細胞そのものを死に至らしめることが、このキノコ毒の毒性につながっている。
中毒の治療
解毒剤は存在しないため、毒性分の体外排出促進と脱水症状への対症療法を施す。肝機能検査、腎機能検査と活性炭投与(4時間おき)は数日間継続。強制利尿。血液吸着[2]毒性分が濾過膜を通過し難いので血液透析は無効とされている。
- 治療例
- 酸素吸入、人工呼吸、輸液、肝保護剤の投与。
- 摂食後6時間以内の場合、胃洗浄。
- 摂食後6時間以上経過の場合、活性炭及び下剤(D-ソルビトール液(75%)2mL/kg)投与。十二指腸チューブによる胆汁の除去。
タマゴテングタケの画像
脚注
- ↑ 1.0 1.1 アマニタトキシン群(タマゴテングタケ、ドクツルタケ)財団法人 日本中毒情報センター
- ↑ 吸着法(adsorption)日本血液浄化技術研究会
外部リンク
- タマゴテングタケの毒性 - 医薬品情報21
- 中毒情報データベース - 財団法人 日本中毒情報センター