障害者

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障害者(しょうがいしゃ)とは、なんらかの機能の不全(障害)があるために、日常生活や社会生活に制約を受ける人のこと。定義上は、身体障害者、知的障害者、精神障害者を含むが、日常語としては身体障害者のみを指す場合がある。

障害の医療モデルとアプローチについてはリハビリテーション#障害の分類と対策を参照のこと。

日本における定義

障害者基本法では、第二条において、障害者を以下のように定義している。

この法律において「障害者」とは、身体障害、知的障害又は精神障害(以下「障害」と総称する)があるため長期にわたり日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける者をいう。

身体障害者については、身体障害者福祉法第四条において次のように定義している。

この法律において、「身体障害者」とは、別表に掲げる身体上の障害がある十八歳以上の者であって、都道府県知事から身体障害者手帳の交付を受けたものをいう。

「別表」として6項目を掲げ、「視力障害」「聴覚または平衡機能の障害」「音声機能、言語機能、咀嚼機能の障害」「肢体不自由」「重篤な心臓、腎臓、呼吸器機能の障害」というべきものをそれぞれに定義している。

精神障害者は、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律第五条において以下のように定義される。

この法律で「精神障害者」とは、精神分裂病、精神作用物質による急性中毒又はその依存症、知的障害、精神病質その他の精神疾患を有する者をいう。

なお、知的障害者については知的障害者福祉法に定義がない。

規模

  • 世界では、毎年約790万人の障害児が誕生している。これは、全出産数の約6%を占めている。
  • また、死亡率も高い。生まれた障害児のうち、約330万人が5歳までに死亡しているという。
  • これら障害児の出産、死亡の9割以上が、発展途上国に偏っている[1]
  • 両親の喫煙や薬、汚染された水、空気、食物による影響が考えられている。

障害者施策

ナチス・ドイツ

  • ナチス・ドイツでは、障害者は根絶すべき存在としてユダヤ人同様に絶滅政策が取られ、多くの障害者が殺害された。しかも、秘密裏に行われたわけではなく、障害者の存在が健全な家庭を圧迫しているかのような広報活動を行い一般社会に対しても障害者の絶滅を訴えるなど非人道的な活動が行われていた。T4作戦も参照。

日本

戦前の状況

  • 戦前日本では、公的な障害者施策は、ほとんど行われることがなかった。
  • もっとも、古来の日本の神道では、何か特別な能力を持った対象として、障害者を畏敬したという。例えば、日本神話で、伊弉諾(いざなぎ)と伊弉冉(いざなみ)の2神の間に生まれた最初の子供である蛭子(ひるこ、ひるのことも呼ばれる)は、3歳になっても足が立たず舟に乗せられて海に捨てられたとされるが、中世以後になって、これを恵比寿(えびす)と呼んで信仰に結びついたとされる。また、障害者の中には、神職など祭儀を司る役割を担ってきた者もいたという。例えば、片目片足伝承と結びついたひょっとこ(火男)は、日本神話古事記)に登場する天目一箇神(あめのまひとつのかみ、天目一箇命(あめのまひとつのみこと)ともいう)をはじめとする鍛冶神の本尊が、火を吹く口の形を現したものとして伝えられている。
  • 江戸時代には、幼少期に視力を喪失しながら、国学者として、その能力を存分に発揮した人物(塙保己一)も存在する。また視力障害者のうち男子には当道座、女子には瞽女といった按摩師や音楽家の職業を斡旋する社会的身分保障が成されていた。
  • 以上のような歴史的な記録から、障害者に対して差別的な見方がされるようになったのは、近代以降であるとする見解がある。
  • これに対する反論として、蝕穢思想との関連から、中世平安時代から室町時代)において障害者を穢れをもたらす存在として非人として扱われていたとする説がある。これは、神道の天つ罪に由来して陰陽道の普及によって強化された考え方と考えられ、後に謡曲などによって知られるようになった蝉丸の伝説などに代表されるように、障害者は天皇の住まう平安京の清浄を守るために、穢れから平安京を守るための祭祀が行われていた四堺の外に放逐されていたというのである。
  • いずれにせよ近代以降には、産業化・効率性が重視されるようになり、明治政府による富国強兵政策の下、障害者は「能力を持たない、不能」者(英語の”disability”)として、差別され、また社会から隔絶されるようになったとされる。


戦後の状況

21世紀の施策

  • これまでの指摘を受けて、2004年発達障害者支援法が新たに制定され、自閉症アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害学習障害注意欠陥多動性障害などの発達障害者に対する支援策が、法的にも打ち出されることになった。また、2006年から、新たに、従来は対象外とされてきた精神障害者も、障害者雇用枠の対象者となるなど、徐々に対策が広がっている。
  • 2004年障害者基本法の改正が行われ、障害を理由として差別することその他の権利利益を侵害する行為をしてはならないことが、基本的理念として条文化された。また、都道府県・市町村に「障害者計画」の策定が義務化された。
  • 2005年、これまで別個の法制度で行われてきた障害者支援策を、統一的に行うなどの目的から、障害者自立支援法があらたに制定された。この法律の目的は、文言上、「障害の有無にかかわらず国民が相互に人格と個性を尊重し安心して暮らすことのできる地域社会の実現」(1条)にある。しかし、現実には、障害者を「サービスの消費者」と位置づけ、サービスに対する適正な自己責任(自己負担)という名の下で、日本の財政事情の悪化を改善するために、税金でまかなわれる財政負担を減らし、障害者の就労により税収を増やすという目的が背後にあることは否定できない。このため、障害者自立支援法が一部を除いて施行された2006年4月1日以降、障害者がそれまで受けてきた医療福祉サービスに対する自己負担額が急増し、一部の障害者は、法制定前に受けられていたサービスを、経済的な限界によって受けられなくなるなどの問題が生じている。一部には「障害者自殺支援法」とも揶揄され、実際に法制定後、通っていた施設を金銭的な理由で退所し、自殺した障害者も少なくない。 報道機関特番でこの問題を報道するなど、さらに法改正も含めた対応策が必要ではないかとも指摘されているが、日本の厳しい財政事情や、自己責任が強調される近時の社会風土の変化の中で、難しい課題も多く残されている。(詳細については、「障害者自立支援法#問題点:障害者自立支援法による福祉現場への影響-06年9月時点-」を参照)
  • 2006年千葉県で全国初の障害者差別をなくすための条例である「障害のある人もない人も共に暮らしやすい千葉県づくり条例」が制定された。

学校での障害児教育

障害児については、学校教育法のなかで、障害児の定義があるが、1947年にできた法文のまま、50年以上改正されなかった。重度障害児は就学を希望しても就学猶予・就学免除により排除された。1979年には養護学校が義務化され、地域の小学校中学校に通っていた障害児も反対がなければ分離された。養護学校の設立当初は機能訓練が中心で、現在の養護学校とは様相が異なった。

2000年に一部改正がなされたが、聾児盲児肢体不自由児知的障害児病弱児について規定されているだけで、情緒障害児唖児、更には新しい学習障害(LD)児、健康障害児、コミュニケーション障害児などについては、一切出てこない。

近年の学校教育では、障害児を主としてコミュニケーションの面からみているが、精神科医は、それをどのような症状、兆候を見せるかというところから、診断、判断するため、障害児・障害者の分類は、かなり違ったものになる。

なお、文部科学省は2001年から障害児教育を「特別支援教育」と呼ぶこととし、2007年から盲学校・聾学校・養護学校を「特別支援学校」という名称とした。なお、校名を変更した学校と変更していない学校がある。

障害者雇用政策

障害者の雇用については、「障害者の雇用の促進等に関する法律」(障害者雇用促進法)によって、一定規模以上(2007年時点で常用労働者数56人以上)の事業主は、障害者を一定割合以上雇用すべき法律上の義務を負う。これを障害者雇用(法定雇用)といい、その割合を、障害者雇用率(法定雇用率)[3]という。その率は、

※重度身体障害者及び重度知的障害者については、1人の雇用をもって、2人の身体障害者又は知的障害者を雇用しているものとみなされる。
※2006年4月1日施行の法改正によって、精神障害者も、法定雇用の対象となった。
※障害者雇用の指導強化と平行して派遣社員の場合に派遣元に0.5人、派遣先に0.5人と割合を分けて計算することが認められるようになった。これによって障害者の派遣社員を短期間だけ派遣してもらうことで障害者雇用率の水増しが起きるのではないかと危惧されている。実際に派遣会社側でも障害者雇用率の問題をセールスポイントにして斡旋を行っており、障害者雇用の指導強化が逆に障害者の雇用と自立を阻害するのではないかと心配されている。

実際には、障害者が就業することの困難な職種もあるために、業種毎に除外率が決められているが、最終的には次のような職種を除いて廃止の予定。

障害者雇用促進法第44条、第45条は、親会社が多数の障害者を雇用する目的で設立し、一定の要件を備えた子会社について障害者雇用率の算定で親会社の雇用とみなす制度を設けている。これが特例子会社制度である。2007年4月末現在、213社が特例子会社に認定されている。

厚生労働省の障害者雇用調査(2006年6月1日時点)によれば、従業員5000人以上の企業の平均雇用率は1.79%としている。なお、上位5社は次のとおり。

  1. ユニクロ 7.42%
  2. 日本マクドナルド 2.94%
  3. しまむら 2.83%
  4. すかいらーく 2.82%
  5. パナソニックエレクトロニックデバイス 2.79%

表記・呼称

戦前は法律においても、不具者(ふぐしゃ)、不具癈疾者(ふぐはいしつしゃ)などと表記され、一般には「片輪者(かたわもの)」と呼ばれていた。

「障害」の表記は1949年身体障害者福祉法の制定を機に一般的に使われるようになった。 「障害」、「障礙(碍)」のうち、「礙(碍)」が当用漢字の使用制限によって法律では使えなくなったことにより、「障礙」と意味が同じ「障害」という語が採用された。

このことについて、「障害」は戦後の造語であると捉えた上で、常用漢字の枠が形骸化しつつある現状に合わせて、表外字[4]である「碍」を用いることで「害」という文字の持つマイナスイメージの解消を図るべき、との主張もある [5]

ただし、「障害」、「障礙」はいずれも当用漢字制定前から同じ”さわり・妨げ”という意味の熟語として漢和辞典に掲載されており、「障害」という表記は「礙」を同音の「害」に単純に置き換えて戦後に造語されたものではない。しかし、現在のような“身体の器官や能力に不十分な点があること”という特定の意味ができたのは後年であり、現在の障害者という使い方を考慮した上で置き換えているわけではない。なお「碍」は「礙」の俗字である[6]

近年、「害」の字が入っているのは好ましくないとして、「障碍者・障碍児」と書いたり、交ぜ書きで「障がい者・障がい児」と表記を変更する動きが一部であるが[7]、過度な言葉狩りであるとの批判もある。


資料

障害別にみた障害者数の推移
(資料出所:厚生労働省 身体障害者・児実態調査結果の概要)
理由 1991 1996 2001
実数 比率 実数 比率 実数 比率
視覚障害 353,000 13.0% 305,000 10.4% 301,000 9.3%
聴覚言語障害 358,000 13.2% 350,000 11.9% 346,000 10.7%
肢体不自由 1,553,000 57.1% 1,657,000 56.5% 1,749,000 53.9%
内部障害 458,000 16.8 621,000 21.2% 849,000 26.2%
重複障害(再掲) 121,000 4.4% 179,000 6.1% 175,000 5.4%
総数 2,843,000 3,112,000 3,420,000

脚注

  1. 障害児の出生率が増加傾向、年間100万人以上が誕生』2007年9月21日付配信 Record China
  2. 現実には、法改正後も、出生前診断によって、障害児の誕生が予想されて中絶される例が後を絶たないとされる(事柄の性質上、正式な統計資料はなく、実態は不明な点が多い)。このような中絶を正当化する根拠として、「障害がある子供を養育する負担は、普通の子供よりも大きい」という親の意向を尊重して、法律上認められている「経済上の困難」に含まれるとする見解もある。しかし、そのような解釈が法律上が可能か問題があるともに、そのような診断を行うことや、親の意向そのもの(五体満足で知的な障害もない子供を欲しがる親の願望を「パーフェクトベビー願望」と呼称する)に対する、倫理的・道義的な批判もあり、議論は尽きない。
  3. 具体的数値は、政令(障害者の雇用の促進等に関する法律施行令)で定められている。
  4. 常用漢字表に掲載されていない字のこと。
  5. 熊田政信『「障害」は「障碍」(「障礙」)と表記すべきである』国立身体障害者リハビリテーションセンター「国リハニュース」第226号、2002年8月。
  6. 『詳解漢和辞典』第178版 冨山房 (大正11年3月25日 発行)、『三省堂漢和辞典』第12版 三省堂書店 (明治42年7月10日 発行)
  7. アメーバニュース『表記は「障害者」?それとも「障がい者」?』2007年2月27日

関連項目

障害の種類

外部リンク

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