横浜高速鉄道みなとみらい線
みなとみらい線(みなとみらいせん)は、神奈川県横浜市西区の横浜駅から同市中区の元町・中華街駅までを結ぶ横浜高速鉄道の鉄道路線である。都市計画法に基づく都市高速鉄道としての名称は「横浜国際港都建設計画都市高速鉄道第4号みなとみらい21線」。『鉄道要覧』記載の正式路線名はみなとみらい21線[注釈 1]であるが、旅客案内上は使用されていない。
路線図や駅ナンバリングで使用される路線カラーは紺色、路線記号はMM。
目次
概要
2004年2月1日に開業した。全線が地下区間で、ターミナル駅の横浜駅から横浜新都心の「横浜みなとみらい21」地区や関内地区、観光地の横浜中華街など横浜市の中心部を通る。馬車道駅 - 元町・中華街駅間では本町通りの直下を走っている。全線にわたって東日本旅客鉄道(JR東日本)の根岸線や横浜市営地下鉄ブルーラインと並走している。通過する地域は地盤が非常に軟弱な埋立地(太田屋新田・横浜新田)であり[注釈 2]、各駅とも地下4 - 5階と深いところを走行する。なお、全線が地下区間の路線ではあるが、国土交通省によれば当路線は「地下鉄」には含まれない[2][3][注釈 3]。
当路線の開業に際して、東急東横線の横浜駅 - 桜木町駅間が廃止され、東横線と当路線の相互直通運転が開始された。東横線の渋谷駅から先は東京メトロ副都心線に直通運転を行い、副都心線を経由して東武東上線小川町駅及び西武池袋線飯能駅まで直通している[4]。東武線系統の小川町駅 - 元町・中華街駅間及び西武線系統の飯能駅 - 元町・中華街駅間において、日中の時間帯に特別料金不要で各線内を最速で結ぶ列車には「Fライナー」という愛称が付与される(みなとみらい線内は特急運転)[5]。土休日には観光輸送に特化して有料座席指定列車の「S-TRAIN」が当路線を経由して西武秩父線西武秩父駅 - 元町・中華街駅間で運行される[6]。
路線データ
- 管轄:横浜高速鉄道(第一種鉄道事業者)
- 路線名:みなとみらい21線(通称・みなとみらい線[7])
- 路線距離(営業キロ):4.1 km
- 駅数:6駅(起終点駅含む)
- 軌間:1067 mm
- 複線区間:全線
- 電化区間:全線(直流1500 V・架空電車線方式)
- 閉塞方式:車内信号閉塞式 (ATC-P)
- 最高速度:70 km/h[8]
- 建設主体:独立行政法人 鉄道建設・運輸施設整備支援機構
すべての列車が横浜駅 - 元町・中華街駅間の全線通しで運転し、途中駅での折り返しはない。
乗務員・運行管理
運転業務は東急電鉄に委託しており、横浜駅で乗務員交代は行わず、東急電鉄の乗務員(運転士・車掌)が本路線内も引き続き乗務する[9][注釈 4]。
駅業務は、東急電鉄が管轄している横浜駅を除き自社社員が行うが[9][10]、自社社員の大半が東急電鉄からの出向者である。
列車の運行管理は横浜高速鉄道の運転指令所で制御している。鉄道設備の維持管理などについても横浜高速鉄道が対応するが[9]、実際の作業は東急電鉄等に委託している。
横浜高速鉄道は自社の車両基地を保有しないため、夜間の車両留置は東急電鉄元住吉検車区(5編成)と元町・中華街駅(1編成)で行われる。なお、元町・中華街駅の先の港の見える丘公園の地下に、二連トンネル構造の車両留置線(4編成分)を建設する計画があり[11][12]、2020年以降の建設を予定している[13]。
東急東横線との直通運転
元町・中華街行きの始発列車が横浜発である以外は、全列車が東急東横線と相互直通運転を実施しており、本路線と東横線は列車運行面では、事実上一つの路線として運行されている。
東京メトロ副都心線との直通運転
2013年3月16日に乗り入れ先である東急東横線が東京メトロ副都心線との相互直通運転を開始し、本路線も東横線を経由して副都心線と相互直通運転を実施している[14][15][16][17]。副都心線は2008年6月14日の開業時から東武東上線、西武有楽町線・西武池袋線・西武狭山線(臨時列車のみ)と相互直通運転を行っており、2017年3月25日からは西武秩父線との直通運転も開始された。これにより、副都心線・東横線を介して本路線までが一本で結ばれ、本路線を含めた鉄道5事業者(横浜高速・東急・東京メトロ・東武・西武)による相互直通運転が行われるようになった。
これに合わせ、東横線および本路線の速達列車(特急・通勤特急・急行)は急行の一部列車をのぞいて8両編成から10両編成に増強し、本路線の速達列車停車駅でも東横線と同様に10両編成の列車が停車できるようにホーム延長工事が実施された(速達列車が停車しない新高島駅も非常時に備えて延伸工事を施工しているが、通常時は柵で封鎖される)。なお、このホーム延伸を考慮した形でトンネルは建設されている。一方、各駅停車は副都心線直通運転開始後も全列車が8両編成での運転となる。
列車種別
定期列車については横浜駅で列車種別変更を行わずに、全列車が東横線の列車種別を引き継いで運行される。また、東横線菊名駅 - みなとみらい線元町・中華街駅間は待避設備がないため、この区間については先行する列車が元町・中華街駅または菊名駅まで先着する。西武線内ではS-TRAIN・快速急行(各停除く)・快速・準急・各停で、東武東上線内は快速急行(特急のみ)・急行(各停除く)・各停で、副都心線内は急行(各停除く)・通勤急行(各停除く)・各停で運転されている(Fライナーも参照)。
以下の系統が運転されている。
- S-TRAIN
- みなとみらい線初の座席指定列車。土休日に2.5往復(元町・中華街行き2本、元町・中華街発3本)が運行されている。全列車が西武池袋線まで乗り入れ、うち1往復は西武秩父線西武秩父駅発着となる。
- みなとみらい線内は横浜駅・みなとみらい駅・元町・中華街駅に停車するが、みなとみらい線内のみの座席指定券は発行されない。
- 10両固定編成の西武40000系が専用で使用される。
- 特急
- 平日は昼間のみ、土曜・休日は早朝・深夜以外の時間帯に運転。全列車が10両編成で運転される。みなとみらい線内の停車駅は横浜駅・みなとみらい駅・元町・中華街駅。
- 西武線方面は保谷駅・清瀬駅(発のみ)・小手指駅・飯能駅発着が設定されている。また西武ドームでの試合日では西武球場前駅着が設定される。東武東上線方面は川越市駅・森林公園駅・小川町駅発着が設定されている。副都心線内発着として和光市駅発着が設定されている。東急線内発着として渋谷駅発着が設定されている。
- ほとんどの列車が副都心線に直通し(原則として副都心線内急行で運転)、基本的には西武池袋線直通小手指駅発着(西武池袋線内快速急行)が1時間あたり各1本、東武東上線直通森林公園駅発着(東武東上線内急行)が1時間あたり2本運転される(朝晩を中心に途中駅発着列車あり)。2019年3月ダイヤ改正以降は、下り3本、上り1本が小川町駅発着となる。
- 2016年3月26日以降、副都心線内急行・西武池袋線内快速急行・東武東上線内急行で運行される列車には「Fライナー」の愛称が付く。
- 通勤特急
- 平日の朝夕ラッシュ時間帯と夜間に運転。全列車が10両編成で運転される。原則として副都心線内は通勤急行で運転される。みなとみらい線内は新高島駅のみ通過。
- 西武線方面は清瀬駅(着のみ)・小手指駅・飯能駅発着が設定されている。東武東上線方面は志木駅(発のみ)・川越市駅・森林公園駅発着が設定されている。副都心線内発着として和光市駅・池袋駅(着のみ)・新宿三丁目駅発着が設定されている。東急線内発着として渋谷駅着が設定されている。
- 急行
- 終日にわたって運転。みなとみらい線内は新高島駅のみ通過。主に8両編成が使用され、朝ラッシュを中心に日中や夕方ラッシュに10両編成が使用される。
- 日中は原則として8両編成の和光市駅発着として毎時4本運転し、西武線・東武東上線には日中時以外に乗り入れる。直通先 (東横線および副都心線)で先行の各駅停車2本を追い抜き、後続の特急1本に追い抜かれる。朝ラッシュ時を除いて副都心線内は各駅停車。
- 西武線方面は石神井公園駅・保谷駅・清瀬駅・所沢駅・小手指駅・飯能駅発着が設定されている。東武東上線方面は志木駅・川越市駅・森林公園駅発着が設定されている。副都心線内発着として和光市駅・池袋駅(着のみ)・新宿三丁目駅発着が設定されている。東急線内発着として渋谷駅・武蔵小杉駅・日吉駅(発のみ)着が設定されている。
- 各駅停車
- すべての列車が東急・横浜高速鉄道・東京メトロの車両による8両編成で運転されている。
- 主に渋谷駅発着が毎時2本、副都心線直通池袋駅発着と和光市駅発着が毎時2本づつ、西武池袋線直通石神井公園駅発着が毎時2本運転されている。東上線発着には志木駅発着が一部設定されているのみである。
- 西武線方面は石神井公園駅・保谷駅・清瀬駅・所沢駅・小手指駅・飯能駅発着が設定されている。また西武ドームでの試合日では西武球場前駅発が設定される。東武東上線方面は志木駅発着が設定されている。副都心線内発着として和光市駅・小竹向原駅(発のみ)・千川駅(発のみ)・池袋駅(着のみ)・新宿三丁目駅発着が設定されている。東急線内発着として渋谷駅・自由が丘駅(着のみ)・武蔵小杉駅・元住吉駅・日吉駅・菊名駅(着のみ)発着が設定されている。また線内運転として横浜発が設定されている。
臨時列車
本路線沿線で花火大会などのイベント開催により一時的な多客時輸送を行う場合、混雑のピークが予想される時間帯に限り、みなとみらい線内では全列車各駅停車とする臨時ダイヤを組む。その場合は事前に駅構内ポスターや電光掲示板、東急および横浜高速の公式ウェブサイト上で告知されるほか、臨時列車も運転されることもある。
みなとみらい号
クリスマスやゴールデンウィークなどにおいて、臨時列車として埼玉高速鉄道線浦和美園駅(東京メトロ南北線経由)・都営三田線高島平駅・東京メトロ日比谷線北千住駅から東急線を経由して元町・中華街駅まで「みなとみらい号」が運行されていた。みなとみらい線内では運転開始当初は急行として運転していたが、2007年(平成19年)4月運転分より各駅に停車するようになった。
2004年(平成16年)の設定当初は「横浜みらい号」の名称で、東急1000系を使用し、北千住駅 - 元町・中華街駅間を1往復運転した。この際、日比谷線内は急行運転・東横線内は通勤特急と同じ停車駅で運転した。2回目以降の運転時から現在の名称である「みなとみらい号」に変更し、全区間急行として運転された。その後、2004年(平成16年)の年末からは埼玉高速鉄道線(南北線経由)および都営三田線から東急目黒線・東横線を経由したみなとみらい号も運行されるようになった。2006年(平成18年)秋から目黒線内でも急行が設定されたため、同線内も急行運転を行うようになった。
西武ドームへの観客輸送
女性専用車
乗り入れ先である東急東横線・東京メトロ副都心線・西武池袋線・東武東上線と合わせ、平日始発から9時30分まで上下線とも全列車の1号車(池袋方先頭車)が女性専用車となる。午前9時30分になった時点で、女性専用車の運用を一斉に終了する。小学6年生までの児童、障害者およびその介助者は、男女問わず女性専用車への乗車が認められている。人身事故などの輸送障害発生によりダイヤが大幅に乱れた際は、女性専用車の運用を中止する。
みなとみらい線の女性専用車は、2005年(平成17年)7月25日に東横線と同時に初めて導入された。対象列車は平日の特急・通勤特急・急行であり、首都圏では初となる終日運用であった。この当時は、現在とは反対側の元町・中華街方先頭車である8号車に導入されたが、元町・中華街駅の元町口の最寄り車両が8号車であり、さらに東横線菊名駅では元町・中華街寄りの一箇所しか階段がなく、ここに最も近い8号車が女性専用となったことで危険な駆け込み乗車や乗り遅れなどの問題が多発。列車遅延の原因にもなった上、男性客から東急に対する抗議が殺到した(いわゆる菊名問題[18])。
これを受け、翌2006年(平成18年)7月18日からは横浜方から数えて5両目である5号車に変更したほか、昼間や夕方以降の渋谷方面行は女性専用車の利用率が低いとして終日設定を取り止め、平日の特急・通勤特急・急行のうち、始発から10時までの上下線と17時以降に東横線渋谷駅を発車する元町・中華街方面行のみの実施となった。2013年(平成25年)3月15日までは夕方にも女性専用車の運用を実施する列車が存在していたため、年末や毎年8月1日に行われる神奈川新聞花火大会をはじめとする大規模イベント開催に伴う一時的な多客輸送を行う場合は、女性専用車としての運用を解除していた。
そして、2013年3月16日に新たに相互直通運転を開始した副都心線・西武線・東武東上線と実施内容の統一を図るため、相互直通運転開始後初めての平日となった3月18日からは、直通先に合わせて各駅停車を含めた全列車に対象列車を拡大し、横浜方先頭車である1号車に変更した。ただし設定時間帯は平日始発から9時30分までに縮小し、それまでの夕方以降の設定は廃止となり現在に至る。
その他
- 開通後最初に一日駅長に就任したのは、開通2周年記念イベントの一つとして2006年(平成18年)2月4日馬車道駅にてジェリービーンズコンサートを行った「N.U.」。他に一日駅長に就任したのは、江戸川コナン、コマメちゃん、渡辺裕之、CHURU-CHUWである。
- ラッシュ時に座席を確保する目的で、横浜駅から渋谷駅方面へ行く東横線利用者の一部による、みなとみらい線の不正乗車(無賃折り返し乗車)が5年前から目立つようになったと、2017年5月に報じられている[19]。
参考文献
- 廣瀬良一『ヨ・コ・ハ・マ「みなとみらい線」誕生物語 計画から開通までのドラマ』(神奈川新聞社、2004年) ISBN 4-87645-343-8
脚注
注釈
- ↑ 1985年7月の運輸政策審議会答申第7号では東神奈川駅で国鉄横浜線と直通し、横浜みなとみらい21地区・元町・本牧を経由し根岸駅へ向かう路線の名称として登場。2000年1月の運輸政策審議会答申第18号で、現在の路線の名称となる。
- ↑ 横浜市営地下鉄3号線の一部として建設が計画されていた頃にも地盤の悪さは指摘されており、当初計画から現在のみなとみらい線のルートと同じ比較的地盤がましな1つ南側の国道133号(通称 コンテナ街道)直下を通る計画に変更されている[1]。
- ↑ 一方で、横浜市営地下鉄は一部地上区間を有するがこちらは「地下鉄」として扱われている。
- ↑ 臨時で乗り入れていた都営地下鉄および埼玉高速鉄道の車両を含む。
出典
- ↑ 『横浜市高速鉄道建設史』 横浜市交通局、1987年12月、83-86ページ
- ↑ 鉄道統計年報の「(23) JR旅客会社、大手民鉄及び地下鉄事業者の基準単価及び基準コストの算定に係るデータ一覧」
- ↑ JR旅客会社、大手民鉄及び地下鉄事業者の基準単価・基準コスト等の公表について
- ↑ () 路線図・乗り換え案内 | みなとみらい線 | 横浜高速鉄道株式会社 ja [ arch. ] 2021-05-23
- ↑ () 新愛称「Fライナー」、メトロ副都心線系統に来春導入 ja [ arch. ] 2021-05-23
- ↑ () S-TRAIN:西武鉄道Webサイト ja [ arch. ] 2021-05-23
- ↑ みなとみらい線のシンボルマーク及び略称についてPDF (横浜高速鉄道ニュースリリース・インターネットアーカイブ・2003年時点の版)。
- ↑ 引用エラー: 無効な
<ref>
タグです。 「kiseki
」という名前の引用句に対するテキストが指定されていません - ↑ 9.0 9.1 9.2 どうしてこうなの!? 東横線と直通するみなとみらい線が東急電鉄と別会社な深いワケ はまれぽ.com、2017年08月25日、2020年1月19日閲覧。
- ↑ 横浜高速鉄道株式会社に対する業務監査の実施結果PDF - 国土交通省関東運輸局
- ↑ 「お知らせ みなとみらい線車両留置場の整備計画を進めています」『横浜高速鉄道株式会社』 2018年12月17日、横浜高速鉄道株式会社
- ↑ 「みなとみらい線の延伸につながる!? 元町・中華街駅に計画中の「車両留置場」について直撃取材!」はまれぽ.com、2019年2月2日。
- ↑ 「横浜高速鉄道/MM線車両留置場建設(横浜市中区)/優先交渉権者に鹿島JV」『日刊建設工業新聞』 2019年3月14日、株式会社日刊建設工業新聞社
- ↑ (2012-07-24) 東急東横線と東京メトロ副都心線 相互直通運転の開始日が2013年3月16日に決定! PDF 東京急行電鉄 [ arch. ] 2012-07-24
- ↑ (2012-07-24) 平成25年3月16日(土)から相互直通運転開始 副都心線と東急東横線・横浜高速みなとみらい線がつながります PDF 東京地下鉄 [ arch. ] 2012-07-24
- ↑ (2012-07-24) 東武東上線がより便利に! 自由が丘、横浜、元町・中華街方面とつながります! PDF 東武鉄道 [ arch. ] 2012-07-24
- ↑ (2012-07-24) 池袋線が東急東横線、横浜高速みなとみらい線との相互直通運転を開始します。 PDF 西武鉄道 [ arch. ] 2012-07-24
- ↑ ☆女性専用車両の位置を変更へ/東横線☆ 2006年1月5日 神奈川新聞(インターネットアーカイブ)
- ↑ みなとみらい線で絶えない「折り返し乗車」被害 「改札出なくても運賃発生」と呼びかけるも、1日で19人の不正乗車 - キャリコネニュース、2017年5月17日、同月18日閲覧
関連項目
- 横浜高速鉄道
- 東急こどもの国線
- 東急東横線
- 第三セクター鉄道
- 横浜みなとみらい21
- 日本の地下鉄
- 日本の鉄道路線一覧
- 東横特急 (SUPER BELL"Z&向谷実のアルバム) - 作品中にみなとみらい線が登場する。
外部リンク
- みなとみらい線
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- みなとみらい線|これまでの整備実績 - 鉄道建設・運輸施設整備支援機構