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2009年6月24日 (水) 20:38時点における版
犯罪予告(はんざいよこく)とは場所・日時などを特定した爆破予告や、個人名等を名指しした上の殺傷予告などの犯罪行為。犯行予告(はんこうよこく)ともいう。
目次
犯罪予告と刑罰
通常は脅迫罪に問われるが、爆破予告や無差別殺害予告の場合、脅迫の対象が広範囲に及ぶため業務妨害などに問われることもある。詳細に分けると以下のようになる。
- 特定の個人を脅迫した場合 - 脅迫罪
- 暴力的な表現を用いて業務を妨害した場合 - 威力業務妨害罪
- 嘘の情報などを用いて業務を妨害した場合 - 偽計業務妨害罪
- 上記3項目に当てはまらなくても悪戯目的でやった場合 - 軽犯罪法違反(業務妨害)
最近では予告によって警備を増強せざるを得なくなったとして、警察に対する偽計業務妨害の容疑で逮捕される例も増えている。また、実在しない場所に対する予告[1]や、犯罪予告であるかのように誤読させる[2][3]といった、文面どおりに読むと実行不可能、または意味がない場合でも罪に問われうる。
日本における犯罪予告
インターネット普及以前
インターネット普及以前は相手方に手紙を送りつけるなどして害悪を告知し、脅迫罪に問われた事例が多い(口頭での害悪告知が脅迫罪に問われた事例も多いが「犯罪予告」の範疇からは外れるものと考える)。
- 脅迫罪の成立が肯定された例
- 政治問題について二派の抗争が熾烈になっている時期に、一方の派の中心人物宅に現実の出火もないのに「出火御見舞申上げます、火の元に御用心」という趣旨の文面の葉書を送付する行為[4]。
- 脅迫罪の成立が否定された例
- 「人殺し、売国奴、貴様に厳烈な審判が下されるであろう」と葉書で告知する行為。文面が婉曲であり何人の手によって害悪が加えられるか全く不明確であるため(名古屋高判昭和45年10月28日刑月2巻10号1030頁)。
インターネット普及後
旧来の犯罪予告は手紙や電話を予告対象に送りつける形態がほとんどだったが、インターネットが普及すると掲示板サイト、ウィキサイトなどで犯罪予告が書き込まれる事例が増え逮捕者も続出している。
2000年(平成12年)5月3日に発生した西鉄バスジャック事件では犯人が掲示板サイト2ちゃんねるに予告ととれる書き込みを行っていた。このことが大きく報道されてからは誘発されるように2ちゃんねるに犯罪予告を書き込んで逮捕される人間やそれを実行に移し逮捕される人間が続出した。
大きな事件があると2ちゃんねるに頻繁に書き込まれている殺害・襲撃予告と事件の関連性を関係機関がチェックしているとされる他、警察庁のサイバーフォースが定期的に検索を掛けるようになった。この検索を逃れるために「殺す」を「投す」「頃(ころ)す」と書き込む者も現れているが、文章内容から殺害予告と判定される事がほとんどである。
2008年(平成20年)6月8日の秋葉原通り魔事件でも携帯サイトの掲示板で予告が行われており、犯行直前までの経過が詳細に実況されていた。この事件以後に同様の通り魔事件が多発したことや、犯罪予告そのものが増加したことにより、犯罪予告への対処が社会全体で重要視されるようになり、いたずら目的も含めて厳重に処罰されるようになった。事件後の3ヶ月間では66人が逮捕されている[5]。6月11日には総務大臣が犯罪予告の検知を目的としたシステムを開発する意向を示し、その翌日には民間有志による犯罪予告情報共有サイト「予告.in」が公開された。警察当局は犯罪予告を見たら110番通報するように、掲示板運営者を通じて呼びかけている[6][7]。
裁判例
池内ひろ美脅迫事件
炎上 (ネット用語)#評論家ブログ炎上事件 も参照 評論家の池内ひろ美を脅迫する文章を2ちゃんねるに書き込み、予定されていた池内の講演会を中止させたとして男性が脅迫と威力業務妨害罪で逮捕・起訴された[8]。
裁判で男性は「書き込みは客観的な意見を述べただけで危害を加える意味は無く脅迫には当たらない」などと無罪を主張したが[9][10]、2007年12月14日、東京地方裁判所の石井俊和裁判官は「書き込みが殺人、放火の犯行予告であることは文面から明らか」と指摘し脅迫罪の成立を認定。男性に懲役1年、執行猶予4年を言い渡した[9]。
小女子事件
2008年6月29日、2ちゃんねるに「小女子を焼き殺す」「おいしくいただいちゃいます」と書き込み、母校である埼玉県三郷市立丹後小学校の児童約490人を5日間にわたり集団下校させるなど同校教諭らの業務を妨害したして男性が威力業務妨害罪で逮捕・起訴された[3]。
男性は被告人質問で「(犯行の)目的はない」と述べ、検察官に「目的もなく、人を殺すと書くのか」と問われると「人とは書いていない」と反論し「魚を焼いて食べるという意味だ」と主張した[3]。
検察側は論告で「掲示板を盛り上げようとしてやった愉快犯で、動機は身勝手。小女子は『コウナゴ』と読み魚の意味だと言い逃れできるように言葉を選び、計画的で狡猾」と指摘し、懲役1年6月を求刑した[3]。
弁護側は「周囲が本気でないと判断すると安易に考え、書き込んだ。学校に謝罪する意志もある」として寛大な判決を求めた[3]。
2008年9月29日、さいたま地方裁判所の西野牧子裁判官は「いたずらではすまされない卑劣な犯行。他人の痛みを想像しない無神経さは看過できない」として男性に懲役1年6月、保護観察付き執行猶予3年を言い渡した[11]。
西野は「警察に捕まるか捕まらないかきわどい文章で勝負し、掲示板の反響が見たいという動機は身勝手。魚の意味だと言い逃れできるよう、『小女子』という言葉を選び、犯行は巧妙」と指摘。「学校に謝罪もなく、『小女子』は魚だと不合理な弁解を繰り返し、反省がない」と男性を厳しく非難した[11]。
専門家の見解
弁護士の杉本智則は「現実に社会に大きな結果を生じさせている以上、逮捕や有罪を免れる弁護方法は存在しない」といたずら目的の犯罪予告を非難している[12]。
脚注
- ↑ (2008-07-14) 「埼京線」上野駅に殺害予告=「存在しない」と主張 - 32歳男を逮捕・警視庁 時事通信社 [ arch. ] 2008-07-15
- ↑ 電子掲示板に「秋葉原のあの件を再現します」という秋葉原通り魔事件を連想させる題名で、「明日、名古屋駅で無差別に人を投します」と書き込んだ少年が逮捕された。 (2008-07-02) ニュース24時:ネット掲示板に「殺害予告」を書き込んだ疑いで少年逮捕 /愛知 毎日新聞 [ arch. ] 2008-07-15
- ↑ 3.0 3.1 3.2 3.3 3.4 (2008-09-24) 「小女子焼き殺す」殺害予告で懲役1年6月求刑 産経新聞 [ arch. ] 2008-09-29
- ↑ テンプレート:Cite 判例検索システム
- ↑ (2008-09-18) 「ネット殺人予告」急増、秋葉原事件3か月で66人摘発 読売新聞 [ arch. ] 2008-09-20
- ↑ (2008-06-27) ひろゆき氏、警察から来た「犯行予告は110番」メールで2chにスレ立て 「直接伝えたほうが早そうだし」 ITmedia [ arch. ] 2009-05-13
- ↑ (2008-06-26) 警視庁から来たメールを張ってみるの巻 2008-06-26 [ arch. ] 2009-05-13
- ↑ (2007-02-27) 脅迫カキコミで逮捕者 池内ひろ美ブログ閉鎖 J-CASTニュース ジェイ・キャスト [ arch. ] 2008-09-29
- ↑ 9.0 9.1 (2007-12-14) 2ちゃん「講演会血の海に」 池内ひろ美さん脅迫男有罪 産経新聞 [ arch. ] 2008-09-29
- ↑ (2007-12-13) 池内ひろ美さん「殺害予告」で14日判決 弁護側は「落書き」と無罪主張 J-CASTニュース ジェイ・キャスト [ arch. ] 2008-09-29
- ↑ 11.0 11.1 (2008-09-29) あくびして退廷…「小女子焼き殺す」書き込み被告に有罪 産経新聞 [ arch. ] 2008-09-29
- ↑ 杉本智則 (2008-07-09) 杉本智則 止まらないネット予告 弁護士 杉本智則の雑感 2008-07-09 [ arch. ] 2008-09-12
関連項目
外部リンク
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