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[[労働安全衛生法]]や[[労働安全衛生規則]]では2m以上の高所作業を行う場合、事業者は適切な墜落防止措置を行う必要があり、同時に18歳未満の者には5m以上の高所作業を行わせてはならないと定められているが、これらは労働ではなく教育の一貫で行われている学校での組体操では適用されず、対策も特に行われていないことも多い。一方で、教育専門家や労働安全衛生の専門家からはこういった視点からの危険性も指摘されている<ref>[https://news.yahoo.co.jp/byline/ryouchida/20140523-00035592/ 組体操が「危険」な理由―大人でも許されない高所の無防備作業 ▽組体操リスク(2)] [[内田良]]、2014年5月23日 [[Yahoo!ニュース]](個人) </ref><ref>[http://sr-yanagawa.sakura.ne.jp/essay/pdf/20170910_pyramid-accident.pdf 一般災害に学ぶ① 学校における組体操事故―なぜ国や地方自治体が注意喚起するまで止めなかったのか―、2017年9月10日 実務家のための産業保健のサイト 柳川 行雄] </ref>。 | [[労働安全衛生法]]や[[労働安全衛生規則]]では2m以上の高所作業を行う場合、事業者は適切な墜落防止措置を行う必要があり、同時に18歳未満の者には5m以上の高所作業を行わせてはならないと定められているが、これらは労働ではなく教育の一貫で行われている学校での組体操では適用されず、対策も特に行われていないことも多い。一方で、教育専門家や労働安全衛生の専門家からはこういった視点からの危険性も指摘されている<ref>[https://news.yahoo.co.jp/byline/ryouchida/20140523-00035592/ 組体操が「危険」な理由―大人でも許されない高所の無防備作業 ▽組体操リスク(2)] [[内田良]]、2014年5月23日 [[Yahoo!ニュース]](個人) </ref><ref>[http://sr-yanagawa.sakura.ne.jp/essay/pdf/20170910_pyramid-accident.pdf 一般災害に学ぶ① 学校における組体操事故―なぜ国や地方自治体が注意喚起するまで止めなかったのか―、2017年9月10日 実務家のための産業保健のサイト 柳川 行雄] </ref>。 | ||
+ | ==主な事故== | ||
+ | {| class="wikitable" | ||
+ | |- | ||
+ | ! scope="row"| 1983年||[[桐生市立広沢小学校]]||6年生女子児童(11歳)||死亡 | ||
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+ | |colspan="4"|体育館にて三人一組の人間ピラミッドの練習中、1メートルの高さから落下し頭蓋骨骨折、搬送先の病院で翌日早朝に死亡した<ref>朝日新聞1983年9月27日</ref>。 | ||
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+ | ! scope="row"|1988年||[[町立立田之筋小学校]]||6年生男子生徒(12歳)||死亡 | ||
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+ | |colspan="4"|卒業アルバム撮影中に人間ピラミッドが崩れて圧死した<ref>年表子どもの事件 1945~1989 柘植書房新社 ISBN=978-4-80-680195-5</ref><ref>”人間ピラミッド”グシャリ 卒業記念撮影の児童死ぬ 愛媛毎日新聞 1988年3月4日</ref>。 | ||
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+ | ! scope="row"|1990年||[[福岡県立早良高等学校]]||3年生男子生徒||[[脊髄損傷]]の後遺症 | ||
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+ | | colspan="4"|8段ピラミッド(平面型8段を目標にして、5段目までが完成して6段目にとりかかるとき)の崩落により首の骨を折った。一審で福岡地裁は5段ピラミッドは危険であり学校側に過失があると認めたが、福岡県側は「重要部分に疑問があり、今後の学校でのスポーツ・体育の推進に少なからず影響を及ぼすため」として控訴した。二審で福岡高裁は一審判決をほぼ支持し、5段以上のピラミッドは危険であり学校側に過失があると再び認め結審した<ref>武田さち子 [http://www.jca.apc.org/praca/takeda/number2/900900.htm 子どもに関する事件【事例】 ]2007-07-15 日本の子どもたち2000年</ref><ref>体育の事故における訴訟と判例に関する研究 広島大学教育学部紀要. 第二部2015-05-24</ref><ref>福岡地裁 平成5年5月11日判決は判例タイムズ822号251頁または判例時報1461号121頁, 福岡高裁 平成6年12月22日判決は判例タイムズ879号236頁または判例時報1531号48頁</ref>。 | ||
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+ | ! scope="row"|1990年||[[神奈川県相模原市立鵜野森中学校]]||3年生男子生徒||死亡 | ||
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+ | | colspan="4"|体育祭の予行練習中、教員8人が補助にあたっていた「人間タワー」がリフトアップの際に崩れ(2段目担当)首を骨折し、搬送先にて死亡した<ref>毎日新聞1990年9月26日</ref>。死亡した生徒の両親が市に対し約七千万円の損害賠償請求を求めた<ref>朝日新聞 1995年3月</ref>。 | ||
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+ | ! scope="row"|1993年||[[和歌山県]][[和歌山市]]の公立小学校||6年生女子児童||腰痛 | ||
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+ | | colspan="4"|体重44kgの女児(被害者)が体重74kgの同級生とペアを組まされて以降、腰痛を患うようになった。2006年12月に和歌山地裁は学校の過失を認め、和歌山市に約400万円の賠償を命じた<ref>日刊スポーツ2006年12月20日</ref>。 | ||
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+ | ! scope="row"|2006年||[[福岡県]]の県立高校||2年生男子生徒||首を骨折 | ||
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+ | | colspan="4"|体育祭に向けて柔道場で組み立て体操の自主練習中、同級生に肩車をしてもらった際にバランスを崩して後方に転落し首を骨折、胸から下がまひし、身障者手帳1級の交付を受けた。2011年4月に福岡地裁小倉支部は学校側に事故の責任があることを認め、福岡県に約622万円の賠償を命じた<ref>[http://kd-lo.2-d.jp/%E4%BD%93%E8%82%B2%E5%A4%A7%E4%BC%9A%E3%81%AE%E7%B5%84%E4%BD%93%E6%93%8D%E3%81%AE%E7%B7%B4%E7%BF%92%E4%B8%AD%E3%81%AE%E8%90%BD%E4%B8%8B%E4%BA%8B%E6%95%85%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%8D%E5%85%AC%E7%AB%8B 体育大会の組体操の練習中の落下事故につき公立高校の責任が認められる]北九州第一法律事務所 2011年8月15日 </ref><ref>[http://www.jca.apc.org/praca/takeda/number4S/S060831.html 子どもに関する事件【事例】]武田さち子 日本の子どもたち 2015-06-24</ref>。 | ||
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+ | ! scope="row"|2012年||[[伊丹市立天王寺川中学校]]||生徒(性別不明)||足を骨折 | ||
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+ | | colspan="4"|TV番組企画収録中に新記録の11段人間ピラミッド練習途中に支え役の生徒一人が足を骨折した<ref>[http://datazoo.jp/w/%E4%BC%8A%E4%B8%B9%E5%B8%82%E7%AB%8B%E5%A4%A9%E7%8E%8B%E5%AF%BA%E5%B7%9D%E4%B8%AD%E5%AD%A6%E6%A0%A1/12086343 ありえへん∞世界 テレビ東京 2012年9月25日放送] </ref><ref>[http://bylines.news.yahoo.co.jp/ryouchida/20140919-00039223 四人同時骨折 それでも続く大ピラミッド 巨大化ストップの決断を] ▽組体操リスク(4)内田良(名古屋大学大学院教育発達科学研究科・准教授)</ref>。 | ||
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+ | ! scope="row"|2014年||[[世田谷区立武蔵丘小学校]]||6年生男子生徒||頭痛が残る後遺症 | ||
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+ | | colspan="4"|運動会に向けた組み立て体操(倒立)の練習中、地面に体を打ちつけて後遺症を負う。2017年2月、元在校被害生徒が頭痛などの症状が残ったのは担任教諭が注意義務を怠ったためだとして世田谷区を提訴<ref>[https://www.saga-s.co.jp/articles/-/79370 組み体操でけが、区を提訴 東京・世田谷、当時小6]佐賀新聞 2017年2月28日</ref> | ||
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+ | ! scope="row"| 2014年4月||[[東京都]][[北区]]立の小学校||6年生女子児童||左手首靱帯を損傷・左肘の脱臼・骨折 | ||
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+ | | colspan="4"|4段タワーの練習中、上から2段目と最上段が立ち上がろうとしたときに崩れ、最下段で四つん這いの姿勢でいた被害者が下敷きとなり、重傷を負った。卒業までに3回の手術を行ったが後遺症に悩まされるようになった。なお、事故に対する学校側の対応は担任が事故当時のタワーと教職員の配置を図示した文書を被害児童を通じて手渡したことだけにとどまり、被害者や保護者に対して事故当時の説明は直接行われなかった。保護者が保護者会で事故について報告するよう学校に求めると、学校は保護者会で事実とは異なる内容を説明。校長が区教委に提出した事故報告書にも、事実と違う記載が複数見つかった。こうした事態に不信感を抱いた母親が都教委や区教委に助けを求めると、「学校からの報告が全て」と担当者は回答した。2016年2月、中学に進学した女子生徒は馳浩文部科学大臣に相次ぐ組み立て体操事故について国に無責任な検討で済ませないよう強く求める内容を綴った手紙を送付した<ref>[http://bylines.news.yahoo.co.jp/katoyoriko/20160224-00054537 「先生が、絆なんだよ!伝統なんだよ!と言っていた」組体操事故の被害生徒が馳文科相に怒りの手紙] [[加藤順子]](ライター、フォトグラファー、気象予報士) [[Yahooニュース]]2016年2月24日 </ref>。4段タワーは下から6人、6人、3人、1人の合計16人の構成であるが、児童が欠席したため下から2段目は5人でおこなわれた。[[西山豊]]大阪経済大教授は「柱を抜いた欠陥住宅のようなもので事故が起きて当然だ」と指摘する<ref>[http://www.tokyo-np.co.jp/article/living/life/201510/CK2015103002000213.html 事故が起きた組み体操の技]東京新聞 2015年10月30日</ref>。 | ||
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+ | ! scope="row"|2014年5月||[[菊陽町立菊陽中学校]]||男子生徒||腰の骨を折った | ||
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+ | | colspan="4"|体育館にけが防止のためのマットを敷き、2-3年の男子生徒約140人で10段ピラミッドを作る練習中に一部がバランスを失い崩落、教諭8人が現場指導にあたっていたがうち生徒の一人が重症を負った<ref>[http://mainichi.jp/opinion/news/20140531k0000m070106000c.html 社説:組み体操の事故 高さを競うのは危険だ]毎日新聞2014年5月</ref>。同年、[[伊丹市立天王寺川中学校]]で11段ピラミッドの練習中に土台に加わっていた教師がケガをしたため、11段の挑戦を中止した<ref>[http://tvtopic.goo.ne.jp/kansai/program/info/301549/index.html 毎日放送VOICE 2014年10月3日放送回 特集]テレビ番組2015-05-20 </ref>。 | ||
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+ | ! scope="row"| 2015年5月||[[松戸市]]の小学校||男子児童||後遺症で左耳が難聴 | ||
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+ | | colspan="4"|3段タワーの練習中に1番上にいた男子児童が落下、頭と腹を強く打ち開頭手術を行った。幸い出血が少なく、一命を取り留めたが後遺症で左耳が難聴になった<ref>[http://www.nhk.or.jp/seikatsu-blog/400/222034.html 組み体操の事故多発で安全対策は] 健康NHK生活情報ブログ 2015年7月1日</ref><ref>[http://www.nhk.or.jp/seikatsu-blog/1100/229442.html 相次ぐ事故 どうする?組み体操] 災害・防災・安全NHK生活情報ブログ2015年10月15日</ref><ref>[http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201510/CK2015101002000141.html 組み体操 千葉の中3骨折、入院 全国で事故、年8500件超]東京新聞2015年10月10日</ref>。同年12月8日、事故に遭った児童からの組み立て体操中止を訴える手紙が松戸市議会の一般質問で読み上げられ、翌9日に松戸市教育委員会は「組み体操をやる、やらないも含めて見直す」と、2016年度以降の廃止も検討していることを明らかにした<ref>[http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201512/CK2015121002000128.html 骨折事故相次ぐ組み体操 松戸市が廃止も検討]東京新聞2015年12月10日</ref>。なお当初、松戸市教育委員会は市議による「嫌がっている子に組体操をやらせるのは虐待にあたるのではないか」という質問に対し、「子どもたちの8割は楽しみにしている。何よりも地域や保護者からの要求が強い」「嫌がる子が参加しない、となったら、例えば参加合唱コンクールだって、嫌な子が参加しなかったらどうなりますか。歌が嫌な子たちにとっては非常にストレスなんですよ」と回答していた<ref>[http://masudakaoru.cocolog-nifty.com/blog/2015/10/post-723c.html 松戸市内の小中学校で行われる運動会・体育祭のけがの件]増田かおる通信2015年10月15日</ref>。 | ||
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+ | ! scope="row"| 2015年9月||[[千葉県]][[柏市]]立の中学校||3年生男子生徒||骨折 | ||
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+ | | colspan="4"|平面型の5段ピラミッドを練習中に上部から2段目を担当していた生徒が落下、右太ももを強く打ちつけて骨折した。手術を受け、1か月以上入院したが、完治の目処はたたず、右腿から右足首にかけて金属製の装具をつけての生活を余儀なくされた。柏市立の小中学校では、2015年度に限っても、組み立て体操の練習中に怪我を負い病院に搬送されたケースが40件あった。相次ぐ事故の報告をうけ、柏市は2016年度から市内の小中学校で組み立て体操を全面禁止にすることにした<ref>[http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201602/CK2016021802000134.html 柏市、小中校の組み体操全廃へ 新年度から全国に先駆け]東京新聞 2016年2月18日 </ref>。 | ||
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+ | ! scope="row"|2015年9月||[[八尾市立大正中学校]]||中1男子生徒||右腕を骨折 | ||
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+ | | colspan="4"|体育大会において10段ピラミッドが崩れた。被害者は下から6段目の位置にいた。 <ref>[http://www.sankei.com/west/news/150930/wst1509300106-n1.html 組み体操「ピラミッド」で事故 中1男子生徒が崩れて骨折した 大阪]産経WEST2015年9月30日</ref>。 | ||
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+ | ! scope="row"| 2016年6月||[[広島大学附属三原中学校]]||3年生男子生徒(14歳)||脳内出血で死亡 | ||
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+ | | colspan="4"|運動会において移動ピラミッド(9人、3段)が崩れた。被害者は下から2段目だったが、2日後に脳内出血で死亡した。3カ月前の同年3月、スポーツ庁が安全対策の徹底を通知した矢先だった。学校側が事故と認めないため遺族が提訴に踏み切った。提訴日は2017年11月1日。被告は学校を運営する[[広島大学]]<ref>[https://www.chugoku-np.co.jp/local/news/article.php?comment_id=385473&comment_sub_id=0&category_id=256 広島大附属三原中、運動会2日後に生徒死亡、「組体操が原因」提訴、遺族、安全措置問う、専門家は危険性指摘、国も昨年対策通知]中国新聞2017年11月2日</ref>。広島地裁福山支部(広島県福山市)であった2018年1月の第1回口頭弁論で、広島大学は「事故はなかった」と請求棄却を求めた。同年3月の第2回口頭弁論でも「騎馬は通常通り解体した」と主張。これに対し、遺族は一貫して「上段生徒を含む複数の生徒が落下した。正規の解体ではない」とした上で「教員たちが退場後の解体状況を注視していない。低い安全意識だった」とし、学校が安全配慮を怠ったと指摘した。大学は遺族が求めていた再調査を実施せず、遺族側に「生徒の死亡を引き起こすような行動、状況はなかった」と回答している。大学はまた、保護者が求めていた説明会についても「係争中」として開いていない。現場は当初、保護者らで混雑していた。学校は翌17年の運動会から生徒が退場をスムーズにできるよう退場門付近に柵を設置し、当該の移動ピラミッドを中止した。2019年7月10日、広島地裁福山支部が和解を勧告した。同年10月9日の弁論準備で遺族側が和解案を提示したが、これに対し大学が応じず和解協議に入らなかった。 | ||
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2020年5月18日 (月) 11:11時点における最新版
ここでは日本の学校で催される体育行事の組体操による事故(死亡を含む)を解説する。
概要[編集]
体育的行事が開催される凡そ2週間前から課外での練習が始められ練習毎に習熟の段階を上げていき、その期間に同演目の事故が集中する。組み立て体操は危険が伴うため、安全配慮義務が開催者に課される。演目上の性質として段数の高低に関係無く落下、及びその衝撃で上肢切断、歯牙障害、せき柱障害などの事故事例が多発していることが判っている[1]。1969年から2014年度の46年間に延べ9人の死亡事故(内2名が約1メートルからの落下死)と92人の後遺障害が確認されている[2][3][4]、1983-2013年度の31年間に学校の組み立て体操において障害の残った事故は88件発生[5]。内、2012年度までの10年間で後遺症が残る事故は20件発生(約2.8件/年)。
2012年度に小学校で起きた組み立て体操による事故は6533件[6]、2013年度での事故事例は8500件超となっている[7]。静岡県の中学では下敷きになった生徒が頚椎骨折し、両親が学校を相手に訴訟を起こした。ピラミッド以外の事故でも、福岡の県立高校の男子生徒が肩車された際に後頭部から落下して首の骨を折り障害を負ったケースや、頭部強打による中途難聴や頭痛・目眩など後遺症が残った事例、人間タワー崩落時の胸部圧迫による心臓破裂での死亡[8]、演目指導に当たっていた名古屋市の市立小学校側が事実と異なる報告書を作成し裁判所から「被害児童に嘘の証言を強いた」など、各地で学校側の安全対策をめぐる裁判が行われた[9]。
日本では国家賠償法に基づき、教員が国又は地方公共団体の公務員で、その職務を行うについて、故意又は過失によつて違法に児童や生徒に損害を加えたときは、国又は公共団体が損害賠償責任を負う(国家賠償法第1条第1項)[10]。なお、学校が日本スポーツ振興センターと災害共済給付契約を締結し免責の特約をしているときは、日本スポーツ振興センターが災害を受けた者に災害共済給付を行った価額の限度で学校の設置者は損害賠償責任を免れる(独立行政法人日本スポーツ振興センター法参照)。
2013年度に組み立て体操中の事故で災害共済給付制度で医療費が支給された件数は、全国の小学校で6349件、中学校で1869件、高校で343件となっている[11]。2014年度、小中高における組み立て体操事故確認事例は約8500件[12]。2014年度の組み立て体操事故において医療費を給付した内訳事例はサボテン、肩車、倒立などの二人で組む演技で計2294件、タワー1241件、ピラミッド1133件。2015年度では計8071件、前年比で骨折事故700件増[13]。2016年での事故事例は計5271件となっている。(独立行政法人日本スポーツ振興センター調べ)。2017年度では4418人[14]都道府県別組み立て体操事故件数1位は過去3年間連続で兵庫県となっている。2018年では4000件超[15]。
労働安全衛生法や労働安全衛生規則では2m以上の高所作業を行う場合、事業者は適切な墜落防止措置を行う必要があり、同時に18歳未満の者には5m以上の高所作業を行わせてはならないと定められているが、これらは労働ではなく教育の一貫で行われている学校での組体操では適用されず、対策も特に行われていないことも多い。一方で、教育専門家や労働安全衛生の専門家からはこういった視点からの危険性も指摘されている[16][17]。
主な事故[編集]
1983年 | 桐生市立広沢小学校 | 6年生女子児童(11歳) | 死亡 |
---|---|---|---|
体育館にて三人一組の人間ピラミッドの練習中、1メートルの高さから落下し頭蓋骨骨折、搬送先の病院で翌日早朝に死亡した[18]。 | |||
1988年 | 町立立田之筋小学校 | 6年生男子生徒(12歳) | 死亡 |
卒業アルバム撮影中に人間ピラミッドが崩れて圧死した[19][20]。 | |||
1990年 | 福岡県立早良高等学校 | 3年生男子生徒 | 脊髄損傷の後遺症 |
8段ピラミッド(平面型8段を目標にして、5段目までが完成して6段目にとりかかるとき)の崩落により首の骨を折った。一審で福岡地裁は5段ピラミッドは危険であり学校側に過失があると認めたが、福岡県側は「重要部分に疑問があり、今後の学校でのスポーツ・体育の推進に少なからず影響を及ぼすため」として控訴した。二審で福岡高裁は一審判決をほぼ支持し、5段以上のピラミッドは危険であり学校側に過失があると再び認め結審した[21][22][23]。 | |||
1990年 | 神奈川県相模原市立鵜野森中学校 | 3年生男子生徒 | 死亡 |
体育祭の予行練習中、教員8人が補助にあたっていた「人間タワー」がリフトアップの際に崩れ(2段目担当)首を骨折し、搬送先にて死亡した[24]。死亡した生徒の両親が市に対し約七千万円の損害賠償請求を求めた[25]。 | |||
1993年 | 和歌山県和歌山市の公立小学校 | 6年生女子児童 | 腰痛 |
体重44kgの女児(被害者)が体重74kgの同級生とペアを組まされて以降、腰痛を患うようになった。2006年12月に和歌山地裁は学校の過失を認め、和歌山市に約400万円の賠償を命じた[26]。 | |||
2006年 | 福岡県の県立高校 | 2年生男子生徒 | 首を骨折 |
体育祭に向けて柔道場で組み立て体操の自主練習中、同級生に肩車をしてもらった際にバランスを崩して後方に転落し首を骨折、胸から下がまひし、身障者手帳1級の交付を受けた。2011年4月に福岡地裁小倉支部は学校側に事故の責任があることを認め、福岡県に約622万円の賠償を命じた[27][28]。 | |||
2012年 | 伊丹市立天王寺川中学校 | 生徒(性別不明) | 足を骨折 |
TV番組企画収録中に新記録の11段人間ピラミッド練習途中に支え役の生徒一人が足を骨折した[29][30]。 | |||
2014年 | 世田谷区立武蔵丘小学校 | 6年生男子生徒 | 頭痛が残る後遺症 |
運動会に向けた組み立て体操(倒立)の練習中、地面に体を打ちつけて後遺症を負う。2017年2月、元在校被害生徒が頭痛などの症状が残ったのは担任教諭が注意義務を怠ったためだとして世田谷区を提訴[31] | |||
2014年4月 | 東京都北区立の小学校 | 6年生女子児童 | 左手首靱帯を損傷・左肘の脱臼・骨折 |
4段タワーの練習中、上から2段目と最上段が立ち上がろうとしたときに崩れ、最下段で四つん這いの姿勢でいた被害者が下敷きとなり、重傷を負った。卒業までに3回の手術を行ったが後遺症に悩まされるようになった。なお、事故に対する学校側の対応は担任が事故当時のタワーと教職員の配置を図示した文書を被害児童を通じて手渡したことだけにとどまり、被害者や保護者に対して事故当時の説明は直接行われなかった。保護者が保護者会で事故について報告するよう学校に求めると、学校は保護者会で事実とは異なる内容を説明。校長が区教委に提出した事故報告書にも、事実と違う記載が複数見つかった。こうした事態に不信感を抱いた母親が都教委や区教委に助けを求めると、「学校からの報告が全て」と担当者は回答した。2016年2月、中学に進学した女子生徒は馳浩文部科学大臣に相次ぐ組み立て体操事故について国に無責任な検討で済ませないよう強く求める内容を綴った手紙を送付した[32]。4段タワーは下から6人、6人、3人、1人の合計16人の構成であるが、児童が欠席したため下から2段目は5人でおこなわれた。西山豊大阪経済大教授は「柱を抜いた欠陥住宅のようなもので事故が起きて当然だ」と指摘する[33]。 | |||
2014年5月 | 菊陽町立菊陽中学校 | 男子生徒 | 腰の骨を折った |
体育館にけが防止のためのマットを敷き、2-3年の男子生徒約140人で10段ピラミッドを作る練習中に一部がバランスを失い崩落、教諭8人が現場指導にあたっていたがうち生徒の一人が重症を負った[34]。同年、伊丹市立天王寺川中学校で11段ピラミッドの練習中に土台に加わっていた教師がケガをしたため、11段の挑戦を中止した[35]。 | |||
2015年5月 | 松戸市の小学校 | 男子児童 | 後遺症で左耳が難聴 |
3段タワーの練習中に1番上にいた男子児童が落下、頭と腹を強く打ち開頭手術を行った。幸い出血が少なく、一命を取り留めたが後遺症で左耳が難聴になった[36][37][38]。同年12月8日、事故に遭った児童からの組み立て体操中止を訴える手紙が松戸市議会の一般質問で読み上げられ、翌9日に松戸市教育委員会は「組み体操をやる、やらないも含めて見直す」と、2016年度以降の廃止も検討していることを明らかにした[39]。なお当初、松戸市教育委員会は市議による「嫌がっている子に組体操をやらせるのは虐待にあたるのではないか」という質問に対し、「子どもたちの8割は楽しみにしている。何よりも地域や保護者からの要求が強い」「嫌がる子が参加しない、となったら、例えば参加合唱コンクールだって、嫌な子が参加しなかったらどうなりますか。歌が嫌な子たちにとっては非常にストレスなんですよ」と回答していた[40]。 | |||
2015年9月 | 千葉県柏市立の中学校 | 3年生男子生徒 | 骨折 |
平面型の5段ピラミッドを練習中に上部から2段目を担当していた生徒が落下、右太ももを強く打ちつけて骨折した。手術を受け、1か月以上入院したが、完治の目処はたたず、右腿から右足首にかけて金属製の装具をつけての生活を余儀なくされた。柏市立の小中学校では、2015年度に限っても、組み立て体操の練習中に怪我を負い病院に搬送されたケースが40件あった。相次ぐ事故の報告をうけ、柏市は2016年度から市内の小中学校で組み立て体操を全面禁止にすることにした[41]。 | |||
2015年9月 | 八尾市立大正中学校 | 中1男子生徒 | 右腕を骨折 |
体育大会において10段ピラミッドが崩れた。被害者は下から6段目の位置にいた。 [42]。 | |||
2016年6月 | 広島大学附属三原中学校 | 3年生男子生徒(14歳) | 脳内出血で死亡 |
運動会において移動ピラミッド(9人、3段)が崩れた。被害者は下から2段目だったが、2日後に脳内出血で死亡した。3カ月前の同年3月、スポーツ庁が安全対策の徹底を通知した矢先だった。学校側が事故と認めないため遺族が提訴に踏み切った。提訴日は2017年11月1日。被告は学校を運営する広島大学[43]。広島地裁福山支部(広島県福山市)であった2018年1月の第1回口頭弁論で、広島大学は「事故はなかった」と請求棄却を求めた。同年3月の第2回口頭弁論でも「騎馬は通常通り解体した」と主張。これに対し、遺族は一貫して「上段生徒を含む複数の生徒が落下した。正規の解体ではない」とした上で「教員たちが退場後の解体状況を注視していない。低い安全意識だった」とし、学校が安全配慮を怠ったと指摘した。大学は遺族が求めていた再調査を実施せず、遺族側に「生徒の死亡を引き起こすような行動、状況はなかった」と回答している。大学はまた、保護者が求めていた説明会についても「係争中」として開いていない。現場は当初、保護者らで混雑していた。学校は翌17年の運動会から生徒が退場をスムーズにできるよう退場門付近に柵を設置し、当該の移動ピラミッドを中止した。2019年7月10日、広島地裁福山支部が和解を勧告した。同年10月9日の弁論準備で遺族側が和解案を提示したが、これに対し大学が応じず和解協議に入らなかった。 |
脚注[編集]
- ↑ 学校事故事例検索データベース 学校安全WEB
- ↑ 組み体操 46年間で9人死亡 92人に障害 NHKNewsWeb2016年2月25日
- ↑ 組み体操 国が注意喚起 初の指針、判断は学校に委ねる 東京新聞2016年2月25日
- ↑ 組み体操で国が通知…69年度以降、9人死亡 YOMIURI ONLINE 2016年03月25日
- ↑ 組体操事故の死角 ピラミッド型よりタワー型で障害事故が多発 BLOGOS, 2015年05月19日
- ↑ 組み体操で事故多発…「人間ピラミッド」高層化2014-09-23 YOMIURI ONLINE 読売新聞社
- ↑ 組み体操事故相次ぎ縮小の動き NHK東海NewsWeb2015年9月10日
- ↑ 組み体操 死亡事故教訓に 指導者向けDVD復刻 東京新聞 2016年8月11日
- ↑ 巨大化する組体操ピラミッド、最大200キロの負荷 大学准教授「これのどこが『教育』なのか」と指摘 J-CASTニュース 2014年09月16日
- ↑ 損害賠償請求事件 名古屋地方裁判所 裁判例情報
- ↑ <組み体操>高さを制限 「タワー」は3段まで 大阪市教委 毎日新聞 2015年9月1日
- ↑ 学校の管理下の災害〔平成27年版〕学校安全WEB
- ↑ 組み体操事故 医療費給付 兵庫県全国最多の883件 毎日新聞 2016年11月18日
- ↑ 「ショーほど危険なものはない組体操ワースト1位」神戸新聞NEXT 2019年2月4日
- ↑ 組み体操事故、依然4000件 事例集で安全策を提案 産経新聞 2019年7月10日
- ↑ 組体操が「危険」な理由―大人でも許されない高所の無防備作業 ▽組体操リスク(2) 内田良、2014年5月23日 Yahoo!ニュース(個人)
- ↑ 一般災害に学ぶ① 学校における組体操事故―なぜ国や地方自治体が注意喚起するまで止めなかったのか―、2017年9月10日 実務家のための産業保健のサイト 柳川 行雄
- ↑ 朝日新聞1983年9月27日
- ↑ 年表子どもの事件 1945~1989 柘植書房新社 ISBN=978-4-80-680195-5
- ↑ ”人間ピラミッド”グシャリ 卒業記念撮影の児童死ぬ 愛媛毎日新聞 1988年3月4日
- ↑ 武田さち子 子どもに関する事件【事例】 2007-07-15 日本の子どもたち2000年
- ↑ 体育の事故における訴訟と判例に関する研究 広島大学教育学部紀要. 第二部2015-05-24
- ↑ 福岡地裁 平成5年5月11日判決は判例タイムズ822号251頁または判例時報1461号121頁, 福岡高裁 平成6年12月22日判決は判例タイムズ879号236頁または判例時報1531号48頁
- ↑ 毎日新聞1990年9月26日
- ↑ 朝日新聞 1995年3月
- ↑ 日刊スポーツ2006年12月20日
- ↑ 体育大会の組体操の練習中の落下事故につき公立高校の責任が認められる北九州第一法律事務所 2011年8月15日
- ↑ 子どもに関する事件【事例】武田さち子 日本の子どもたち 2015-06-24
- ↑ ありえへん∞世界 テレビ東京 2012年9月25日放送
- ↑ 四人同時骨折 それでも続く大ピラミッド 巨大化ストップの決断を ▽組体操リスク(4)内田良(名古屋大学大学院教育発達科学研究科・准教授)
- ↑ 組み体操でけが、区を提訴 東京・世田谷、当時小6佐賀新聞 2017年2月28日
- ↑ 「先生が、絆なんだよ!伝統なんだよ!と言っていた」組体操事故の被害生徒が馳文科相に怒りの手紙 加藤順子(ライター、フォトグラファー、気象予報士) Yahooニュース2016年2月24日
- ↑ 事故が起きた組み体操の技東京新聞 2015年10月30日
- ↑ 社説:組み体操の事故 高さを競うのは危険だ毎日新聞2014年5月
- ↑ 毎日放送VOICE 2014年10月3日放送回 特集テレビ番組2015-05-20
- ↑ 組み体操の事故多発で安全対策は 健康NHK生活情報ブログ 2015年7月1日
- ↑ 相次ぐ事故 どうする?組み体操 災害・防災・安全NHK生活情報ブログ2015年10月15日
- ↑ 組み体操 千葉の中3骨折、入院 全国で事故、年8500件超東京新聞2015年10月10日
- ↑ 骨折事故相次ぐ組み体操 松戸市が廃止も検討東京新聞2015年12月10日
- ↑ 松戸市内の小中学校で行われる運動会・体育祭のけがの件増田かおる通信2015年10月15日
- ↑ 柏市、小中校の組み体操全廃へ 新年度から全国に先駆け東京新聞 2016年2月18日
- ↑ 組み体操「ピラミッド」で事故 中1男子生徒が崩れて骨折した 大阪産経WEST2015年9月30日
- ↑ 広島大附属三原中、運動会2日後に生徒死亡、「組体操が原因」提訴、遺族、安全措置問う、専門家は危険性指摘、国も昨年対策通知中国新聞2017年11月2日