「独占禁止法」の版間の差分
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日本はシャーマン法とクレイトン法を受け継いでいる。原案はGHQから示され、原始独占禁止法から現在の[[私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律]]が制定された。 | 日本はシャーマン法とクレイトン法を受け継いでいる。原案はGHQから示され、原始独占禁止法から現在の[[私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律]]が制定された。 | ||
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+ | [[日本]]での競争法は、[[1947年]]に制定された'''私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律'''を中心に構成されている。いわゆる'''独占禁止法'''(どくせんきんしほう)で、更に「独禁法」と略す事もある。独占禁止法は競争法における憲法といわれることがある。 | ||
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+ | 独占禁止法は(1)私的独占、(2)不当な取引制限、(3)不公正な取引方法を禁止している。その重要性から、(1)(2)(3)のことを独占禁止法の三本柱、と呼ぶこともある、また、(1)あるいは(3)をはずして、企業結合規制を入れて三本柱とする者もいる。 | ||
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+ | このほかにも独占禁止法の重要な役割として企業結合規制と事業者団体規制がある。そのほかにも、重要なものとして、不公正な取引方法に関する一般指定、不当景品類及び不当表示防止法、下請代金支払遅延等防止法などがある。 | ||
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+ | 第1条は「[[私的独占]]、[[不当な取引制限]]及び[[不公正な取引方法]]を禁止し、事業支配力の過度の集中を防止して、結合、協定等の方法による生産、販売、価格、技術等の不当な制限その他一切の事業活動の不当な拘束を排除することにより、公正且つ自由な競争を促進し、事業者の創意を発揮させ、事業活動を盛んにし、雇傭及び国民実所得の水準を高め、以て、一般消費者の利益を確保するとともに、国民経済の民主的で健全な発達を促進することを目的とする」としている。 | ||
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+ | 独占禁止法に違反する行為・状態を発見した場合、内閣府の外局である[[公正取引委員会]](公取ともいう)が、排除措置命令や課徴金納付命令などの処分を出すこととなる。法改正前は、処分を受けてからでないと異議を申し立てることができなかった。法改正を経た今日<ref>日経新聞電子版 [http://www.nikkei.com/article/DGXNASGC06017_W3A201C1PP8000/ 改正独禁法が成立 不服審査、東京地裁で] 2013/12/7 1:45 | ||
+ | :施行は2015年4月1日から。公正取引委員会 [http://www.jftc.go.jp/dk/kaisei/h25kaisei/index.html 改正独占禁止法(平成25年)]</ref>、処分に先立ち53条の意見を聴取される機会や、54条1項の説明を受ける機会、2項の証拠提出と質問の機会などが設けられた。 | ||
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+ | また、これまで処分後に行われていた公正取引委員会の審判は、法改正により処分後の不服審査手続の第一審を東京地裁が担うことになった。<!--審判は、霞ヶ関の中央合同庁舎6号館B棟にて行われ、一般人による傍聴は自由である。審判は、審判官、審査官、被審人によってなされる。審判官は、裁判官のような役割を負い、審査官は検察官のような役割を負い、被審人は被告人のような位置にある。--> | ||
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+ | 法改正の背景として、[[日本経済団体連合会]](経団連)などが、審判手続において審判官と審査官がともに公正取引委員会職員であり、職能分離がされていても公正な審理が期待できないと不満を述べていた。それでも、審判制度は公正取引委員会の執行能力を確かなものにし、独占禁止法の先例を形成する原動力としても貢献した。 | ||
== 脚注 == | == 脚注 == |
2018年2月2日 (金) 16:40時点における版
独占禁止法(どくせんきんしほう)または競争法(きょうそうほう)とは、資本主義の市場経済において、健全で公正な競争状態を維持するために独占的、協調的、あるいは競争方法として不公正な行動を防ぐことを目的とする法令の総称ないし法分野である。「独占禁止法」では、法律の略称と紛らわしいため、区別を明確にする際には「競争法」との呼称が用いられることがある。
現在では経済法の中心的位置を占めると考えられている。
独禁法制定の歴史的経緯と他の産業財産権法との関係
特許法や著作権法等といった、独占禁止法の趣旨と一見相容れないようにも見える知的財産法も存在する。これらの趣旨はあくまで発明その他の創作活動へのインセンティブを図ることで社会全体の産業活性化を図るために、限られた期間創作者への一定の情報の独占権を付与するものである。歴史的にはイギリスの産業革命によって、中小事業者による独創的な発明を大資本家による模倣から守る社会的必要性が生じたことにより近代先進国家にて順次制定された。
アメリカ合衆国では、この特許制度を利用してトーマス・エジソンは発明王として大成功を収めた。しかし、創作者への保護を手厚くするプロパテント政策により、権利の制約を受ける第三者の不利益が過大となり、世界恐慌の間接的原因の一因ともいわれ、1930年代のアメリカでは創作者への保護よりも権利の制約を受ける第三者への保護を手厚くするアンチパテント政策を導入するとともに、市場独占による取引の停滞を解消するべく独占禁止法を初めて制定した経緯がある。そのため、独禁法の運用にあたっては、特許権や著作権等の独占権による創作インセンティブを刺激するというメリットと、権利の制約を受ける(第三者への)デメリットを比較考量して、あくまでも社会全体の産業活性化の観点から行わなければならない。
したがって、知的財産権の正当な行使である限りは独占禁止法の適用は受けないものの、知的財産権の趣旨を逸脱する濫用は独占禁止法によって禁止され得る。たとえば、特許権者による独占実施、または限られたライセンス者との寡占実施にあって、価格カルテルやライセンス期間中の改良研究禁止、ライセンス期間満了後の当業参入禁止などは、公正な競争を妨げるものであり、各種の知的財産法による権利保護範囲を逸脱する行為として独占禁止法によって禁止され得る。
概要
2007年現在100以上の世界各国で独占禁止法が制定されている。2000年頃には30カ国で、新興国を中心に制定の動きがあったため増加した。世界の政治経済体制を支える経済憲法としてほぼ共通の認識となったといえる。
独占禁止法の重要な起源は、アメリカのシャーマン法とクレイトン法である。ただし、世界で最初の独占禁止法は、エリザベス1世の時代の独占的特許とそれによる独占の弊害に対してクック判事が出した独占に関する法令(the act of monopoly)であるとされている。
多くは資本主義国家にて制定されている例が多い。ただし、中華人民共和国でも2007年8月1日に制定されたように、市場があるところには独占禁止法がありうるということがいえる。
市場経済において、いかなる規則が必要かという経済の法を定めるものである。経済の憲法という意味で経済憲法と呼ばれてもいる。企業の基本的人権、経済の刑法という意味でもある。各国の独占の定義、合併の定義、域外適用の定義などは様々あり、様々な行為類型が違法であると定められている。世界的な経済活動が対象となるために、世界的な法の調整が必要であるが、主要なものとして、たとえばEU競争法や、米国のシャーマン法およびクレイトン法がある。
日本はシャーマン法とクレイトン法を受け継いでいる。原案はGHQから示され、原始独占禁止法から現在の私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律が制定された。
日本
日本での競争法は、1947年に制定された私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律を中心に構成されている。いわゆる独占禁止法(どくせんきんしほう)で、更に「独禁法」と略す事もある。独占禁止法は競争法における憲法といわれることがある。
独占禁止法は(1)私的独占、(2)不当な取引制限、(3)不公正な取引方法を禁止している。その重要性から、(1)(2)(3)のことを独占禁止法の三本柱、と呼ぶこともある、また、(1)あるいは(3)をはずして、企業結合規制を入れて三本柱とする者もいる。
このほかにも独占禁止法の重要な役割として企業結合規制と事業者団体規制がある。そのほかにも、重要なものとして、不公正な取引方法に関する一般指定、不当景品類及び不当表示防止法、下請代金支払遅延等防止法などがある。
第1条は「私的独占、不当な取引制限及び不公正な取引方法を禁止し、事業支配力の過度の集中を防止して、結合、協定等の方法による生産、販売、価格、技術等の不当な制限その他一切の事業活動の不当な拘束を排除することにより、公正且つ自由な競争を促進し、事業者の創意を発揮させ、事業活動を盛んにし、雇傭及び国民実所得の水準を高め、以て、一般消費者の利益を確保するとともに、国民経済の民主的で健全な発達を促進することを目的とする」としている。
独占禁止法に違反する行為・状態を発見した場合、内閣府の外局である公正取引委員会(公取ともいう)が、排除措置命令や課徴金納付命令などの処分を出すこととなる。法改正前は、処分を受けてからでないと異議を申し立てることができなかった。法改正を経た今日[1]、処分に先立ち53条の意見を聴取される機会や、54条1項の説明を受ける機会、2項の証拠提出と質問の機会などが設けられた。
また、これまで処分後に行われていた公正取引委員会の審判は、法改正により処分後の不服審査手続の第一審を東京地裁が担うことになった。
法改正の背景として、日本経済団体連合会(経団連)などが、審判手続において審判官と審査官がともに公正取引委員会職員であり、職能分離がされていても公正な審理が期待できないと不満を述べていた。それでも、審判制度は公正取引委員会の執行能力を確かなものにし、独占禁止法の先例を形成する原動力としても貢献した。
脚注
- ↑ 日経新聞電子版 改正独禁法が成立 不服審査、東京地裁で 2013/12/7 1:45
- 施行は2015年4月1日から。公正取引委員会 改正独占禁止法(平成25年)
参考文献
- 栗田誠 『実務研究競争法』、東京: 商事法務、2004年3月。ISBN 4-7857-1129-9。