「独占禁止法」の版間の差分

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== 独禁法制定の歴史的経緯と他の産業財産権法との関係 ==
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[[特許法]]や[[著作権法]]等といった、独占禁止法の趣旨と一見相容れないようにも見える[[知的財産法]]も存在する。これらの趣旨はあくまで発明その他の創作活動へのインセンティブを図ることで社会全体の産業活性化を図るために、限られた期間創作者への一定の情報の独占権を付与するものである。歴史的には[[イギリス]]の[[産業革命]]によって、中小事業者による独創的な発明を大資本家による模倣から守る社会的必要性が生じたことにより近代先進国家にて順次制定された。
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アメリカ合衆国では、この特許制度を利用して[[トーマス・エジソン]]は発明王として大成功を収めた。しかし、創作者への保護を手厚くする[[プロパテント]]政策により、権利の制約を受ける第三者の不利益が過大となり、[[世界恐慌]]の間接的原因の一因ともいわれ、1930年代のアメリカでは創作者への保護よりも権利の制約を受ける第三者への保護を手厚くする[[アンチパテント]]政策を導入するとともに、市場独占による取引の停滞を解消するべく独占禁止法を初めて制定した経緯がある。そのため、独禁法の運用にあたっては、[[特許権]]や[[著作権]]等の独占権による創作インセンティブを刺激するというメリットと、権利の制約を受ける(第三者への)デメリットを比較考量して、あくまでも社会全体の産業活性化の観点から行わなければならない。
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したがって、[[知的財産権]]の正当な行使である限りは独占禁止法の適用は受けないものの、'''知的財産権の趣旨を逸脱する濫用'''は独占禁止法によって禁止され得る。たとえば、特許権者による独占実施、または限られた[[ライセンス]]者との寡占実施にあって、[[カルテル|価格カルテル]]やライセンス期間中の改良研究禁止、ライセンス期間満了後の当業参入禁止などは、公正な競争を妨げるものであり、各種の知的財産法による権利保護範囲を逸脱する行為として独占禁止法によって禁止され得る。
  
 
== 脚注 ==
 
== 脚注 ==

2018年2月2日 (金) 16:39時点における版

独占禁止法(どくせんきんしほう)または競争法(きょうそうほう)とは、資本主義市場経済において、健全で公正な競争状態を維持するために独占的、協調的、あるいは競争方法として不公正な行動を防ぐことを目的とする法令の総称ないし法分野である。「独占禁止法」では、法律の略称と紛らわしいため、区別を明確にする際には「競争法」との呼称が用いられることがある。

現在では経済法の中心的位置を占めると考えられている。

独禁法制定の歴史的経緯と他の産業財産権法との関係

特許法著作権法等といった、独占禁止法の趣旨と一見相容れないようにも見える知的財産法も存在する。これらの趣旨はあくまで発明その他の創作活動へのインセンティブを図ることで社会全体の産業活性化を図るために、限られた期間創作者への一定の情報の独占権を付与するものである。歴史的にはイギリス産業革命によって、中小事業者による独創的な発明を大資本家による模倣から守る社会的必要性が生じたことにより近代先進国家にて順次制定された。

アメリカ合衆国では、この特許制度を利用してトーマス・エジソンは発明王として大成功を収めた。しかし、創作者への保護を手厚くするプロパテント政策により、権利の制約を受ける第三者の不利益が過大となり、世界恐慌の間接的原因の一因ともいわれ、1930年代のアメリカでは創作者への保護よりも権利の制約を受ける第三者への保護を手厚くするアンチパテント政策を導入するとともに、市場独占による取引の停滞を解消するべく独占禁止法を初めて制定した経緯がある。そのため、独禁法の運用にあたっては、特許権著作権等の独占権による創作インセンティブを刺激するというメリットと、権利の制約を受ける(第三者への)デメリットを比較考量して、あくまでも社会全体の産業活性化の観点から行わなければならない。

したがって、知的財産権の正当な行使である限りは独占禁止法の適用は受けないものの、知的財産権の趣旨を逸脱する濫用は独占禁止法によって禁止され得る。たとえば、特許権者による独占実施、または限られたライセンス者との寡占実施にあって、価格カルテルやライセンス期間中の改良研究禁止、ライセンス期間満了後の当業参入禁止などは、公正な競争を妨げるものであり、各種の知的財産法による権利保護範囲を逸脱する行為として独占禁止法によって禁止され得る。

脚注

参考文献

  • 栗田誠 『実務研究競争法』、東京: 商事法務、2004年3月。ISBN 4-7857-1129-9

関連項目