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高級住宅街(こうきゅうじゅうたくがい)とは、その土地に歴史があり、区画が広い住宅が多くある、もしくは高級な雰囲気を持つ住宅街をいう。
目次
概要[編集]
定義は多分に主観的であり、下記の要件についても国や地域・時代によっても認識は多様となる。これらについては日本の場合、「敷地が広く」「建築の施工の質が高い建物」を「優良な住宅」とされ、「街区及び画地が整然とし、植生と眺望、景観等が優れ」「良好な近隣環境を形成する」等の要件を満たした地域を「居住環境の極めて良好な地域で従来から名声の高い住宅地域」とされている。それらの住宅地は一区画の面積が広いため税法上の優遇が受けられないケースが多く、そのため相対的に一区画あたりの地価は高いが、面積あたりの地価は低くなる傾向にある。
- 「優良な住宅」
- 敷地の広さについては国、地域などにもよるが、現代の日本の都市部では、少なくとも330㎡超の整形、平坦な土地は、この要件を満たしていると言うべきである。
- 建築の施工についての具体的な点については、各種専門資料等を参照されたい。建物の「設計」については触れられておらず、建物のデザインは必ずしも要件とされていない。
- 「良好な近隣環境」
- 「街区及び画地が整然」ということは、計画的に造成された住宅地域に該当するものは多く見られるが、上記「優良な住宅」の建つ画地、街区が整然としていることが要件となる。日本においては、相続等に際して画地の細分化(いわゆるミニ開発)等が見られるため、建物の最低敷地面積の規制がなされることもある(この規制は高級住宅地に限らない)。
- 「名声の高い」
- いわゆるブランドイメージが挙げられる。住宅地の地価はブランドイメージによっても左右されるが、高級住宅街についてはその傾向が顕著に見られる。そこに住んでいるということがステイタス的なイメージを帯びることも見られる。例えばアメリカのビバリーヒルズでは著名な映画スターが暮らしている、といった状況がそのまま高級住宅街のブランドを形成している。また同じくアメリカにおいては周りを塀や柵で囲み、警備員が24時間監視することで大変治安がよい住宅街(ゲーテッドコミュニティ)があるが、これもまた一種の安全というブランドである。
日本における高級住宅街[編集]
地価の高い東京圏や大阪圏の周辺に多い。億を超える物件が多い低層住宅地を指すが、近年ではマンション開発も活発である。
首都圏の高級住宅地[編集]
東京都心部に多く、東京都では高級住宅地が隣接している場合も存在する。それに対して神奈川県では横浜市及び鎌倉市の一部、埼玉県ではさいたま市浦和区一部区画の周辺というように東京都心以外では高級住宅地のエリアは多くはなく、地価の上昇も抑えられている。
- 東京都
明治時代以降、江戸市街のうち番町、麹町、紀尾井町、永田町、平河町、九段の皇居周辺、富士見、神田駿河台の内神田地域(以上千代田区)、赤坂、麻布、六本木、三田(以上港区)、市ヶ谷、信濃町(以上新宿区)、台東区上野桜木などの地域は、古来武蔵野台地(武蔵野台地東端に当たる地域)に位置しており、尚且つ旧江戸市街で(その他に屋敷跡に建てられたりするなどの条件を含んだ上で)それらを全て充たした地域として都内の住宅街としての人気が高かった。
大正から昭和にかけて、東京都市圏が西部に延伸する中で、新興住宅地が開発され、その中で、高級住宅地の概念にも変化が起こった。具体的には、東京中心地域では赤坂、松濤、城南五山等が、従来の高級住宅地と同等の高級住宅地としての認識を確立した。また、明治から大正にかけて、東京で初の分譲住宅地「新町住宅」が東京信託によって世田谷区桜新町・深沢に開発された。この後、関東大震災や人口増などの事由により郊外化が進み、渋沢栄一などを中心として1918年設立された田園都市株式会社(現在の東京急行電鉄株式会社の源流の一つ)により、1922年洗足地区(洗足田園都市)、翌年多摩川台地区(後の田園調布)が分譲された。[1]。
他にも、成城学園が開発した成城、玉川村が開発した等々力(以上世田谷区)、青葉台(以上目黒区)などが、昭和前期から開発され、今日では高級住宅地としての評価を得ている。
- 神奈川県
幕末から明治初期にかけて外国人居留地が置かれていた横浜市山手町が該当する。ほか逗子市披露山庭園住宅は1965年~1975年代に開発された高級住宅地である。藤沢市鵠沼は、高級別荘地として開発されたが、高級住宅地へと変化している。[2]
- 埼玉県
さいたま市浦和区の浦和駅周辺(岸町、高砂、常盤)や南区の武蔵浦和駅周辺(別所)が該当する[3]。県内の行政機関の殆どが集まることや、古くから「鎌倉文士に浦和画家」と言われたように、関東大震災後、多くの文化人が移住したことで有名である。
近畿圏の高級住宅地[編集]
近畿の高級住宅街は北摂山系とそれに連なる六甲山系の南斜面に多くみられる。一般に北摂・阪神と呼ばれる地区で、中でも神戸東部から芦屋・西宮にかけての山麓ラインに邸宅街は集中しており、高級住宅街の発祥とされる「日本一の長者村」と呼ばれた神戸市住吉村(現・神戸市東灘区)もその線上にある。これら邸宅街の多くは、阪急神戸線・宝塚線・甲陽線・今津線沿線に重なる。これは小林一三が主導した私鉄路線網の拡充と宅地開発が連動していることによる。
- 兵庫県
芦屋市では、六麓荘町のような昭和初期の邸宅街をはじめ、歴史ある芦屋川右岸(平田町、山芦屋町、三条町、川西町)、山手町、ほか岩園町、浜風町、浜芦屋町、松浜町、業平町、東芦屋町、東山町、加えて国立公園内の高級別荘地として造成された芦屋ハイランド地区(奥池南町)がある。 西宮市では、夙川右岸(雲井町、殿山町)、七園の一部(甲陽園、苦楽園、香櫨園)がある。 神戸市では、東灘区の山手には芦屋市より古くから邸宅街が形成された御影地区があり(御影・住吉は大正期には日本一の長者村と称され、現存する当時の邸宅も多く特別地方公共団体の一種である財産区も多い)、東灘区には岡本、そして灘区の山手の篠原地区、六甲台町がある。 宝塚市では、川面・御殿山・月見山・仁川高台・仁川高丸・千種・中州・雲雀丘などの邸宅街がある。 以上の地区は阪神間モダニズムの発祥の地となる。
姫路市では、姫路城北西の八丈岩山の南東麓に広がる新在家本町・北新在家・西新在家が高級住宅街とされている。
- 大阪府
邸宅街は北摂の丘陵地帯の南側に多く、箕面市の百楽荘・桜井・桜ケ丘・箕面・青松園地区、豊中市の東豊中町・緑丘・待兼山・上野坂・曽根・桜塚、吹田市の千里山、高槻市の南平台等がある。
大阪市以南で高級とされている住宅地は住吉区帝塚山・阿倍野区北畠、堺市西区の浜寺地区・上野芝、堺市東区の初芝・大美野がある。
- 京都府
京都盆地を取り囲む山々に高級住宅街が点在しており、中でも特に北部と東部に集中している。左京区の下鴨、松ヶ崎、岩倉、北白川、右京区の御室、嵯峨野、北区の北野、伏見区の桃山などが有名であり、その他市街中心部にも存在する。
- 奈良県
奈良市の学園前地区や生駒市の真弓地区は閑静な高級住宅街である。
日本以外における主な高級住宅街[編集]
イギリス[編集]
ロンドン中心部のメイフェア、ベルグラヴィア、チェルシー地区、リンカンズ・イン・フィールズなどがある。なおロンドン市内の高級住宅街の殆どが高級アパートメントであり、イギリス人のみならずロンドンに在住する富裕層が多数在住する。
フランス[編集]
パリの最高級住宅地はサン=ルイ島。貴族や富豪が暮らすパッシー地区(16区)、中産階級の多いアンヴァリッド周辺7区、8区。
アメリカ[編集]
広大な国土を持つアメリカにおいては大半の場合、高級住宅街は都心部から十数キロメートル以上離れた郊外に存在する。コネチカット州やニューヨーク都市圏のウエストチェスター。サンフランシスコを中心とするサンフランシスコ・ベイエリア都市圏ではサンフランシスコ市の緑豊かなプレシディオ地区、スタイリッシュな店が軒を並べるパシフィックハイツ地区、ゴールデンゲートブリッジ対岸のサウサリート、またサンフランシスコ・オークランド・ベイブリッジ対岸の大学都市であるバークレーの背後に広がる丘陵地帯バークレー・ヒルズ、その尾根づたいのケンジントン市やオークランドのクレアモント地区などがサンフランシスコ湾を見渡す好立地条件にあり一般的に高級住宅街として知られている。ロサンゼルス都市圏のビバリーヒルズ、ベルエア、サンタモニカ。ハワイ州オアフ島のカハラなども中心部から離れた場所にある。しかしニューヨーク市の中心部であるマンハッタンは数少ない例外であり、マンハッタン内には一戸建て(いわゆる「ハウス」)はもはや存在しない。高級アパートメントが立ち並び治安や環境の良い地域はマンハッタンではアッパー・イースト・サイドやグリニッジ・ヴィレッジが代表的である。また同じ東海岸に位置するマサチューセッツ州ボストンのビーコンヒルも数少ない例外の1つである。
経済力による住み分けの激しいアメリカは「豪邸が立ち並んでいるから高級住宅街」というわけではなく「どのような人(人種や職業など)が住んでいるか」が重要となる。事実、その国土の広さがもたらす地価の安さ及び人口密度の低さ故、立地次第では中流階級でも巨大な土地にプール付きの邸宅を構えることも可能である(日本の住宅と比べれば大半の一戸建てが「豪邸」と呼ぶに相応しいサイズである)。
日本の都市はごく一部の地域を除いてオフィス街と住宅街(マンション等)が隣接していることも多いが、アメリカにおいてはその区別は非常に明確で、マンハッタンなどの一部の例外を除き、殆どの都市において一定上の経済力を持つ富裕層で家族をもつ世帯は、概して郊外への移住を好む。主な理由として緑が多く閑静で好環境であること、貧困層が少ないため治安が良いこと、サイズの大きな家に住めること、などがある。デメリットとしては都心部への通勤時間が長くなることがあるが、アメリカの労働環境やアメリカ人富裕層の住宅事情を鑑みた場合、メリットがデメリットを遥かに凌いでいる。またこれらの郊外高級住宅街のいくつかは「ゲーテッド・コミュニティー」と呼ばれ、周辺を監視カメラなどを装備した塀で覆い、出入り口には警備員を常駐させたゲートを構えるなどして内部の治安を保つようにされている。
「レジデンシャル・セグレゲーション」と呼ばれるアメリカの経済格差による住み分けは激しく、ニューヨーク都市圏などの一部の例外(なおニューヨーク都市圏にも、郊外のウエストチェスターにスカースデールやハーツデールなどの高級住宅街がある)を除けば「郊外=富裕層 都心=貧困層」と考えても概ね差し支えない。例えば郊外で生活する為には車の購入は必須であり、賃貸住宅も少ない(アパートメントはほぼ皆無)ため必然的にローンを組める信頼度が必要なことなど「郊外族」にはそれ相当の収入が必要となる一方、都心部の場合公共交通機関が安価で利用でき、尚且つ賃貸住宅(主にアパートメント)に入居するので審査が軽い。もちろん多くの大都市の都心部にも富裕層は在住しているが全体的な比率や人口動性を見た場合、郊外の住宅街へと移り住むことがはるかに多い。
カナダ[編集]
西部のブリティッシュコロンビア州、バンクーバー市を中心とするバンクーバー都市圏では、ダウンタウンの郊外北西に位置するウェストバンクーバー市南部が、大富豪の巨大邸宅が連なるエリアとして知られている。
ブラジル[編集]
サンパウロにおける高級住宅街として、サンパウロ州知事公邸やサンパウロ競馬場、高級スポーツクラブが所有する有名サッカークラブ「サンパウロFC」の本拠地があるモルンビーがある。
香港[編集]
香港島では、太平山山頂付近が映画スターや大富豪の豪邸が集まる高級住宅街であり、映画スターの家を見るためにタクシーなどで訪れる部外者も多い。香港島の比較的海抜が高い地域には、香港大学周辺の半山区(半山區)と呼ばれる地域など歴史ある住宅街が多い。これはイギリスの植民地時代に香港に居住するイギリス人が湾岸部の暑さを避けるために山の上に家を建て始めたのが始まりである。郊外の新界では、沙田区の火炭駅西側から九肚山にかけてのエリアが返還後の香港屈指の新興高級邸宅街として知られている。離島部では、ゴルフやテニスなどを楽しみたい富裕層の外国人が土地のある郊外で高級住宅に多く住んでいる例として、大嶼山の愉景湾が有名である。
台湾[編集]
古くから外国人が居住した台北市の士林区天母が高級な住宅街の雰囲気をかもし出しているとして有名。日本の旅行ガイドブックでも紹介されている。
韓国[編集]
ソウル特別市の都心から漢江をはさんで南側に位置する江南区、瑞草区、松坡区などが知られている。
脚注[編集]
- ↑ 多摩川誌 第8編 流域の経済と都市化 第4章 集落・都市 第3節 下流地域 3.2 住宅地域の開発 3.2.1 郊外電鉄と田園都市
- ↑ () 高級別荘地から高級住宅地へ 湘南で屈指のステイタス「鵠沼」 ダイヤモンドオンライン [ arch. ] 2014-05-05
- ↑ http://town.nomu.com/machi-colmn/urawa 野村不動産アーバンネット 2015-05-10閲覧。