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2020年1月17日 (金) 22:24時点における最新版
『銀河英雄伝説』(ぎんがえいゆうでんせつ)は、田中芳樹によるSF小説。また、これを原作とするアニメ、漫画、コンピューターゲーム等の関連作品。略称は『銀英伝』(ぎんえいでん)。 本編だけで一千万部突破を記録したベストセラーで現在もその記録を伸ばし続けている。
目次
概要[編集]
銀河系を舞台に、銀河帝国と自由惑星同盟、およびフェザーン自治領(形式的には、フェザーンも銀河帝国の一部)の攻防と権謀術数を、ふたりの主人公ラインハルト・フォン・ローエングラムとヤン・ウェンリーを軸に描くスペースオペラ。道具立てはSF的だが「後世の歴史家による記述」という体裁を取っており、文体はむしろ歴史小説に近い(アニメ版においても歴史教科書に載っている写真の様な描写が幾つも見受けられる)。
メディア展開の結果と徳間デュアル文庫版(刊行リスト参照)の発刊を理由として、本作がライトノベルに分類されることもある。
本作の原形となったのは、1970年代の末に田中芳樹(当時は李家豊〔りのいえ・ゆたか〕名義)が幻影城から新書ノベルスとして出版する予定で書き進めていた『銀河のチェス・ゲーム』である。この作品は幻影城の倒産によって未完のまま中断したが、のちに徳間書店の編集者がその原稿を読み、序章にあった本編より数世紀前のエピソードを膨らませて描くよう勧めた。
1982年11月、徳間書店の徳間ノベルズより『銀河英雄伝説』が刊行された。これは本編第1巻「黎明篇」に当たるが、本作に先立ち同社から刊行された著作『白夜の弔鐘』の売り上げ不振もあり、この時点では2巻以降を出すかどうかは未定(売れ行き次第)だったため、初版には巻数及びサブタイトルが入っていない。さいわい第1巻が増刷されたため第2巻が刊行されることとなり(これに伴いローマ数字で巻数表記が付くようになった)、当初はさほどの売れ行きではなかったものの、3巻を皮切りに人気に火がつき、1987年までに本編全10巻が書き下ろし刊行された。1988年、読者の支持によりその年の星雲賞を受賞。
SF(サイエンス・フィクション)に分類される作品だが、科学技術的な描写は重んじず、対立する陣営のイデオロギー、人物像、権謀術数、歴史の流れを正面に出し、「後世の歴史家」の観点から叙述することで、さながら架空の歴史小説であるかのような体裁をとっている[1]。作者はのちに架空の歴史小説『アルスラーン戦記』を発表することになるのだが、この『銀河英雄伝説』においても、作者の歴史・文学の知識は色濃く反映されており、中国史をはじめとする歴史上のエピソードがしばしば顔をのぞかせている。また、作者が本作品シリーズにて首尾一貫「超能力」や「異星人種族」「未知のエネルギー」「戦闘用ロボット」「アンドロイド」といった世のありようを変えるSF的な要素を一切持たせず、むしろ禁忌としたのも、いずれも、史実、あるいはそれを基にした過去の文学作品を念頭に、人間同士の営みから生み出される歴史ドラマとしての構成を意図したためである(そのせいか、SFブーム以後も本作の人気は続いた)。
作中、兵器の名称などには、銀河帝国側は北欧神話、対する自由惑星同盟側はギリシア・オリエント・ラテンアメリカ・中国など世界各地の神話からの引用が数多くみられる。また、人名、都市名などの名詞は帝国側はゲルマン風に統一され、一方の同盟側はさながら多民族国家のアメリカのごとく雑多なものとなっており、本作品に一種独特の雰囲気を与えている。これもその背景にあるものを想像させるために用意された舞台装置の一例といえる。
本編の他に外伝があり、外伝は1984年から1989年にかけ、『SFアドベンチャー』に連載または同誌増刊号に一括掲載された長篇が4本(いずれも新書ノベルス1冊分)、同誌読み切りの短篇4本に、漫画の原作である短篇『黄金の翼』がある(これら短篇は長らく単行本未収録であったが、徳間デュアル文庫版で1冊にまとめられた)。外伝は全6冊分が執筆されると公表されているものの、現時点で最後の1冊分が書かれる気配はない(ただし、『アルスラーン戦記』のように、数年間刊行が停止して読者からは休刊、終刊したと思われた後、続刊が出版された例がある)。
本作はベストセラーかつロングセラーとなり、刊行以来重版増刷が繰り替えされてきた徳間ノベルズ版の第1巻は初刊からほぼ20年目にして100刷の大台を超える。また、新書ノベルス版以外にもハードカバーの愛蔵版、徳間文庫による文庫版、2000年から2003年にかけて“ファイナルバージョン”と銘打って刊行された本編全20巻、外伝全9巻、これにハンドブックを加えた全30巻の徳間デュアル文庫版(巻数が増しているのは従来の1巻分を2分冊にしている為)など、バリエーション豊富な装丁による書籍が刊行。いずれも息長く売れ続け、一部で「お化け小説」とも言われている本作の人気維持に貢献している(各版の主な違いについては刊行リストの項を参照されたい)。
2007年2月からは徳間書店から東京創元社に版元を変え、創元SF文庫レーベルでの新装版リリースも開始されている。
あらすじ[編集]
西暦2801年を宇宙暦1年とした遥かな未来。 その勢力圏を銀河系にまで拡大させた人類は人類統一政府である銀河連邦を成立させるが、その政治体制は長い年月を経て腐敗していった。 社会の閉塞感を打破する強力な指導者を民衆が求める中、宇宙海賊を壊滅させた連邦軍の英雄ルドルフ・フォン・ゴールデンバウムは、やがて政界に進出すると民衆の圧倒的支持を集めて独裁政権を確立し、首相と国家元首を兼任して終身執政官を自称。 宇宙暦310年に至って、「神聖にして不可侵たる」銀河帝国皇帝に即位して銀河帝国を建国、新たに帝国暦1年とした。 みずから行使する正義を信じてうたがわないルドルフは、共和主義者を中心とした反対派を弾圧・粛清し、議会を解散して専制政治へと移行させ、その支配は苛烈を極める一方、自身を支持する「優秀な臣民」に対しては特権を与え、帝国を支える強固な貴族階級を形成させた。 ルドルフの死後も、至高の権力をえるのはその子孫にかぎられ、世襲だけが権力の移動のあるべき姿になったかにみえた。
共和主義者たちは奴隷階級におとされ、ルドルフの死後も苦難の日々を送っていたが、帝国歴164年、アーレ・ハイネセンを中心として、みずから建造した宇宙船により帝国からの逃亡に成功。 銀河系の深奥部に歩を踏み入れ、指導者ハイネセンを事故で失うなど半世紀に及ぶ苦難の道程の末、帝国歴218年、ついに安定した恒星群を見いだし、そこで自由惑星同盟を建国。 民主共和政治を礎とする銀河連邦の正当な後継者との誇りから宇宙歴を復活させ、勤勉さと情熱によって国家体制をととのえ、多産を奨励し、急速に勢力を拡大させた。
やがて帝国ではルドルフの死後3世紀を経て、さしも強固だった体制のたがもゆるみ、貴族たちは権力闘争に明け暮れ、規律や統制は弱まり、恒星フェザーン星系においては、地球出身の大商人レオポルド・ラープの異常なまでの説得、そして賄賂を伴う工作により、皇帝の主権下ながらも内政に関してほぼ完全な自治権を有した商業都市国家型のフェザーン自治領が形成された。一方、自由惑星同盟ではその存在が帝国に知れわたると、権力闘争に敗れた貴族を「来る者は拒まず」の精神で受け入れたことで次第に変質していくこととなり、建国当初の理念は薄れていった。
こうして人類は、専制政治を敷く銀河帝国と、民主共和制を唱える自由惑星同盟、および商業を中心としたフェザーン自治領の3つの勢力に分かれ、フェザーンがその経済力と政治工作により勢力を拡張する中、帝国-同盟間では慢性的な戦争状態が150年にわたって続いていた。 この長く不毛な戦いが永遠に続くかに思われていた宇宙暦700年代末、2人の英雄が出現し、人類の歴史は大きく展開し始める。
宇宙暦776年/帝国暦467年、銀河帝国において、貴族とは名ばかりの貧家に生まれたラインハルト・フォン・ミューゼルは、敬愛する姉のアンネローゼが皇帝の後宮に納められた事で、ゴールデンバウム王朝への憎悪を抱くようになった。ラインハルトは、彼女を取戻すだけの力を得るために親友のジークフリード・キルヒアイスとともに帝国軍幼年学校に入学して軍人となる。やがて、腐敗したゴールデンバウム王朝を打倒し「宇宙を手に入れる」という野望を抱いたラインハルトは、その天才的な軍事的才能とキルヒアイスの補佐によって武勲を重ね、驚異的なスピードで昇進していく。ローエングラム伯爵家の家名を継ぎ、ラインハルト・フォン・ローエングラムとなった彼は、ついに20歳にして帝国元帥に就く。後に「常勝の英雄」「獅子帝」と呼ばれた彼の元には、現体制に不満を抱く若き才能が集まり、腐敗した体制のもと既得権益をむさぼる貴族からの反発の中にあって確固たる勢力を確立する。
一方、自由惑星同盟では、本来は歴史研究家志望であったものの、両親の死により歴史を無料で学ぶ方便として士官学校に入学し、不本意ながらも軍人になったヤン・ウェンリー(宇宙暦767年生まれ)が、本人の意思とは裏腹に歴史の表舞台に担ぎ上げられようとしていた。ヤンは暴力機関としての軍隊を嫌い退役生活を夢見ながらも、その軍事的才能によって望まぬ武勲を重ね、やがて提督に抜擢された。後に「不敗の名将」「魔術師ヤン」「奇跡のヤン」と評されたヤンは、母国の政治体制の腐敗を嘆き、戦争への懐疑を抱きながらも数々の戦いに身を投じることになる。
ラインハルトとヤンは、アスターテ会戦(アニメ版では第4次ティアマト会戦)において初めて対峙し、お互いの軍事的才能を認め合うこととなる。 その後、ヤンは、難攻不落と言われた帝国軍の要衝・イゼルローン要塞を、知略によってわずか半個艦隊で、しかも味方の血を一滴も流す事無く攻略。 ヤンの劇的な勝利により、同盟軍はさらなる勝利を求めて帝国領内への侵攻を試みるが、アムリッツァ星域においてラインハルトの前に壊滅的大打撃を受けて)敗退した。
ラインハルトはこの大勝利によって立場を強化し、さらに皇帝崩御の後継者争いに端を発した内戦によって、帝国内の門閥貴族勢力を駆逐して帝国の実権を掌握する。だがその過程で、自分の半身も同様の存在であったキルヒアイスを自らの過失によって失い、それにともなって姉・アンネローゼにも決別を告げられる。ラインハルトにとって余りにも大きなこれらの代償は、以降の彼の覇業に大きな影を落とす事になる。
一方、帝国領侵攻作戦で大敗を喫した自由惑星同盟は、さらにクーデターによる内乱で著しく国力を疲弊させることとなる。そして、国防は難攻不落のイゼルローン要塞と、その総責任者となったヤンの知略に頼る以外なくなっていった。ヤンは客観的事情を緻密に分析することでラインハルトの戦略をたびたび看破しながらも、自らは文民統制を固持し続け、状況は自由惑星同盟にとって憂慮する方向へと進んでいく。
銀河帝国の実権を手中におさめたラインハルトは、強大な敵と戦うことによってしか自らの「心の飢え」を満たしえなくなっていた。そして、自由惑星同盟を征服するために、宇宙暦798年/帝国暦490年、自由惑星同盟への大規模な侵攻作戦「神々の黄昏(ラグナロック)」を発動する。それは、長年にわたって二大勢力が戦いを繰り広げてきたイゼルローン回廊ではなく、同盟領とのもう一方の通行路であったフェザーン回廊を通過するという意表を突いたものであった。
遠くイゼルローン要塞にあり、様々なしがらみを抱えながらもそれを迎え撃とうとするヤン。 ここに「常勝」と「不敗」の対決が始まり、さらに多くの会戦、陰謀、事件が複雑に絡み合って、銀河の歴史はさらに加速していく。
物語の世界[編集]
- 世界観
物語の舞台となる未来の宇宙、人類は恒星間航行の実現により太陽系外に進出し、銀河系の3分の1にまでその居住圏を広げている。地球はすでにその繁栄と人類社会の中心としての地位を失い、今では帝国領の辺境で半ば忘れ去られた存在である。銀河帝国と自由惑星同盟の間には、航行不能な広大な宙域が広がっており、その中で通行可能なのはイゼルローン回廊とフェザーン回廊と呼ばれる狭い宙域のみ。フェザーン回廊にはフェザーン自治領が存在するため、イゼルローン回廊とその周辺部における帝国軍と同盟軍の戦争が150年の長きにわたり慢性的に続いている。
人口は、かつての銀河連邦の最盛期には3,000億人を数えるほどだったが、銀河帝国の圧政とその後の消耗戦的な戦争の中で、帝国250億人に同盟130億人にまで減少している。両国の社会が疲弊する一方で、フェザーンは一惑星でありながら20億人を誇り、帝国・同盟との交易により経済も潤っている。医療技術は飛躍的に進歩し、癌などはすでに不治の病ではなくなった。しかし、人工器官やタンクベッド睡眠などの技術は戦争継続のために利用されており、医療技術の発展が兵器開発と並んで戦死者数をさらに拡大させる、という皮肉な状況となっている。
人々の生活環境は居住する星系により様々で、フェザーンやハイネセンなど多数の住民を抱える惑星では、超高層建築技術なども発達し非常に未来的な生活環境が享受されている。一方、辺境部などでは人口も少なく、帝国では領主である貴族の下で中世的な生活を強いられている人々も多い。都市部では立体TVなどが発達し、フライングボールというスポーツが帝国・同盟問わず人気の娯楽となっている。
作品世界では、宗教の概念が著しく衰退しているとされる。かつて地球上を覆った破滅的な戦争において、救世主たる神がついに現れなかったからでもあるが、その結果道徳的な規範が脆く社会の退廃が進みやすい側面を持つ。一方で、帝国人にとってのヴァルハラの思想など、一定の宗教的概念は存在する。また近年、人類の発祥地である地球を信仰の対象とした地球教が、社会に急速な浸透を見せているとされる。その本質と実態が、物語の展開にも大きく関わってくる事になる。
- 暦
作中では、西暦の延長にあたる「宇宙暦・帝国暦・新帝国暦」という暦が使用されている。宇宙暦は銀河連邦が成立した時、帝国暦は銀河帝国が成立した時、新帝国暦はローエングラム王朝が成立した時、をそれぞれの元年としている。また、宇宙暦は帝国暦制定時に廃止されたが、自由惑星同盟成立時に復活している。
簡易な換算式を示すと、西暦3599年=宇宙暦799年=帝国暦490年=新帝国暦1年、となる。
- 作品構成上の矛盾点
作品中に登場する人物や艦船類は、作者も把握しきれないほどの膨大な数に及び、それらが複雑に絡み合う展開が特徴である。しかしそのため、作品中には誤記も含め、多くの矛盾点が読者を中心に指摘されてもいる。中には作者も認める矛盾点、設定上の都合もあり、その後の各文庫版やアニメなどのメディア展開の中で修正されている箇所もある。
- まず作品構成上の地理的前提として、銀河帝国と自由惑星同盟の間には、航行不能な広大な宙域が設定されている。第8次イゼルローン要塞攻防戦における、ガイエスブルグ要塞の移動要塞化(ワープエンジン搭載)について、読者から「そんな兵器が製造可能なら、一気に自由惑星同盟の首都星ハイネセン近辺まで突撃させ、同首都星へ奇襲・攻略、そして戦争終結を目指すのに用いても良かったのでは」との指摘が続出した。作者の田中芳樹本人も「実は、その通りだったのですが(笑)」とガイド本の内の一冊にて率直に認め、告白している。
- なおアニメ版では「イゼルローン回廊内の磁場の影響で2度目のワープは不可能」と説明されている。また雌伏篇においては、ヤンが「もし登場したら帝国と同盟の均衡を崩しうる新技術(つまりこの時点では実現されていない技術)」の例として、「自国領からイゼルローン回廊を飛び越えて相手の中心部に大量の艦隊と補給物資を移送できる、1万光年以上の長距離ワープ」を挙げており、ガイエスブルグをハイネセンに直接ワープさせる技術は確立されていないという理由付けをしている。
- 作者が認める作品構成上のもう一つの前提として、登場する各惑星上での時間変化が、地球の北半球の同緯度・同経度のそれと同じ形に全て統一されている事が挙げられる。物語の中の時間軸は、現実世界の延長にあたる宇宙標準時で統一されているが、各惑星の自転・公転周期が全て地球と同じ24時間・365日とは限らず、また昼夜や四季の変化なども本来まちまちのはずである。原作では、序盤でこの点について説明する記述も見受けられるが、複雑になりすぎるためか、途中から設定として統一されたようである。すなわち、昼夜や四季の変化に違いはなく、例えば午前0時はどの惑星の地点でも深夜であり、1月なら真冬として描かれているのである。
- イゼルローン要塞を恒星アルテナの周囲を公転するとしているが、OVAでは、シュターデン率いる貴族連合とミッターマイヤーがアルテナ星域で対戦しており矛盾が生じている。ボーステック社のPCゲームなどでは、ミッターマイヤーたちが戦場としたのがアルテナ星域であり、イゼルローン回廊内部の恒星は無名(少なくともアルテナという名前ではない)の様子である。
- また初期に発刊された新書版では、明らかに設定などに前後で矛盾する箇所があり、後の文庫版などでは可能な限り修正されている。当然物語の公式設定となるのは、その修正版の方である。
- ラインハルトの乗艦ブリュンヒルトの艦長は初代艦長シュタインメッツの後をザイドリッツが引き継いだと記されているが、実際はシュタインメッツの後にロイシュナー、ニーメラーの2人の艦長が存在している(いずれも短期間ではあったが)。つまり正しくは、ザイドリッツは4代目艦長である。
- ユリアンは帝国首都星オーディンへは行ったことが無いという記述があるが、実際には帝国軍による地球教討伐作戦の後にオーディンを訪れている。
- ゲオルク2世、ルードヴィッヒ3世という銀河帝国の過去の皇帝の名前が原作のセリフに登場するが、別の巻で書かれている歴代皇帝一覧によればそうした名前の皇帝は存在しない。アニメでは各セリフの変更により、一応矛盾は生じていない(ゴールデンバウム王朝の歴代皇帝については、ゴールデンバウム王朝歴代皇帝の項を参照)。
- 版によってはトリューニヒト派のベイ准将が少将に昇進したという記述がある。
- 物語開始時において自由惑星同盟の人口は130億とされているが、長征一万光年で惑星ハイネセンに到達したときに16万人だったとする初期人口から計算すると、同盟の僅か270年という歴史でこの人口に到達するのは不可能と思われる。270年を10世代として計算した場合、1世代の全ての夫婦が4人の子供を持ったと仮定してもせいぜい2~3億程度である。作中では多数の亡命者が同盟の地を踏んだとされているが、この亡命者とその子孫が残り127億を埋めるとするのは、戦時中における国家体制・秩序維持の観点から無理がありすぎる。
- さらに無理があるのは帝国側の人口で、ルドルフによる建国時には3000億いた人口が、約500年後の物語開始時には一割弱の250億にまで減少している。おそらく古代中国の戦乱期の人口急減を参考にしたと思われるが、医学の進歩した未来に伝染病が流行するわけもなく、同盟との戦火も帝国本土には及んでおらず、原因は不明のままである(ルドルフの帝国史上最大の弾圧・粛清でさえ、死者は「わずか」40億人に過ぎなかった)。
- フリードリヒ4世崩御の後、オットー・フォン・ブラウンシュヴァイク及びウィルヘルム・フォン・リッテンハイム3世が自らの娘を女帝として即位させようとした際、「前例もある」とゴールデンバウム王朝でかつて女帝が存在したと思わせる記述があるが、実際には後に即位した最後の皇帝であるカザリン・ケートヘン1世以外女帝は存在しない。ただし、この記述の場合は「若すぎる皇帝と、実権を握る外戚」という構図に関しての「前例」であると解釈することもできる。
物語のその後の世界[編集]
本作は、ラインハルトの死をもって完結している。田中は後日談も含めた続編を書かない事を宣言している。実際、外伝は全て本編以前のエピソードとなっている。
本編や設定資料中からわずかに読み取れるその後展開について、明らかな(あるいは確実と思われる)事柄を参考までに挙げると以下のようになる。
- 皇帝ラインハルトの国葬では、帝都フェザーンの仮皇宮上空にブリュンヒルトが追悼を表し降下。ラインハルトの死後、その銅像は自由な建立が許されなかった(ラインハルトが生前に指示)。
- アレクサンデル・ジークフリードがローエングラム王朝第2代皇帝に生後まもなくして即位し、ヒルダが摂政皇太后となった。ラインハルトの遺言により、ヒルダの名において6人の上級大将が元帥に昇進し、ウォルフガング・ミッターマイヤーは首席元帥となった。
- イゼルローン要塞が帝国に返還され、代わりに惑星ハイネセンを含むバーラト星系に民主共和政体の存続が認められた(バーラト共和政府)。
- ヤン・ウェンリーの遺体がハイネセンに帰還、埋葬された模様。
- ユリアン・ミンツとカーテローゼ・フォン・クロイツェル(カリン)はハイネセンに移り、夫婦またはそれに準ずる関係になった。また、ユリアンはしばらくの間バーラト共和政府の指導者の一人として責務をこなした。
- ユリアン・ミンツやエルネスト・メックリンガーらが、この激動の時代に生きた者として多くの証言・回顧録を、後世の歴史家に提供する事になった。ダスティ・アッテンボローは、回想録『革命戦争の回想』を残したようである。またユリアンは「ヤンの業績を盗んだだけだ」という批判が上がるが、それに対しアッテンボローがユリアンを擁護する発言を残している。
- ラインハルトの生前には完成しなかったローエングラム王朝の新皇宮「獅子の泉(ルーヴェンブルン)」が完成し、ミッターマイヤーら建国の功臣で創成期を支えた7人の元帥が、後世「獅子の泉(ルーヴェンブルン)の7元帥」と呼ばれた。
- 本編終了の2年後、ウルリッヒ・ケスラーがマリーカ・フォン・フォイエルバッハと結婚。後年『ケスラー元帥評伝』という書物が出版された。
- レオポルド・シューマッハが、シュトライトの推薦で一時帝国軍准将となるが、その後宇宙海賊との戦闘中に行方不明になった。
- レオポルド・シューマッハの証言によると、エルウィン・ヨーゼフ2世の死亡説はランズベルグ伯アルフレッドの創作と偽装による誤報で、ヨーゼフ2世はアルフレッドの元から逃走して行方不明になっており、その没年は不明となっている。
- カール・エドワルド・バイエルラインは、後世「ミッターマイヤーの後継者。有能で誠実で清廉な軍人」と評価される人物になった。
- 旧帝国辺境で長く放置されていたイオン・ファゼカス号が、小惑星帯博物館に保存される事になった。
- ヒューベリオンが撃沈されたシヴァ星域でティーポットが回収され、ユリアンは否定するもヤン・ウェンリーの遺品として戦史博物館に展示された。
- ベルンハルト・フォン・シュナイダーがウィリバルト・ヨアヒム・フォン・メルカッツの遺族の元へ行きその死を伝える。
- ドミニク・サン・ピエールは新帝国暦3年6月に帝国憲兵隊に逮捕されている。そしてその2ヶ月後、つまり新帝国暦3年8月に起訴猶予で釈放され、その後消息を絶った。
戦争小説としての側面とその設定[編集]
上記概要にもあるように、この作品は未来の宇宙を舞台にした架空の歴史小説という体裁をとっている。様々な登場人物が織り成す、政治や思想を絡めた人間ドラマが主体であるが、一方で異なる勢力による宇宙(銀河系の一部)を舞台にした戦争小説としての側面も持つ。作品中では、銀河帝国と自由惑星同盟(あるいは共和主義勢力)の2大勢力による戦いの数々が描かれており、主人公的存在であるラインハルトとヤンも軍人である。
作品中における戦争描写は基本的に、宇宙空間での数千~数万隻の艦艇同士による、ビームやミサイル兵器等を使用した艦隊決戦が中心である。一度の会戦には概ね数百万人単位の将兵が参加し、司令官である提督は後方からではなく前線の旗艦級戦艦から用兵を指揮する。個人・個艦を主体とする現代的な散兵戦法ではなく、近代以前の陣形を重視した集団戦法が用いられており、いかなる大軍も陣形を崩す、もしくは統率を失わせることで烏合の衆と化し、消滅したも同然になる。また局地的には小型戦闘艇(帝国軍側はワルキューレ、同盟側はスパルタニアン)による近接戦闘や、地上・屋内での人間同士による白兵戦も行なわれる。これはミラーコーティングを施された装甲服には光学兵器の効果が薄く、実体弾系の武器や打撃が有効なためでもある。またゼッフル粒子というアイテムによって火器を用いた戦闘ができない状況を作り、打撃系武器での戦闘がしばしば行われる(本作設定における装甲服は、重火器ミサイル等の武装は行わず、打撃系武器の威力を高めるためのパワーアシストを行っている様子)。かつて人類を滅亡の淵に追い込んだ地球時代の戦争の教訓から、惑星上での熱核兵器の使用はタブーとされている。小説版では総じて宇宙空間という設定にも関わらずに、戦場は平面世界で捉えられており、3次元的な会戦となると本編にはほとんど登場せず、外伝などで追加されているのにとどまる。アニメ版では艦隊布陣や艦隊決戦等で、立体的な布陣・戦闘描写で描かれている(紡錘陣形は文字通り、旗艦を中心とした紡錘状の布陣を行っている)。また、小説版でもイゼルローン回廊を舞台とした戦いでは立体的な戦術・陣形が用いられることが多い。
ワープや核融合等のテクノロジーが設定上の前提となっているが、例えば「ガンダムシリーズ」のモビルスーツのような高機能なロボット兵器や、人工知能を備えたアンドロイド等は登場しない(等身大を越えるパワードスーツが実用化されたものの、その後廃れた事が、作中に記述されている)。また、異星人や超能力、神秘主義的な作用を伴う力も一切介在しない。あくまで宇宙に進出した人間同士の古風で伝統的な戦闘様式による戦いを描いている。
- 戦役
- 艦隊
作品で『一個艦隊』と呼ばれる存在は、通常は約1万5000隻程度の宇宙艦艇で編成されている[2]。これが戦力の基本となり、原則として中将以上の階級の者が艦隊司令官の任に就く[3]。一個艦隊は司令官の直属部隊と幾つかの分艦隊で構成されている。分艦隊は原則として約2000~2500隻程度の規模を有し、准将以上が指揮を執る[4]。また分艦隊が数百隻程度の戦闘グループに分けられて、准将が指揮を執る場合もある[5]。
- 艦船
- 要塞
艦隊決戦が描かれるこの作品では、その軍事拠点となる宇宙要塞が登場する。特にイゼルローン要塞は、地理的に重要拠点であり、ヤン一党の根拠地ともなる事から、作品における主要な舞台の一つである。詳しくは銀河英雄伝説の舞台#要塞を参照。
- 星系、星域
この作品では、各恒星系、宙域を表す言葉として星系、星域という言葉で表現される。一部例外として回廊という呼び名を使っているものもある。主な星系、星域は、ティアマト星域、アスターテ星域、アムリッツァ星域など。詳しくは銀河英雄伝説の舞台#星域・天体を参照。
初出[編集]
本編(本伝)[編集]
全て徳間ノベルズによる書き下ろし刊行(1982年-1987年)。刊行リストの項を参照。
外伝[編集]
短篇[編集]
- ダゴン星域会戦記
- 「SFアドベンチャー」1984年9月号。1984年9月1日発行。銀河英雄伝説外伝としては初めて発表された作品。挿絵は横山宏。
- 白銀の谷
- 「SFアドベンチャー」1985年6月号。1985年6月1日発行。挿絵は横山宏。
- 汚名
- 「SFアドベンチャー」1985年7月号。1985年7月1日発行。挿絵は横山宏。
- 朝の夢、夜の歌
- 「SFアドベンチャー」1986年7月号。1986年7月1日発行。挿絵は横山宏。
以上4篇は、『銀河英雄伝説読本』(らいとすたっふ編、1997年、徳間書店 ISBN 4198606617)に初収録。
- 黄金の翼
- 1986年、道原かつみの漫画用に原作として書き下ろされたもので、この漫画はアニメージュコミックスから発刊された(発行日:1986年8月10日)。執筆当時は小説単体での発表予定がなかったため、1992年に本編シリーズの愛蔵版の購入者特典として配布されたのが初出と言える。また、単行本では短篇集『夜への旅立ち』(徳間ノベルズ、1995年、ISBN 419850184X)に初収録された。
長篇[編集]
- 星を砕く者
- 「SFアドベンチャー」1985年11月号、12月号、1986年1月号に各3章ずつ掲載された。挿絵は横山宏。
- ユリアン・ミンツのイゼルローン日記
- 「SFアドベンチャー」1987年1月号、2月号、3月号に各3章ずつ掲載された。挿絵は道原かつみと笠原彰。なお、徳間ノベルズ収録時に『ユリアンのイゼルローン日記』に改題されている。
- 千億の星、千億の光
- 「SFアドベンチャー」1987年12月増刊号「銀河英雄伝説特集号」に一括掲載された。挿絵は落合茜と是枝みゆき。
- 螺旋迷宮(スパイラル・ラビリンス)
- 「SFアドベンチャー」1989年4月号、5月号、6月号に各3章ずつ掲載された。挿絵は薙あかね。長篇としては最後の銀河英雄伝説外伝であることが、当時のSFアドベンチャーのフーズフー欄でも明記されている。
刊行リスト[編集]
2007年3月時点までに、既に絶版になってるものを含め、徳間ノベルズ版、愛蔵版、徳間文庫版、徳間デュアル文庫版、創元SF文庫版、以上5つの版が刊行されている。以下では、各版の刊行リストを掲載するとともに、各版の主な違いを述べる。
徳間ノベルズ(1982年 - 1989年)[編集]
最初に書籍にまとめた版。本編シリーズは書き下ろしで1982年から1987年にかけて、外伝シリーズはSFアドベンチャー誌に先行掲載されたものを収録する形で1986年から1989年にかけて、新書版で発行された。
本編の第1巻については、初版は巻数表記と副題がなく、2刷以降でローマ数字による巻数表記と副題が付くようになり、さらに後に巻数表記がアラビア数字に改められた。第2巻から第5巻については、当初はローマ数字による巻数表記であったが、第6巻刊行に前後して巻数表記がアラビア数字に改められた。
多数の重版が成された為、現在でも一応入手可能だが、新品入手はまず不可。出版時期によって印刷技術の向上により初期の版に比べ後期の版は活字がより明瞭となり読みやすくなっている(装丁に変化は無し)。
5巻と10巻に作者の後書きが記載されている。
本編(本伝)[編集]
- 銀河英雄伝説(I 黎明篇、1 黎明篇)(1982年11月30日発行)ISBN 4-19-152624-3
- 銀河英雄伝説 II 野望篇(2 野望篇)(1983年9月30日発行)ISBN 4-19-152790-8
- 銀河英雄伝説 III 雌伏篇(3 雌伏篇)(1984年4月30日発行)ISBN 4-19-152894-7
- 銀河英雄伝説 IV 策謀篇(4 策謀篇)(1984年10月31日発行)ISBN 4-19-152978-1
- 銀河英雄伝説 V 風雲篇(5 風雲篇)(1985年4月30日発行)ISBN 4-19-153068-2
- 銀河英雄伝説 6 飛翔篇(1985年10月31日発行)ISBN 4-19-153151-4
- 銀河英雄伝説 7 怒濤篇(1986年5月31日発行)ISBN 4-19-153256-1
- 銀河英雄伝説 8 乱離篇(1987年1月31日発行)ISBN 4-19-153384-3
- 銀河英雄伝説 9 回天篇(1987年5月31日発行)ISBN 4-19-153445-9
- 銀河英雄伝説 10 落日篇(1987年11月15日発行)ISBN 4-19-153530-7
カバーイラスト:加藤直之(全巻)、本文挿絵:加藤直之(1~5巻)、鴨下幸久(6~10巻)
外伝[編集]
- 銀河英雄伝説 外伝1 星を砕く者(1986年4月30日発行)ISBN 4-19-153236-7
- 銀河英雄伝説 外伝2 ユリアンのイゼルローン日記(1987年3月31日発行)ISBN 4-19-153418-1
- 銀河英雄伝説 外伝3 千億の星、千億の光(1988年3月31日発行)ISBN 4-19-153634-6
- 銀河英雄伝説 外伝4 螺旋迷宮(スパイラル・ラビリンス)(1989年7月31日発行)ISBN 4-19-153995-7
カバーイラスト:道原かつみ(全巻)、笠原彰(2巻以外)、本文挿絵:道原かつみ(全巻)、笠原彰(全巻)
愛蔵版(1992年、1998年)[編集]
1992年に、徳間ノベルズの第1巻発行10周年を記念した企画の一環として、徳間書店から箱入りハードカバーの愛蔵版として本編シリーズが全5巻で刊行された。1998年には、ほぼ同装丁で外伝も刊行されている。こちらは徳間文庫版の刊行に合わせたものである。いずれも限定生産であり、現在新・古品ともに入手困難。
本編(本伝)[編集]
- 愛蔵版 銀河英雄伝説 全5巻セット(1992年6月30日発行)ISBN 4-19-124890-1
- 愛蔵版 銀河英雄伝説 I(1992年6月30日発行)ISBN 4-19-124889-8
- 黎明篇と野望篇を合冊
- 愛蔵版 銀河英雄伝説 II(1992年6月30日発行)ISBN 4-19-124892-8
- 雌伏篇と策謀篇を合冊
- 愛蔵版 銀河英雄伝説 III(1992年6月30日発行)ISBN 4-19-124893-6
- 風雲篇と飛翔篇を合冊
- 愛蔵版 銀河英雄伝説 IV(1992年6月30日発行)ISBN 4-19-124894-4
- 怒濤篇と乱離篇を合冊
- 愛蔵版 銀河英雄伝説 V(1992年6月30日発行)ISBN 4-19-124895-2
- 回天篇と落日篇を合冊
外伝[編集]
- 愛蔵版 銀河英雄伝説外伝 全2巻セット(1998年3月31日発行)ISBN 4-19-860818-0
- 愛蔵版 銀河英雄伝説外伝I(1998年3月31日発行)ISBN 4-19-860816-4
- 『星を砕く者』と『ユリアンのイゼルローン日記』を合冊
- 愛蔵版 銀河英雄伝説外伝II(1998年3月31日発行)ISBN 4-19-860817-2
- 『千億の星、千億の光』と『螺旋迷宮』を合冊
徳間文庫(1988年、1996年 - 1998年)[編集]
1988年に、外伝第1巻である『星を砕く者』の文庫版が刊行された。これはアニメ版の『わが征くは星の大海』の上映にあわせた、いわば企画物としての刊行であったため、第2巻以降の刊行はされなかった。
1996年から1998年にかけて、本編の文庫版が刊行された。これまでに出版された書籍で使用した版の誤字が修正され、後の版の底本となったが、未修正の誤字も多い。口絵には各巻毎、作品に縁のあるもしくは思い入れのあるイラストレーター、漫画家らを起用し、巻末には竹河聖、 太田忠司、連城三紀彦、小野不由美、梶尾真治らが解説を寄た。本文中に挿絵はない。
いずれも現在は絶版となっており入手は困難。
本編(本伝)[編集]
- 銀河英雄伝説 1 黎明篇(1996年11月15日発行)ISBN 4-19-890592-4
- 銀河英雄伝説 2 野望篇(1997年1月15日発行)ISBN 4-19-890624-6
- 銀河英雄伝説 3 雌伏篇(1997年3月15日発行)ISBN 4-19-890652-1
- 銀河英雄伝説 4 策謀篇(1997年5月15日発行)ISBN 4-19-890689-0
- 銀河英雄伝説 5 風雲篇(1997年7月15日発行)ISBN 4-19-890717-X
- 銀河英雄伝説 6 飛翔篇(1997年9月15日発行)ISBN 4-19-890754-4
- 銀河英雄伝説 7 怒濤篇(1997年11月15日発行)ISBN 4-19-890787-0
- 銀河英雄伝説 8 乱離篇(1998年1月15日発行)ISBN 4-19-890819-2
- 銀河英雄伝説 9 回天篇(1998年3月15日発行)ISBN 4-19-890856-7
- 銀河英雄伝説 10 落日篇(1998年6月15日発行)ISBN 4-19-890889-3
外伝[編集]
銀河英雄伝説外伝 1 星を砕く者(1988年2月15日発行)ISBN 4-19-568452-8
徳間デュアル文庫(2000年 - 2002年)[編集]
徳間デュアル文庫の創刊に伴い、その目玉として“ファイナルバージョン”と銘打ち再び文庫化されることとなった。各巻は2冊に分冊された。本文中の挿絵を廃しストイックな体裁をとっていた徳間文庫版と異なり、全巻に道原かつみの手になるイラストをふんだんに使ったほかに、文字を大きくし、難解な漢字を仮名に直すなど、より低い年齢層に向けている。シリーズ偶数巻の巻末には田中へのインタビューが掲載されているほか、外伝の第1巻『黄金の翼』として、短篇「黄金の翼」も含めた既発表の外伝の短篇が一括収録されたのもこの版が初である。
本編(本伝)[編集]
- 銀河英雄伝説 Vol.1 [黎明篇・上](2000年8月31日発行)ISBN 4-19-905003-5
- 銀河英雄伝説 Vol.2 [黎明篇・下](2000年8月31日発行)ISBN 4-19-905004-3
- 銀河英雄伝説 Vol.3 [野望篇・上](2000年9月21日発行)ISBN 4-19-905010-8
- 銀河英雄伝説 Vol.4 [野望篇・下](2000年9月21日発行)ISBN 4-19-905011-6
- 銀河英雄伝説 Vol.5 [雌伏篇・上](2000年10月31日発行)ISBN 4-19-905017-5
- 銀河英雄伝説 Vol.6 [雌伏篇・下](2000年11月30日発行)ISBN 4-19-905021-3
- 銀河英雄伝説 Vol.7 [策謀篇・上](2000年12月31日発行)ISBN 4-19-905029-9
- 銀河英雄伝説 Vol.8 [策謀篇・下](2001年1月31日発行)ISBN 4-19-905032-9
- 銀河英雄伝説 Vol.9 [風雲篇・上](2001年2月28日発行)ISBN 4-19-905040-X
- 銀河英雄伝説 Vol.10 [風雲篇・下](2001年3月31日発行)ISBN 4-19-905045-0
- 銀河英雄伝説 Vol.11 [飛翔篇・上](2001年4月30日発行)ISBN 4-19-905049-3
- 銀河英雄伝説 Vol.12 [飛翔篇・下](2001年5月31日発行)ISBN 4-19-905053-1
- 銀河英雄伝説 Vol.13 [怒濤篇・上](2001年6月30日発行)ISBN 4-19-905058-2
- 銀河英雄伝説 Vol.14 [怒濤篇・下](2001年7月31日発行)ISBN 4-19-905063-9
- 銀河英雄伝説 Vol.15 [乱離篇・上](2001年8月31日発行)ISBN 4-19-905070-1
- 銀河英雄伝説 Vol.16 [乱離篇・下](2001年9月30日発行)ISBN 4-19-905076-0
- 銀河英雄伝説 Vol.17 [回天篇・上](2001年10月31日発行)ISBN 4-19-905082-5
- 銀河英雄伝説 Vol.18 [回天篇・下](2001年11月30日発行)ISBN 4-19-905085-X
- 銀河英雄伝説 Vol.19 [落日篇・上](2001年12月31日発行)ISBN 4-19-905091-4
- 銀河英雄伝説 Vol.20 [落日篇・下](2002年1月31日発行)ISBN 4-19-905095-7
外伝[編集]
- 銀河英雄伝説外伝 Vol.1 [黄金の翼](2002年3月31日発行)ISBN 4-19-905101-5
- 銀河英雄伝説外伝 Vol.2 [星を砕く者・上](2002年4月30日発行)ISBN 4-19-905105-8
- 銀河英雄伝説外伝 Vol.3 [星を砕く者・下](2002年5月31日発行)ISBN 4-19-905108-2
- 銀河英雄伝説外伝 Vol.4 [ユリアンのイゼルローン日記・上](2002年6月30日発行)ISBN 4-19-905110-4
- 銀河英雄伝説外伝 Vol.5 [ユリアンのイゼルローン日記・下](2002年7月31日発行)ISBN 4-19-905113-9
- 銀河英雄伝説外伝 Vol.6 [千億の星、千億の光・上](2002年8月31日発行)ISBN 4-19-905115-5
- 銀河英雄伝説外伝 Vol.7 [千億の星、千億の光・下](2002年9月30日発行)ISBN 4-19-905123-6
- 銀河英雄伝説外伝 Vol.8 [螺旋迷宮・上](2002年10月31日発行)ISBN 4-19-905124-4
- 銀河英雄伝説外伝 Vol.9 [螺旋迷宮・下](2002年11月30日発行)ISBN 4-19-905128-7
創元SF文庫(2007年 - )[編集]
徳間デュアル文庫版の刊行に伴い、諸般の事情から徳間書店の旧来版は全て入手が困難となってしまい、旧来のファンから“大人も抵抗感無く手に取れる装丁を施した銀英伝”の出版を求める声が多くなっていた。
この様な要望を受けて作者サイドと各方面が折衝に努めた結果、デュアル文庫版を“ファイナルバージョン”と銘打っている関係上そういった装丁版を出しづらい徳間に代わり、東京創元社の歴史ある文庫レーベル“創元SF文庫”に円満移籍し、2007年より新たにリリースが開始された。創元SF文庫はこれまで海外作品のみを発行しており、本作第1巻および同時配本の『バビロニア・ウェーブ』(堀晃)が、同レーベルから発行される初めての日本SF作品となった。
カバーイラストは星野之宣による描き下ろしで、本文中に挿絵はない。各篇も分冊せず1巻1篇装丁になっている。
本編(本伝)[編集]
- 銀河英雄伝説 1 黎明篇(2007年2月23日発行)ISBN 978-4-488-72501-3
- 銀河英雄伝説 2 野望篇(2007年4月27日発行)ISBN 978-4-488-72502-0
- 銀河英雄伝説 3 雌伏篇(2007年6月29日発行)ISBN 978-4-488-72503-7
- 銀河英雄伝説 4 策謀篇(2007年8月24日発行)ISBN 978-4-488-72504-4
- 銀河英雄伝説 5 風雲篇(2007年10月31日発行)ISBN 978-4-488-72505-1
- 銀河英雄伝説 6 飛翔篇(2007年12月28日発行)ISBN 978-4-488-72506-8
- 銀河英雄伝説 7 怒涛篇(2008年2月29日発行)ISBN 978-4-488-72507-5
- 銀河英雄伝説 8 乱離篇(2008年4月25日発行)ISBN 978-4-488-72508-2
- 銀河英雄伝説 9 回天篇(2008年6月27日発行)ISBN 978-4-488-72509-9
外国語版[編集]
日本語以外にも翻訳されて刊行されている。
この節を書こうとした人は途中で寝てしまいました。後は適当に頑張って下さい。 |
- 広東語版[銀河英雄伝説](タイトル表記同じ)
- イラストは表紙のみ(おもに主要キャラクター)。新書に近いサイズ。右綴じ縦書き。一巻ごとにイラストレーター(地元の人間と思われる中国名)が異なる。
関連書籍[編集]
すでに絶版になっている物も含む。フィルムコミックなど、アニメ版とより関係が深い物についてはここでは除外する。()内は発行年月日と著者などである。
登場人物辞典[編集]
- 『エンサイクロペディア銀河英雄伝説』(1992年7月31日発行、編著:らいとすたっふ)ISBN 4-19-124916-9
- 銀河英雄伝説の原作の登場人物を紹介した人物辞典。愛蔵版の刊行にあわせて刊行された。ちなみに、この版において掲載された、物語中の登場人物は計614名となっている。
- 『新訂 エンサイクロペディア「銀河英雄伝説」』(1997年5月31日発行、編著:らいとすたっふ)ISBN 4-19-850377-X
- 大幅に加筆修正した新版。徳間文庫版の刊行にあわせて刊行された。以前の版に「OVAオリジナルキャラクターの紹介」、「用語解説」が追加され、「銀河メカニック列伝」、「大年表」が削除されている。
- 『銀河英雄伝説ハンドブック』(2003年1月31日発行、監修:田中芳樹、協力:らいとすたっふ)ISBN 4-19-905132-5
- さらに大幅に加筆修正した新版。徳間デュアル文庫版の30巻目として掉尾を飾った本。主に人名事典、大年表、用語辞典からなり、徳間文庫版に収録されていた他作家の解説、田中芳樹の1980年代の対談なども収録されている。人名事典については以前の版から長足の進歩を遂げている。
副読本[編集]
- 『「銀河英雄伝説」読本』(1997年3月31日発行、編著:らいとすたっふ)ISBN 4-19-860661-7
- アニメ版の本編シリーズ終了に合わせて刊行。原作者インタビューなどのほか、外伝のダゴン星域会戦記など、「黄金の翼」以外の短篇の外伝が一括収録された。詳細はこちら。
同人誌アンソロジー[編集]
- 『全艦出撃!!』シリーズ
- 『全艦出撃!!』(1992年2月18日発行、監修:田中芳樹事務所)ISBN 4-19-124770-0
- 『全艦出撃!!2 出力全開』(1992年10月31日発行、監修:らいとすたっふ)ISBN 4-19-124988-6
- 『全艦出撃!!3 凱旋勝利』(1993年9月30日発行、監修:らいとすたっふ)ISBN 4-19-125286-0
- 『天下無敵あどりぶ銀英伝』(1994年9月30日発行、監修:らいとすたっふ)
メディア展開[編集]
出版元である徳間書店が各メディアへの進出を画策していた事から、徳間の人気作であった本作は漫画・アニメ・ゲームといった各娯楽メディアへの商品展開がなされた。そこから本作を知ったファンも多い。
下記以外にも宝塚歌劇団での舞台上演も検討されたそうだが、実現には至らなかった。
- 漫画
1986年に発行された書き下ろし原作による外伝『黄金の翼』を始め、一部が漫画化されている。詳しくは別項を参照。
- アニメ
1988年に公開された劇場版を始めとして、大部分のエピソードがアニメ化されている。詳しくは別項を参照。
- ゲーム、パチンコ
- 関連グッズ
ファンの年齢層がやや高めでもある事から、キャラクター商品としての関連グッズの販売は、あまり積極的には行なわれてこなかった。特典的商品としてのカレンダーやトランプが存在する。
2006年より、造形工房アルバクリエイツから、12,000分の1スケールの完成品戦艦模型「銀河英雄伝説フリート・ファイル・コレクション」が順次発売されている。
漫画版[編集]
2007年現在、道原かつみ、鴨下幸久の作画により、一部が漫画化されている。掲載誌、コミックス共全て徳間書店より発行。
初出・連載[編集]
特に記載のないものは道原かつみによる作画。(参考:「Noël」1994 WINTER号〔徳間書店「アニメージュ」1994年1月号増刊〕大特集・THE 田中芳樹 p213~p247)
- 1986年 外伝『黄金の翼』アニメージュコミックス書き下ろし
- この漫画のために原作が書き下ろされたことは前述のとおり。
- 1992年には、劇場版としてアニメ化された。このアニメ版は他のシリーズとは声優、キャラクターデザイン、メカデザインなどが全く異なり、道原の漫画を忠実に再現したものとなっている。これは原作者田中芳樹が、元々道原の作画を前提に原作を書き下ろしたものであることから「道原コミック版のアニメ化」を希望した為と言われている。
- 1987年12月 外伝『白銀の谷』「SFアドベンチャー増刊」銀河英雄伝説特集号に掲載(これのみ鴨下幸久作画)
- 『トラブル★トライアングル』(1994年4月20日発行、作:田中芳樹、画:鴨下幸久、アニメージュコミックススペシャル)ISBN 4-19-770004-0 に収録されている。表題作も田中芳樹の小説の漫画化作品である。
- 1988年 本編「月刊少年キャプテン」にて連載開始(1989年1月号-1991年?月号)
- 1992年 本編「アニメージュ増刊Noël(ノエル)」1993 WINTER号にて連載再開
- 1994年 本編「Chara」にて連載開始(Vol.1-2000年2月号)
- 掲載誌の変更ではあるが、実際はアニメージュ増刊という位置付けだった「Noël」(季刊)が「Chara」(隔月刊)として独立創刊した。
- 2006年 本編「月刊COMICリュウ」にて連載再開(2006年12月号(創刊2号)-)
- 本編雌伏篇以降の内容での連載。
単行本リスト[編集]
道原かつみ作画の作品について記す。
掲載誌変更等の理由により、原作に劣らず多くの版が存在する。冗長となるため、発行レーベルの一部について以下の略称を使用する。
- SCS:少年キャプテンコミックススペシャル
- ACC:アニメージュCharaコミックス[6]
- CC:Charaコミックス
- ACS:アニメージュコミックススペシャル
- RC:RYU COMICS
本編、外伝[編集]
- 初期コミック
初めて単行本として発行されたもの。B6サイズ。
- 『銀河英雄伝説外伝 黄金の翼』(1986年8月10日発行、アニメージュコミックス)
- 巻頭口絵はステッカーになっており、巻末には原作本編紹介の4コマ漫画や田中芳樹による解説文などが掲載されている。
- 本編の「少年キャプテン」連載時に新装発行されたSCS版(カバー・表紙の絵柄が変更された)と「Chara」連載時に新装発行されたCC版(カバー等の絵柄はSCS版と同じ)があり、発行日やISBNコードもそれぞれ違う。
- 『銀河英雄伝説 1』(1990年2月25日発行、少年キャプテンスペシャル[7])ISBN 4-19-830021-6
- 『銀河英雄伝説 2』(1990年12月20日発行、SCS)ISBN 4-19-830122-0
- 『銀河英雄伝説 3』(1991年10月15日発行、SCS)ISBN 4-19-831100-5
- 『銀河英雄伝説 4』(1992年4月20日発行、SCS)ISBN 4-19-832041-1
- 『銀河英雄伝説 5』(1994年1月20日発行、SCS)ISBN 4-19-834010-2
- 『銀河英雄伝説 6』(1994年11月10日発行、SCS)ISBN 4-19-830036-4
- ここまでに挙げた本編6冊には「Chara」連載時に新装発行されたACC版がある。
- 『銀河英雄伝説 7』(1995年9月25日発行、ACC)ISBN 4-19-960004-3
- 『銀河英雄伝説 8』(1996年9月25日発行、ACC)ISBN 4-19-960028-0
- 『銀河英雄伝説 9』(1998年3月25日発行、CC)ISBN 4-19-960063-9
- 『銀河英雄伝説 10』(1999年1月20日発行、CC)ISBN 4-19-960087-6
- 『銀河英雄伝説 11』(2000年3月25日発行、CC)ISBN 4-19-960122-8
- 総集編
「月刊少年キャプテン」連載時には、コミックスが発売される前にまず雑誌の形で「総集編」の発行が行われていた。B5サイズ。
- 『銀河英雄伝説 総集編 1』(1989年8月30日発行、少年キャプテン8月号増刊)
- 『銀河英雄伝説 総集編 2』(1990年5月25日発行、少年キャプテン5月号増刊)
- 『銀河英雄伝説 総集編 3』(1991年4月20日発行、少年キャプテン4月号増刊)
- コンビニコミック
「月刊COMICリュウ」での連載再開に合わせたコマーシャル的な発行。B6サイズ。
- 『銀河英雄伝説 黄金の翼&双璧編』(2006年11月15日発行、トクマフェイバリットコミックス)ISBN 4-19-780365-6
- 『黄金の翼』(本編紹介4コマ漫画や原作者による解説などは収録されていない)と上記1.の7巻の一部を再録。
- 愛蔵版
「月刊COMICリュウ」での連載再開を受けての発行。A5サイズ。
- 『銀河英雄伝説 愛蔵版 1』(発行日不明、ACS)ISBN 978-4-19-770137-7
- 上記1.の1・2巻の再録。
- 編集ミスだと思われるが、この巻ならびに同日発売の2巻には発行日が記載されていない。3巻以降の発売日(19日)と記載された発行日(翌月20日)の関係から推測すると、2007年4月20日発行となると思われる。
- 『銀河英雄伝説 愛蔵版 2』(発行日不明、ACS)ISBN 978-4-19-770138-4
- 上記1.の3・4巻の再録。
- 『銀河英雄伝説 愛蔵版 3』(2007年5月20日発行、ACS)ISBN 978-4-19-770139-1
- 上記1.の5・6巻の再録。
- 『銀河英雄伝説 愛蔵版 4』(2007年6月20日発行、ACS)ISBN 978-4-19-770140-7
- 上記1.の7・8巻の再録。
- 『銀河英雄伝説 愛蔵版 5』(2007年7月20日発行、ACS)ISBN 978-4-19-770141-4
- 上記1.の9・10巻の再録。
- 『銀河英雄伝説 愛蔵版 6』(2007年8月20日発行、ACS)ISBN 978-4-19-770142-1
- 上記1.の11巻および『黄金の翼』(本編紹介4コマ漫画や原作者による解説などは収録されていない)の再録。
英雄たちの肖像[編集]
「月刊COMICリュウ」での連載分を収録した単行本。B6サイズ。
- 『銀河英雄伝説 英雄たちの肖像 1』(2008年1月1日発行、RC)ISBN 978-4-19-950062-6
アニメ版[編集]
劇場版アニメ3作、OVA本編110話、外伝52話が制作された。
OVAは当初「VHSビデオで1本1話」という形でリリース(後述)。その後は4話を1本にまとめた店頭販売用ビデオ(VHS/レーザーディスク)及びレンタルビデオでリリースされた[8]。
DVDがソフトメディアの主流になって以降は、全てのアニメがDVDソフト化されている[9]。なお、DVD版(2006年秋よりWOWOWで放送されたリマスター版と同等のバージョン)には、ビデオテープ/レーザーディスクによってリリースされた初期版をリテイクしたシーンが随所に存在する。
沿革[編集]
- 1993年には劇場版第二弾『新たなる戦いの序曲』が公開。こちらもOVA第3期開始に際してのプロモーション的意味合いの強いものであった。
- 1988年末OVA第1期リリース開始。第1期は登録した顧客へ1話分収録されたVHSビデオカセットが週1回“配達”されるという、特殊なリリース形態(当時は“ウィークリービデオ”と呼ばれた)を取っていた。[10]
- その後1997年まで、原作本編を4期に分けOVA化が継続。最終的に全110話製作された。
配役[編集]
膨大な登場人物の殆どが役を兼ねず1人1役でキャスティングされている(二役演じた声優も存在はする)。この事からアニメ版は「銀河声優伝説」との異名を取っていた(声優業界でもそう言われていた)。ベテラン格の同時多数起用が何度もあり、スタジオに並んだ声優陣の顔ぶれのあまりの豪華さに、出演者自身も時に「今日は日俳連の会合でもあるんでしょうか?」と驚いてしまう事すらあったという。また、若手声優がベテランから教わることが多かった、数多くの若手が鍛えられた作品とも言われている。女性声優については、軍人と政治家中心の物語内容のため、女性や変声期前の幼年男子の登場人物そのものが少ない事もあって起用が少なかった。
原作からの改変点[編集]
基本的には原作小説を踏襲し、忠実なアニメ化を実現させている。ただし、主として以下の様な改変点が存在する為、原作小説のみの読者とアニメ版のみの視聴者とでは認識に食い違いが生じる。
- 原作では雌伏篇(新書刊第3巻)冒頭部から活躍するダスティ・アッテンボローが、物語当初からヤン・ウェンリーの補佐という役割で登場する。その為ラオはほとんど出番がなくなっている。
- イゼルローン要塞の防御壁が流体金属層と設定された。この為、原作には登場しない「ケンプによる要塞の重力から生じる流体の潮汐を利用した攻略作戦」がOVAには存在する。
- 外伝で記述されたクロプシュトック事件が本編第1期に組み込まれた為「クロプシュトック領への討伐部隊派遣の過程で生じたミッターマイヤーがブラウンシュヴァイク公爵の縁者を銃殺する件」がアニメ版には存在しない(原作版の解説及びアニメ版の解説を参照)。
その他、大小さまざまな改変(時事経過の変更、戦闘の演出、新規キャラクターの追加、原作の不自然或いは奇妙なセリフの修正、原作で名称が設定されていない戦艦への命名など)がみられ、そのせいで時系列に矛盾が生じている事例もある。[11]
戦艦デザイン[編集]
アニメ版に登場する軍事艦艇は、原作新書版で表紙と初期の挿絵を手がけたイラストレーター・加藤直之のデザインをベースにしており、端役の旗艦に至るまで特徴的な外観が与えられるなど、作品の魅力を増すための工夫が随所で試されている。ただし加藤直之が全てのメカデザインをしているわけではない。
音楽[編集]
主なBGMはあえてオリジナルスコアではなく、クラシックの名曲、特にマーラーの交響曲など、19世紀後半から20世紀初頭にかけての後期ロマン派音楽を数多く使用している。「銀河英雄伝説サントラ音楽集(32ATC-183)」のライナーノーツによると、これはアニメ版製作の中核企業だった徳間グループの音楽部門会社・徳間ジャパンがドイツ・シャルプラッテンレコードの音源を大量に持っていた事から実現したもの。映画版第1作目の第4次ティアマト会戦におけるボレロの使用については、脚本の首藤剛志の「ボレロのような曲を使いたい」という注文に対して「じゃあボレロを使いましょう」と担当者が提案した。[12]
通俗的な名曲ばかりにとどまらず、クラシック・ファンの間においてさえかなり知名度の低い曲も多数使用されるなど、ありとあらゆる楽曲が使用された。特に、ニールセン作曲の交響曲第4番『不滅』は劇場版第1作の「惑星レグニッツァの戦い」などの場面で使用される重要な曲であるが、この劇場版が製作された時点では、日本国内で同曲が演奏されたことはほとんどなかったという、いわゆる「マイナー曲」であった。[13]
数少ないオリジナルスコアのうち、アニメ作品中で使用される自由惑星同盟国歌の音源は、イベントに参加した一般応募者が斉唱したものが使用されている[14]。
主題歌は、エンディングを担当した小椋佳やオリジナルスコアを作曲した風戸慎介(川辺真)をはじめ、来生たかお、星勝、武沢豊、蛎崎弘、森英治など、キティ・フィルムの母体であったキティ・レコードに当時所属していたミュージシャンが参加した。
なお当時、これらの楽曲をダイジェスト収録したCD-BOXが徳間ジャパンからリリースされていたが、現在は絶版状態。これに代わってキングレコードのアニメ系レーベル・スターチャイルドレコードがシャルプラッテンの原盤権を新たに取得し2007年秋に“銀河英雄伝説CD-BOX”をリリースした。スターチャイルド版は楽曲を帝国側・同盟側に分け時系列順に収録し、劇中の何処で使用された楽曲なのかが判りやすい仕様となっている。
テレビ放送[編集]
OVA第1期は、リリース終了後にテレビ東京において深夜に1回、夕方に1回放送された。20世紀末以降は、主にCS放送局や衛星放送局・WOWOWで全話が放送されている。DVD化に際しては、オリジナル版製作当時の事情によりやや粗さのある前半部分を中心に、一部作画がリメイクされている。
WOWOWでは2006年7月2日より、映画第1弾とOVA全話をテレビ初となる“リマスター版”を使用して放送した。
その他[編集]
第70話「蕩児たちの帰宅」では明滅が激しいシーンが2箇所あり、DVD第18巻の冒頭では鑑賞時の注意を喚起する文章が挿入されている。
劇場用作品[編集]
- 『わが征くは星の大海』(わがゆくはほしのたいかい)(劇場用映画・60分)1988年2月
- 外伝1巻終盤。
- 『黄金の翼』(おうごんのつばさ)(劇場用映画・60分)1992年12月
- 漫画版外伝。他のアニメ作品とはキャラクター・メカニック・声優までも異なる。ラインハルトとキルヒアイスの少年時代から宇宙暦792年/帝国暦483年までが描かれる。この作品はOVAリリースを念頭において製作されたため、文献によってはOVA扱いになっている場合もある。
- 『新たなる戦いの序曲』(あらたなるたたかいのオーヴァーチュア)(劇場用映画・90分)1993年12月
- 本編1巻序盤にオリジナルエピソードを加え、「アスターテ会戦」の部分をリメイクしたもの。
OVAシリーズ[編集]
- OVA第1期 — 全26話(1988年12月~1989年6月)。本編1~2巻、外伝1巻。若干のオリジナルエピソード(第13話、第14話)を含む。また、中盤のエピソードの一部が原作とは異なる時系列(第9話、第11話)で挿入されている。
- 第1話「永遠の夜の中で」
- 第2話「アスターテ会戦」
- 第3話「第十三艦隊誕生」
- 第4話「帝国の残照」
- 第5話「カストロプ動乱」
- 第6話「薔薇の騎士」
- 第7話「イゼルローン攻略!」
- 第8話「冷徹なる義眼」
- 第9話「クロプシュトック事件」
- 第10話「ジェシカの戦い」
- 第11話「女優退場」
- 第12話「帝国領侵攻」
- 第13話「愁雨来たりなば」
- 第14話「辺境の解放」
- 第15話「アムリッツァ星域会戦」
- 第16話「新たなる潮流」
- 第17話「嵐の前」
- 第18話「リップシュタットの密約」
- 第19話「ヤン艦隊出動」
- 第20話「流血の宇宙」
- 第21話「ドーリア星域会戦、そして…」
- 第22話「勇気と忠誠」
- 第23話「黄金樹(ゴールデンバウム)は倒れた」
- 第24話「誰が為の勝利」
- 第25話「運命の前日」
- 第26話「さらば、遠き日」
- OVA第2期 — 全28話(1991年6月~1992年2月)。本編3~5巻。
- 第27話「初陣」
- 第28話「肖像」
- 第29話「細い一本の糸」
- 第30話「失われたもの」
- 第31話「査問会」
- 第32話「武器なき戦い」
- 第33話「要塞対要塞」
- 第34話「帰還」
- 第35話「決意と野心と」
- 第36話「雷鳴」
- 第37話「幼帝誘拐」
- 第38話「矢は放たれた」
- 第39話「ひとつの旅立ち」
- 第40話「ユリアンの旅、人類の旅」
- 第41話「作戦名『神々の黄昏(ラグナロック)』」
- 第42話「鎮魂曲(レクイエム)への招待」
- 第43話「ギャラルホルンは鳴った」
- 第44話「フェザーン占領」
- 第45話「寒波至る」
- 第46話「ヤン提督の箱舟隊」
- 第47話「自由の宇宙を求めて」
- 第48話「双頭の蛇~ランテマリオの決戦~」
- 第49話「闇が深くなるのは…」
- 第50話「連戦」
- 第51話「バーミリオンの死闘(前編)」
- 第52話「バーミリオンの死闘(後編)」
- 第53話「急転」
- 第54話「皇帝ばんざい!(ジーク・カイザー)」
- OVA第3期 — 全32話(1994年7月~1995年2月)。本編6~8巻。
- 第55話「儀式から再び幕は上がり…」
- 第56話「地球へ」
- 第57話「キュンメル事件」
- 第58話「訪問者」
- 第59話「過去と現在と未来と」
- 第60話「魔術師捕らわる」
- 第61話「歌劇(オペラ)への招待」
- 第62話「血の流水階段(カスケード)」
- 第63話「聖地」
- 第64話「休暇は終わりぬ」
- 第65話「すべての旗に背いて」
- 第66話「黄金獅子旗(ゴールデンルーヴェ)の下に」
- 第67話「『神々の黄昏(ラグナロック)』ふたたび」
- 第68話「エル・ファシルへ」
- 第69話「イゼルローン再奪取作戦」
- 第70話「蕩児たちの帰宅」
- 第71話「マル・アデッタ星域の会戦(前)」
- 第72話「マル・アデッタ星域の会戦(後)」
- 第73話「冬バラ園の勅令」
- 第74話「前途遼遠」
- 第75話「雷動」
- 第76話「祭りの前」
- 第77話「風は回廊へ」
- 第78話「春の嵐」
- 第79話「回廊の戦い(前)~常勝と不敗と~」
- 第80話「回廊の戦い(中)~万華鏡(カレイドスコープ~」
- 第81話「回廊の戦い(後)~大親征の終幕~」
- 第82話「魔術師、還らず」
- 第83話「祭りの後」
- 第84話「失意の凱旋」
- 第85話「遷都令」
- 第86話「8月の新政府(ニュー・ガバメント・イン・オーガスタ)」
- OVA第4期 — 全24話(1996年9月~1997年3月?)。本編9~10巻。
- 第87話「嵐の予感」
- 第88話「辺境にて」
- 第89話「夏の終わりのバラ」
- 第90話「鳴動」
- 第91話「発芽」
- 第92話「ウルヴァシー事件」
- 第93話「矜持にかけて」
- 第94話「叛逆は英雄の特権」
- 第95話「双璧相撃つ!」
- 第96話「剣に生き…」
- 第97話「剣に斃れ」
- 第98話「終わりなき鎮魂曲(レクイエム)」
- 第99話「未来への助走」
- 第100話「皇妃ばんざい!(ホーフ・カイザーリン)」
- 第101話「動乱への誘い」
- 第102話「敢えて武器を手に」
- 第103話「コズミック・モザイク」
- 第104話「平和へ、流血経由」
- 第105話「昏迷の惑星」
- 第106話「柊舘(シュテッヒパルム・シュロス)炎上」
- 第107話「深紅の星路(クリムゾン・スターロード)」
- 第108話「美姫(ブリュンヒルト)は血を欲す」
- 第109話「黄金獅子旗(ゴールデンルーヴェ)に光なし」
- 最終話「夢、見果てたり」
- OVA外伝第1期 — 全24話(1998年~1999年?)。単行本未収録短編3本と外伝3巻。
- 「白銀の谷」
- 「朝の夢、夜の歌」
- 「汚名」
- 「千億の星、千億の光」
- OVA外伝第2期 — 全28話(1999年12月~2000年?)。外伝4巻とOVAオリジナルエピソード3本、そして外伝1巻序盤。OVAオリジナル・エピソードは斜字タイトルで示し、()内に舞台となった時期を記す。
- 「螺旋迷宮」
- 「叛乱者」(宇宙暦791年/帝国暦482年8月~)
- 「決闘者」(宇宙暦792年/帝国暦483年1月~)
- 「奪還者」(宇宙暦792年/帝国暦483年12月~)
- 「第三次ティアマト会戦」
スタッフ[編集]
- 製作:キティフィルム、徳間書店、テレ東、らいとすたっふ、サントリー
- プロデューサー:田原正利
主題歌[編集]
- オープニング
- エンディング
- 光の橋を越えて(第1期)
- 歌・作詞・作曲:小椋佳、編曲:風戸慎介
- 旅立ちの序曲(第2期)
- 歌・作詞・作曲:小椋佳、編曲:風戸慎介
- 歓送の歌(第3期)
- 歌・作詞:小椋佳、作曲・編曲:星勝
- 宇宙の掛け橋(第4期)
- 歌・作詞・作曲:小椋佳、編曲:風戸慎介
- 説明(外伝第1期 白銀の谷)
- 永い付き合い(外伝第1期 朝の夢、夜の歌)
- 歌・作詞:小椋佳、作曲:蛎崎弘、編曲:武沢豊
- 逝くとき、祝うとき(外伝第1期 汚名)
- 歌・作詞:小椋佳、作曲:嘉納正明、編曲:武沢豊
- オーロラのアダージョ(外伝第1期 千億の星、千億の光)
- 僕たちの航跡(外伝第2期 螺旋迷宮)
- 歌・作詞・作曲:小椋佳、編曲:風戸慎介
- 約束された未来(外伝第2期 後半)
- 歌・作詞・作曲:小椋佳、編曲:風戸慎介
- 光の橋を越えて(第1期)
- その他
- 銀河帝国軍軍楽曲~ワルキューレは汝の勇気を愛せり~
- 作曲・編曲:風戸慎介
- 自由惑星同盟国歌~自由の旗、自由の民、レヴォリューション・オブ・ザ・ハート~
- 歌:ファン参加によるライブ録音、作詞:秋吉満ちる、作曲・編曲:風戸慎介
- 銀河帝国軍軍楽曲~ワルキューレは汝の勇気を愛せり~
※ アニメ版で使用されたクラシック楽曲名詳細については、外部リンクより“StarChild:銀河英雄伝説”のwebサイトを参照。
アニメ版のパロディ等[編集]
他のアニメにはOVA版のパロディや演じた声優などがパロディとして使われている。有名なのは若本規夫のニニンがシノブ伝の台詞や涼宮ハルヒの憂鬱 (アニメ)の射手座の日など。
脚注[編集]
- ↑ 本作の刊行当初はSFブームであり、SFの体裁さえ整えておけば事実上どんな作品でも売れ、本作のように前例のない企画でも通った。本作のSF的要素はもともと数少なく、そして巻を追うごとに減少していく。
- ↑ ただしこれは本編の開始時の数値。第二次ティアマト会戦の頃は帝国・同盟とも平均8000隻である(詳細はこちら)。
- ↑ 帝国の場合は大将/上級大将クラスでも一個艦隊の司令官になる例もあるが、同盟では原則として大将以上の階級の者が一個艦隊の司令官に就任する事はない。例外はシドニー・シトレとヤン・ウェンリーだが、前者は宇宙艦隊司令長官、後者はイゼルローン要塞司令官との兼務である。
- ↑ イゼルローン回廊帝国側宙域の遭遇戦時にアッテンボロー「少将」が指揮した分艦隊の戦力は2200隻。帝国軍のアイヘンドルフ少将が指揮した艦隊は同盟側の最大推定値が1790隻。
- ↑ ラインハルトが准将の地位でグリンメルスハウゼン艦隊所属士官としてヴァンフリート星域の会戦に参加した時の指揮下の戦力は、巡航艦40隻、駆逐艦130隻、砲艦25隻、ミサイル艦10隻。
- ↑ 「Chara」創刊から「Charaコミックス」レーベル発刊までの極一時期存在したコミックレーベル。雑誌コード等から判断すると「アニメージュコミックス」にカウントされている模様。多くは重刷時などに「Charaコミックス」に変更されている。
- ↑ 初期の少年キャプテンコミックススペシャルには誌面上にこのように記されているものがある。多くは重刷時などに「少年キャプテンコミックススペシャル」に表記が変更されている。
- ↑ レーザーディスクは1枚ごとの単品販売の他、110話を4期に分割したボックスセットとしてもリリースされた。
- ↑ レーザーディスク版同様、1枚ごとの単品販売の他、110話+外伝を4期に分割したボックスセットとしてもリリースされた。2007年12月21日にはアニメ製作20周年記念として、アニメ全話を1BOXパッケージ化した“銀河英雄伝説 LEGEND BOX”がリリース予定。
- ↑ なお、第1期全巻の料金を一括払いした顧客へは2週に1度の配達となるかわりに偶数話を1週早く見ることができた。また、ウィークリービデオ版には機動警察パトレイバーの初期OVAシリーズと同様、スポンサーCMが収録されていた。
- ↑ カストロプ動乱においてキルヒアイスがクルト伍長の言うとおり「指向性」のゼッフル粒子を使った場合、帝国の公式記録と整合しない等。
- ↑ だが、ここで大きな問題が生じた。それはラヴェルの著作権が第二次世界大戦中カウントされず(交戦状態では著作権が停止の特別条項がある為)、死後50年後でも日本において著作権は遺族が保有し自由に使えなかった。その為、この問題をクリアする為、新日本フィルハーモニー交響楽団の演奏で独自に録音し使用した。脚本家首籐氏の解説
- ↑ 現在ではニールセンの知名度が上がった事もあり、ポピュラーになりつつある。
- ↑ この際、「スタジアムの虐殺」のシーンにおける民衆の悲鳴と怒号も収録され、劇中で使用されている。
関連項目[編集]
- 本作は上記を下敷きにしたエピソードも多い
- 本作を含むSF作品全般に登場する「銀河帝国」についての記事。
- 構想のきっかけが本作であった旨、著者(小野不由美)が文庫版の解説で明らかにしている。
外部リンク[編集]
- 銀河英雄伝説ON THE WEB
- らいとすたっふ:作家田中芳樹の二次版権管理会社
- 有限会社ティー・ピー・オー:アニメ版のプロデューサー、田原正利(正聖)の製作会社。当時のエピソードを紹介するページあり
- StarChild:銀河英雄伝説:スターチャイルド版CD-BOX情報ページ。劇中使用楽曲情報あり
銀河英雄伝説 | |
メディア展開 | 小説 - 漫画 - アニメ - 読本 - ゲーム - パチンコ - 同人誌 |
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登場人物 | 銀河帝国 - 自由惑星同盟 - その他 |
登場勢力 | 銀河帝国 - 自由惑星同盟 - フェザーン自治領 - その他 - 歴史上の勢力 |
登場艦船 | 銀河帝国 - 自由惑星同盟 - その他 - 要塞 |
用語 | 事件・出来事 - 法律・条約 - 呼称 - 異名・渾名 - 組織・役職 - 地名・建物 - 軍事用語 その他用語 - 宗教 |
戦役 | 西暦時代 - 宇宙暦時代 - 旧帝国暦時代 - 旧帝国暦/宇宙暦時代 旧帝国暦/宇宙暦時代 (本編開始後) - 新帝国暦/宇宙暦時代 |
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