空飛ぶタイヤ
『空飛ぶタイヤ』(そらとぶタイヤ)は、2006年に刊行された池井戸潤による日本の小説。また、それを原作として2009年にWOWOWで放送されたテレビドラマ。2002年に発生した三菱自動車工業(三菱ふそうトラック・バス)製大型トラックの脱輪による死傷事故、三菱自動車によるリコール隠しなどを物語の下敷きとしている。
目次
概要[編集]
初出は『月刊J-novel』2005年4月号、2005年6月号から2006年9月号。単行本は2006年9月に、Jノベル・コレクション版は2008年8月に実業之日本社より刊行された。文庫本は上下に分冊して2009年9月に講談社文庫より刊行された。2010年には朝鮮語版が刊行された。
タイヤ脱落事故と大手自動車メーカーのリコール隠しをテーマにした作品。事故を起こした運送会社の社長が、自社の無実を証明すべく巨大企業の闇に挑む経済小説であり、2002年に発生した三菱自動車製大型トラックの脱輪による死傷事故、三菱自動車によるリコール隠しなどを物語の下敷きとしている。本作の前にも経済をテーマにした作品を発表してきた作者だが、「まともに経済小説を書こうと思って書いたのは、これがはじめて」とのこと。
2009年にはWOWOWの連続ドラマW枠でテレビドラマ化された。自動車会社が有力スポンサーの地上波では、作品の性質上、制作は難しいと思われたが、有料放送のWOWOWでは地上波のようにスポンサーの影響を受けることなく番組制作を行えるため、ドラマ化が実現する運びとなった。主演は仲村トオル。詳細については下記参照。
書籍情報[編集]
- 単行本:実業之日本社、2006年9月15日、ISBN 4408534986
- Jノベル・コレクション:実業之日本社、2008年8月1日、ISBN 9784408535357
- 文庫本:講談社文庫、2009年9月15日、上巻ISBN 9784062764520・下巻ISBN 9784062764537
あらすじ[編集]
父親の後を継ぎ運送会社を経営する赤松徳郎は、ある日自社のトラックがタイヤ脱落事故を起こし、死傷者を出してしまったことを知る。事故原因を一方的に整備不良とされ、「容疑者」と決め付けられた赤松は警察からの執拗な追及を受ける。さらには会社も信用を失い、倒産寸前の状態に追い込まれてしまう。
しかし赤松は、事故原因は整備不良ではなく、事故を起こした車両自体に欠陥があったのではないかと考える。自社の無実を信じる赤松は家族や社員たちのために、トラックの販売元である巨大企業の自動車会社に潜む闇に戦いを挑む。
登場人物[編集]
赤松運送[編集]
- 赤松 徳郎(あかまつ とくろう)
- 赤松運送の二代目社長。短気だが人の良い性格。ずんぐりとした体格。自社のトラックがタイヤ脱落事故を起こして死傷者を出す事態となり、整備不良の汚名を着せられる。
- 尾崎西小学校PTA会長。大学時代は柔道部。
- 宮代 直吉(みやしろ なおきち)
- 赤松運送 専務。運行管理者兼務。
- 門田 駿一(かどた しゅんいち)
- 赤松運送 自動車整備士。入社して3年。髪は金色メッシュ入りで耳にはピアス。
- 安友 研介(やすとも けんすけ)
- 赤松運送に入社して半年の新参運転手。
- 高嶋 泰典(たかしま やすのり)
- 赤松運送 ドライバー兼総務課長。
- 谷山 次郎(たにやま じろう)
- 定年退職間近の赤松運送 整備課長。整備管理者兼務。
被害者とその家族[編集]
- 柚木 雅史(ゆぎ まさふみ)
- 被害者の夫。
- 柚木 妙子(ゆぎ たえこ)
- 被害者。
- 柚木 貴史(ゆぎ たかし)
- 被害者の息子。
東京ホープ銀行[編集]
- 井崎 一亮(いざき かずあき)
- 東京ホープ銀行 本店営業本部。週刊潮流記者の榎本崇とは大学時代の友人。
- 巻田 三郎(まきた さぶろう)
- 東京ホープ銀行 専務。
- 濱中 譲二(はまなか じょうじ)
- 東京ホープ銀行 本店営業本部長。井崎一亮の直属の上司。
ホープ自動車[編集]
- 沢田 悠太(さわだ ゆうた)
- ホープ自動車 販売部カスタマー戦略課長。リコール隠蔽「T会議」の存在を知る。
- 小牧 重道(こまき しげみち)
- ホープ自動車 車両製造部課長。
- 室井 秀夫(むろい ひでお)
- ホープ自動車 品質保証部課長。
- 杉本 元(すぎもと はじめ)
- ホープ自動車 品質保証部。品質保証部ネットワーク管理者兼務。
- 三浦 成夫(みうら しげお)
- ホープ自動車 財務部係長。
- 狩野 威(かのう たけし)
- ホープ自動車 常務取締役。
その他[編集]
- 榎本 崇(えのもと たかし)
- 週刊潮流記者。東京ホープ銀行の井崎一亮とは大学時代の友人。
- 小諸 直文(こもろ なおふみ)
- 赤松運送 担当弁護士。
- 児玉 征治(こだま まさはる)
- 児玉通運社長。
- 相沢寛久(あいざわ ひろひさ)
- 大手運送会社 北陸ロジスティックス 総務課長。
- 中村 桂子(なかむら けいこ)
- はるな銀行蒲田支店長。
- 進藤 治男(しんどう はるお)
- はるな銀行蒲田支店 融資課長。
- 赤松 史絵(あかまつ ふみえ)
- 赤松徳郎の妻。
- 赤松 拓郎(あかまつ たくろう)
- 赤松徳郎の長男。尾崎西小学校5年生。いじめにあう。
- 赤松 萌(あかまつ もえ)
- 赤松徳郎の長女。尾崎西小学校4年生。
- 赤松 哲郎(あかまつ てつろう)
- 赤松徳郎の次男。尾崎西小学校2年生。
- 沢田 英里子(さわだ えりこ)
- 沢田悠太の妻。地域FM放送局 看板パーソナリティ。
- 高幡 真治(たかはた しんじ)
- 港北警察署刑事。
テレビドラマ[編集]
2009年3月29日から4月26日までの毎週日曜日の22時から、WOWOWの連続ドラマW枠でテレビドラマ化され放送された。放送時間60分(初回のみ70分)、CM無しの全5話で、再放送は翌土曜日。有料放送ではあるものの、初回のみ本放送・再放送共に無料で放送された。連続ドラマW枠での放送作品としては、『パンドラ』、『プリズナー』に引き続き第3作目となる。
キャッチコピーは「その事故は、事件だった。」
2009年日本民間放送連盟賞において番組部門テレビドラマ番組最優秀賞、東京ドラマアウォード2009において連続ドラマ部門優秀賞、第26回ATP賞テレビグランプリ2009においてグランプリおよびドラマ部門最優秀賞を受賞。
キャスト[編集]
- 赤松徳郎:仲村トオル - 赤松運送社長
- 赤松史絵:戸田菜穂 - 赤松の妻
- 赤松拓郎:小清水一揮 - 赤松の息子
- 宮代直吉:大杉漣 - 赤松運送専務
- 門田駿一:柄本佑 - 赤松運送整備士
- 門田千夏:大塚千弘 - 門田駿一の妻
- 中村桂子:大島蓉子 - はるな銀行朝陽ヶ丘支店 支店長
- 小諸直文:長谷川朝晴 - 赤松運送 担当弁護士
- 沢田悠太:田辺誠一 - ホープ自動車カスタマー戦略課長
- 沢田英里子:本上まなみ - 沢田の妻
- 小牧重道:袴田吉彦 - ホープ自動車車両製造部課長
- 室井秀夫:相島一之 - ホープ自動車品質保証部課長
- 杉本恭子:尾野真千子 - ホープ自動車品質保証部
- 狩野威:國村隼 - ホープ自動車常務
- 富田弁護士:井田國彦 ‐ ホープ自動車顧問弁護士
- 佐々木香織:ミムラ - 狩野の姪
- 井崎一亮:萩原聖人 - ホープ銀行調査役
- 巻田三郎:西岡徳馬 - ホープ銀行専務
- 榎本貴和子:水野美紀 - 週刊潮流記者
- 高幡真治:遠藤憲一 - 新港北署刑事
- 児玉征治:斎藤洋介 - 児玉通運社長
- 柚木雅史:甲本雅裕 - 被害者の夫
- 柚木妙子:山口もえ - 被害者
- 柚木貴史:佐藤詩音 - 被害者の息子
原作との相違点[編集]
基本的に原作に忠実なストーリー運びであるものの、設定の変更がされている。
- 赤松徳郎・史絵夫妻の子どもは原作では長男・拓郎、長女・萌、次男・哲郎の3人だが、ドラマでは長男・拓郎の一人っ子の設定である。
- 雑誌記者の榎本とホープ自動車品質保証部の杉本は、原作ではいずれも男性だが、ドラマでは女性に変更されている。
- 整備士の門田駿一は原作では独身だが、ドラマでは既婚者である(ただし、交際相手の女性〈妻〉は原作通り妊娠している)。
スタッフ[編集]
- 原作:池井戸潤『空飛ぶタイヤ』(実業之日本社刊)
- 監督:麻生学、鈴木浩介
- 脚本:前川洋一
- プロデューサー:青木泰憲、土橋覚
- 助監督:加藤伸一
- 音楽:佐藤直紀
- 編集:石川浩通
- 制作協力:東阪企画
- 製作著作:WOWOW
ロケ地[編集]
事故現場の撮影は横浜市都筑区のマンション「ルミエラガーデンズ」の前で行われた。
主題歌[編集]
- エンディングテーマ「テネシー・ワルツ」(歌:ホリー・コール、作詞:レッド・スチュワート、作曲:ピー・ウィー・キング)
放送時間[編集]
- 本放送:日曜22:00 - 23:00(初回は無料放送)
放送日程[編集]
放送回 | 放送日 | テーマ |
---|---|---|
第1回 | 2009年3月29日 | 初回拡大版スペシャル |
第2回 | 2009年4月5日 | 第2話 |
第3回 | 2009年4月12日 | 第3話 |
第4回 | 2009年4月19日 | 第4話 |
最終回 | 2009年4月26日 | 第5話 |
脚注[編集]
関連項目[編集]
外部リンク[編集]
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